欧州共同体は、とりわけ環境、人間、動物または植物の健康の分野で、高度の保護を達成することに一貫して努めてきた。ほとんどの場合、この高度の保護の達成を可能にする措置は十分な科学的基礎に基づいて決定することができる。しかしながら、潜在的な危険が環境または人間、動物もしくは植物の健康に影響を与えるかもしれないという懸念に対する合理的根拠がある場合、また一方で、利用可能なデータでは詳細なリスク評価を行うことができない場合には、予防原則はリスクマネジメント戦略としていくつかの分野で政策的に受け入れられてきた。
欧州連合における予防原則の利用を十分に理解するには、法律文、欧州司法裁判所および第一審裁判所の判例法、ならびに今までに行なわれてきた政策アプローチを検証する必要がある。
法律文
予防原則について明示的または暗黙的に言及している法律文から分析を始める(附属書I、参照1)。
欧州共同体のレベルでは、予防原則に言及しているのはEC条約の環境条項のみであり、より具体的に言えば第174条である。しかし、このことから、この原則が環境だけに適用されると結論することは不可能である(附属書I、参照2および3)。EC条約は予防原則の輪郭を示しているだけで、定義をしていない。
従属性や釣り合いのような、この法律に含まれる他の一般概念と同様に、予防原則もまた、それを肉付けするのは政策決定者であり、最終的には裁判所である。言い換えれば予防原則の適用範囲は判例法の傾向にも左右され、その判例法はその時代に有力な社会的および政治的価値観にある程度影響される。
しかし、定義がないからといって法的に不確実であると結論付けるのは間違いである。欧州共同体当局が予防原則を実際に経験し、法的に審査することにより、予防原則をよりよく適用することができるようになる。
判例法
欧州司法裁判所および第一審裁判所には、すでに、判決を下した裁判における予防原則の適用を検証し、この分野における判例法を展開する機会があった(附属書I、参照5、6および7)。
政策の方向付け
政策の方向付けは、欧州委員会の『食品安全性の原則に関する緑書(Green Paper on the General Principles of Food Safety)および『消費者の健康と食品の安全性に関する1997年4月30日付けコミュニケーション(Communication of 30 April 1997 on Consumer Health and Food Safety)』、欧州議会の『緑書に関する1998年3月10日の決議』、欧州理事会の『1999年4月13日の決議』、ならびにEEA(欧州経済地域)合同議会委員会の『1999年3月16日の決議』でなされた(附属書I、参照8〜12)。
したがって欧州委員会は、予防原則は環境保護ならびに人間、動物および植物の健康に関する分野で特に考慮されるべき一般的原則であると考える。
予防原則は、EC条約の中では環境分野を除いて明示的に言及されていないが、その適用範囲ははるかに広く、科学的証拠が不十分、決定的でない、または不確実で、かつ、環境、人間、動物または植物に及ぼす潜在的悪影響と選択された保護レベルとが整合しないかもしれないという懸念に関する合理的根拠が、予備的な客観的・科学的評価を通じて示される場合に適用される。 |