前へ | 次へ

1. はじめに

 最近起こったさまざまな出来事は、人間の集団またはその環境が、暴露される可能性のある潜在的リスクに対し世論がますます敏感になっていることを示している。

 通信技術のめざましい進歩によって、こうした新たなリスクの出現に対する感受性がますます高まっている一方で、科学的な研究が問題を十分に解明できるまでには至っていない。政策決定者は、これらの認識によって生まれる懸念を考慮し、適切な予防的措置を講じて、リスクを取り除くか、少なくとも最低許容レベルにまで低下させなければならない。欧州理事会は1999年4月13日、特に欧州委員会に対し、“将来、立法のための法案準備および消費者に関連する措置を予防原則に基づいて行うことを固く決意すること、ならびに、この原則の適用のための明確で効果的なガイドラインを優先して開発すること”を促す決議を採択した。このコミュニケーション文書は、この理事会の採択に対する欧州委員会の対応の一部である。

 予防原則が影響を与える範囲は、リスクに対する短期的または中期的取り組みに関する問題の範囲を超えている。それはもっと長期間にわたり、将来の世代の幸福にも関わっている。
 必要な科学的知識がすべて入手できるのを待たずに措置を講じるよう決定することは、明らかに予防的な取り組みである。

 政策決定者は、個人、産業界および組織の自由と権利と、環境または健康に対する悪影響のリスクを低減もしくは排除する必要性とのバランスを取ることのジレンマに絶えず直面している。
 釣り合いがとれて、差別がなく、透明性があり、一貫した決定を行うことができると同時に、選択した保護のレベルを与える適正なバランスを見つけるには、詳細な科学的情報およびその他の客観的情報を用いた組織だった政策決定プロセスが必要である。こうしたしくみは、リスクアナリシスの3要素(リスクアセスメント、リスクマネジメント戦略の選択、リスクコミュニケーション)によって与えられる。

 リスクアセスメントは、どのようなものであれ既存の科学的および統計的データに基づいて行うべきである。ほとんどの決定は、適切な予防措置を取るのに十分な情報がある場合になされるものの、場合によっては何らかの点でこうしたデータが欠如している場合もある。

 予防原則を行使するか否かの決定が行われるのは、科学的情報が不十分で、確定的でなく、または不確実な場合、ならびに、環境または人類、動物もしくは植物の健康に対して起こりうる影響が潜在的に危険であり、選択した保護のレベルと整合しないことが示されている場合である。

前へ | 次へ