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概要

 欧州連合域内および国際的に、予防原則をいつ、どのようにして、用いるべきかという問題は、多くの議論を生み、複雑な、時に矛盾した見解を生み出している。このため、政策決定者は、環境、人類、動物または植物の健康に対する悪影響のリスクを低減する必要性と、個人、産業界および組織の自由と権利とのバランスをとることのジレンマに絶えず直面している。したがって、バランスが取れ、差別がなく、透明性があり、首尾一貫した行動を取ることができるような正しいバランスを見つけるには、詳細な科学的情報やその他の客観的情報に基づいた組織だった政策決定プロセスが必要である。

2. このコミュニケーション文書には、以下の4つの目的がある。

 また、欧州連合域内および国際社会の両方において、この問題に関して進行中の議論への情報提供に努める。

3. EC条約には予防原則に関する定義は含まれていない。条約が予防原則について規定しているのは1ヶ所だけで、その目的は環境保護である。しかし実際には、適用範囲はもっと広く、特に予備的な客観的・科学的評価により、環境、人類、動物または植物の健康に関する潜在的な悪影響が、欧州連合のために選択された高い保護のレベルと釣り合わない可能性があるという懸念に対する合理的根拠があることが示される場合には、適用範囲はもっと広い。
  欧州委員会は、欧州共同体が他のWTO加盟国と同じように、適切と思われる保護のレベル―特に、環境、人類、動物および植物の健康の保護―を確立する権利を有すると考える。予防原則の適用は欧州委員会の政策の根幹にかかわる重要なことがらであり、この目的で欧州委員会が行う選択は、この原則をどのように適用すべきかという問題に関して、欧州委員会が国際的に主張する見解に引き続き影響を与えるであろう。

4. 予防原則は、リスクアセスメント、リスクマネジメントおよびリスクコミュニケーションの3つの要素からなるリスクアナリシスへのよく組織化された取り組みの範囲内で検討されるべきである。予防原則はリスクの管理と特に関連がある。
 予防原則は、本質的に政策決定者がリスク管理のために用いるものであり、科学者が科学的データを評価するときに用いる慎重さという要素と混同してはならない。
 予防原則の適用の前提となるのは、ある現象、製品またはプロセスに由来する潜在的悪影響がすでに同定されていること、および、科学的評価によってそのリスクを十分な確かさで決定できないことの2点である。
 予防原則に基づく取り組みの実施は、できる限り完全な科学的評価から始まり、可能ならば、各段階において科学的不確実性の程度を明らかにすることが望ましい。

5. 政策決定者は、入手可能な科学情報の評価結果に伴う不確実性の程度に注意する必要がある。社会にとって“容認できる”リスクレベルはどの程度かを判断することは、極めて政治的な責任である。容認することのできないリスク、科学的不確実性および公衆の懸念に直面する政策決定者は、答を見つける義務がある。したがって、これらの要因すべてを考慮しなければならない。
 場合によっては、正しい答は、措置を講じないこと、あるいは、少なくとも拘束力のある法的措置を導入しないことかもしれない。実施する場合には、法的拘束力のある措置から研究プロジェクト、あるいは勧告まで、幅広いイニシアチブを選択することができる。
 政策決定手続きにあたっては、透明性を確保し、できる限り早い段階に合理的に可能な範囲で、すべての利害関係者を関与させるべきである。

6. 法的措置が必要と考えられる場合には、予防原則に基づいた措置は、とりわけ以下の要件を満たすべきである。

 “釣り合ったものであること”は、選択した保護のレベルに合った措置を講じることを意味する。リスクをゼロにできるケースは稀であるが、不完全なリスクアセスメントはリスク管理者が利用できるオプションの範囲を著しく狭めるかもしれない。全面的禁止は、いかなる場合にも潜在的リスクとの釣り合いがとれた対応ではないかもしれない。しかしながら、全面的禁止以外に、与えられたリスクに対する実施可能な対応がない場合もある。

 “差別のないこと”は、客観的な根拠がある場合を除き、類似した状況が異なる取扱いを受けるべきではなく、異なる状況が同じ方法で取り扱われるべきではないことを意味する。

 “一貫性”は、適用しようとする措置の内容と適用範囲が、すべての科学的データが入手可能である同等の領域ですでに講じられている措置と類似していなければならないことを意味する。

 “費用と便益の検証”は、法的措置を講じる場合と講じない場合について、欧州連合に対する短期的および長期的なすべての費用の比較を必要とする。これは単なる経済費用便益分析ではない。すなわち、その適用範囲は非常に広く、経済以外についての検討、たとえば考えられる選択肢の有効性やそれが公衆に容認される可能性も含まれる。このような検証を行うにあたっては、健康の保護が経済的考慮に優先するという一般原則および欧州司法裁判所の判例法に配慮すべきである。
 最新の科学的データに基づいて“見直しを受ける”とは、科学情報が不完全または確定的でない場合、選択した保護のレベルに照らして社会に課すにはリスクがあまりにも高いと依然考えられる場合には、予防原則に基づく措置を維持すべきであることを意味する。措置は科学の進歩に照らして定期的に見直し、必要に応じて修正することが望ましい。

 “科学的な証拠を提示する責任の所在を明らかにする”ことは、すでにこれらの措置に共通した結果である。演繹的に危険と考える製品に対して事前承認(販売承認)を要求する国は、当該製品が安全であることを実証するために必要な科学的作業を企業が実行するまで、当該製品を危険品として取り扱うことによって、その製品の害を立証する責任を業界側に負わせる。
 事前承認の手続きが行われない場合には、製品またはプロセスの持つ危険の内容およびリスクのレベルを実証するのは、ユーザまたは公共機関の責任かもしれない。そのような場合、生産者、製造者または輸入者に立証責任を負わせるような特別な予防的措置が取られるかもしれないが、このことを一般的な規則とすることはできない。

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