第5章: |
モダンバイオテクノロジーの適用により開発された飼料の栄養アセスメント |
5.1 適用範囲
本章は、動物生産システムで使用されている飼料の主要供給源の概略、ならびに農業的形質を改善されたGM作物由来の飼料成分が非反芻動物および反芻動物の家畜生産システムでどの程度まで不可欠な部分となってきたかについての概略から始める。その後、最新のバイオテクノロジーに由来する栄養改善された飼料成分の開発に目を向け、これらの成分の栄養アセスメントにおける組成分析の役割を説明する。農業的形質が改善されたGM作物の栄養的同等性を確立する上で、家畜給餌試験が果たす役割を説明し、栄養改善された特性を持つGM作物の評価における家畜給餌試験の必要性を扱う。最近刊行された遺伝子改変植物由来の動物飼料に関する安全性アセスメントのためのOECD刊行物(2003)、およびILSIの刊行物である「導入形質に関して遺伝子改変作物を評価するうえで動物実験を実行するための実施基準」(2003)に注意を向けている。
5.2 動物生産システムで使用される飼料源
5.2.1 背景
非反芻動物(例:家禽類およびブタ)ならびに反芻動物(例:肉牛および乳牛)のほとんどの飼料では、食餌の主要なエネルギーおよびタンパク質成分は、通常はトウモロコシや小麦などの穀物、ならびに大豆、カノーラ、綿実粉などの油糧種子粉である。穀粒は、特定植物の構成部分であるが、油糧種子粉は、油脂抽出後の副生産物である。穀粒および油糧種子粉はいずれも家畜飼料に混合される前に加工される。穀粒は、通常は栄養消化性を向上させるため、穀粒を割るか挽くなどの物理的な加工を受ける。油糧種子は、種子から油脂を抽出するための熱あるいは圧力が関与した物理的あるいは化学的加工のいずれかを受け、これによりタンパク質を多く含有する副生産物が残される。残留物は、さらにトリプシン阻害物などの栄養素吸収阻害物を破壊するため、熱/水蒸気で処理される。
さらに、反芻動物の食餌は、新鮮な飼い葉(例:牧草)あるいは保存飼い葉(例:干草やサイレージ)を様々な量で含有している。干草は空気乾燥により保存されているのに対し、サイレージは新鮮な飼い葉を細菌で発酵させたものであり、有機酸が産生されているため低pHの保存飼料となっている。
反芻動物飼料での飼い葉の割合は、家畜のクラス(肉牛か乳牛か)、生産システム(大規模か集約か)など多くの因子に依存し、総乾燥飼料(DM)の50〜100%の範囲にわたる可能性がある。例えば、高収量乳牛の場合には、食餌の50%が飼い葉で構成され、残りの飼料成分は、穀物や油糧種子粉など(こればかりではないが)を含有している。
5.2.2 従来作物
多くの様々な作物および副生産物が家畜生産システムで使用されるが、主要飼料供給源を提供するのはごく限られた数の作物である。世界規模で言えば、牧草が最も広く使われている飼い葉の供給源であるが、トウモロコシサイレージも広く使用されており、これは反芻動物で利用できる高エネルギー含有飼料の供給源として最も優れたものの一つだと考えられている。発展途上国では、トウモロコシの飼い葉(葉と茎)および米わらなどの作物残余物が反芻動物家畜で重要な飼料となっている。
トウモロコシ粒の年間生産量6億トン(FAO
2002)のうち、約4億5千万トンが家畜飼料で使われ、6千万トン以上が世界的に取引されている。家畜生産システムでは、トウモロコシ粒がエネルギー源としてしばしば好まれており、総生産量の約75%が非反芻動物の食餌で、残りが反芻動物で使用されている。世界における油糧種子生産は大豆が大半を占めており(年間1億8千万トン)、家畜生産におけるタンパク質補強としてしばしば好まれ、粉の97%が非反芻動物および反芻動物の飼料として使用されている(FAO
2002)。未加工の豆にはトリプシン阻害物やレクチンなど栄養素吸収阻害物質が存在するため、消費は限定されている(OECD
2001b)。トウモロコシおよび大豆の2作物は、いずれも農業的形質を改善する目的で遺伝子改変がされてきているが、このように非反芻動物および反芻動物の食餌における飼料として広範に使用されている。
カノーラや木綿などその他の植物も、油抽出後の残余物が家畜の食餌に混入するための価値あるタンパク質補強物を提供している。約2千万トンのカノーラ粉が使用され、また1200万トンの綿実粉が反芻動物に給餌されている(FAO
2002)。
5.2.3 農業的導入形質のために遺伝子改変された作物
主要GM作物は、大豆(4140万ヘクタール)、トウモロコシ(1550万ヘクタール)、木綿(720万ヘクタール)、カノーラ(360万ヘクタール)である(James
2003)。
いくつかの例外はあるが、これらの作物は、病害耐性および害虫防御のために改変されている。これらの作物は、いずれも家畜生産の食餌において、エネルギーあるいはタンパク質の飼料源として使用されている(ボックス5-1参照)。これらは、全体作物(例:トウモロコシサイレージ)、特定の作物の構成部分(例:トウモロコシ粒)、副生産物(例:油糧種子粉、トウモロコシ飼い葉)のいずれかの形で含まれている。
5.3 栄養特性が向上されたGM作物の開発
5.3.1 背景
栄養特性の向上を目的とした遺伝子改変作物は、すでにいくつかが作成され、現在試験中である(第2章を参照)。農業的形質を有するGM作物は、一般的には単一形質の導入の結果であるが、栄養特性を向上したGM作物は、植物代謝および生理学的経路でのますます複雑になる改変を達成するため、一つ以上の遺伝子の導入が求められる可能性がある。この増大しつつある複雑性の例が「ゴールデンライス」の場合で、ここでは3つの遺伝子挿入が必要となった。詳細は第2章で説明した。
5.3.2 可能性が考えられる改変
第2章およびKleterら(2001)のレビューは、現在開発中の幅広い範囲にわたる栄養改善されたGM作物について述べている。先進国のエネルギー摂取では植物油が15〜20%を占めており、植物油と健康との関連に関する知識が向上するにつれ、人間の食事での油および脂肪の品質にさらに強調が置かれるようになってきている、とレビューは記している。そのため、脂肪の飽和度、脂肪酸組成、個々の脂肪酸の幾何学的立体配置が、いずれも遺伝子改変のターゲットである。これらの改変は、大豆、トウモロコシ、カノーラ、木綿、ヒマワリなど多くの作物に組み込まれてきているが、これらの作物に限られるものではない(Kleter
他 2001)。
これらの作物からの抽出油脂は一般的に人間の消費用であるが、副生産物については動物生産システムでの利用が可能となっている(ボックス5-2参照)。これらの副生産物は、家畜飼料として栄養アセスメントの対象となる必要性があるだろう。さらに、副生産物は、産業加工用に特定産物を産生するよう改変された作物からも生じる可能性がある。これらの副生産物はさらなる検査を必要とするかもしれないが、この件は本文書の適用範囲外である。
植物は、人間および動物のいずれにとっても重要なタンパク質源である。トウモロコシ、米、小麦などの穀物作物は7〜14%のタンパク質を含有するが、豆類作物では、最大50%のタンパク質を含有することが可能である。しかし、ほとんどの植物性タンパク質は、少なくともひとつの必須アミノ酸が欠乏しており、穀類のタンパク質では一般的にリジン含有率が低く、豆類ではメチオニンやシステインなどのリン含有アミノ酸が低い。非反芻動物の食餌での欠乏を防ぐため、特定アミノ酸の補強がしばしば必要とされる。最新のバイオテクノロジーは、様々な作物のタンパク質含有量だけでなく、アミノ酸プロフィールを向上させることも目標にしている。
リンは、動物屎尿における主要汚染物であるが、そのほとんどはリンが植物ではフィチン酸として貯蔵されているという事実によってもたらされている。フィチン酸塩は非反芻動物が容易に消化することのできない安定した糖化リン酸である。フィチン酸消化およびリンの利用可能性を増強するために、フィターゼ酵素を食餌に組み込むことも可能であるが、これまでのところフィターゼ活性の上昇あるいはフィチン酸産生の低下を目的として作物が遺伝子改変されてきている。いずれのアプローチも、食餌でのリンの利用度を向上し、リン補強の必要性を軽減し、リン排出を低下させ、リンによる汚染の負荷を軽くするはずである。
反芻動物の食餌は50%以上を飼い葉でまかなうことができるが、栄養特性を向上させたGM飼い葉の作成は、いまところ限られた数の研究しか実行されていない。繊維消化の向上に関する大きな展望、ならびに発展途上国の反芻動物生産システムにこのことが及ぼす多大な影響に注意が向けられるべきである。発展途上国では飼い葉の品質が非常に低く、その結果として動物性能も低くなっている。そのような作物の農業的な評価は、繊維含有量の低下が倒伏や収量低下に結びつく可能性があるため、非常に重要である。農業的形質を持つGM作物の事例と同じく、栄養特性が向上したGM作物あるいはその副生産物は、動物生産システムで広範囲にわたって使用されることになり、そのため食品および飼料源の両方に関して評価が必要とされるだろうと思われる。
5.4 動物飼料の栄養アセスメントにおける組成分析の役割
5.4.1 背景
少なくとも50年にわたり、育種家および遺伝学者は、新品種開発の際には、作物収量および栄養組成を2つの主要選抜基準として用いてきた。収量での顕著な増加は達成されたが、従来法の育種を通じて栄養組成の顕著な改変に成功した例はわずかしかない。いくつかの事例では、高収量の作物を捜し求めることが栄養組成での低下をもたらしてしまった。例えば、穀物収量の増加は通常、澱粉含有量の増加を通じて達成されるが、これはタンパク質含有量と逆相関している。このように穀物収量増加は、しばしばタンパク質含有量の代償のもとに発生している(Bletsos
& Goulas
1999)。逆に、従来法の育種プログラムを通じた品質を向上させた作物の探査は、しばしば作物収量の低下をもたらしてきた。例えば、MiševicおよびAlexander(1989)は、トウモロコシ粒の脂質含量を増加させるうえでの選抜は効率的であったが、これには顕著な穀粒収穫量の低下が伴っていたことを記している。最新のバイオテクノロジーには、収穫量と栄養品質の間にあるこの逆相関関係を打ち破る可能性があることに注目することが重要である。
しかしながら、飼料の組成分析は、従来の育種法による品種の栄養アセスメントで重要な役割を果たしてきた。従来法育種による品種では作物によって組成に顕著な差異があり、それゆえGM作物の組成分析は、従来法の対応物における自然でのばらつきを背景として評価されなければならない、ということに注意しなければならない。そのようなデータの重要な供給源として、ILSI(2003)作物組成データベース(www.cropcomposition.org)に注意が向けられる。この件に関しては第3章で詳細に考察された。
実行した組成分析は、評価中の飼料における多量栄養素、微量栄養素、栄養素吸収阻害因子、自然発生する毒物に関する情報を提供しなければならない。多量栄養素は、澱粉、粗タンパク質、脂肪酸、アミノ酸、灰分、ならびに中性食物繊維や酸性食物繊維などの構造的炭水化物成分で構成される。微量栄養素の評価は、ほとんどの組成分析では主に重要なミネラルおよびビタミンからなる。栄養素吸収阻害因子および自然発生する毒物の例はトリプシン阻害物およびゴシポールで、前者は大豆および大豆粉に、後者は綿実および綿実粉に存在する。
そのような分析で得られたデータは、組成飼料表の基本を形成し、飼料表は反芻動物および非反芻動物のいずれでも使用される食餌の作成で重要な役割を果たしてきた。さらに、これらのデータは、当該飼料のエネルギー価を予想するためにも使用されてきており、これは飼料作成での重要な要素であるため重要な栄養アセスメントである。分析が完全であればあるほど、飼養する動物にバランスの取れた食餌を提供できる可能性が高くなるのは明らかである。例えば、粗タンパク質含有量が適切であると思えたとしても、必須アミノ酸の適切性を予想するためには、アミノ酸組成の知識が必要になる。
しかし、組成分析は飼料の栄養価のガイドラインのみを提供する。栄養素の利用可能性に関する情報は提供できない。多くの事例でこのことは重要な問題であり、栄養素のバイオアベイラビリティを決定するためには生体内での試験が必要とされる。さらに、新しい飼料源が動物性能にもたらす影響を確立するために、ターゲット種による家畜給餌試験が実行されることもあり、その場合のエンドポイントの測定は、飼料摂取量、動物性能のレベル、飼料変換効率、動物の健康、有効性、新しい飼料成分の受容性などである。実行される家畜給餌試験の範囲とタイプは、開発された飼料源のタイプに依存し、その必要性は事例ごとに決定されるべきである。この件については、本章の後半で詳細に考察される。
5.4.2 実質的同等性の概念
実質的同等性の概念は、Aumaitre 他(2002)、Chesson(2001)、Kuiper
他(2001)、Cockburn(2002)などの多くの作業者によって検討され、また第3章でも考察された。
この概念は、食品および飼料成分のいずれにも適用可能である。またこの概念は、GM作物の特性と、長く安全に使用された歴史を示すことによって安全であると見なされた適切な対応物とを比較するための基盤を既存の作物が形成する、という原則に基づいている。この概念の適用は、それ自体では安全性アセスメントではないが、従来作物とGM作物とで類似点と相違点を同定するうえで役立ち、主要な相違点は、それを追跡する安全性アセスメントの根拠となる(第3章を参照)。更なる調査の対象となる相違点の同定を目的とした実質的同等性の新規GM作物に対する適用では、農業的特性および表現型特性、および重要な栄養組成に関する組成分析が非常に重要な要素である。実質的同等性の概念は、第3章で詳細に考察された。
5.4.3 農業的形質のために改変された作物
現在のところ、主に農業的形質を改変された50を越える作物が、これまでにアセスメントを受けた。農業的分析、表現型分析、組成分析が、通常は同じ年に同一圃場条件で栽培されたGM作物および従来からの対応作物の両方について行われてきた(ボックス5-3の例を参照)。
これらの分析中に相違点が観察された場合には、有意で、生物学的に意味のある相違点による安全性および栄養に対する影響を評価するため、さらなるアセスメントが必要とされる。追跡研究も必要とされる可能性があり、これには第6章で述べるようなさらなる分析的手続き、あるいは本章の後半で考察される家畜給餌試験のいずれかが含まれる場合がある。このさらなる作業の必要性は、事例ごとに評価されなければならない。
しかし、GM作物と最も近似した対応する従来作物との間で、統計学的に有意な差が組成分析で観察された場合であっても、これらの差は慎重に評価されなければならない。それは、これだけでは意図されていない作用の存在を示唆するものではないからである。例えば、その差は、現在商業的に入手できる品種間に存在する、自然で幅広いばらつきの範囲内である可能性がある。このことは、GM作物を、ほぼ同質遺伝子の親株系ならびに商業的に妥当し幅広い品種の数々とも比較することの重要性を強調する。作物品種内での組成の範囲は、OECD同意文書(OECD
2001a·b、2002a·b·c)およびILSI(2003)作物組成データベース(www.cropcomposition.org)で明解に示されている。
5.4.4 栄養改善のために改変された作物
新規食品および飼料の栄養アセスメントに関するOECDワークショップ(2002d)は、実質的同等性の概念として知られる同等性安全性アセスメント手続きが、農業的アセスメント、表現型アセスメント、組成アセスメントに関する検査を含むもので、農業的および栄養改善されたGM作物由来の食品および飼料の安全性ならびに栄養品質に関するアセスメントにおいて、現時点で最も適切な科学的戦略を提供する、と結論した。ワークショップは、実質的同等性がGM作物と適切な対応物との間で類似点および相違点を同定するものであり、意味を持つ相違点が安全性および栄養に及ぼす影響は、すべて厳密に探査されなければならない、と強調した。このことは、代謝および生理学的経路が改変され、改変が予想外の作用を植物構成にもたらす可能性がある、栄養改善のために改変されたGM作物では特にあてはまる。
様々な作物の新品種に対し組成分析を提案した同意文書の作成では、OECDが先導的立場を取った(OECD 2001a·b、2002
a·b·c)。王立委員会(2002)は、実質的同等性を画一的に適用することが可能になるとして、このイニシアチブを歓迎し、また現在商業化されているGM作物が安全ではないことを示唆する証拠はない、ということを強調した。
OECD同意文書は、栄養改善されたGM作物に特定して作成されたわけではないが、新しい事象から得られたデータは、親品種で得られたデータと比較されなければならないと言明した。しかし同文書は、開発者は新品種から得られた数値を、同意文書に提示された文献からの数値と比較することも可能であると言明した。
栄養品質を改善されたGM作物の主要な特性は、これらの作物と遺伝子的に最も近い対応物との間に、意図された相違があるということである。しかし、意図されていない変化も発生する恐れがあり、アセスメントをする必要があるだろう。GM作物由来の栄養改善飼料に関する栄養アセスメントにおける家畜給餌試験の役割は、本章の次の節で説明されている。
FlachowskyおよびAulrich(2001)が報告した作業、ならびに大豆およびトウモロコシの新品種のために提案された組成分析に関するOECDが準備した同意文書(2001b、2002c)は、農業的形質および栄養特性の向上のために改変されたGM作物に関する栄養アセスメントの一部分として必要とされる分析に対し、素晴らしいガイドラインを提供している。
従来法の育種技術、あるいは農業的または栄養改善されたGM作物のいずれかに由来する飼料源の栄養アセスメントでは、多くの組成分析の使用が勧告されるが、それは次の通りである。
5.5 飼料資源の栄養アセスメントにおける給餌試験の役割
5.5.1 背景
新品種の組成分析は、栄養アセスメントにおける優れた開始地点を提供してくれるが、栄養素のバイオアベイラビリティについては限られた情報しか提供しないため、組成分析は全体的な栄養アセスメントの一部に過ぎないと見なされるべきである。そのような情報は、ターゲットとした家畜種を使用した小規模の生体内実験で得られるが、これは栄養素の消化が家畜品種間で顕著に異なる可能性があるからである。飼料資源の栄養アセスメントにおけるこの進展に関する優れた例は、トウモロコシの褐色中肋変異品種の従来法育種による開発である(Oba
& Allen
2000)。組成分析は、褐色中肋品種の繊維含有量および組成が、従来品種との比較において変化していることを示しており、これは繊維の消化性が向上した可能性を示唆していた。しかし、これらの新品種の繊維消化性が実際のところ顕著に向上したことを確立するためには、反芻動物の家畜種を使用した生体内での消化試験が必要とされた。その後、乳牛を用いた大規模長期間の家畜給餌試験により、繊維消化性の向上による有益性が確立された。消化性向上には排泄率の増加および飼料摂取量の増加が関連していたが、これらはいずれも栄養摂取量の増加に結びつき、乳生産の強化をもたらした(Oba
& Allen 2000)。
5.5.2 農業的形質のために改変された作物
ターゲットとする品種に応じて期間は様々であるが、数多くの家畜給餌試験が農業的形質を改変されたGM作物の栄養同等性を確認するために実行された。作物はターゲットとする種に直接給餌され、総食餌摂取量の非常に大きな部分を占めた。飼料摂取量、栄養消化、乳、肉、卵の生産レベル、動物の健康と福祉を測定記録し、従来の飼料成分に基づいた食餌で得られた測定値と比較した。
本章の先に出た節では、農業的形質のGM作物の栄養に関する組成同等性およびバイオアベイラビリティが、従来品種の範囲内にあったと記した。数多くの給餌試験が実行され、GM飼料を給餌された動物の性能が、従来の対応物を給餌された動物のものといずれかの点において異なっていたことを示唆する証拠はこれまで出ていないが、したがってこれは驚くべきことでもないだろう(Clark
& Ipharraguerre 2001、Flachowsky & Aulrich
2001)。これらの研究者は、ターゲット種を用いた通常の長期家畜給餌試験が栄養アセスメントに付け加えるものは少ない、と結論しており、組成での同等性が確立された場合、ターゲット種に関する栄養同等性を仮定することができる、と提案している。これらの研究は、一般的に、ニワトリ、ブタ、肉牛では屠殺までの終了期間、あるいは乳牛では乳汁分泌サイクルの主な部分を期間としている。
5.5.3 栄養改善のために改変された作物
意図されていない作用が栄養改善されたGM作物に存在する可能性に関し、意味ある情報をさらに提供するための、若く成長の迅速な家畜(例:ブロイラー若鶏)を用いた短期(42日)成長試験の必要性については、第3章で詳細に考察された。短期成長試験は、組成での微小な変化を検出するための適切な感受性を欠いているため、意図されていない作用を検出する効果的な手段ではない、と結論されている。
そのような急速に成長し、栄養に感受性のある家畜の使用が、予想される栄養での有益性に関する最初のスクリーニングのためのモデルとして有用であるとの提案がなされているが、改変された作物、作物成分、副生産物から予測される可能性がある栄養特性を示すための試験は、該当するターゲット家畜種を用いた家畜給餌試験が行われるべきである、と指摘されている。そのような試験に関する必要性は事例ごとに決められるべきで、国際的に認められたプロトコルに従って実行されるべきである。
実際の実験デザインおよび統計デザインは、多数の因子に依存し、試験で使用した動物種、評価する形質、予想される作用の規模などを含むものであり、逆にこれらは例えば処置群ごとの動物数などに影響を及ぼす。エンドポイントの測定としては、飼料摂取量、動物の性能、栄養素のバイオアベイラビリティ、環境への影響、動物の健康などがあるだろう。
試験が実行される場合には、次のガイドラインが提案されている。
5.6 結論および勧告
栄養改善された特性を有するGM作物の開発が進行中である。家畜飼料システムでの使用のために特にデザインされたこれらの作物の中には、多量栄養素あるいは微量栄養素含有量の増強や栄養素のバイオアベイラビリティの向上したものがあるが、その他のものは人間の消費用の食品成分を生産するために改変されている。後者の改変では、改変された成分が抽出され、それにより飼料資源として利用可能な副生産物がもたらされている。
様々な作物の新品種で求められる組成分析に関してOECDが準備した同意文書(2001a·b、2002a·b·c)は、栄養アセスメントの開始部分として必要な分析に対し、優れた指針を提供している。
| 勧告 |
5-1. |
| 勧告 |
5-2. |
| 勧告 |
5-3. |
| 勧告 |
5-4. |
補遺5-1
グリホサート耐性トウモロコシに関する実質的同等性組成分析の結果(ラウンドアップ・レディー・GA21系統)
| 表1 |
ラウンドアップ・レディー・トウモロコシGA21系統の穀粒の繊維、ミネラル、ならびに一般組成 |
|
組成c |
1996a |
1997b |
文献 |
歴史的g |
|||
|
GA21平均 |
対照群d平均 |
GA21平均 |
対照群e平均 |
商業系統f |
|||
|
タンパク質 |
10.05 |
10.05 |
11.05 |
10.54 |
10.87 |
(6.0~12.0)k |
(9.0~13.6) |
|
総脂肪 |
3.51 |
3.55 |
3.90 |
3.98 |
3.69 |
(3.1~5.7)k |
(2.4~4.2) |
|
灰分 |
1.27 |
1.27 |
1.38 |
1.56 |
1.79 |
(1.1~3.9)k |
(1.2~1.8) |
|
ADFi |
3.73 |
3.72 |
6.35 |
6.35 |
6.06 |
(3.3~4.3)k |
(3.1~5.3) |
|
NDFi |
10.82 |
11.70 |
9.33 |
9.8 |
10.12 |
(8.3~11.9)k |
(9.6~15.3) |
|
炭水化物 |
85.15 |
85.15 |
83.66 |
83.79 |
83.68 |
この形式での報告なし |
(81.7~86.3) |
|
カルシウム |
0.0026 |
0.0027 |
0.0039j |
0.0043 |
0.0040 |
(0.01~0.1)k |
(0.0029~ |
|
リン |
0.299 |
0.299 |
0.326 |
0.326 |
0.330 |
(0.26~0.75)k |
(0.288~ |
|
水分 |
14.15 |
14.40 |
16.86 |
16.21 |
16.30 |
(7~23)k |
(9.4~15.8) |
a 米国の5か所からのデータ:除草剤ラウンドアップで処理していない植物から収穫されたCA21穀粒。 b 欧州の繰り返し再現されていない4か所、米国の繰り返し再現されていない6か所、米国の繰り返し再現された1か所からのデータの組み合わせ:除草剤ラウンドアップで処理した植物から収穫されたGA21穀粒。 c 水分を除く、サンプルの乾燥重量の割合。 d 非遺伝子組換えのネガティブな分離個体。 e 親対照群系統。 f 商業系統:各場所での地元の交雑植物。 g 1993〜1995年にモンサント株式会社の圃場試験で栽培された対照群系統の範囲。 h 範囲は、各系統での全場所を通じての個々の最低値および最高値を意味する。 i ADF:酸性デタージェント繊維、NDF:中性デタージェント繊維。 j 対照群から5%レベルで統計的に有意な差がある(P<0.05)。 k Watson(1987)。 l Jugenheimer(1976)。Sidhuら(2000)から許可を得て転載。著作権 米国化学学会2000
| 表2 |
ラウンドアップ・レディー・トウモロコシGA21系統の飼い葉の繊維、ミネラル、ならびに一般組成 |
|
組成c |
1996a |
1997b |
||||
|
GA21平均 |
対照群d平均 |
GA21平均 |
対照群e平均 |
商業系統f |
歴史的g |
|
|
タンパク質 |
7.91 |
7.58 |
7.49 |
7.45 |
7.20 |
(4.8~8.4) |
|
灰分 |
4.22 |
3.85 |
4.29 |
4.26 |
4.19 |
(2.9~5.1) |
|
ADFi |
25.04 |
25.89 |
23.85 |
25.55 |
25.56 |
(21.4~29.2) |
|
NDFi |
39.47 |
40.85 |
37.91 |
38.92 |
39.54 |
(39.9~46.6) |
|
総脂肪 |
1.73 |
1.50 |
1.88 |
2.21 |
2.04 |
(1.4~2.1) |
|
炭水化物 |
86.14 |
87.04 |
86.35 |
86.06 |
86.62 |
(84.6~89.1) |
|
カルシウム |
0.1934 |
0.1766 |
0.2304 |
0.2177 |
0.1948 |
(入手不可) |
|
リン |
0.2288 |
0.2124 |
0.2178 |
0.2179 |
0.1992 |
(入手不可) |
|
水分 |
72.30 |
65.52 |
68.83 |
68.73 |
68.31 |
(68.7~73.5) |
a 米国の5か所からのデータ:除草剤ラウンドアップで処理していない植物から収穫されたCA21穀粒。 b 欧州の繰り返し再現されていない4か所、米国の繰り返し再現されていない6か所、米国の繰り返し再現された1か所からのデータの組み合わせ:除草剤ラウンドアップで処理した植物から収穫されたGA21穀粒。 c 水分を除く、サンプルの乾燥重量の割合。 d 非遺伝子組換えのネガティブな分離個体。 e 親対照群系統。 f 商業系統:各場所での地元の交雑植物。 g 1993〜1995年にモンサント株式会社の圃場試験で栽培された対照群系統の範囲。 h 範囲は、各系統での全場所を通じての個々の最低値および最高値を意味する。 i ADF:酸性デタージェント繊維、NDF:中性デタージェント繊維。Sidhuら(2000)から許可を得て転載。著作権 米国化学学会2000
| 表3 |
ラウンドアップ・レディー・トウモロコシGA21系統の穀粒のアミノ酸組成 |
|
アミノ酸a |
1996b |
1997c |
文献g |
歴史的g |
|||
|
GA21平均 |
対照群d平均 |
GA21平均 |
対照群e平均 |
商業系統f |
|||
|
アラニン |
7.62 |
7.64 |
7.64 |
7.62 |
7.78 |
(6.4~9.9) |
(7.2~8.8) |
|
アルギニン |
4.13 |
4.30 |
4.48 |
4.51 |
4.36 |
(2.9~5.9) |
(3.5~5.0) |
|
アスパラギン酸 |
6.71 |
6.78 |
6.63 |
6.65 |
6.57 |
(5.8~7.2) |
(6.3~7.5) |
|
シスチン |
2.10 |
2.11 |
2.22 |
2.28 |
2.19 |
(1.2~1.6) |
(1.8~2.7) |
|
グルタミン酸 |
19.27 |
19.06 |
18.78 |
18.70 |
19.17 |
(12.4~19.6) |
(18.6~22.8) |
|
グリシン |
3.72 |
3.78 |
3.83 |
3.89 |
3.71 |
(2.6~4.7) |
(3.2~4.2) |
|
ヒスチジン |
2.81 |
2.84 |
2.67 |
2.74 |
2.80 |
(2.0~2.8) |
(2.8~3.4) |
|
イソロイシン |
3.60 |
3.58 |
3.53 |
3.57 |
3.75 |
(2.6~4.0) |
(3.2~4.3) |
|
ロイシン |
13.11 |
12.90 |
12.98 |
12.87 |
13.32 |
(7.8~15.2) |
(12.0~15.8) |
|
リジン |
3.02 |
3.09 |
3.11 |
3.02 |
2.96 |
(2.0~3.8) |
(2.6~3.5) |
|
メチオニン |
1.98 |
2.03 |
2.16 |
2.17 |
2.02 |
(1.0~2.1) |
(1.3~2.6) |
|
フェニールアラニン |
5.15 |
5.17 |
5.31 |
5.33 |
5.36 |
(2.9~5.7) |
(4.9~6.1) |
|
プロリン |
8.69 |
8.69 |
8.98 |
9.00 |
9.16 |
(6.6~10.3) |
(8.7~10.1) |
|
セリン |
5.33j |
5.27 |
5.17 |
5.03 |
4.64 |
(4.2~5.5) |
(4.9~6.0) |
|
スレオニン |
3.77 |
3.73 |
3.59 |
3.54 |
3.43 |
(2.9~3.9) |
(3.3~4.2) |
|
トリプトファン |
0.62 |
0.57 |
0.61 |
0.61 |
0.59 |
(0.5~1.2) |
(0.4~1.0) |
|
チロシン |
3.81j |
3.95 |
3.73 |
3.77 |
3.48 |
(2.9~4.7) |
(3.7~4.3) |
|
バリン |
4.58 |
4.64 |
4.57 |
4.62 |
4.79 |
(2.1~5.2) |
(4.2~5.3) |
a
統計的比較のため、数値は総アミノ酸のパーセンテージで表示してある。これらの数値は、総タンパク質のパーセントで表示した場合には、わずかながら高値となる。例えばGA21のアラニンは7.8%(1996)。b
米国の5か所からのデータ:除草剤ラウンドアップで処理していない植物から収穫されたCA21穀粒。 c
欧州の繰り返し再現されていない4か所、米国の繰り返し再現されていない6か所、米国の繰り返し再現された1か所からのデータの組み合わせ:除草剤ラウンドアップで処理した植物から収穫されたGA21穀粒。
d 非遺伝子組換えのネガティブな分離個体。
e 親対照群系統。 f 商業系統:各場所での地元の交雑植物。 g
Watson(1982)。数値は、総タンパク質のパーセントで表示[10.1%総タンパク質(N x 6.25)]。 h
1993〜1995年にモンサント株式会社の圃場試験で栽培された対照群系統の範囲。数値は総タンパク質のパーセント。 i
範囲は、全場所を通じての個々の数値に関する最低値および最高値を意味する。 j
対照群から5%レベルで統計的に有意な差がある数値(P<0.05)。Sidhuら(2000)から許可を得て転載。著作権 米国化学学会2000
| 表4 |
ラウンドアップ・レディー・トウモロコシGA21系統の穀粒の脂肪酸組成 |
|
脂肪酸a |
1996a |
1997b |
文献g |
歴史的g |
|||
|
GA21平均 |
対照群d平均 |
GA21平均 |
対照群e平均 |
商業系統f |
|||
|
アラキジン酸 |
0.40 |
0.41 |
0.37 |
0.36 |
0.40 |
(0.1~2) |
(0.3~0.5) |
|
ベヘン酸 |
0.16 |
0.17 |
0.16 |
0.15 |
0.18 |
(報告なし) |
(0.1~0.3) |
|
エイコサン酸 |
0.28 |
0.29 |
0.30 |
0.30 |
0.30 |
(報告なし) |
(0.2~0.3) |
|
リノール酸 |
58.56 |
58.72 |
61.40 |
61.51 |
59.18 |
(35~70) |
(55.9~66.1) |
|
リノレン酸 |
1.10 |
1.08 |
1.14 |
1.14 |
1.11 |
(0.8~2) |
(0.8~1.1) |
|
オレイン酸 |
27.5 |
27.4 |
24.2 |
24.1 |
26.2 |
(20~46) |
(20.6~27.5) |
|
パルミチン酸 |
9.94 |
9.92 |
10.70 |
10.72 |
10.58 |
(7~19) |
(9.9~12.0) |
|
ステアリン酸 |
1.87 |
1.86 |
1.68 |
1.67 |
1.88 |
(1~3) |
(1.4~2.2) |
a 数値は総脂肪酸のパーセントで表示。方法には、次の脂肪酸分析も含まれていたが、これらは分析した主なサンプルでは検出されなかった。カプリル酸(8:0)、カプリン酸(10:0)、ラウリン酸(12:0)、ミリスチン酸(14:0)、ミリストレイン酸(14:1)、ペンタデカン酸(15:0)、ペンタデセン酸(15:1)、ヘプタデカン酸(17:0)、ヘプタデセン酸(17:1)、ガンマリノレン酸(18:3)、エイコサジエン酸(20:2)、エイコサトリエン酸(20:3)、アラキドン酸(20:4)。パルミトオレイン酸(16:1)は、1996年に採集された穀粒サンプルでは総脂肪酸の約0.17%の濃度で観察されたが、1997年に採集されたほとんどの穀粒サンプルでは検出されなかった。 b 米国の5か所からのデータ:除草剤ラウンドアップで処理していない植物から収穫されたCA21穀粒。 c 欧州の繰り返し再現されていない4か所、米国の繰り返し再現されていない6か所、米国の繰り返し再現された1か所からのデータの組み合わせ:除草剤ラウンドアップで処理した植物から収穫されたGA21穀粒。 d 非遺伝子組換えのネガティブな分離個体。 e 親対照群系統。 f 商業系統:各場所での地元の交雑植物。 g Watson(1982)。数値は、総脂肪酸に対するパーセントで表示されている。ただしパルミチン酸(16:1)は、トリグリセライド脂肪酸のパーセントで表示。 h 1993〜1995年にモンサント株式会社の圃場試験で栽培された対照群系統の範囲。数値は総脂肪酸のパーセント。 i 範囲は、全場所を通じての個々の数値に関する最低値および最高値を意味する。Sidhuら(2000)から許可を得て転載。著作権 米国化学学会2000