C. 食品と環境のリスク/安全性評価の関係
C.1. はじめに
90.GM製品は食品としてのリスク/安全性評価と環境に対するリスク/安全性評価の両方の対象となる可能性がある。殆どの加盟国では、これらの二つの異なる手続きは異なる省や庁の責任である。多くの場合、両タイプの評価では、宿主生物の生物学的性質、挿入遺伝子の分子的特性化、および改変生物の性質に関する情報といった、同じあるいは類似の情報が使用される。
通常、異なる省庁がこれらの評価を独立に行うが、類似の考慮事項を二つの評価で用いうる方法がよりよく理解されれば、製品の全体的リスク評価の有効性がよりよく理解されるようになるであろう。
C.1.1. 植物
91. 食品としてのリスク/安全性評価が環境安全性と情報を共有できるかも知れない具体的な例として、植物中の天然の毒素のレベルがある。多くの植物は、アルカロイド、グリコシド、フェノール類等の化合物を産生するが、これらの物質はヒトやその他の動物に対して特定レベルで毒性を示す。
92. 伝統的な育種では、これらの毒素を、ヒトが消費しても安全であるとされるレベルで含む作物品種を開発してきた。時々は植物育種では毒素レベルが高まった品種を生じることがあり、これらはヒトの食品としての使用が断念される。同様に、遺伝子操作でも毒素レベルが高まった品種ができる可能性がある。このことは特定のGM食品について認識されている安全上の問題である。トランスジェエック植物品種は、その品種に新しいタンパク質(Btエンドトキシンのような)を含む可能性もある。このようなタンパク質は、食品および環境の両リスク/安全性評価者により検討される。
93. 毒素レベルの上昇は、その作物や作物残渣を直接的に食べる、毒素に感受性の非標的草食生物に対する環境リスクにもなりうる。さらに、その形質は性的適合性のある野生の近縁種に移入するかもしれない。この状況では、野生の近縁種を食べる草食生物へのインパクトと、食害の減少による植物の侵入性の増大の可能性の両方が検討されうる。従って、トランスジェニック植物中の毒素レベルに関する同じデータが、ヒトと非標的生物のリスク/安全性評価の両方に使用できであろう。
94. 食品および環境に対するリスク/安全性評価のもう一つのつながりは、Btトウモロコシとマイコトキシの関係を示した最近の研究に見ることが出来る。この研究では、Btトウモロコシの昆虫被害の減少により、マイコトキシンを産生するFusarum菌株の感染が減少した。Fusariumはトウモロコシに日和見染するカビであり、このカビの産生るマイコトキシンはトウモロコシの穀粒に検出されうる。マイコトキシンはヒトや動物の健康に害を与えることが知られている(例えば急性毒性がある)。従って、Btトウモロコシの殺虫性は、マイコトキシンヘの曝露レベルを減らすことにより、食品の安全性によいインパクトを与える可能性がある。
95. 食品および環境に対するリスク/安全性評価に関係する重要な情報は、植物育種家が新たな作物品種の開発途上で集めた情報である。どんな作物の新たな品種の評価を行う際にも、育種家は一般に、十分確立された手順に従う。新たな形質が伝統的育種により導入されたか、あるいは遺伝子操作により導入されたかによらず、育種家は新たたな品種が、一般的農業特性および効率に関して高い基準を満たしているかどうかを知る必要がある。このことを行うことにより、育種家は、受容可能な植物の性能を保証するために、定量的および定性的な観察を行う。これらの観察は多くの揚合、何年にもわたり、多数の環境において行われる。劣ったタイプは、その系統が開発のために選抜され規制官による最終的な評価をうける前に排除される。
96. 植物育種家による特性の測定はリスク/安全性評価のために行われるものではないが、これらは食品および環境の両方に対するリスク/安全性評価のための知識ベースの部分となっている。これは基礎情報と、新たな品種に明らかな予期しない表現形質がないという保証を与える。リスク/安全性評価者の役割は、この情報に基づいて特別のリスク、とくに、育種家によって十分評価されてない可能性のある環境に対するリスクを確認することであり、さらに、導入形質に関係するリスクを確認することにより作物の安全性を評価することである。
C.1.2. 微生物
97. 食品に関連した酵素の産生や食品そのものとして使用される遺伝子改変微生物は、通常、封じ込められた容器中(あるいは発酵槽)で培養され、第一の問題は他の微生物による汚染が起こらないようにすることである。食品の安全性評価者は、結果として生じる製品が食べても安全であることに確信をもっている必要がある。しかし、環境リスク/安全性評価者は、これらの生物の封じ込めからの放出に伴う潜在的有害性がないことに確信をもっている必要がある。一方、工業発酵されている微生物は通常環境中での生残には適応しておらず、微生物の長期にわたる安全利用の歴史と経験について認識しておく必要がある。