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B. 植物と微生物の生物学および環境との相互作用
22. 遺伝子操作生物の潜在的環境影響を検討する際、リスク/安全性評価者には生物が放出される環境とその生物との相互作用に加えて、生物の生物学的特性の正しい理解が必要である。従って、本節では導入として、植物と微生物の基礎生物学および環鏡との相互作用に焦点をあてる。

B.1. 植物
B.1.1. OECDの植物に関するコンセンサス文書
23. OECDの作業グループは数種の作物種(林木および微生物に加えて)の生物学的特性に関する一連のコンセンサス文書を作成している。これらの文書では遺伝子操作生物の安全性評価に重要な生物学的特性に焦点を当てている。これらの文書は安全性評価に重要な、遺伝的特性、生殖生物学、「原産地」および生物多様性、害虫、病害、および生態学的特性について扱っている。コンセンサス文書中の情報は、リスク/安全性評価に用いるものとしてOECD加盟国が相互に認めるつもりのものである。

24. 以下の項は植物の生物学に関する一般的な基礎情報を記している。これは殆どの生物学者が理解している基礎的な生物学的知識である。

B.1.2 一般的生物学
25. 生きている生物はその生命機能を営むために常にエネルギーを必要とする。多くの生物はそのエネルギーを他の生物を食べることにより獲得している。しかし植物は、「光合成」と呼ばれるプロセスにより太陽光のエネルギーを捕獲する事が出来るため、地球上のすべての生命の基盤を形成している。すべての植物バイオマスの生産は光合成に依存している(Foyer et al., 1996)。植物の緑色の細胞で起こる光合成は、大量の光のエネルギーを他の生物が利用できる化学エネルギーに変換できる(Levitt, 1969)唯一のエネルギー捕獲プロセスである。植物はこのエネルギーを用いて下記のような物質を生産する。

これらの物質はすべて、植物自身にとって有用であるのと同時に他の生物の良い栄養源となる。

26. 植物はまた、「二次代謝産物」として知られるその他の物質も生成する。往々にしてこれらの物質は植物細胞の副産物や廃棄物であるが、植物はこれらの廃棄物を、例えば、害虫や草食生物の撃退等、他の機能に用いることがある。二次代謝産物のあるものは受粉昆虫を引きつけたり、種子をばらまく動物を引き寄せたりする。二次代謝産物の主要なものには、アルカロイド(アミノ酸に由来する二次代謝産物)、テルペン(エッセンシャルオイル、樹脂、ゴム)、フェノール化合物(例えばタンニン)、およびグコシドがある(Levitt,1969)。タスクフォースの報告書はこのグループの植物成分について有る程度詳細に検討している。

27. このように植物は食物連鎖の基盤であるため、地球上の生命に重要な役割を果たしている。殆どの動物は植物を食物として食べるが、ある動物は肉食であり、植物を食べる動物を食べる。本報告書の以下の項に論じるように、微生物は生きている植物や死んだ植物を利用して生活する。また、植物も、光、空間、その他の栄養素を争いながら、複雑な相互関係を持っている(Raven,1992)。また、上記のように、植物は受粉昆虫、種子をばらまく動物に加えて、害虫や草食生物とも複雑な相互関係を持っている(Raven,1992)。ある関係では、植物は他の生物に生息環境を与える(Raven,1992)。病原性微生物は植物に高感受性(Hypersensitive Reaction, HR)、すなわち、病原体に対する全身性の抵抗性を誘導しうる。植物はまた、大気中の酸素と二酸化炭素の相対量の決定に重要な役割を果たす。最近、大気中のこれらの物質が気候に重要な役割を持つことを示す証拠が蓄積されている。

28. 植物は環境中で多くの役割を果たしており、多数の直接的、間接的メカニズムにより他の生物に影響を与える。リスク/安全性評価者は、トランスジェニック植物の安全性を検討するに際して、これらの相互作用が破壊される潜在性を評価する。

B.2. 微生物
B.2.1.  本作業グループの微生物への取り組み
29. OECDはGM微生物について、何年にもわたり検討を行ってきた。最初は封じ込め施設での利用に焦点をあてていたが、最近は環境への放出に、より大きな力点が置かれている。GM微生物の環境放出はトランスジェニック植物に比較して一般的でないが、作業グループはいくつかの種の微生物に関するコンセンサス文書を作成している(例えばOECD、1996)。これらは包括的なものであり、規制者に役だつ多くの知見を集積している。植物のコンセンサス文書と同様、これらのコンセンサス文書は遺伝子操作の対象となる、あるいはその可能性の高い微生物の生物学に関する情報を含んでいる。しかし、このような情報の集積は微生物については、いくつかの科学的理由から本来的に難しい。また、ある種の安全上の問題についてはまだ議論が行われている。作業グループは現在、GM微生物のリスク/安全性評価にどのように取り組むのが最善かについて検討を行っている。

30. 将来の活動を検討する際、作業グループは形質および機能的遺伝子に加えて、現在行われている、微生物、ベクター構築物、マーカー遺伝子のデータベース作成作業について検討する予定である。また、重要な微生物グループの分類を明らかにするための作業についても検討する。同様に、クローン構造や遺伝子の水平伝達に関連する情報も必要である。微生物のモニタリングに用いるサンプリング、検出、同定法の作成も継続し、作業グループが将来の活動を計画する際に評価される。これは、GM微生物の環境リスク/安全性評価のための規準を作成するという目標に貢献するであろう。

31. 微生物農薬など、関連の用途に利用される微生物の審査で得られた情報を考慮に入れることも重要である。

B.2.2. 一般的生物学
32. 微生物は至る所に存在する。微生物は土壌のバイオマスの90%をしめる。微生物以外のすべての生物(macroorganism)は片利共生する微生物を持っている。ヒトの身体にはヒトの身体を構成している細胞の数と同数ほどの微生物がいる。微生物は水、大気、岩石にも検出され、地球のマントルの何千フィートも深い場所にも検出される。あるものは極限条件にも適応しており、温泉や、ごく低温度、高圧下、および他の殆どの生物が死んでしまうような条件にも見いだされる。

33. 微生物は、炭素、窒素、リン、硫黄、および酸素などの重要な元素を循環させるため、地球上の生命のバランス維持に極めて重要である。

34. ヒトや動物は特定の重要な機能を微生物に依存している。ヒトの消化管中の微生物は消化プロセスや特定のビタミンの獲得に必要である。皮膚の上の微生物は病原菌や疾患から身体を守る。しかし、微生物はヒト、動物、植物の病気の原因にもなりうる。

35. ヒトは何千年もの間、微生物を食品の製造に利用してきた。微生物はまた、マグサなどの飼料の生産や、工業利用(例えば精密化学品や原料化学品の製造)にも重要である。これらの利用は何らかの封じ込め条件下で、特別の条件や監視下で行われる。これに対して、土壌のような開放的な環境中に新たな微生物を定着させることは難しい。しかし、農業において、植物の生育の限界栄養素となることの多い窒素を固定するために、特別な微生物が使用されている。

36. 微生物は環境中で多くの役割を果たしており、多くの直接的、間接的なメカニズムにより他の生物に影響を与える可能性がある。これらのメカニズムの多くはいまだに研究の対象となっており、エコシステム中の全微生物のうちのごく一部の微生物の役割しか明らかになっていない。
微生物は環境にインパクトを持ちうるが、長期的にも短期的にも変動する可能性のある非常に複雑な微生物間相互作用系における変化を検出するのは、現在なお困難である。評価者はGM微生物の安全性を検討する際、重要な環境相互作用の破壊が起こる潜在性について、これまでの知見からの類推により、あるいは安全な利用の歴史に関する知識に基づいて、評価しなければならないことが多い。

B.3.動物
37. トランスジェニック動物はまだ商業利用されていないが、動物を用いたいくつかの利用が開発されている。特に、遺伝子操作の水産養殖への利用については世界的に関心が持たれており(例えば、Chen & Powers,1990 )、遺伝子改変サケが商業利用に近づいている。動物の遺伝子改変は作業グループにとって優先順位が高くないが、OECDは水産養殖の環境インパクトに関する最初の研究を行っており(OECD,1996)、これがこの分野における将来の活動の基礎となりうる。

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