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技術革命に必要なガバナンスの方法は・・・

4.責任ある政策の中心要素:ライフサイエンスとバイオテクノロジーのガバナンス

 ライフサイエンスとバイオテクノロジーおよびその影響を受ける根本的価値に関する一般の議論からは、急速に展開するこの技術を管理する首尾一貫した責任ある政策の必要性が浮き彫りになる。主な利害関係者はすべて、ガバナンスの重要性を強調してきた。つまり、公的当局が政策と行動を準備し、決定し、実施し、説明する方法に注意が向けられていた。

 当委員会は次の五つの行動方針に沿って、ライフサイエンスとバイオテクノロジーに対して最高水準のガバナンスを適用することを握案する。

  • 社会的な対話と精査をもってライフサイエンスとバイオテクノロジーの発展を導くこと
  • 倫理的価値観と社会的目標に沿って、ライフサイエンスとバイオテクノロジーを責任ある方法で開発すること
  • 十分な情報に基づいた選択により、需要主導型の応用を推進すること
  • 科学に基づいた規制的監督をすることで、市民の信頼を高めること
  • 共同体の単一市場と国際的な義務を守るため、基本的な規制原則と法的義務を尊重すること。


包括的で十分な情報に基づく行動化された対話

4.1.社会的な精査と対話

 ライフサイエンスとバイオテクノロジーは市民の関心を大きく集め、市民によるかなりの議論も巻き起こした。当委員会は、こうした社会的議論を、市民としての責任と関与の現れとして歓迎する。ライフサイエンスとバイオテクノロジーは常に社会的な対話とともにあり、またそれによって継続して導かれなければならない。

 我々の民主社会における対話は、包括的で総合的で、十分な情報に基づいた構造化された対話でなければならない。建設的な対話には、参加者相互の尊重、斬新的な方法、そして時間が必要である。対話の構造は利害関係者の同意を得たうえで、(たとえばよりよい情報の提供、相亙の理解などの面で)向上していけるようなものにしなければならない。経験からは、対話が地方レベル、各国レベル、国際レベルで行われることがいかに重要かも示されており、当委員会は、各国および各地の主体が適切な取り組みを行うよう要請する。

 対話は、すべての利害開係者に開かれたものでなければならない。公的当局は、限られた資源しか持たない利害関係者が確実に参加できるように助力しなければならない。経済的利益がかかっている事業体、産業界、利用者だけでなく科学界も、積極的な参加のためにそれぞれの責任を負わなければならない。当委員会はこれらの関係者に対して、市民の懸念に対処するよう要請する。たとえばそれは、それぞれのビジョン、方針、倫理基準をガラス張りにすることによって行う。

 意義ある対話をするには、十分な公的情報が得られることが不可欠である。公的情報を十分に提供するには、焦点を絞った積極的な取り組みが必要である。特に重要なのは、幅広い市民からの情報ニーズを真摯に受けとめてそれに対処することである。我々はまた、対処しなければならない現実の聞題とそうではない問題とを区別して、バランスのとれた合理的な取り組みをしなければならない。




メリットと
デメリット
をバラン
スさせる


4.2.倫理的価値観と社会的目標に沿ったライフサイエンスとバイオテクノロジーの開発

 市民から幅広く受け入れられ支持されなければ、欧州におけるライフサイエンスとバイオテクノロジーの開発は議論を呼ぶことになり、利益を刈りとる時期は遅れ、競争力にも影響しかねない。

 欧州市民には、基本的価値観を軸にして、メリットとデメリットを複合的に比べる準備がしっかり整っており、それを行う能力もある。このことは、当委員会が実施した議論および市民との協議 (i)から示されている。市民の議論は意見が真二つに分かれることもあるが、意見の一致している点も数多く明らかになる。

 ライフサイエンスとバイオテクノロジーのメリットだとはっきり分かるものがあれば、世論は決定的にそれに左右される。ユーロバロメータの調査では、医療の進歩を除けば、バイオテクノロジーに対する市民の期待はそう大きくないことが明らかになっている。また一部の応用については市民の間にかなりの不安もありその影響の分配とそれに伴うリスクヘの嫌悪感もあるという。

 軸となる多くの価値観と目標は幅広く支持されている。その中には、たとえば研究の自由、新しい知識の本質的な価値、病気や飢餓を救う道義上の責任などのように、問題の新技術の開発と応用をよしとする傾向にあるものもある。また、ライフサイエンスとバイオテクノロジーの開発と応用に関する判断基準と条件を明確にするように働きかけるものもある。それは特に、倫理的影響と社会的影響を勘案する必要性ならびに、意思決定、リスクの最小化および選択の自由における透明性と説明責任の重要性である。

 したがって、市民と利害関係者がこれらの複雑な間題に対する理解を深めて正しく評価できるよう情報と対話を支援し、社会のさまざまな層における影響の分配を含めて、メリットとデメリットを評価する方法と判断基準を整えることがきわめて重要である。

 我々の民主社会は、特に人間の生命と尊厳の尊重を認めることにより、基本的権利に関する憲章の中でEUの認めた基本的価値観を確実に尊重しながら、ライフサイエンスとバイオテクノロジーの開発と応用が行われるようにするために、必要な保護を提供しなければならない。当委員会はまた、ヒト生植クローニングに対する研究への資金供与も禁止している。国連に提出された、ヒト生殖クローニング禁止に関するする世界条約のための独仏提案を支持すべきである。幹細砲研究などの他の課題については、今後も注目して議論していくことが明らかに必要である。欧州は、消費者および事業体が遺伝子組換え食品に関して選択の自由を有することの重要性についても明確な立場をとっており、欧州の農法を保護する必要性に関して、社会の幅広い合意を確立してきた。

 しかしながら科学技術の進歩は、今後も継続して、倫理的あるいは社会的に新たな問題を投げかけてくるはずである。当委員会はこうした問題に対して、現在および将来の世代と諸外国に対する道義的責任を勘案しながら、前向きに幅広い視点から対処していかなければならないと考えている。
 我々は、自らの基本的価値観が侵害されるときだけ防御に甘んじてはならない。

 以上のような問題については、規制的な製品承認という狭い意味の中で適切に対処することはできない。もっと柔軟に、将来を見越して対拠することが必要である。欧州は、優先順位を定める複雑なプロセスに市民が貢献できるように、メリットとデメリットに焦点を絞った事実調査を行うとともに、市民との活発な対話を続けていくことが必要である。当委員会は、科学と新技術における倫理的側面を強化するために、その科学・社会イニシアティブ (ii)との関連で、すでに一連の行動案を提示している。

 欧州は、開発の前線に立つために、将来を見越した先見性のある分析能力とそれに必要な専門知識を持たなければならない。そうすることで、政策担当者にとっても一般市民にとっても複雑になりがちな問題を明確にすることができ、そのような問題を科学的、社会経済的な背景の中に据えることができるのである。当委員会は、欧州科学新技術倫理グループが1990年代初期の創設以来果たしてきた重要な役割を歓迎し、本戦略の一環として、同グループの役割を強化し、各国の倫理団体間のネットワーク作りを強化することを提案する。このため、本共同体の他の諸機関による対象者を絞った協議を行うことを考えている。

 さらに、透明性、説明責任、公共政策策定における参力型の取り組みを強化しなければならない。これらの目的は当委員会の『欧州の統治に関する白書 (iii)』の目的とも合致し、そこで提案されている行動を通して進められることになる。




消費者と事業体に対して十分な情報に基づく選択肢を与える


4.3.十分な情報に基づいた選択による需要主導型の応用

 ライフサイエンスとバイオテクノロジーの開発と利用に対してどのような規制的監督がとられているかには、社会がどのような選択をしたかが現れている。規制その他の公的政策措置はルールと諸条件を定めるものである。このルールと諸条件に基づいて、ライフサイエンスとバイオテクノロジーを開発でき、応用できるのである。つまり規制は、市場メカニズムがその公式目的達成のために有効に働くようにするものでなければならない。これが欧州の表示義務づけ政策の目的なのである。この政策は、消費者の選好が確実に生産者の供給変更へのインセンティブとなって現れるようにすることを目的としている。

 1990年以来の長きにわたる議論の末に、本共同体は科学に基づく規制を行うことを選択した。この規制方法では、すべての応用、環境への放出あるいは販売に先立ち、遺伝子組換え生物のあらゆる商業利用が個別に事前公開審査に付され、安全性の承認を受ける。この方法を採用した結果として、遺伝子組換え生物に関する改正枠組み法が採択された。同法は2002年10月に発効する予定である。この新法は、停止していた新製品承認手続きを再開するための十分な根拠を提供する。

  • 事前販売承認が必要な部門に関する本共同体の規制方法の下では、製品がヒトと動物の健康や環境に与えうるリスクを科学的に評価し、検討中の事項にとって適切とされる他の要因を勘案した後に、製品への承認が与えられる。この規制方法の論理では、製品が生き残るかどうかを決定するのは市場である。ただし、消費者が選択権を行使し、それによって供給業者に明確なシグナルを送れるように、市場のメカニズムが有効に働くよう確保することが不可欠である。この5年間、欧州は表示を通じて、消費者が十分な情報に基づいた選択をできるようにするための解決策を他に先駆けて実施してきた。こうした取り組みを完了し、応用段階に入ることが急務である。

  • 事業体の選択の自由という原則を全面的に取りいれ、欧州の農業における持続可能性と多様性を保護するには、公的当局が農民その他の民間の主体と協力し、遺伝子組換えを排除することなく、さまざまな農法が共存できるように、農業対策その他の措置を策定することが必要である。

4.4.科学に基づいた規制的監賢への信頼

 安全性が問題になる場合、共同体の法律は科学に基づくことになり、個々の決定に対する法律の適用は予防原則に従って行われる (iv)。欧州医薬品審査庁は、科学的助言についての高い基準を定めて、有効なリスク情報提供を行っている成功例である。欧州食品安全庁(EFSA)が設立されれば、この分野ですでに高水準にある科学的助言の優秀性、独立性、透明性はさらに高められ、リスク情報提供に新たな重点が加わることになる。欧州食品安全庁は遺伝子組換え生物、遺伝子組換え食品、遺伝子組換え飼料の環境影響、ヒトおよび動物への健康影響の科学評価を担当する予定である。また、アグリフード〔農産物〕生産へのバイオテクノロジー応用から生じうるリスクなど、新たに生じるリスクを特定する先見的な責任も負う。以上は、市民が既存の食品、医薬品、さらには新たな応用の安全性に対する規制的監督の科学的根拠を信頼できるようにするために、欠かせない役割である。市民の信頼と理解を得ることを、常に念頭に置かなければならない。

  • 科学が我々の社会で果たす役割に対する市民の信頼を高めることは、基本的に必要である。当委員会は、科学的文化を振興し、科学的研究課題の設定にあたって市民のニ一ズをしっかりと考慮し、科学を欧州政策の中心に据えるために、「科学と社会」に対する行動計面を提案した。公的当局、事業体、科学界は、科学的知識が絶えず進歩しており、そのために我々の基準点を常に押しあげているということを含めて、重要な問題に関連する知識を積極的に提供し、同問題への理解を促進しなければならない。さらにまた、新たな病気や薬剤耐性の病気が出てきた場合や現在の農法が持続不能な分野において、行動をとらなかった場合のリスクを評価することも、市民の理解と政策策定のプロセスの重要な部分である。

  • バイオテクノロジー発明には、巨額の資本投資と、長期にわたる開発期間と、規制当局の包括的な承認が必要である、効果的な特許保護は、研究開発と技術革新にとって重要なインセンティブであり、投資に対する利益を保証する重要な手段である。また特許公報での情報開示は、バイオテクノロジー全体の発展にとって重要になっている。科学は急速に進歩しているため、知的所有権に関する法規を常に監視する必要がある。特許制度が研究者と企業のニーズを満たしているかどうかについて、定期的に評価しなければならない。この点でECおよびその加盟国は、ライフサイエンス分野での新規性、発明、有用性の解釈が裁判所と特許庁ののみに任されることのないよう、万全を期さなければならない。国際的には、工業化諸国の特許保護を共通の土俵に乗せる方向で努力する必要がある。この問題について、国際的対話を進めるための措置を講じる必要がある。

  • これらの新技術に関する共同体規制の根拠をより透明にして、その情報を広く普及しなければならない。たとえば我々は、規制機関がリスクをどう扱うのか、つまり、潜在的リスク、科学的不確実性(リスクゼロの不在、予防原則の適用など)、相対的リスクの評価、リスク分析の各段階の役割、監視や保護といったリスク管理手段の役割、それら手段の厳しさとリスクとの比例性をどう扱うのかを、はっきりと知っていなければならない。また我々は、法的確実性と予測可能性の重要性を強調すると同時に、正当な場合には規制上の決定を取り消しできること、およびリスク分析手法の国際的とりまとめと予測的リスク分析手法の開発に関する作業が現在進行中であることを強調しておかなければならない。市民の信頼を得るには、公的資金による研究で規制的監督を支援するものが特に重要である。

  • 『欧州の統治に関する自書』に提案されたいくつかの取り組みは、一般の信頼、それも特に、リスクガバナンスと専門知識の利用に関する開放性と説明責任の計画的改善面での信頼を高めることに関係している。

  • 欧州の規制的監督に対する信頼を得ることは公的当局の責任だが、それにはバイオテクノロジー産業、その他事業体、科学界、NGO、メディアといった他の利害関係者の責任ある参加も必要である。


ライフサイエンス規制の政策目的の調整

4.5.規制原則

 現在のところ共同体の規制は、バイオテクノロジー発明に対する特許付与、医薬品承認、遺伝子組換え微生物の閉鎖系使用、遺伝子組換え生物から成る製品または遺伝子組換え生物由来の製品(食品、飼料、種子など)の発売および賑売など、さまざまな側面に適用されている。この規制の枠組みは過去25年の間にしだいに形成されたものだが、大きな動きがあったのは最近のことである。
 共同体規制の整合牲、透明性、有効性を高めるため、当委員会は本共同体の規制活動が以下の原則を尊重することを提案する。

  • リスク管理と製品承認バイオテクノロジー製品がヒトや動植物の生命と環境にとって安全だと判明したならば、定められた規制原則と枠組みにしたがい、総合的な科学リスク評価に基づいて、それを承認する。科学的証拠が不十分であったり、決定的でなかったり、不確実であったりする場合、また起こりうるリスクが受け入れられないと判断される場合には、予防原則に基づいた管理措置をとらなければならない。選択した水準の保護を達成するため、リスク管理では、リスク評価の結果と検討中の事項にとって適切とされる他の要因を勘案しなければならない。承認手続きは透明でなければならず、その手続きの一環としてリスク評価を公表し、パブリックコメント募集用に利用できるようにしなければならない。リスク情報の提供は、リスク評価とリスク管理活動の欠かせない部分として必要である。

  • 域内市場の保護:域内市場の機能と法的確実性を確保するため、共同体の法律を起草し、その実行可能性と実効性の点を含め、整合性と有効性を確保するよう定期的に見直さなければならない。共同体の法律の実施と遵守状況は注意深く監視し、遵守上の問題が生じた場合には、常に、既存の手順に従い、透明かつ予測可能な方法により関係者間でそれに対処し解決しなければならない。

  • 比例性と消費者の選択:共同体の規制用件の厳しさは特定されたリスクの程度に比例し、共同体の国際的義務と一致しなければならない。当委員会の提案したとおり、共同体の法律は食品、資料または種子が遺伝子組換えである場合または遺伝子組換え生物に由来する場合に、消費者の選択を容易にするものでなければならない。

  • 予測可能性、近代化、影響評価:当委員会は、規制の予測可能性、透明性、質を向上させるために、定期更新型規制作業計画を定期的に発表しなければならない(第6項を参照)。影響評価のため、および現行方針と一致させるため、規制を定期的に見直し、科学技術の進歩に合わせて最新化するようにしなければならない。

(i) 当委員会はこれらのコメントをインターネットで発表する予定である。
(ii) COM(2001)714(2001年12月4日付)
(iii) COM(2001)428最終(2001年7月25日)
(iv) 予防原則に関する共同体の通達:COM(2000)1最終(2000年2月2日)、ニース欧州理事会の結論

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