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4. ウリ類

Henry M. Munger、Molly M. Kyle、Richard W. Robinson著


ウリ類には、ウリ科の3属に属する多くの種が含まれる。Cucumis属には、キュウリと多くの種類のメロンが含まれる。スイカはCitrullus属に属しており、また多様な種類のカボチャ類(スクワッシュとパンプキン)はCucurbita属の4つの栽培種に含まれる。ウリの仲間の各育種慣行および目的には、多くの共通する面があるが、これらの7つの種に見られる違いのために、まとまった議論を行なうことはできない。キュウリは、もっとも多くの遺伝子研究がされており、また品種改良ももっとも進んでいるため、ここではモデル種として利用することとする。他のウリの仲間については、より手短に説明し、それぞれの植物に特異的な育種目的や生殖質の供給源などの、キュウリとは異なる様式に重点を置いている。


I. キュウリ

キュウリ(Cucumis sativus L.)には、ウリ科の中でも他種とは異なる特徴がいくつかある。それらは、キュウリが世界中でもっとも広く栽培されており、もっとも栄養価が低く、もっとも遺伝子研究がなされており、そして特に病気抵抗性に関しては近年における品種改良がもっとも進んでいるという点である。またキュウリは、生活環がもっとも短く、そして1株あたりが必要とする空間ももっとも小さい。

A. キュウリの特性

a) 原産地;主な生産地域

この種はアジアの中のおそらくインドがその起源であり、現在では世界のすべての地域で栽培されている。

b) 遺伝学および細胞遺伝学的特性

キュウリは7対の染色体を有する。かつては4倍体が作成されてきたが、何の利点も見つからなかった。キュウリと交雑可能な近縁種はない。インドで発見された雑草種C. hardwickiiは、もとはキュウリと別の種であると記載されていたが、栽培キュウリとの間に完全な稔性交雑を行なうために、今では同じ種であると考えられている。C. Sativusは、遺伝的変異性が極めて大きいので、特に熱帯諸国では、優れた品種を作成する目的として、ほとんど活用されてこなかった

c) 生殖質の移動についての植物衛生学的検討

ウリの仲間には、種子伝搬性の病気がほとんどないので、生殖質の移動について植物衛生学的な検討が加えられたことは(多少はあるかも知れないが)ほとんどない。スクワッシュおよびメロンについての主な懸念は、スクワッシュ・モザイク・ウイルスの種子伝搬性の感染である。ウリハムシが蔓延している地域では、ウリハムシもまたこのウイルスを媒介するので、この感染は特に深刻である。ウリの仲間の種子輸入に対して、いくつかの国では規制を設けているものの、アメリカ合衆国では一切の規制を行っていない。

d) 現在の最終用途

キュウリの栽培地域ではどこでも、熟す前の果実を生で食し、また温帯気候の地域ではピクルスにして大量に保存する。

毒物学

ククルビタシンは、多くのウリの仲間で見つかっている苦味に関係する化合物の1群である。キュウリの体内におけるククルビタシンの形態は、Cucurbita属に見られるものと比較して、ヒトに対する毒性はより弱く、またその濃度もより低い。ククルビタシンが果実から検出されることはほとんどない。苦い果実を消費することにより、病気が引き起こされたという事例はまったく知られていない。アメリカで栽培されているほとんどの品種の幼苗には苦味があるが、より成熟した植物体からはこの苦味を検出するのは困難である。単一の劣性遺伝子biは、植物体から苦味をなくするが、このbiは植物体の果実が苦いという可能性を無くするだけでなく、ウリハムシによる害を受けにくくもしてくれる。しかし同時に、この苦味のない植物体は、ハダニによる害を受けやすくなってしまう。アメリカでは、多くの苦味のない品種が開発されてきたが、広く利用されていない。苦味のない品種は、むしろヨーロッパのキュウリの温室栽培において、より重要な作物となっている。
苦味のある果実の遺伝子は、インドの数種類の野生種や原始的なキュウリに含まれている。これらのキュウリは食すると健康被害をもたらす可能性がある。

環境要件

キュウリは、おそらくもっとも広範な適応力を有するウリ科植物であり、温帯域の最端から熱帯地方まで栽培されている。キュウリは、日長時間にはほとんど影響を受けず、また他の多くのウリの仲間より極端な温度の影響を受けにくい。しかしながら、土壌温度が低いと、冬季の温室栽培のキュウリに問題が生じる可能性がある。
おそらく、キュウリの病気への罹患しやすさが、そのいっそうの分布範囲の拡大を制限している最大の要因と見られている。アメリカのサウスカロライナ州、チャールストンにあるクレムソン大学の実験ステーションで育種されたPoinsett品種が、熱帯諸国で広く栽培されているが、そのひとつの理由が、炭疽病(Colletotrichum obiculae)、角斑病(Pseudomonas syringae)、ベト病(Pseudoperonospora cuberisis)、そしてウドンコ病(Sphaerotheca fulingenea)の4つの病気に対する抵抗性を有することである。褐斑病(Corynespora cassiicola)やいくつかのウイルス病(CMV、PRV-W=WMV1、WMV、ZYMVに対して弱いことから、この品種の実用性がある程度限定されてきたが、コーネル大学が11種類の病気に対する抵抗性を有するPoinsettを緊急にリリースし、また様々な種子会社が同様の改良を進めているので、こうした状況も打開されるであろう。

B. 現行の育種の実践

a) 育種の主要技術の解説

i) 基本育種

キュウリ類のほとんどは雌雄同株の開花習性をもつ。すなわち、同一株に雄花と雌花が別々に存在している。このことから、何の措置も施していない花のおよそ75パーセントが自然交雑を行なうので、この種の育種においては受粉管理が必要である。自家受粉および他家受粉は行なうのが容易であるが、労力がかなりかかる。
キュウリの品種は、F1雑種品種と放任受粉品種の2つの主な範疇に分類される。現代の放任受粉品種は、同系交雑を行なっても生命力がほとんど、またはまったく無くならないので、本質的に近交系であり、そして同系が1品種としてや、また雑種品種の親として直接利用されることも珍しくない。1940年代のアメリカにおいて初めて作出された雑種は、雌花ひとつひとつに第2の親である雄花の花粉を手作業で受粉して作成された。代替手順の1つとして、雌性の親に雄花ができないようにするために、エテフォンの使用が提案されたが、雌ずい群(すべて雌)開花型が手に入るようになり、またF1種子の生産コストが劇的に減少したために、この手法が大規模に利用されるに至らなかった。
遺伝的に雌である幼苗にジベルリン酸処理または硝酸銀処理を施すと、雄花が誘導され、E遺伝子の純系の種子ロットが維持される。雌雄同株(ff)である第2の親とともに間植する場合は、その雌ずい群の親(FF)から収穫した種子も雌ずい群(Ff)となる。なぜなら、ほとんどの条件下でこの形質は完全優性であるためである。そのため受粉を保証するために、雄花を作る品種を雌ずい群のF1と混合しなければならない(±10パーセント)。雌ずい群の雑種は、放任受粉品種と比較して、幾分産生が早く、またより集中しているが、市場向きの「総」収穫量が多いにもかかわらず、市場向きでない果実を作る「割合」が高いことが多い。純雑種の活力が高い他の作物と異なり、成熟度の早さや濃縮性が重要ではなく、さらに、種子コストが検討されねばならない場合には、放任受粉品種が依然として重要視される地域がある。

ii) 品種開発

キュウリにおいては、「放任受粉」、「近交系」、「純粋種の育種」、そして「非雑種」などの品種呼称は本質的に交換することが可能である。これらは、系統育種法、戻し交雑法、あるいはこの2方法を組み合わせることにより開発される。系統育種法では、両親が互いに欠いているよい特質を補い合うために交雑を行なう。引き続いての分離世代の中で、両親の良い特質を組み合わせた植物体が選抜される。望ましい植物体の自家受粉は不可欠であり、また開花期には選抜できない形質もあるため、最終的に保存されるよりも多くの株について、手作業で受粉を行なわねばならない。この手順は、新しい組合せが検査のために十分な安定性を獲得するまで、通常は交雑後の4〜6世代まで続けられる。
あまり望ましくない親の1または数個の形質を加えることにより、多くの良い特質を有する品種を改良しようとするときに、特に追加しようとする性質が単に遺伝性である場合には、戻し交雑法が有用である。初回の交雑後に作られる世代を、改良する品種と交雑(反復交雑親)して、各世代で行われる選抜で供与親からの形質が加えられる。4〜6回の戻し交雑を行った後には、供与親から加えられた遺伝子を保持しながら、その母集団はより望ましい親の遺伝子の95〜99%を受け継いでいる。自家受粉をその後の2〜3世代に対して実施して、導入された形質の純粋種を作る。この手法は、もっとも予測しやすい育種法であり、必要な植物および受粉回数が比較的少なく、そして1年間に1世代以上を栽培することが可能な地域が利用できれば、迅速に実施することができる。潜在的新品種が戻し交雑法で育種された場合には、その特性のほとんどは知られたものであるため、必要となる検査はもっと少ない。

b) 育種の主要目的

育種の共通の目的は、早生性、高収穫量、見た目の良さ、そして病気への抵抗性である。ピクルスに関しては、加工品質、パリパリ感、房の大きさ、および機械での収穫に対する適応性などのさらなる目的が加わる。キュウリは、栄養価を目的としては栽培されていない。味や食感における品質の違いはきちんと定義されていないため、分離用材料を評価することはほぼ不可能である。品質や適応性の点で条件を満たしていることがわかっている品種は、より容易に選択することが可能となるように改良を加える一方で、戻し交雑プログラムの中でその品種を繰り返し利用することにより、最良の改良がなされる。
早生性は、早期に雌花をつける株を選抜するか、あるいは、雌ずい群の雑種を作ることによって改良することが可能である。病気などの要因が株の潜在的な収穫量の発現を制限するような場合は、収穫量を改良することは困難である。キュウリに関しては、病気に対する抵抗性を与えることにより、多くの区域で最大収穫量の改善が実施されてきた。
戻し交雑法を行なうことにより、雌ずい群性開花(1優性)、苦味のない葉(1劣性)、Cladosporium cucumerinumによって引き起こされる黒星病に対する抵抗性(1優性)、ウドンコ病に対する抵抗性(2または3劣性)、CladosporiumおよびUlocladiumに対する抵抗性(両方とも1優性)、ZYMVおよびWMVに対する抵抗性(2つの連鎖した優性遺伝子)、そしてPRVに対する抵抗性(1優性)などの遺伝子を容易に、かつ素早く導入することができる。それよりも幾分導入が難しい遺伝子は、CMVに対する抵抗性(高い抵抗性のために必要な2または3の部分的に優勢な遺伝子)、ベト病に対する抵抗性(評価困難)、炭疽病に対する抵抗性(1種類以上あるために、評価が困難かつ複雑)、そして角斑病に対する抵抗性である。キュウリには例外的な数の関連抵抗性が見られる。ウドンコ病に対する抵抗性を得るために選抜を行なうと、一般にベト病に対する抵抗性がいくらか向上し、またベト病に対する抵抗性はウドンコ病に対する抵抗性をある程度向上させる。CorynesporaUlocladiumに対する抵抗性は、双方が同じ遺伝子に制御されているように見えるが、アメリカのほとんどの品種では、その遺伝子はウドンコ病への羅病性と連鎖してきた。黒星病に対する抵抗性を示す遺伝子は、Fusariumに対する抵抗性をも与えると考えられている。
アメリカの古い品種において見つかった黒星病に対する抵抗性を除いて、ほとんどの抵抗性は、インド、中国、そして日本から導入されてきた。これらの植物体が一様の抵抗性を示すことは少なく、また望ましくない性質と組み合わさった抵抗性を有する可能性がある。抵抗性付与のために最良な供給源を探索する過程において、種子会社や、積極的にキュウリを育種している一般の種子育種家から入手できる市販品種、および新しい生殖質を評価するべきである。またこれらの育種家は、抵抗性試験のための現在の最良の方法に関する情報も提供することができる。
ベト病とつる枯れ病(Didymella bryoniae)に対するより高レベルの抵抗性など、いくつかの病気に対する抵抗性のさらに優れた供給源がいまだに求められている。また線虫に対する抵抗性を必要としている地域もある。

C) 試験方法

本スペースが限られているので、いくつかのウリの仲間における様々な育種目的のために利用されている試験方法を説明することはできない。ほとんどの育種法は、温室内および圃場で実施されており、実験施設内では比較的少ない。個々の目的についての試験法は、いくつかの一般参考文献の中でも説明されているが、多くは各種学術誌や、より非公式的な出版物の中で記載されている。後者の範疇では、1976年以来年1回出版されているCucurbit Genetics Cooperative Reports(ウリ科植物の遺伝学に関する共同報告書)が特に有用である。研究記録に加えて、各報告書には、多くの研究関係者とともに、会員の氏名、所在地、および電話番号が記載されている。現在の試験法についての最良の情報が、適切な会員との連絡を通して入手できる。
望ましい組合せの特性を比較的均一に持つような子孫が獲得できるようになれば、その後に、市場に出た場合を想定し、収穫によって評価を行なうことが大切である。キュウリの場合の収穫による評価には、大きさの小さいもののほうが、大きいものよりも価値が高いことがしばしばあるので、重量よりもむしろ市場向きの果実の数がよりよい判断基準となる。果実を摘んでいない株を観察するよりも、反復収穫の中で果実の型をよりよく評価することができる。4株〜6株の単回収穫を繰り返す作業により、多量の情報を得ることができるが、それはさらに年をおっての、あるいは場所を変えて得られた結果を集計する場合には特に有用である。
他種に関しては、熟した果実を収穫し、計数し、重量を測り、そして市場等級ごとにあるいは市場向きの収穫物として記録する。結果を集計する場合には、4株〜10株の単一プロットをすくなくとも2つの場所で、あるいは、2年間にわたり反復して、多量の情報を得ることができる。したがって、より良い子孫が反復試験に進むことができる。携帯用のレフラクトメータ(屈折計)を用いて可溶性固体を試験、および/または測定することで、品質評価を行なうことができる。収穫量と品質と同様に、外見もまたリリースや収穫試験に進む子孫の名前を決める上で関係してくるであろう。


II. メロン

A. メロンの特性

a) 原産地;多様性の中心地域

メロン(Cucumis melo L.)はアフリカ原産であり、この種内の多様性が途方もなく高い。この多様性が、多くの植物品種の命名法につながり、現在では群(グループ)と呼ばれているが、他のグループとわずかな差異しかないグループもあれば、国によって異なる名前で呼ばれているグループもある。

b) 分類学;遺伝学および細胞遺伝学的特性

以下はC. meloのグループ分けを単純化すると同時に、それらのグループをごく最近の取扱いよりもいっそう包括的にする試みである。

  1. C. melo cantaloupensis Naud.(カンタロープまたはマスクメロン):中間サイズの果実で、表面が網目模様、いぼ状、または鱗片状であり、果肉は通常オレンジ色であるが緑色の場合もあり、香りは芳香性または麝香性である。果実は熟すると裂開する。通常は雄花両性花同株(すなわち、植物体それぞれに雄花と完全花が両方あり、完全花は雄花の役割も雌花の役割もする)。このグループでは、Fusariumが原因の立ち枯れ病に対する抵抗性が発見されることも時折あるが、全般的には病気になりやすい。
  2. C. melo inodorus Naud.(冬メロン):表面はなめらかまたはしわがあり、通常果肉は白色または緑色で、麝香性の香りはしない。通常は大きく、熟するのが遅く、cantaloupensisよりも長く保存でき、そして熟しても裂開しない。通常は雄花両性花同株である。ウイルス病にかなり罹患しやすいが、Fusarium菌による立ち枯れ病に対する抵抗性を有する。
  3. 3. C. melo flexuosus Naud.(スネーク・メロン):スネーク・キュウリの異名であるが、スネーク・キュウリは混乱を引き起こしやすい名前なので避けるべきである。果肉は長型で細く、熟していない果実はキュウリの代用品として利用される。雌雄同株。おそらくほぼすべての他グループよりも、熱や寒さに対して強い耐性を有する。
  4. C. melo conomon Mak.(ピクルス・メロン、スウィート・メロン):果実は小さく、表面はなめらかで、白色の果肉で、熟すのが早く、一般に甘味や香りはほとんどない。しかし、このグループのメロンには、熟すると糖度が高くなる種類もあり、リンゴのように皮付きで食されるものもある。共につるが同じような外見で、キュウリ・モザイク・ウイルス病に対して共通して抵抗性を示す。雄花両性花同株。
  5. C. melo chito Naud.およびC. melo dudaim Naud.(マンゴー・メロン):C. melo chito Naud.にはvine peach(ツルモモ)や、pomegranate melon(ザクロ・メロン)の別名があり、C. melo dudaim Naud.にはQueen Anne’s Pocket melon(アン女王のポケット・メロン)の別名がある。これら2グループ間の違いは、出版物の説明でははっきりしない。長いつる状に小さな葉をもち、果実は小さく、そして雌雄同株の開花を行なう。このグループからはつる枯れ病、スイカ・モザイク・ウイルス病、そしておそらく他のウイルス病に対する抵抗性も発見されている。
  6. C. melo momordica(「ポン」メロンまたはスナップ・メロン):インドなどアジア諸国で栽培されており、他グループとはっきり区別される。果肉は白色または淡いオレンジ色で、糖度が低く、軟らかくかさかさしている。果実の表面はなめらかで、熟すにつれて裂けていき、ほぼ完熟するとばらばらになる。PI 371795およびPI 414723はこのグループに属し、アブラムシ、ズッキーニ・黄色・モザイク・ウイルス病、およびスイカ・モザイク・ウイルス病などに対する重要な抵抗性を示す一方で、キュウリ・モザイク・ウイルス病には非常に罹患しやすい。雌雄同株。このグループに属する多くの種類は、ウドンコ病に対する抵抗性を有する。
  7. C. melo agrestis Naud.細いつる状の野生型で、果実は小さく食すことができない。おそらくC. melo callosusおよびC. melo trigonusの別名である。このグループからはスイカ・モザイク・ウイルス病に対する抵抗性が発見されており、これが他の抵抗性の供給源となる可能性を探る試験は行う価値がある。

C. meloは12対の染色体を有しており、同数の染色体を有する他のCucumis種との交雑が試みられてきた。しかし交雑を行なうのは難しく、メロンへの有用な遺伝子導入はほとんど成功していない。品種改良に利用されていないこれらの種内の多様性は、キュウリよりもむしろ高い。

毒物学

ククルビタシンは、多くのメロン品種の若葉に含まれているが、有毒でもなく苦味もしない程度の少量が果実内にも産生される。栽培メロンの果実に含まれる毒性化合物が原因で病気になったという話は、われわれはまったく耳にしたことがない。野生のメロンであるC. melo agrestis(= callosus)は苦くて有毒な果実をもつ。

環境要件

メロンは、キュウリよりも太陽や熱の必要度が極めて厳しいが、安定した湿度供給をあまり必要としない。凍結温度よりも数度高いだけの低温で、その成長がかなり遅れ、低温な土壌では水の摂取も遅くなる。このためにしおれが起こり、急速な蒸散が起こるような晴天の直後に冷たい雲りの天気になると死ぬこともある。
メロンは、土壌の塩分が問題となるような多くの乾燥地帯で栽培されている。そのために、耐塩性について多くの研究がなされてきた。その結果、塩分条件下での選択に関する手がかりを示すような、品種間の差異が発見されてきた。アメリカの優良なカンタループの「Topmark」は、高い耐塩性を示す品種の1つである。

B. 現行の育種の実践および品種開発の研究

a) 育種の主要技術

グループ間の交雑種が完全な稔性を示すにもかかわらず、最近までほとんどの育種は、グループ内交雑だけで実施されてきた。あまり一般的に栽培されてこなかったグループには、はるかに注目に値するような重要かつ独特な性質がある。ほとんどの生殖質コレクションの中で、これらの性質は十分に示されていないが、病気抵抗性、あるいは、耐塩性などの形質の探索を行なうためには、すべての多様化したグループを利用するべきである。
ほとんどの市販されているメロンは、雄花両性花同株である。隣接株との間の交雑率は、わずか10パーセント程度である。望ましい株の割合が低い母集団における選抜では、自家受粉の管理は不可欠ではない。交雑が望まれる場合は、開花に先立つ蕾状期に、子房を有することで識別可能な完全花の除雄処理を行なうべきである。他家受粉にはいくつかの代替法がある。第一の方法は、多くの交雑が同一の雄性親を利用して行われた場合は、雄性の蕾は午後に摘み取り、乾燥を防ぐためにビニール袋やその他の容器に入れて室温で保管する。そして翌朝に、葯が裂開した後に、除雄した花にこの雄性親の花粉をブラシで塗る。第二の方法は、2〜3回だけの交雑を、ある雄性親を利用して行なう場合は、雄性の蕾はしっかりと閉じられているか、または隔離して、そして翌日にすぐに利用できるように葯が裂開した後に摘み取る。第三の方法は、雄花を上述のように準備して、翌朝の裂開時から蕾が午後に除雄されるまで冷蔵し、その後、その開花前の午後に受容性となっている完全花に直ちに受粉する。
すべての交雑を避けなければならない場合に、自家受粉を行なうためには、同一株上の雄性の蕾および完全の蕾を、開花前の午後の間、しっかりと閉じるか、または隔離する。多くの品種では、柱頭が十分に露出するように、完全花をいくらか除雄処理する必要がある。その日の残りの時間を昆虫から保護するために、受粉した花を袋かけするか、またはゼラチン製のカプセルの半分を用いて覆いしなければならない。
単一の雄性遺伝子は、雌雄同株開花を調節し、管理下の自家受粉および他家受粉の両方を単純化する。残念なことに、この遺伝子によって、果実が長細化し、網目が減り、そして貧弱な「やせ」がもたらされることが多い。この遺伝子と、望ましくない作用を克服する変更遺伝子を組み合わせるためには、多くの努力が必要であるが、合格レベルの雌雄同株型が、雑種品種の種子生産のために現在利用されている。
キュウリと同様に、メロンでも放任受粉品種、または雑種品種の選択が行われ、そして同じ育種慣行が適用されている。雑種の種子は、手作業での除雄処理が必要であったため、これまではかなり高価なものであった。また雑種種子は、特定雑種の早期成熟が重要な地域で主に利用されてきた。近年において、雑種品種の利用が明らかに増加しているようであるが、この傾向の度合いや理由は明白でない。おそらく良質の雌雄同株親が利用できることが重要であろう。
雌ずい群(すべて雌性)のメロンがあることが知られており、このメロンからは雄性不稔性を与える遺伝子を得ることができるか、いずれも今までのところは、雑種種子の生産において大幅には利用されてこなかった。

b) 育種の主要目的

育種の共通目的には、早生性、高糖度、適切な芳香性の風味や、形や色や大きさや網目模様などに対する市場の好みに合った外見、そして標的区域における重大な病気に対する抵抗性がある。これらの性質の多くは、生産地によって様々であり、また急激に変化しやすい表面上の特性である。糖度の高さ、および市場向きの収穫量の多さが常に望まれているが、多くの地域で病気がこの両者を制限する。そのため、多くのメロン育種家にとって、病気抵抗性は主要目的となっている。
いくつかの優性遺伝子は、ウドンコ病に対する抵抗性を与えるが、自己壊死に関係している遺伝子もあり、この遺伝子はウドンコ病よりもつる性植物に悪影響を与える可能性がある。PMR45の1 PMR品種の遺伝子は安全に利用することが可能であり、多くの生産地で有用な抵抗性を与えるように思われる。2 PMR品種が問題である場合には、OerlitaやTAM Uvaldeなどのテキサス品種は、自己壊死とはほとんど、またはまったく無関係な抵抗性を有する。
ベト病(Pseudoperonospora cubensis)に対する抵抗性を与える2つの相補優性遺伝子は、PI 124111から得られており、またAlternaria cucumerinaに対する抵抗性を与える単一優性遺伝子は、USDA系統のMR-1から入手できる。
様々なFusarium立ち枯れ病の種類に対する優性遺伝子がわかっており、戻し交雑によって容易に導入することができる。つる枯れ病に対する抵抗性を与える単一優性遺伝子が、PI 140471から発見されたとの報告があるが、このPIの高抵抗性は、著しい尽力にもかかわらず、市販品種には未だ導入できておらず、遺伝がより複雑であることが示唆される。
いくつかのアブラムシ伝達性のウイルスに対する抵抗性が、インドのメロンから見つかっている。パパイヤ輪点病ウイルス(以前はスイカ・モザイク・ウイルス1)に対する単一優性遺伝子が、現在では細かい網目模様がついたオレンジ色の果肉をもつ、アメリカ農務省のWMR29メロンから得ることができる。またこのウイルスに対する抵抗性は、PI 414723のいくつかの植物体に見られるズッキーニ・黄色・モザイク・ウイルスに対する抵抗性を与える優性遺伝子とともに見つかる可能性がある。スイカ・モザイク・ウイルス(以前はWMV2)に対する抵抗性も、このPIから発見されており、おそらく単一の優性遺伝子である。CMVに対する抵抗性がconomonグループから発見されており、これは部分的に優性である。高レベルの抵抗性を有するためには、すくなくとも3つの遺伝子が必要である。
アブラムシの個別種に対する抵抗性が、PI 414723から発見されているが、現在までのところ、成功した市販品種には付与されていない。その理由はおそらく、病気がメロン生産を著しく制限してしまうためであろう。所定の生産区域において、どの単一抵抗性がもっとも重要であるかを予測するのは困難であるため、複数の病気に対する抵抗性が緊急に求められている。


III. スクワッシュおよびパンプキン(カボチャ属の種)

A. カボチャ属の特性

a) 原産地および使用分布

Cucurbita属には、いくつかの栽培種が含まれるが、その起源はアメリカ大陸であり、現在では世界中で栽培されている。

b) 分類学

スクワッシュおよびパンプキンは4つの主要種であるC. pepoC. moschataC. mixta(現在ではO. argyrospermaと考えられている)、そしてC. maximaの個々の種内のいくつかの型に適用されている一般名である。ある区域でスクワッシュと呼ばれているものが、他の区域ではパンプキンと呼ばれていることもあるので、一般名は紛らわしい。「夏スクワッシュ」は通常C. pepoの果実の呼び名であり、「冬スクワッシュ」はこれら4種のすべての熟した果実の呼び名である。一般的にアメリカ合衆国で「パンプキン」と呼ばれているものは、装飾用目的、パイ用、あるいはあまり一般的ではないが家畜の飼料として利用されるあらゆる種の果実を意味する。いくつかの代表的な品種や、個々の種内に含まれる品種グループを以下に示す。

Cucurbita pepo パイやハロウィーンに飾るカボチャちょうちん、夏スクワッシュ、すなわち、非常に若い段階で食される果実(黄色ナタウリ、ココゼル、ズッキーニ、パティー・パン)、冬スクワッシュ(テーブル・クイーンまたはエイコーン)、装飾用ひょうたん
Cucurbita moschata バターナット・スクワッシュ、コガネ・ヘチマ・カボチャ、ケンタッキー・フィールド・パンプキン
Cucurbita mixta ジャパニーズ・パイ、緑縞コガネ・ヘチマ・カボチャ
Cucurbita maxima ハバード、デリシャス、ボストンメロウ(スクワッシュ)、クイーンズランド、ブルーパンプキン(オーストラリア)、大西洋ジャイアント・パンプキン
Cucurbita ficifolia イチジク葉ヘチマ(栽培多年生のみ、用途が極めて限定されている)

c) 遺伝学および細胞遺伝学的特性

4つの主な栽培種は、いずれも20対の染色体を有しているが、お互い進んで交雑を行なうことがない。多くの交雑を行っても、わずかな種子しか生産されず、その種子からできるのは部分的に稔性であるか、または自家不稔性の株である。これまでの交雑の成功例のほとんどは、C. pepo ´ C. moschataである。このような交雑を通して、低木の茂みを作る習性がC. moschataへ導入され、また病気抵抗性がC. pepoへと導入された。C. pepoの数品種は、C. moschataとの受粉を行なうと果実1つあたり数個の種子を作るが、他の栽培品種の交雑ではまったく種子が取れない。そのため、この交雑を試みる場合には、何種類かの品種を利用するべきである。
Cucurbitaに属するいくつかの非食用種は、ある種の栽培品種と簡単に交雑するが、それらの栽培品種は互いに交雑することはあまりない。C. andreanaおよびC. ecuadorensisは、C. maximaとの交雑を行なうと稔性雑種を作ることができ、そしてC. martineziiC. moschataと容易に交雑を行なうことができる。

d) 現在の最終用途

果実の果肉と同様に、種子を食す地域もあり、非常に栄養価が高い。

生殖のメカニズム

すべてのCucurbitaに属する種は、雌雄同株であり、どの株も、すくなくとも75パーセントの確率で周辺の株との間で自然交雑を行なう。したがって、ほとんどの育種の試みにおける選抜には、管理の下での自家受粉が必要である。同系交雑において目立った活力の喪失はなく、極めて均一な近交系が自身の品種、または雑種品種の親としての役割を果たす。雑種種子の大規模な生産は、親の列から雄花の芽を除去するか、あるいはエテフォンを散布して雄花の蕾が発生するのを防ぐことにより達成される。手作業による自家受粉または他家受粉は、メロンの項で記述した内容と類似であるが、スクワッシュの花それぞれに対する除雄処理は必要ないため、雌花の芽への受粉を考える必要は少ない。
雄性不稔を引き起こす遺伝子は、エジプトのC. pepoから発見され、そしてこの種における他の種類に導入された。雌性親の株の半数は稔性なので、これを除去しなければならないために、この遺伝子を雑種種子の生産に利用することは制限されていた。雄性不稔性もC. maximaから見つかっており、限られた範囲であるが、雑種種子の生産に利用されている。

毒物学

ある種のCucurbitaから発見されたククルビタシンは、他の栽培ウリ科植物に含まれるものよりも毒性が強く、また時として重篤な病気を引き起こす。このことは、いくつかのC. pepoの夏スクワッシュにおいても問題となっているが、その理由は、同じ種に苦い装飾用のヘチマが含まれており、種子生産において完全に分離されなければ、苦味の遺伝子の移入が始まる可能性があるためである。種子生産において数世代を作成した後に、自然な戻し交雑を行なうことにより、母集団とまったく同じ外見をした苦味のある植物を極めて低い割合で含むような母集団を作成することができる。
病気抵抗性の供給源として利用される野生種のいくつかは、苦い果実の遺伝子(Bt)を有しており、この遺伝子は、その後の交雑によって作成される初期世代から選抜されなければならない。苦い果実を有する植物を、子葉を味見することによって確実に検出することは不可能である。

環境要件

栽培種の中でも、C. maximaはもっともよく低温に適応しており、C. moschataおよびC. mixtaは高温に適応しており、一方C. pepoは広範囲の温度に適応している。しかし、いくつかのC. pepo品種は、生活環の初期に雌花のみを作ることによって低温に対処しているので、受粉が行なわれずに、早期の収穫が残念な結果になる可能性がある。
この属は日長時間の影響を受けやすい傾向があり、また特に野生型などのいくつかの型では、高緯度に移動させると開花が遅れる可能性がある。これらの開花時期は、年によって様々であることから、温度と日長時間との相互作用が示唆される。

B. 現行の育種の実践および品種開発

a) 育種の主要技術

他のウリの仲間との交雑については、主な選択肢は、強制的な同系交雑と戻し交雑法による系統の選抜である。戻し交雑法は、野生の交雑種から市販型に戻すために、ほぼ不可欠である。いずれの手順を踏んでも、雑種品種のための品種あるいは親のいずれかとして利用することが可能な、均一の純粋系となる。雑種のほとんどが、夏スクワッシュ(C. pepo)に利用されるが、そこでは夏スクワッシュは早期収穫できることが主な利点であり、同時に成長において低木を形成する習性が雑種種子の生産に都合がよいためである。雑種品種は、他種の冬スクワッシュにはあまり利用されていない。
Cucurbitaに特徴的な1育種慣行は、最近のいくつかの品種の開発に利用された集団選抜法である。展示を目的としたパンプキンの栽培家は、集団選抜法によっていつかの好ましい品種を作成してきた。この慣行は疑いなく、開発諸国において見つかっているいくつかの古くからの栽培改良品種の誕生に深く関わってきた。この方法では、もたらされる変化が遅くてもそれほど費用がかからず、現地の栽培条件や市場に適応する品種ができあがり、さらに、現地の種子生産を可能にしているので、奨励されるべきである。

b) 育種の主要目的

C. pepoは、その変化に富んだ形状や人気から、おそらくCucurbita属の中でもっとも広く栽培されている種であろう。またC. pepoは、病気による損失をもっとも受けやすく、その中から抵抗性はほとんど見つかっていない。したがって病気抵抗性は最優先事項である。ウドンコ病に対する優れた抵抗性(PMR)は、C. martineziiC. okeechobeensisと同じ)から発見されており、そして橋渡しの種としてC. moschataを用いて、C. pepoに導入された。この遺伝子は今や、戻し交雑を通してC. pepoのあらゆる品種に対してすぐに導入することが可能であり、ほとんどの圃場条件下で、満足のいくレベルの抵抗性を与えるような優性の単一遺伝子である。PMRは、C. pepoの冬スクワッシュの品質を向上させ、また装飾用パンプキンを腐りにくくする。この同じ種間材料は、遺伝がより複雑で、導入がより困難なキュウリ・モザイク・ウイルスに対する抵抗性も有している。C. martineziiもまたつる枯れ病に対する抵抗性を有している。
Provvidentiら(1984年)は、C. moschataの「Nigerian Local」の中から、CMV、PRV、WMV、そしてZYMVに対する抵抗性を発見した。これらの抵抗性の遺伝性は、十分に理解がなされていないが、ZYMVに対する抵抗性は、C. moschataの「Waltham Butternut」に導入されており、それは単一の優性遺伝子として機能するようである。ZYM抵抗性をC. pepoに導入することはより困難であるが、その一部の理由は、果実に症状が出ないことが葉に症状が出ないことと関係のない場合があるためである。2〜3年以内にPMRとともに複数のウイルス抵抗性を一連のC. pepoタイプに組み込むことについては、ほとんど疑いがない。
C. moschataは、C. pepoと比べてずっと病気に罹患しにくいが、おそらくアメリカでもっとも重要なCucurbitaである「Butternut」は、ウドンコ病やZYMVの被害を受けることがある。したがって、別の抵抗性を追加する動きが精力的に進行中である。
C. maximaC. pepoのように病気に罹患しにくいが、抵抗性は有用であり、R. W. RobinsonはC. ecuadorensisからいくつかのウイルスに対する抵抗性をC. maximaの「Golden Delicious」品種に導入した。
C. pepoを家庭の庭のように小さな栽培地で栽培する場合は、squash vine borerによって頻繁に大きな損失を被ることが多い。「Butternut」がこの昆虫に攻撃されたことがほとんどないことが長い間知られてきた。種間の母集団を通じて、この昆虫に対する抵抗性を導入する試みがなされたが、この目的を果たすためにはより広い栽培地が必要であり、その場合、効果的な選抜を可能にする十分に均一な蔓延が得られない。そのため現段階では、培養によってこの昆虫を育て人工的な蔓延を作り出すことは成功していない。
植物体には苦味があるが果実は苦くないということが、キュウリと同じようにC. pepoにも見られる。苦味のある植物品種は苦くない品種よりもウリハムシによる被害が大きく、苦い品種から苦くない品種への変換が、主要な候補としてズッキーニ型を用いて取り組まれている。


IV. スイカ

A. スイカの特性

長年、スイカはCitrullus vulgarisとして分類されてきたが、現在考えられている正しい名前はCitrullus lanatusである。スイカはアフリカ原産であり、ここからはいくつかの関連種も分布している。今やスイカは世界中で重要な作物であり、特に熱帯地方や亜熱帯地方ではそうである。いくつかの地域では種子も果実の果肉同様に食されている。C. lanatusは、アフリカ北部で発見された苦い果実を持つ多年生植物C. colocynthisと容易に交雑が可能である。C. colocynthisは病気抵抗性の供給源の1つであるが、非栽培地にあまりにも近い場所でスイカの種子生産が試みられる場合、その花粉から苦味のある雑種ができる可能性がある。両種は11対の染色体を有する。

生殖のメカニズム

ほとんどのスイカは雌雄同株(雄花と雌花が分かれている)が、雄花両性花同株性(雄花と完全花)のものも2~3種ある。これらは昆虫を介して天然受粉を行なうため、他家受粉を行なう率が高い。しかし、均一性を得るために同系交雑を行っても活力は失われない。管理下の自家受粉や他家受粉は、他のウリ科植物に関して記載されたことと同じ方法で行われる。雄性不稔性も発見されているが、現在までのところは、大規模な雑種種子生産に有用であるとは証明されていない。

毒物学

Citrullusおよび他のスイカとの自然交雑種の非食用種の果実に苦味があったとしても、苦い果実を食したことが原因の病気は報告されていない。誰もが摂取しそうな量のスイカに含まれるククルビタシンを摂取しても病気の原因となる十分な毒性を示さないことは明らかである。

環境要件

スイカは他のメロンと同様に、良質の生産を行なうためには比較的高い温度を必要とする。しかし、早生として早期に熟し、アメリカの最北州でC. meloとして十分に適応している品種もある。これらの早生品種は病気の影響を受けにくく、良質の果実生産において信頼できるものとなっているが、これらの州ではあまり栽培されていない。おそらくこの例外は、これらの品種が南部の州でより頼りにされており、北部で地元のメロンが販売される何週間も前に、南部から大量に入荷するという事実によって説明することができるであろう。この頃には、北部の消費者は他の果実のほうに興味を示してしまうのである。

B. 現行の育種の実践

a) 育種の主要技術

育種慣行は他のウリ科植物と同様であるが、1つだけ重要な例外がある。それは3倍体の雑種を利用して種無しスイカを作るということである。これらの雑種の種子親は、コルヒチン処理によって望ましい2倍体の染色体を倍加することにより得られる3倍体系である。適合した2倍体の雄性親は、その後に多数の実験を通して3倍体雑種を検査することにより同定される。2倍体の植物体は商業用の3倍体圃場に植えつけられねばならない。なぜなら、果実は2倍体花粉の刺激がなければ育たないためである。3倍体雑種の商業化は、他にもいくつかの要因によって遅れた。その種子は2倍体雑種の種子よりも何倍も高価で、高温でなければ発芽は困難である。それにもかかわらず、種無しスイカは台湾などのアジア諸国でかなりの量が生産されており、ある信頼できる推定によると、今ではアメリカ生産のおよそ7パーセントを3倍体が占めている。アメリカの種子会社の育種プログラムでは、3倍体に対する相当の労力が注がれている。
2倍体雑種品種は1980年代に重要品種としてかなり増加し、現在ではアメリカ生産の半量近くに利用されている。雄性不稔性は利用されていない。雑種種子は手作業での受粉、あるいは雌性親の列から雄花の芽を除去することにより生産される。

b) 育種の主要目的

Fusarium菌による立ち枯れ病に対する抵抗性は、今世紀大半におけるスイカ育種の主な目標であった。病気抵抗性品種の作成について、アメリカで初めて行われた組織的な取り組み「アメリカ農務省のW.A. Orton」では、1911年にFusarium抵抗性の「Conqueror」スイカをリリースした。その抵抗性の供給源は保存されていた非食用シトロンであった。それ以来、多くの育種プログラムを通じて、多くのFusarium抵抗性品種が作成された。遺伝研究は、この生物が様々な変異型を有しているために、また抵抗性がいくつかのほぼ劣性の遺伝子に支配されているために、複雑化している。しかし、変異型1に対する抵抗性に優性の遺伝子が1つ同定されている。
Glomerella cingulata var. obiculareによって引き起こされる炭疽病に対する抵抗性は、Fusarium抵抗性と同様に極めて重要である。「Charleston Grey」や「Crimson Sweet」は、多くの望ましい園芸的性質とともに両方の病気に対する抵抗性を有していたため、長い間アメリカの主要品種であった。
一方、病気抵抗性が同定されていない「Sugar Baby」は、アジアのいつかの地域で主要な品種であった。その果実は他のほとんどの品種より小さいにも関わらず、なぜこの品種がアジアで成功したのかについては明らかでない。
他の重要な目的としては、つる枯れ病に対する抵抗性、出荷に関する耐久性、対象市場に適した高糖度、好ましい果実サイズ、形、色、そして収穫を楽にする蔓の矮性習性がある。

C. 商業利用のための種子増産

望ましい系統が直接利用する品種または雑種品種を作成するための親として、リリースに適していると同定されたら、ウリ科植物の種子は急速に増産することができる。植物が広い空間とよい栽培条件を与えられた場合、1つ種子は1,000個以上に増える。ほとんどの野菜のように、ウリ科植物の商業生産用の種子は、通常、専門の種子会社から購入する。一般の野菜育種家は、このような会社に対して、時には無料で、時には種子の代金で、そして時には最終的に販売された種子量にもとづく特許権使用料で、少量の育種家種子を提供するのが一般的である。種子の品質を保証するための証明書が添付されることはほとんどなく、基本的には関与する種子会社が築いてきた信頼性によって保証される。
放任受粉によって作成されたウリ科植物品種の利点の1つは、雑種と比較すると、種子商からの種子が容易に入手できない場合には、種子が農家で増産できるということである。
一般の育種家や公共施設は、種子増産のメカニズムがどうであれ、必要に応じて種子商の植え付け用の保存種子を新しくし、商業的供給源の減少が疑われる場合に比較のための純系供給源を得るために、リリースする生存可能な純系種子を維持管理するべきである。

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