Johnie N. Jenkins著
A. 綿花の特性
a) 原産地;多様性の中心地域
綿花のGossypium種は、世界各地で数千年にわたって栽培されてきた。栽培されている綿花はいずれもADゲノムの異質倍数体であるG. hirsutum L.(AD1)もしくはG. barbadense L.(AD2)であるが、例外はインドにおいて小面積で栽培されているGossypium arboreum L.(A1の2倍体ゲノム)、アフリカおよびアジアの乾燥地帯で小面積に栽培されているG. herbaceum L.(A2の2倍体ゲノム)である。商業的に栽培されている綿花の優占種であるG. hirsutumの原産地は、北アメリカ、中央アメリカ、メキシコであり、超長繊維の商業的な綿花であるG. barbadenseの原産地は南アメリカである。インドにおけるG. arboreumの栽培記録は3000年前にも遡る。コロンブス前の綿花は、ブラジル、ペルー、メキシコ、中央アメリカでは重要であった。植民地時代の北アメリカでは、現在の米国綿花地帯の東部を占める地域において初めて栽培に成功した作物の1つが綿花であった。
b) 使用の地理的分布;主要生産地
世界で生産されている綿花の約90%はG. hirsutumで、三大生産国は米国(470万haで価値は51億ドル)、旧ソ連、中国(558万ha)である。またその他の多くの国でも生育されており、各国の経済に大きく貢献している。1990年の生産面積は、北アメリカおよび中央アメリカ(504万ha)、南アメリカ(350万ha)、ヨーロッパ(310万ha)、アフリカ(340万ha)、アジア、中近東、オセアニア(1,770万ha)で、世界の総生産面積は3330万haである(米国農務省、1991年)。中近東と同様、アフリカのほとんどの国で綿花を生産している。世界各地で綿花は主に綿花のリントのために利用されており、これは糸へと紡がれる。ほとんどの国では種子は副産物である。米国とごくわずかの国だけが種子の主要な商業的利用法を開発した。
カリフォルニア州のサンワキンバレーでは、Acala評議会によって繊維特性を承認された栽培品種のみが商業的生産を許可されている。そのため、カリフォルニアのこのバレーで生産される綿花はどれも高い均一な品質の繊維を持ち、市場では非常に高い値段で取引されている。米国では、ピマ綿花(超長繊維の綿花G. barbadenseの1タイプ)は主にアリゾナ州で栽培されているが、ニューメキシコ州とカリフォルニア州でも限られた面積ながら栽培されている。この超長繊維で高品質の綿花を管理している協同組合がスーピマ協会である。エジプトでも超長繊維の綿花を栽培しており、これはG. barbadenseである。また中国西部の新絳県でもG. barbadenseがかなりの規模で栽培されている。
c) 分類学的地位
綿花には39種があるが、リントと呼ばれる紡ぐことの可能な繊維を持つものは4種のみである。その他の野生種は、小低木の多年性で、種子には紡ぐことのできない短いファズのみを持つ傾向にある。
d) 遺伝学および細胞遺伝学的特性
異質倍数性の綿花種、G. hirsutumおよびG. barbadenseは、旧世界の2倍体Aゲノムと新世界の不明品種の二倍体Dゲノムが古代に自然交雑し、その後染色体が自然発生的に倍加して異質倍数体を形成した結果である。G. arboreumはA1の2倍体ゲノム、G. herbaceumはA2の2倍体ゲノムを持っている。
e) 生殖質の移動に関する現在の植物衛生学的検討
綿花生産における大きな問題は昆虫である。最も重大なのは、鱗翅目のイモムシ、異翅類メクラカメムシ科の数種の昆虫、メキシコワタミゾウムシ(Anthonomus grandis Boheman)、ワタアブラムシ(Aphis gossypii Glover)、タバココナジラミ(Bemisia tabaci(Grennadius))、オンシツコナジラミの仲間(Trialeurodes abutilonea (Haldeman))、ハダニ属(Tetranychus spp.)である。これらの害虫は一般的には殺虫剤によって管理されるが、これは生産コストへの大きな上乗せとなる。アブラムシおよびコナジラミは「蜜」と呼ばれる物質を分泌し、これは糖分が高くリントを粘着性にするため木綿紡糸において大きな問題である。メキシコワタミゾウムシは、メキシコ、北アメリカ、中央アメリカ、南アメリカの一部のみにおける害虫であるが、世界各地で他の数多くの害虫が発生している。
ワタアカミムシ(Pectinophera gossypiella (Saunders))および細菌性胴枯れ病(Xanthomonus malvacearum)などのある種の病気は、種子によって運ばれる可能性がある。そのため、多くの国際的な種子の移動と生殖質の交換では、植物検疫の証明書や酸による繊維の除去(硫酸によって種子を処理しファズを取り除くこと)が必要とされる。
f) 現在の最終用途
紡糸業界にとって重要な繊維の特性は、長さ、強さ、細さ、成熟度、伸長度、長さの均一性である。繊維あるいはリントが特定の基準を満たしていない場合には、商取引での利用価値はない。標準的な繊維測定および測定方法が世界的に使用されている。米国での取引では大量高速検品機(HVI)検査が必要であり、これは多くの国で利用されている。
生殖のメカニズム
a) 生殖および受粉の様式
綿花の花は、三角形の苞葉3枚に包まれており、苞葉に包まれた蕾はスクエアと呼ばれる。花粉は葯が開いた際に柱頭に直接注がれるか、虫によってそこまで運ばれる。綿花の花粉は重いため風媒はない。また花粉にはトゲがあるため、ミツバチ(Apis mellifera)などの授粉昆虫の多くはこれを好まない。綿花は「しばしば他家受粉する」作物品種と見なされているが、基本的には自家受粉作物品種として取り扱うことができる。他家受粉の割合は、授粉昆虫の集団に応じて様々である。害虫駆除で殺虫剤を徹底して使うことにより、他家受粉の規模は基本的に制限される。昆虫による他家受粉のみであるため、ほとんどの他家受粉は30m以内にある植物株が関与したものである。
b) 多年生対一年生
綿花は野生では多年生である。しかし、選抜、植物育種、管理を通して、一年生として振舞うように強制されている。熱帯および一部の温帯では、通常は茎の破壊などによる作物管理を通じて一年生として成長するよう強制しない限り、多年生で成長する。
c) 生殖質の拡散と生存のメカニズム
綿花の野生品種は「硬い種子」、つまり発芽まで1シーズン以上生存することができる種子を一般的にかなり高い割合で持つ。これが野生綿花の積極的な生存機序である。現代の栽培品種では、この特性は植物育種家たちの育種により取り除かれている。商取引では発芽品質を保つため、綿花種子を適正に取り扱われなければならない。湿度の高い環境では、圃場に残された種子は通常次のシーズンまで生存することができない。
d) 野生種との交雑能
綿花は他の作物や属のいかなるものとも近縁関係になく、通常の場合稔性があるのは品種内での交雑のみであるが、G. hirsutumとG. barbadenseの交雑のように種間での和合性があるものもある。細胞質を通じて遺伝される形質で、重要なものは知られていない。雄性不稔を生じる細胞質−核システムが報告されている。
米国の綿花が栽培されている地域には、商業的な綿花と稔性のある雑種を形成する野生品種あるいは近縁種は存在していない。ハワイには商業的な綿花と交雑受精する野生品種(G. tomentosum Nutt.)があるが、ハワイでは商業的な綿花の生産は行われていない。ハワイではいくつかのリサーチ区画で綿花が生育されており、圃場の隔離には特別慎重な配慮がおそらく払われているはずである。この地、および世界の一部の区域では、2倍体綿花との偶発的な異系交配が起こる可能性がある。いくつかの形質にとってこれは正当な懸念事項であるが、個別的に考慮されるべきである。
毒物学
綿花のリントあるいは繊維には、問題となるような毒物は存在していない。綿繊維沈着症は、紡糸業界で時おり問題となる肺疾患であるが、これは綿花のリントの生物学的汚染あるいはごみによる汚染と関連している可能性がある。綿花種子は、ゴシポールに代表されるフェノール類関連の構成物を含んでおり、反芻動物以外の飼料としての直接的な使用は限られている。種子に含まれるフェノール類の濃度は、一般的には反芻動物の飼料として使用しても問題とならないものである。種子に含まれるゴシポールのため、人間の食品としての直接的な使用は限られており、また油脂も変色する。しかし、商業的な方法で油脂を精製し人間の摂食用にすることは可能である。
生活環に関する環境要件
a) 綿花の分布拡大に対する気候的制限
多くの野生品種ならびに商業的な綿花の近縁種は日長時間に感受性があり、開花には短い日長と長い夜が必要である。このため、米国の綿花地帯など、多くの綿花生産地区では綿花は夏に開花しない。一般的に、商業的に栽培されている綿花は中日性、つまり日長時間に対して感受性がない。綿花は概して温帯および熱帯で栽培されており、作物の生産では約125〜160日間の生育期間が必要とされる。綿花栽培の北限は、北緯43°にあるロシアの砂漠の谷および北緯45°の中国であるが、米国では栽培範囲を北に拡大するための努力が払われている。
B. 品種および雑種開発を目的とした現行の育種の実践
a) 育種の主要計画/技術
i) 基本育種
米国の公共部門での育種プログラムでは、一時は品種よりも生殖質の開発に重きが置かれていた。しかし、現在ではほとんどの州立農業試験場の研究はどちらもカバーしている。米国農務省の農業研究サービス(ARS)のリサーチプログラムは、高リスクの研究と生殖質の開発に力を入れている。ARSは綿花の近縁野生品種からの害虫抵抗性および繊維の品質特性に関する育種前の研究に重きを置いている。さらに、G. hirsutumおよびG. barbadenseの生殖質のコレクション、維持、評価も、主にARSの責任である。
米国内でのピマ栽培品種の開発は、民間団体であるスーピマ協会が行っている。米国内にはG. hirsutum高地綿花の種子育種を商業的に行っている大会社がいくつかある。ある企業ではF2雑種に力を入れており、化学的な花粉発育阻止剤を使用して花を雄性不稔にし、圃場のハチミツコロニーによってF1種子の授粉を行っている。これらのF1種子はさらに1世代を進め、「雑種からのF2」として販売されている。米国の会社のほとんどが品種を販売しているが、米国以外では、綿花種子の育種および品種開発は、おおむね様々な政府当局の責任において行われている。
中国およびインドでは、除雄および授粉を人の手で行ってF1雑種を作成している。インドで作られている雑種のいくつかは、G. hirsutumとG. barbadenseの種間雑種である。綿花の雄性不稔、花粉の回復、圃場での授粉に関して満足できるシステムは現時点では存在していない。このことが、商業的利用に向けたF1雑種の開発を制限しており、そのため世界で取引されている綿花のほとんどは雑種ではなく栽培品種由来のものである。ii) 利用される技術
典型的な育種プログラムでは、選抜された親株あるいはF1雑種間で人の手による交雑が行われる。種子は自家受粉によりF2雑種へと世代を進められるが、これは個々の株で自家受粉をさせて後代の列に植えることによって行われる。片側が約20mの後代の列を1列または2列で使用し、選抜を実行するか、あるいはF5からF6にいたるまで列を一括収穫する。F5あるいはF6世代(基本的には純系)の後に、系統を複数の場所で評価するが、通常は2列の区画で実施される。株のタイプ、繊維の特性、リントの割合について選抜を初期の世代で行い、特定の最低基準を満たさない後代は排除される。ほとんどの品種は、F6あるいはF7世代で選抜されたいくつかの姉妹系統をまとめた製品である。
単一遺伝子の形質は、しばしば垂直な戻し交配と選抜のプログラムを通じて品種に戻し交配される。高地綿花の野生近縁種が、品種改良に必要な多様性に関する主要な貯蔵所の役割を果たしている。野生種G. hirsutumの生殖質コレクションは、改良された害虫抵抗性、繊維の品質、その他の形質の遺伝子を含んでいるが、これらは通常は適合していない系統で見つかり、収量も比較的低い。遺伝子工学およびDNA組み換え技術は、例えば害虫抵抗性や繊維品質の形質などで必要な多様性の供給源が利用可能となる方法を付け加えてくれる。綿花以外の供給源からの形質の例としては、Bacillus thuringiensisの遺伝子によって生成されるデルタエンドトキシンがあり、これは綿花につくイモムシの駆除に役立つ。
遺伝子組み換えで他の生物からの遺伝子を持っている綿花の系統については、現在米国で鱗翅目昆虫への抵抗性(Bacillus thuringiensis var. kurstakiからのデルタエンドトキシン遺伝子)および特定の殺虫剤(グリホサート剤およびブロモキシニル)への耐性を評価中である。現時点では、それぞれの形質がそれぞれ単一遺伝子の発現であるような形質に関心がもたれている。これらの遺伝子組み換え綿花系統の形質により、殺虫剤の使用量が低下し、また環境への損害がより少ない殺虫剤をより選択的に使用できるようになるはずである。
品種開発に必要な時間を遺伝子工学が顕著に短くすることはないだろうと思われる。しかし、Gossypium属で利用可能ではない遺伝子が品種改良のために使用できる機会を提供してくれる。遺伝子工学バイオテクノロジーは、綿花の改善に利用できる生殖質の基盤を拡大する重要な手段を提供してくれる。
b) 育種の主要目標
すべての商業的な育種プログラムで重要な目標は、収量および繊維品質である。害虫抵抗性の遺伝子も利用可能であれば、これらもプログラムへと組み込まれる。繊維品質への要求は、世界中で重要視されている。
c) 最重要育種目的のための試験
繊維の長さ、強度、均一性、ミクロネア(細さと成熟度の組み合わせ)の測定には装置が使用される。リントの収量と繊維の強度の間には逆相関関係があり、育種プログラムではいずれの増大も重要であるので、これは問題となっている。
d) 一般性能の評価
収量は複数の環境で測定され、通常、種子育種会社は品種の商業的な販売と生産に取りかかる前に、年数かける環境が20になるような組み合わせ(N年かけるY環境=20)で検査を行っている。
米国の育種プログラムでは改良された系統は優勢株と呼ばれるが、品種あるいは雑種として商業製品用に出される前に、複数の場所において国の監督のもと2年から3年にわたる評価検査を受ける。品種となることが予定されているほとんどすべての改良株は、アラバマ州タラシー(Tallassee)にある国立根瘤センチュウ/フザリウム属立ち枯れ病種苗場(National Root-knot Nematode/Fusarium Wilt Nursery)で少なくとも1年間にわたって評価を受ける。この種苗場はARSとアラバマ州農業試験場の共同プロジェクトとして運営されている。優良系統を商業的な品種にするかどうかの決定は、種子育種会社が下す。
C. 商業利用のための種子増産
a) 種子生産の段階
米国のほとんどの育種機関および商業的な会社は、品種のもととなる種子(育種家種子と呼ばれる)を、種子の品質と発芽能力を維持するように設定された環境制御の貯蔵室で数年にわたり数トンを保存する。毎年、この貯蔵庫から一定量の育種家種子が取り出され、これが原種子と呼ばれる新しい種子の増産のための核となる。原種子は1年間生育(増産)され、登録種子となる。登録種子は1年間増産され、栽培農家が播種するための保証種子として販売される。通常は最初の交雑から商取引で新しい品種が販売されるまでに10年間かかるが、特定の状況では雑種によりこの期間を短縮することが可能である。最終検査と種子生産の段階で、育種会社はそれぞれの場所からの収量および繊維品質のデータを詳細に検討する。
b) 隔離の実施
綿花は一般的に自家受粉であり、保証種子生産のほとんどは圃場での虫媒授粉が限られている場所で行われるため、花の色や葉の形など形態的に明らかな違いがない場合には、品種間で要求されている隔離は最小限のもの(5m)のみである。形態的に明らかな違いがある場合には、通常は品種間で536mの隔離が要求される。
c) 種子の保証および登録;植物品種の保護
保証種子栽培家による最終種子の産生段階では、圃場と綿繰り機は国の種子保証職員と種子育種会社の職員が取り締まる。
通常米国では、品種の種子は保証種子のクラスとして販売される。種子保証は国の様々な規制機関の責任であるが、会社は通常の場合、契約栽培農家を持ち、すべての種子は開発会社によってか、あるいは許可を得た栽培家や種子業者によって当該会社の品種及びブランド名をつけて販売される。公法91-577による植物品種保護の目的は、有性生殖で繁殖し雑種ではない新しい作物植物の品種を開発するために増大した商業的な投資を促進し保護するものであり、これは育種家の権利に対する懸念の増加が理由である。この法律を執行するために、米国農務省(USDA)の農業流通局(Agricultural Marketing Service)に植物品種の保護のための事務局が設けられた。
ミシシッピ州種子改良協会の「種子保証規定に関するハンドブック」によれば、保証種子の各クラスは次のように定義されている。育種家種子:「育種家種子とは、当該植物育種を開始したあるいは後援している機関、個人あるいはそれについて指名された人によって直接に管理される種子である。保証種子に適用されたように、育種家種子をもととして保証種子の他クラスの種子が産生される。育種家種子にタグ付けする場合は、白いタグで「育種家種子」とラベル付けされたものでなければならない。」 原種子(白いタグ):「原種子とは、育種家種子あるいは原種子の後代で、当該植物育種を開始したまたは後援している機関、個人あるいはそれについて指名された人による管理の下、生産された種子である。保証種子に適用されたように、原種子は、遺伝的な純粋性と同一性を維持するため、保証機関によって樹立された手順に則って生産された保証種子の1クラスである。原種子は、公式の種子保証機関によって発行された白いタグでタグ付けされるものとする。」 登録種子(紫のタグ):「登録種子とは、育種家種子あるいは原種子の後代で、遺伝的な純粋性と同一性を十分に維持するために保証機関によって受容された方法のもと取り扱われた種子である。登録種子は、公式の種子保証機関によって発行された紫のタグでタグ付けされるものとする。」 保証種子(青いタグ):「青いタグの保証種子は、育種家種子、原種子、登録種子の後代で、遺伝的な純粋性と同一性を十分に維持する方法で取り扱われ、保証機関に受容されたものであるものとする(例外を参照のこと:世代の制限)。」 世代の制限:「品種が増殖することのできる世代の数は、当該品種の育種開始者あるいは所有者が特定したものに制限され、次の例外の場合を除き、原種子から2世代を超えないものとする。A. 青いタグの保証種子クラスに関する保証の更新は、原種子が維持されていない古い品種については許可される場合がある。B. 青いタグの保証種子クラスにおける追加世代の生産は、当該品種の作付面積で必要とされる青いタグの保証種子の播種に原種子および登録種子の供給が適正でない、と保証機関が言明し緊急事態を宣言した場合に、1年ベースにおいてのみ許可される場合がある。当該品種について、育種を開始したあるいは後援した植物育種家、機関、企業、所有者がいる場合には、これの許可を得なければならない。緊急時の需要を満たすために追加された世代の青いタグの保証種子は、保証の更新の対象とはならない。」
d) 品種特性の監視
米国内で綿花を生産している州はいずれも、州による品種検査を毎年行っており、これには現行の市販の品種すべてが登録される。これらは複数の場所における検査である。さらに、商業的な種子育種会社が自社の品種について検査を行っている。結果は毎年公表され、栽培農家および普及サービス員によって、品種の選択や推奨に使用されている。また種子会社もこのデータを利用して自社品種の持続的な相対性能を決定する。綿花品種は「消耗する(run out)」対象とはなっていないが、害虫の新種や生物型が生まれ栽培品種の性能に影響を与える可能性がある。これらの品種収量検査により、この類の問題を検出することができる。
米国での国による品種評価検査は、綿花育種の進歩を測る意味においてのみ行われている。ARS、州立農業試験場、種子育種会社が共同でこれに当たっている。ARSは収量および繊維データを収集し、このデータを毎年公表している。これらの検査では、種子のゴシポールおよび油脂の含有量も測定される。公表データは、収量、ボールサイズ、リントの割合、種子のサイズ、種子のゴシポールおよび油脂含有量、繊維長、強度、ミクロネア、伸長度、均一性などである。すべての繊維計測は、同一の設備によって毎年行われる(Starlab、ノックスヴィル(Knoxville)、テネシー州)。繊維計測、データの公表と配布の費用はARSが出している。