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4. 要約

 本プロジェクトの目標は、バイオテクノロジーの新しい分子技術が開発したバイオ・ファティライザーに対する検査のスケール・アップ、および使用に伴う環境への安全性の問題を取り扱う原則、およびその実施規範を明らかにするものである。
 ファミリアリティーの概念は、序章で定義したように、リスク/安全性の分析やリスク・マネジメントについての必要不可欠な側面である。バイオ・ファティライザーのスケール・アップおよび使用に関する原則の枠組み内において、ファミリアリティーの概念は、検討中のシステムのあらゆる要素や段階において適用できうる。
 ファミリアリティーは、より新しい分子技術により改変されたバイオ・ファティライザーに対するリスク/安全性の分析に用いることができる知識および経験であり、潜在的悪影響の同定(ハザードの同定)、リスク・レベル(リスク・アセスメント)の指定、およびその最適な管理法の指示(リスク・マネジメント)を行う手順の一部である。
 バイオ・ファティライザーの新しい形質が示す大方の影響は、小規模フィールド試験時に判明するであろうが、それは、試験の設計や検出の有効性、実施可能なモニタリング方法に依存している。ただし、規模に依存する安全性影響などの幾つかの影響は、スケール・アップによってのみ明らかになるであろう。
 潜在的悪影響は、特殊な環境内でのバイオ・ファティライザーとして利用される微生物の生物学的性質/特性と、付随するリスクの分析を基にして同定される。悪影響の同定は、他の生物や環境(ファミリアリティー)について入手可能な情報や、特殊な微生物に関する調査を基礎とする場合もあろう。
 バイオ・ファティライザーとしての微生物の選択に伴う機能的遺伝子、調節遺伝子、マーカー遺伝子に関連した特殊および/または特有の形質は、リスクを増大させうる潜在的悪影響を同定する際に考慮されるべきである。悪影響の可能性は、ケース・バイ・ケースで評価されるべきであり、形質の適切な選択と評価により最小限に抑えうる。
 栽培慣行は、土壌微生物の個体群の制御や管理の方法としてうまく利用されたためリスクも管理できていた。リスク・マネジメントも、生残性や残留性などの特殊な効力の基準に合致するように、バイオ・ファティライザーを選択または改変することで達成されうる。リスクは様々な形で発生する暴露の増加に伴って生まれる。バイオ・ファティライザーへの暴露によるリスクも生残性、残留性、拡散性、遺伝子転移を制御する適切な方法を通じて管理することができる。
 リスク/安全性の分析に基づき、所定の環境においてスケール・アップのために考えられた新しい形質を有するバイオ・ファティライザーが、潜在的悪影響を持たないケースが出てくるであろう。その場合、そのバイオ・ファティライザーは、従来のバイオ・ファティライザーの管理実施規範によりスケール・アップおよび管理が可能である。
 数件のケース・スタディや、他の関連情報を分析して得た科学的原則は、バイオ・ファティライザーの検査および使用のスケール・アップに対する安全性評価のための枠組みを与えるものである。

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