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II. 微生物のフィールド試験のスケール・アップに伴う環境の安全性に関する
科学的課題と原則:バイオ・ファティライザー

 本プロジェクトは、「1992年度バイオテクノロジーの安全性問題」(OECD、1992年)の優良開発規範(GDP)「遺伝子改変植物、および遺伝子改変微生物の小規模フィールド調査の設計についての指針」のフォローアップとして開始した。本プロジェクトは、環境の安全性問題1を同定し取り扱っている。その問題は、本文書で「バイオ・ファティライザー」と呼んでいるバイオテクノロジーの新しい分子技術(例:改変DNA(rDNA)技術)を用いて開発したバイオ・ファティライザー用微生物2の導入に伴って生じたものである。本プロジェクトは、一連の特殊プロジェクトの2番目のものであり、そのような技術で開発された生物の検査および使用の拡大について、バイオテクノロジーの安全性に関するOECD参加国の専門家グループ(GNE)が実施した。これらプロジェクトは、それぞれ前述の「序章」の項で述べた原則に関する共同声明を基にして開始された。
 広範囲の方法で開発された特定のバイオ・ファティライザーについての多くの知識と、そのバイオ・ファティライザーの導入を管理する過程での経験がある。新しい分子技術を用いて導入された形質を含むバイオ・ファティライザーは、新しい遺伝子の組み合わせにより発生しうる影響のために、当初は特別な懸念を引き起こした(序章(緒言)、11ページ第4段落を参照)。しかし、その後の段落で述べたように、「同じ物理的、生物学的な法律により、従来の技術であろうとrDNA技術であろうと、生物の行動が制御される」。従って、伝統的なバイオ・ファティライザーから得た知識と経験(ファミリアリティー)は、新しい分子技術により開発されたバイオ・ファティライザーから得た経験と同様に、本プロジェクトに応用できる。
 本分野の調査および開発で得た科学的知識と経験は、急速に増えており、当面の報告は、そのトピックについての現在の情報の提供を意図している。
 予備的フィールド試験から一般的使用に至るスケール・アップを伴う研究開発の連続を指し示すために、「大規模」よりもむしろスケール・アップ3という用語を使う。本用語は、規定された連続した段階のなかの特殊な段階にあてはめることを意図したものではなく、効力についての情報を得るためや機能的な目的のために、バイオ・ファティライザーの開発中に一般的に使用される多くのあらゆる進んだ段階にあてはめることを意図したものである。スケール・アップにより、バイオ・ファティライザーは小規模な導入を超え、環境との相互作用を増大させることとなる。

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