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2. バイオテクノロジーの安全性についての一般原則

 バイオテクノロジーの安全性は、リスク/安全性の分析およびリスク・マネジメントの適切な適用により得られる。

2.1 リスク/安全性の分析

 リスク/安全性の分析は以下で構成される。

 以下のことが認識されている。
 a)リスク/安全性の分析は、生物の特性、導入形質、生物に導入される環境、導入形質間の相互作用、および目的とする応用面に基づいて行われる。これらの中のどれかひとつ、または全ての知識および経験により、リスク/安全性の分析において重要な役割を果たすファミリアリティーが得られる。ファミリアリティーについてのさらなる説明および例は、報告書の後の部分で詳細に記載されている。ファミリアリティーは、安全性と同義ではなく、むしろ導入の安全性を判断することや、リスクに対処する方法を示せるだけの十分な情報がある、という意味である。比較的低度のファミリアリティーは、適切な管理を行うことで補償されうる。ファミリアリティーは試験や実験により向上できる。この向上したファミリアリティーは、将来にむけたリスク/安全性の分析の基盤として活用できる。
 b)リスク/安全性の分析は、研究施設やフィールドで行われる新しい生物の調査、開発、および検査の所定の継続的構成要素である場合が多く、本格作業に先立って実施されることが多い。リスク/安全性の分析は、優良実験規範の中で不可欠であり、研究者が行うその場(ad hoc)判断から正式なアセスメントの厳守までに及ぶ。
 c)リスク/安全性の分析は、規定の取り締まりを意味または除外するものでなく、また、国家権威や他の権威による全ケースの評価の必要性を意味しない科学的手順である。

2.2 リスク・マネジメント

 本報告書では、リスク・マネジメントという用語は、科学的に同定されたリスクを最小限に抑えるために適用される適切な手段を指している。リスク・マネジメントには、社会的・政治的価値観などの付加的要因は含まれない。それは原則として、リスク/安全性の所見に基づいており、それらとは矛盾しないはずである。
 あらゆる生物は、おかれた環境内で生存、繁殖、拡散するにあたり、自然生物学的、物理学的、および化学的な影響を受けている。生物に対するこれら自然の影響についての知識と経験、および、その生物と環境との相互作用についての知識と経験を、その生物の管理に活用できる。リスク・マネジメントは、間接的にその生物が導入された環境の管理を通じて、あるいは直接的にその生物自体の管理を通じて、その生物を管理する全ての様相を含む。
 さまざまなタイプの導入がもたらすリスクの管理に用いられる実施規範は、生物のタイプによって異なるため、報告書の後の部分で詳細に取り上げられている。そのような実施規範には、生物学的、化学的、物理的、空間的、環境的、時間的、あるいは他の隔離状態、すなわち、外部からの厳格な封じ込めなどがあるが、生物やそれらの遺伝材料による、適用地域への拡散や影響を、最小限に抑える障壁を指定するものである。例えば、花や他の繁殖を行う生物は、遺伝子転移を不可能にする目的で排除されることもあり、持続や拡散を防ぐために特別な除染処置がとられる可能性もある。
 研究施設からフィールド試験、そして最終応用(例:商用)にいたるまでの適切な連続プロセスで、体系的かつ段階的手法で生物を開発、評価する時は、安全性を確保するためのリスク・マネジメントがなされる。
 この連続したプロセスの中で、視察の対象となるものの数やその視察方式は、一定ではなく、それぞれの段階におけるリスク/安全性の分析結果に依存する。適切な開発プロセスの進行は、知識を得るためや機能的な目的のために、規模を拡大することが多い一方で、管理や場合によってはモニタリングの縮小を必要とするのが一般的である。いずれの開発段階も、早い段階から情報や経験またはモニタリングなどから集めた適切な情報を、リスク/安全性の分析に組み入れた後に始まる。

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