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V.GDPの適用

植物を用いた実験

 植物を用いた小規模フィールド研究の安全性は、生物および研究場所の特性を分析することにより、および/または科学的および環境的に受け入れられる適切な実験条件を設計することにより決定できる。植物に対するGDPの考察には生物の特性を含み、研究場所および実験条件の慎重な選択を前提にしている。
  試験をする可能性が最も高い植物は栽培植物種である。多くの場合、その生殖隔離について、あるいは植物が試験領域外に広がることを防止した広範囲の実験がある。大部分の栽培植物は栽培されていない環境において生育を持続できず、十分に成長することができない。
 植物の考慮すべき特性には次のものがある。

花、授粉の必要、種子の特性など植物の生殖潜在力の生物学、および研究場所と等しい環境において播種および確立が欠けている状況で制御できる生殖の長期にわたる歴史
新しく獲得された毒性化合物の作用態様、存続、劣化
DNAを植物に転移する場合に用いられる生物学的ベクターの性質
他の種との相互作用および/または生物学的システム

 GDPはフィールド実験の設計および実施を容易にするべきであるので:i)実験的に遺伝子改変された植物は実験場所以外で有性和合性のある植物により代表される遺伝子プールから生殖隔離する;および ii)遺伝子または遺伝子改変された生物を研究場所を越えて環境の中に放出しない;または iii)生殖隔離しなくても意図しない制御できない有害な影響を生じない植物を用いる。

GDPは以下の方法の一つまたは両方に適用できる。
  1. 実験により生殖の制御が可能である。
    実験的な制限により、または内因的な生物学的限界により植物の生殖ができないようにする。
  または
  2. 実験では環境に有害な(または重大な影響を与える)可能性を制限する。
    植物が研究場所を越えて生残し、分散し、確立する最小限の可能性がある。
および
植物により新しく獲得され、あるいは強化されたすべての毒性化合物は、管理された生態系または自然の生態系に有害な影響を与える最小限の可能性を有している。
および/または
植物に障害、疾患、損傷のリスクをもたらす遺伝子転移ベクターは植物から適切に不活性化されおよび/または除去される。

 実験条件と植物の特性との相互作用は補遺I(35頁)において詳細に考察した。そこに記述された科学的な考察は伝統的な植物育成技術および新しい植物育成技術を用いて得られた新しい植物栽培品種を用いて得られた経験によるものである。

微生物を用いた実験[4]

 微生物を用いた小規模フィールド研究の安全性は生物および研究場所の特性を分析することにより、および適切な科学的および実験的に受け入れられる実験条件を設計することにより決定できる。
 植物と明らかに異なるのは、微生物を用いた試験は通常大きな母集団が関与し、そのいくつかの部分は生残すると考えられることである。その母集団における個々の生物は必ずしも遺伝子的に隔離することができない。例えば水平的なDNA転移の可能性は微生物においては必ずしも排除できない。微生物は一定の母集団、環境において生じるイベントの可能性を考えた統計的な立場で考察しなければならない。
 微生物の考慮すべき特性は:
閉じこめ対策

分散、生残、および増殖
他の種との相互作用および/または生物学的系
遺伝子転移の可能性
新しく獲得されたすべての毒性化合物の作用態様、持続性、および劣化

 GDPはフィールド実験の設計
 GDPによりフィールド実験の設計および実施が容易になる必要があるので:i)関心のある遺伝子物質の転移が制御されている;および ii)その遺伝子物質を含む微生物の播種[5]が制御されている;または iii)転移または播種が起こったとしても、他の生物に意図しない、制御できない有害な影響が生じないこと

GDPは以下の方法の一つまたは両方に適用できる。
1. 実験は研究場所を越えて遺伝子物質の転移および播種を制御できる。
  生物の生物学は水平的な遺伝子転移の可能性を最小限にする。あるいはそれを防止、または最小限にする手段をとる。
  生物の生物学は水平的な遺伝子転移の可能性を最小限にする。あるいはそれを防止、または最小限にする手段をとる。(**訳注/同文が並んでいます**)
  および
  生物は制限された競合能力を有する。
  および
  試験場所からの微生物の移動/分散を最小限にする手段を講ずる。
  または
  必要な場合、試験場所を越えた確立を防止または緩和する手段を講ずる。
2. 実験は研究場所を越えた領域への有害な影響(または重大なインパクト)の可能性を制限する。
  知識および以前の経験で示されたように、微生物がその研究場所から播種されたとしても、その場所を越えて有害な環境的影響があってはならない(例えば導入された遺伝子/遺伝子物質、環境条件など生物の特性が、1986年OECD報告組み換えDNA安全性検討において提示された枠内で評価されたように、含まれる研究および以前のフィールド試験から生じている)。
  および
  実験は適当な場合、他の生物に与える影響(例えば植物または動物の健康、微生物共同社会、生態系過程、他の生物学的システム)を検出するように設計するべきである。そして適当な場合は、このような影響が生じるのを制御し、緩和するように設計するべきである。

 微生物が環境の中に播種する能力、遺伝物質を他の生物に転移する能力、および研究場所の近くで適切な、達成できる生育地/ニッチを利用できることは安全性を評価する上で重要な要因である。実験条件と微生物の特性との相互作用は補遺2において詳細に考察する(39頁)。

注  意

  1. 「遺伝子改変生物」という用語は、ここでは広い意味に用いた。その範囲は科学および技術の進歩とともに時間がたつにしたがって広がると考えられ、国や機関により異なり、種々の責任および関係する目的に依存している。
  2. 本部分の文脈では「小さい」はGDPを維持する一方、実験の目的を満たすために必要な最小限度のサイズという意味である。
  3. ここで開発された原則は裸子植物および被子植物に適用される。腐生細菌および真菌を含む他の植物のための原則は現在まだ開発されていない。
  4. ここで開発された原則はウイルス、バクテリア、微細藻類、原生動物、および真菌などの微生物に適用される。
  5. 播種は試験場所を越えた「移動/分散」および「確立」という概念からなる。

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