以下に概括した基準は微生物に関連するものであり、細胞培養にもあてはまる。生物のGILSP資格を評価するうえで互いに関連していると考えられるすべての基準を考慮することが重要である。
宿主1
非病原性 |
宿主の同一性を確立する必要があり、分類学は十分に理解しておく必要がある。宿主が病原性でないことを決定する評価が必要である。宿主はヒトの病原体の国内リストあるいはその他の認識されたリストに掲載されたものであることは許されない。加盟国は、宿主が病原体としてふるまう可能性を評価するうえで有益な情報源であると考えられる植物および動物の病原体について追加すべきリストをもっていると考えられる。生物あるいは減衰した株の潜在的な病原性につき不確定性が残っている場合には、その安全性ひいてはGILSP条件下で取り扱うのに適しているかどうかを確認するためにさらにデータを収集しなければならない。また病原体リストに記載のない生物の中にもさらに評価が必要な量の毒性物質を作り出す可能性をもつものがある[2]。
GILSP規範において現在、用いられている宿主の例を下に例示した。場合により全種にGILSP宿主資格があると考えられるが、一方、場合によってはいくつかの株、いくつかの型のみにその資格があるとして選定できるということに注目するべきである。
Saccharomyces cerevisiae
Escherichia coli K-12
Bacillus subtillis
CHO (チャイニーズハムスター卵) 細胞
Aspergillus oryzae
非偶発的作用因 |
これは主に有害な微生物、特に有害なウイルスやマイコプラズマが検出できるレベルで存在してはならない細胞培養に関することである。微生物培養に望ましくないファージが存在することは許されない。
安全な使用についての長年の歴史 |
ヒトまたは環境に対して有害でないなど、宿主生物を使用しても安全であることにつき適切に文書化されている必要がある。宿主に関する歴史的データ、その他のデータ、その前駆者または密接に関連する株などが評価の対象として適切であると考えられる。
このような証拠は食品、酵素、および抗生物質産生物などに応用すること(こうした応用において用いられる放出などを含む)から得ることができる。最小限の閉じこめ状態下での試験所での使用および/またはパイロットスケールでの発酵からも有益なデータを得ることができる。
あるいは |
産業的な環境では最適な成長を許容するが、生残を環境に有害な結果をもたらさない範囲に制限する組込み環境制限 |
有害な影響の可能性は増殖、播種、生残する微生物の能力を制限することにより減少させることができる。これは組み込まれた安定した生物的制限により達成することができる。
バイオリアクターにおける成長に干渉することなく環境における生残の可能性を低減し、有害な結果が生じることを防止する。
生物学的な限界をもつ生物の例としては:auxotrophic株、asporogenic株、紫外線光線など環境要因に対して組込み感受性をもつ株がある。
ベクター/インサート
十分な特徴をもっており既知の有害な配列がない |
ベクター: | ベクターを十分に特徴づけるためには遺伝子物質がベクターに与える機能を知る必要がある。 |
ベクターは文献、国立保健研究所(NIH)の一覧表および/または他の一覧表、ベクターの誘導および構築および 構成物のその後の実験的な確認などの引例の組合せにより特徴化づけられる。
特徴化においてはベクターに、例えば病原性および/またはコロニー化にかかわることが知られている毒素または要素などの有害な影響を有しうる物質を産生してヒトまたは環境に有害な表現型をきたす配列がないことを確認するべきである。
インサート:挿入されるDNAのソースおよび機能およびベクター上のその位置を知るべきである。経験によれば多くの場合、これは挿入されたDNAのヌクレオチド配列が知られているということを意味していることが明らかとなっている。これには一以上の機能がインサート配列にコード化されているかどうかの知識が含まれる。さらにインサートは上記の節で例示したようにヒトまたは環境に有害な表現型を生じる結果となってはいけない。
サイズは可能な限り意図した機能を実施するために必要なDNAに制限する:環境において構築物の安定性を高めるべきではない(それが意図した機能が要求するものでない限り |
ベクター/インサートは可能な限り意図した機能を実施するために必要な遺伝子配列のサイズに制限するべきである。これにより意味不明な機能の導入および表現の可能性あるいは望まない形質の獲得などが少なくなる。
ある場合にはベクターあるいはインサートは環境中の構築物に影響を与えると考えられる。例えば耐性遺伝子の導入は受容株が環境において生残する能力に影響を与えると考えられる(下記参照)。
移動性が高くないこと |
インサートを導入するためにベクターを使用することから考慮すべきことはベクター/インサートがその後にもとの受容株から転移される率である。例えばプラスミドベクターの交換率は転移機能の除去により低減させることができる。
頻度を低減するために他のアプローチを用いることができる。挿入されたDNAが受容株から他の生物に転移される--例えば安定した統合を染色体の中に--頻度を低減するためにも用いることができる。
どのような耐性マーカーも自然な状態で有していないことが分かっている微生物に転移させるべきではない限り |
物質の多様性に対する耐性遺伝子(例えば抗生物質、重金属)を選択目的のために組み換え生物の中に導入することは多いが、特別の耐性遺伝子を評価する場合には以下のことを考察する必要がある。
− | 耐性マーカーは組み換え生物から他の生物に転移できるかどうか、そしてどの程度の頻度で転移できるのか(上記を参照)。 |
− | こうした獲得が治療薬の使用を危うくしたり、環境的な撹乱をもたらすかどうか。市販されていない抗生物質などの物質に対するマーカーも、クラス反応性またはリンク耐性を示すかどうかを測定するために評価するべきである。 |
− | 選択圧が特別なマーカーに対して存在するかどうか。例えば問題の選択作用因が環境において適切な濃度で存在するならば、環境において耐性遺伝子を運ぶ生物の選択性は高まると考えられる。これは家畜の飼料に抗生物質を使用すること、あるいは重金属などの環境汚染による汚染の結果として生じると考えられる。 |
rDNA生物
非病原性 |
挿入された遺伝子の性質、そして適当な場合にはその源を考察しなければならない。遺伝子産生物の型およびその機能は宿主の特性の状況において検査する必要がある。例えば遺伝子産物が病原性を示すうえで既知の役割を持たず、宿主が病原性ではない場合は、rDNA生物は非病原性であると予想される。
産業環境において宿主生物と同じほど安全であるか、あるいは制限的に生存し、環境において有害な結果を生じないこと |
これはヒトおよび環境への安全性を含む。一般的にとられるアプローチは宿主の性質を考え、そして挿入された遺伝子およびその結果生じる産生物の性質に焦点を当てるべきである。新しいニッチをコロニー化する能力などの特性を含む生物学的な適性と適応性へ与えるその影響を考慮にいれるべきである。有害な結果は例えば野生株に関連する環境において制限された生残を示すrDNA生物を用いることにより避けることができる。ある場合には特別の特性に関するデータを--例えば環境的放出のモニターを通じて--作りだしおよび/または収集することが必要であると考えられる。