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第五章 まとめと勧告
要点のまとめ
組換えDNA技術は広範囲の用途に新しく輝かしい可能性を開き、人類に相当な利益をもたらすものと期待できる。それらは人類の健康の増進にいろいろな面で貢献し、しかもその度合いは近い将来に非常に増大すると予測される。
組換えDNA技術の工業での大規模な利用の大部分は、最小限の封じ込めだけで十分な本質的に危険性の少ない生物が使われる(GILSP(優良工業製造規範)(Good Industrial Large-Scale
Practice))。
危険性の高い組換え体を使用する必要がある時は、リスクアセスメントのための基準が追加できる。また物理的封じ込めの技術は、現行工業で十分知られており、その技術を長年病原生物を封じ込むのに使って成功してきた。したがって危険性の高い組換え体も、適切な物理的及び(又は)生物学的封じ込めのもとに取り扱うことができる。
環境又は農業で利用する組換え体についてのリスクアセスメントは、工業利用におけるリスクアセスメントに比べて発達していない。しかし組換え体を評価する方法は、一般に農業や環境における、伝統的な方法で操作された生物の幅広い使用から得られた既存のデータから、類推して進めることができる。研究開発の過程で段階的に評価し、組換え体の利用による環境への潜在的危険性を最小にしなければならない。
勧告
I 総論
- 国の規制のための原理又は指針に関する情報やリスク解析の進歩、リスク管理における実際的経験を交換することによって、組換えDNA技術に対する取り組み方の調和は得られ易くなる。したがって、情報はできるだけ自由に共有するべきである。
- 組換えDNA技術の実行及びその応用に対して、特別に法律を制定する科学的根拠はない。加盟国は、この分野の技術の発展を妨げる過度な負担を避けながら、十分な点検と管理が確実に行われることを保証するために、既存の監督、点検機構を検討すべきである。
- 指針を遵守するための取組みが、組換えDNA技術の将来の発展を妨げるものであってはならない。各国は同調して、この必要性を認めねばならない。
- 国家間のデータ交換を容易にし貿易上の障壁を最小限にするために、試験法、装置、設計の進歩及び微生物分類学の知見などを国内及び国際水準でさらに調査すべきである。国際的組織、例えばWHO、CEC、ISO、FAO、MSDN内で現在行われている基準に関する作業について、十分な配慮が行われるべきである。
- 組換えDNA技術の持つ種々な面について、一般国民にもっとよく理解してもらうために、特に努力がなされねばならない。
- 工業、農業及び環境で組換えDNA技術を利用するために、加盟各国がこれらの技術の開発を注視していることは重要であろう。組換え体の工業的利用及び農業や環境への利用のために、数か国が指針策定を望んでいる。
- 技術革新に対する必要性を認めつつ、安全性を確保しながら、知的財産及び機密を保護する適切な方法を考慮しておくことが重要である。
II 工業利用に特定した勧告
- 組換えDNA技術の大規模な工業利用においては、元来可能な限り危険性の低い微生物を使うべきである。このような微生物は、優良工業製造規範(GILSP)の条件のもとで取り扱うことができる。
- 本報告で定義した基準を使ったリスクアセスメントを行い、組換え体がGILSPだけに基づいて取り扱うことができないならば、GILSPに加えてリスクアセスメントに対応する適当な封じ込めの方法を、使用すべきである。
- 物理的封じ込めを必要とする大規模な工業利用においては、組換え体の意図しない漏出を監視し制御する技術の改善を図る研究を、より強化すべきである。
III 環境及び農業への利用に特定した勧告
- 生物の環境や人間の健康についての既存の相当量のデータがあり、それらをリスクアセスメントに役立てるべきである。
- 農業及び環境に利用する前に、組換え体の潜在的危険性を評価することが大切である。しかしこのような利用法を規制する一般的な国際的な指針を作るのは、目下時期尚早である。利用する前に、ケースバイケース1) で個別に潜在的危険性の点検が行われるべきである。
- 農業又は環境で利用する組換え体の開発は、適切な場合は実験室からグロースチャンバーや温室へ、さらに限定された野外試験へ、そして最終的には大規模野外試験にというように、段階的に進めなければならない。
- 組換え体の利用の結果を予想し評価し、そして監視する技術を改良するために、研究をより強化すべきである。
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