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科学技術政策委員会(CSTP)委員長への送り状

 科学技術政策委員会委員長 殿

 科学技術政策委員会が1983年7月に諮問した委任内容は、その年の12月業務を開始したバイオテクノロジーの安全と規制に関する専門家アドホック会合にとって大きな努力を要する課題でありました。
 科学者、産業従事者、政策立案者、規制機関の代表者などの大勢のきわ立って優れた人達で「ニュー」バイオテクノロジーを継続的に安全に発展させること、特に組換え体の実用的利用を中心とした問題を審議する会合の議長を勤めたということは、私にとって極めて貴重な経験でありました。私見ではありますが、この仕事についていくつかの所見を申し述べたいと思います。
 この会合の仕事は骨の折れる猛烈な議論、討議を経て得られたものであることにお気づきになられることでしょうし、またこのことが結局は私達が全員一致でこの報告書を仕上げることのできた理由であることもお分り頂けるでしょう。この報告書は、とりも直さず、組換え体の利用に附随して起こるかもしれぬいかなる危険をも評価し、規制する為の枠組みを提供するものであります。私は、この報告書にあっては問題を徹底的に洗い出して、専門家の間で真の合意に達することができたと確信して、本報告書を貴殿に提出する次第であります。
 OECD加盟国及び多数の国際機関が、私達会合の結論を熱心に待ち望んでいることを私達はよく知っております。また、私達は組換え体を環境に放出することになる野外実験についても近い将来行うことが計画されていることも知っております。この関係で私達の報告書も早く完成するようかなりの圧力が加えられましたし、また多くの国々でバイオテクノロジーの安全性に対する規制の方針に決着をつけようとする動きが出てきたので、益々急がねばなりませんでした。貴委員会(CSTP)がイニシアティブをお取りになられたのは真に時宜を得たものであることをつけ加えておきます。
 私達の報告書についていくつかの貴要な点を強調しておきたいと思います。

  1. 私達はこの委任内容の中心課題、それはとりも直さず組換え体の産業及び環境での安全な使用に対する科学的な判断基準を策定することでありますが、その点に特別な注意を払いました。私達の委任内容に起因する他の諸々の問題については私達は予備的な分析しかしておりませんが、それはつまりOECD各国のバイオテクノロジーの安全性一般に対する現行の規制計画や取り組み方をレヴューすることでありました。OECDのメンバーである国々がどういう立場を取っているかということの初期調査を満足のいくように完結させる為には、もっと別の資料が必要であるという見解を私達は持っております。
  2. 私達の報告書作成に当たっては、組換え体の工業、農業、環境への利用に伴う危険性の評価に対して普遍的、科学的な枠組みを考察しておきました。添付資料に収められている、より詳細な科学的、技術的考察は、バイオテクノロジーの実行者が危険性評価及び危険性管理を行う場合の自分独自の手法を確立するのに有用な道具になると思います。
  3. 環境及び農業への利用に対して特に、国際的に合意された安全基準を作ることは若干時期尚早で、もっと研究の余地があることは認めざるを得ません。したがってそのような利用に伴う潜在的危険を事前にそれぞれ個別に審査することを含む暫定的なアプローチを、私達は提案する次第であります。
  4. 組換え体の産業規模の利用は今日迄のほとんどが、本質的に危険度の低い微生物を使っていることに鑑み、私達は規制の度合いを現行の適正生産基準に基づいた「優良工業製造規範(GILSP)」として提案する次第であります。これで危険度の低い微生物への判断基準が示されますし、より危険度の高い組換え体については、別に追加の規制と封じ込め手段の選択について記述しておきました。

 私達の会合では、この国際的に合意された枠組みを先ず受け入れることが大事なステップであると、固く信じております。この枠組みのお陰でバイオテクノロジーの利用が益々発展し、人類の福祉に貢献する可能性がふくらみ、同時に、潜在的な問題にも正当な配慮が保証されるであろうことを期待します。
 終りに当たって当会合の委員全員が、科学的に正確な、しかもバランスのとれた報告書の作成に参画して下さったことと、OECD事務局の支援に感謝致します。この会合のような優れた人達と仕事を共にできたことは喜びに耐えません。
 閣下が御必要とあらばどのようなフォローアップも喜んで致します。

敬 具

バイオテクノロジーの安全と規制に関する
専門家アドホック会合議長

Roger Nourish

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