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第3項 ウイルスの特徴に関する基礎情報

 ある生物のバイオセイフティについての精査のために適切な情報としては、問題とする生物の確認を明らかにすること、その生物が使用される環境を記述することが含まれる。CP遺伝子介在の保護によってウイルス感染から保護されるいかなる遺伝子組換え植物も、その親となる植物種が同じ環境下で相互に作用することのできる生物の分布区域と潜在的に相互作用する。トランス遺伝子を提供したウイルスの特徴としては、ウイルスについての生物学、分類学、遺伝学、環境における既知のウイルスの相互作用に関する情報が含まれる。これら必要な情報には下記のものを含む。

a)科・属・系統の名称、同意語を含むウイルスの分類学上の名前
b)ウイルスに含まれる核酸の型
c)感染が全身的か局部的か
d)ウイルスが特定の組織に限られるか(篩管部に限られるか、など)
e)ウイルスが何らかのサテライトウイルスあるいはヘルパーウイルスと関連しているか
f)ウイルスの自然宿主分布範囲
g)ウイルスが伝播される方法
h)ウイルスがベクターによって伝播されるのであれば、伝播方法(持続性か非持続性か、など)を含むベクターの確認および(知られているならば)ベクターの伝播に関わるウイルス遺伝子の確認
i)農場の状況下で他のウイルスと何らかの相乗的な相互作用あるいはトランスカプシデーション相互作用が文献に報告されているか

 ウイルス遺伝子の使用によって生じる潜在的なバイオセイフティの問題を評価するために、植物に組み込まれるウイルスの配列は、特性のはっきりしたウイルスに由来する特性のはっきりした配列であるべきであり、実際に使用される系統の特定の生物学的特性が知られるべきである。トランス遺伝子が由来する系統の特性は、その系統が他の国々で発見された系統と同一なのか、あるいはほぼ同一なのか決定することを可能とする。例えば、日本、イギリス、オランダ、その他のヨーロッパ地域で広く蔓延している甜菜の壊疽性葉脈黄化フロウイルスAは、米国で発見された系統と事実上同一である(Kruseら, 1994年)。ウイルス系統に関する相当量のデータは、科学出版物および公的に利用できるデータベースから容易に入手できる。
 大抵の植物性ウイルスの適切な名称に関する公的なウイルス分類学の組織はウイルス分類学に関する国際委員会(ICTV:International Committee on Taxonomy of Viruses)で、これまでに承認されてきた多くの植物性ウイルスの分類学上の名称を公表している(Murphyら,1995年)。問題とするウイルスについて記述される関連情報は、ウイルスの完全名称(同意語を含む)、科・属の名称、系統の名称、発生する疾病の名称、系統が最初に分離確認された場所である。ウイルス感染の特性について記述するうえで最も重要な植物性ウイルスの分子の特徴は、含まれる核酸の型、RNAあるいはDNAであり、それらの核酸が単一あるいは複合要素であるか、ということである(Murphyら,1995年)。全ての細胞でウイルスが複製するのか(トバモウイルスなど)、あるいはある種の細胞に制限されるのか(ルテオウイルスの篩管部細胞など)を記述することが重要である。
 全ての植物性ウイルスの宿主分布区域の最新で信頼のおける簡潔なリストを入手することはできないが、次に掲げるいくつかの出版物とインターネットサイトに著しい量の有益な情報を見出すことができる。

a)応用生物学者によるイギリス共和国菌類学協会の「植物性ウイルス解説」は、数百種の植物性ウイルスの生物学について述べたパンフレットシリーズである。
b)米国農務省(USDA)の北アメリカの農業に重要な植物害虫、植物性ウイルス疾病の索引(農業ハンドブックNo.307,1966年)は、植物と植物を感染させるウイルスのリストを提供する。
c)作物の植物性疾患に関する米国植物病理学協会のシリーズは、主要作物のウイルス性疾病の最新の一覧表である。同協会には、米国の植物性疾病およびその原因となる動因の名称リストもある。
d)オーストラリアのウイルス確認データ交換(VIDE:Virus Identification Data Exchange)は、現在ICTVによって世界規模での植物性ウイルスのデータベースの確立をすることが促進されている。データベース用のウェブサイトは、
http://life.anu.edu.au/viruses/lctv/index.hmtl. である。
e)1984年に出版された英国植物病理学協会のイギリスの植物疾病名称およびその原因は、宿主植物により配列されたイギリスおよびヨーロッパにおける疾病の名称ならびに原因生物の科学名称を一覧にしている。
f)Smithらによるヨーロッパ植物性疾病の手引き(1988年)は、ヨーロッパにおける植物のウイルス・バクテリア・カビの病原菌を記述している。
g)Tulane大学(米国)のGarry研究室が維持管理するウェブサイトは、サイト上の全ウイルスサイトのリストを提供することを目的としている。このサイトは、
http://www.tulane.edu/~dmsander/garryfavweb.html
からアクセスできる。Leicester大学(英国)に、ヨーロッパ中でアクセスを容易にするサイトが開設された(http://www-micro.msb.le.ac.uk/335/garryfavweb.html)。

 多くの出版物は、特定のウイルスの宿主分布区域について述べている。しかし、大抵のリストは、特定のウイルス系統の宿主分布区域については記述していない。宿主分布区域は、本文書が関連する3つの問題に対する重要な考慮事項である。特定のウイルス系統の数が異なるために、供与体生物として使用される特定のウイルス系統の自然界の宿主分布区域に関する情報は、文献調査よりもその植物を組み入れた当事者によって容易に提供される。制御された生態系および制御されない生態系におけるウイルス系統の自然界の宿主分布区域に関する情報は、おそらく「人工的」な宿主分布区域に関する情報よりも適切である。ウイルスの自然界における宿主分布地域は、一般にウイルスの感染を受ける管理された生態系および管理されない生態系で生長する植物を一覧にしている。人工的な宿主分布区域は、統制された条件下で人が意図的に接種して感染を受けた植物を含むが、必ずしも自然条件下で感染を受けない。ウイルスの人工的な宿主分布区域は、自然の宿主分布区域よりも植物種を含む(Matthews,1991年)。
 植物性ウイルスの地理的分布についての信頼の置ける世界規模のリストも入手することができない。しかし、限られてはいるが、多くの植物性ウイルスの地理的分布に関する情報は、上記に一覧にされた中で見出すことができる。米国農務省(USDA:United States Department of Agriculture)は、ウェブサイト上で広く蔓延しているウイルスの発生についての州ごとのリストを紹介している(http://www.usda.gov/bbep/bp)。
 ウイルスは、コナジラミ、ダニ、線虫類、アブラムシ、ウンカ、ヨコバイ、甲虫、アザミウマ、菌類を含む多くのベクターによって伝播する。物理的、また種子や花粉によっても伝播することがある。ベクターによって伝播するそれらのウイルスでは、単一のウイルスは、農場の条件のもとで単一のベクターによって伝播する。従って、1つの例として、ポティウイルス科の3種の異なる属の3種類のウイルス、つまりジャガイモY ポティウイルス(PVY)(ポティウイルス属)、ライグラスモザイク病ウイルス(ライモウイルス属)、オオムギ縞萎縮病ウイルス(バイモウイルス属)は、関連しない型のベクターによって伝播する。この例において、数種類のアブラムシが1番目のウイルスを伝播させ、チューリップサビ病ダニが2番目、土壌菌Polymyxa graminisが3番目のウイルスを伝播させる。ベクターの各グループは、世界規模で特定のウイルスを伝播させる(Murphyら,1995年)。
 これらの3種のウイルスは全て同じ科に属するが、ただ1種の特定の型のベクターによって伝播する。このウイルスとベクターの関係の特異性は、特定のベクターが暗号化された受容体および特定のウイルスが暗号化されたタンパク質のそれぞれのウイルスに特有の相互作用の結果によるものである(Murphyら,1995年;Murantら,1988年b)。その農場で重要かつ主要なベクターを確認すること(科学的および一般的名称の両方)は、ウイルス自体および受容体の環境双方の特徴づけの一部となる。さらに、何らかのウイルス遺伝子がベクターによる伝播に必要で、関連あると確認されたならば、遺伝子の性質、簡単にいえば、遺伝子がどのようにベクターによる伝播に関連すると信じられているか、が述べられるべきである。

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