John A.Anderson
ミシガン州デトロイト、ヘンリー・フォード健康システム小児科・内科部門、アレルギー・臨床免疫学部
I.はじめに
“食品アレルギー”という言葉は、一部の医師や科学者もそうであるが、一般市民によって、食物に関係した好ましくないもしくは厄介な問題というように称せられてしばしば濫用されている。食品に対するアレルゲン反応を議論するに際しては、一連の定義を設けるか、もしくはこれらの反応のタイプについて記述することは重要である。表1は以前の分類から数年間かけて進められた用語集である1。この一群の定義においては、食品不耐性は無毒で非免疫媒介による反応について用いられ、一方、食品アレルギーは免疫反応、通常は免疫グロブリンE(IgE媒介)に関係するものである。
II.食品逆反応の発生
最善の推定によれば、総人口の1〜2%の人々が食品アレルギーにかかっていることを示唆しているが、食品に対する逆反応の発生は判っていない2,3。しかし、食品成分に対するアレルゲン反応の重要性について人々の認識は、限られた臨床試験で確認されたこのような反応の発生よりも実質的に超えている。ある調査によれば成人のアトピー性患者の4分の1は特定の食品を消化した結果、逆反応を経験したとしている4。逆反応の発生は、コロラド州デンバーにおける続いて出生した480名の幼児について人生のうち最初の3年間、二重盲法でプラセボ管理食(DBPCFC:double-blind,placebo-controlled
food challenge)によって確認され、その結果は8%であった5。これらの子供で25名(5.2%)は牛乳にアレルギー性を示したが、11名(2.3%)はDBPCFCによってそうなったものと確認されている。1749名の新生児についての1985年に行われたデンマーク他単一の病院におけるコホート研究では、39名(2.2%)は牛乳タンパク質を飲んだ後の組織的反作用によるものと判明している6。
子供における食品添加物由来の反応の発生についても未知であり、論議の対象となる。たとえば、4274名に及ぶデンマークの5〜16歳の児童生徒における最近の発生研究が報告されている7。スクリーン法による質問表による選択と食品保存料、色素及び香料の混合物によれば、17名の回答者のうち12名がDBPCFC法によるテストに応じ、6名(50%)が反応を示した。この6名中5名は色素に、1名がクエン酸に反応を示した(1名はじん麻疹であり、5名はアトピー性悪性の皮膚炎を示した)。この研究に基づき、デンマークの児童生徒中で、6/4274で0.14%ではあるが、食品添加物に反応する者は1〜2%であると推測された7。
成人で最も多い呼吸器系反応は、木、草、雑草、そして北アメリカではブタクサの花粉によるアレルギー性鼻炎である。そのような呼吸器系症状は、一般に食品アレルギーに含まれないが、花粉アレルギーをもつ人は、ある種の新鮮な果実や野菜を摂取したのち、口腔咽頭域に限られた軽い逆反応にあう。この口腔アレルギー症候群において、そのような新鮮な果実や野菜に触れると局部に制限された口腔咽頭域のかゆみや腫れが現れる8−10。1447名のブタクサによる花粉症患者のうち、6.2%はメロンやバナナに限ったアレルギー症状をもつことが判った11,12。3種の花粉(樺、草及び/あるいはヨモギ)のうち1つ以上にアレルギーを示す274名の患者のうち、111名(47%)は、リンゴ、ジャガイモ、ニンジン、セロリ、モモ、メロンに臨床症状もしくはIgE抗体を示した8。
最後に、アナフィラキシー及び食品や食品添加物(とくに亜硫酸塩)に対する他の全身反応発生の推定は、2年以上にわたる73のコロラド緊急領域の展望調査により得られた13。2歳から71歳に及ぶ25名(3分の2は18歳以上)は深刻な反応を示した。2名は心肺蘇生を必要とし、1名の患者は死亡した。生命を脅かす反応に対する全体の緊急用ルームへの入院に比べ、食品に関連した反応発生に基づくと、緊急介入を必要とするおよそ950件の食品および食品添加物に対する深刻な反応が合衆国で毎年発生すると推定されており、これは総人口2億5千万人の0.0004%である。これら全ての報告は、食品に対する逆反応発生の様々な展望を示す。
表1 食品に対する逆反応:分類 |
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I.有毒反応 | |
これらは、その投与が充分多ければ誰にでも起こる。有毒混合物は、自然発生するか、あるいは食品加工あるいは汚染菌によって引き起こされる。いくつかの有毒反応の症状は、アレルギーによって引き起こされる反応と類似していることがある。 | |
II.無毒反応 |
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A.免疫媒介 食品アレルギーという語は、免疫媒介反応に勧められる。アレルゲンは、免疫反応のもとである抗原性分子と定義される。 |
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1. | IgE媒介 症状はアナフィラキシーおよび肌、消化器、GI管の症状を含む。これらの症状のなかに特定のものはない。 |
2. | 非IgE媒介 病気には、タンパク質が引き起こす胃腸症およびセリアック病が含まれる。そのような病気に含まれる免疫機構における食品の正確な役割は解明されていない。 |
B.非免疫媒介 食品不耐性という語は、非免疫媒介反応に勧められる。 |
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1. | 酵素的 副次的なラクターゼ欠乏は世界人口の多くに影響を及ぼすが、多くの他の酵素欠乏は代謝における稀な生来の誤りである。 |
2. | 薬理学的 不耐性のこの形は、いくつかの食品に通常現れる血管作動性アミンのような物質に異常に敏感な人々に現れる。 |
3. | 定義されないもの これは、いくつかの添加物不耐性を含む、害となる機構が判明していない食品の逆反応を含む。 |
Bruijnzeel-Koomen 他より採用 |
III.食品アレルギーの自然史
食品アレルギーの発生研究により、食品反応の臨床徴候は、人生の最初の3年間に最も多く見られることが示された。展望的な研究では、状況の80〜87%において、ひとたびある食品に敏感であると判った児童が3歳までにその食品に臨床的に耐性を示すことがある5。臨床的な耐性は、大豆、小麦、牛乳、卵のアレルギーに現れる。だが、食品に対する最初の臨床反応が深刻であればあるほど、児童に耐性が現れるまでに時間がかかる14。年長の児童および成人では、害となる食品が確認されその際に食物から完全に取り除かれれば、食品に対する臨床的な耐性が数名の患者に現れることも示された15,16。
ピーナッツ、堅果類、魚のような食品、エビ、クルマエビ、カニ、ロブスター、ザリガニのような甲殻類にアナフィラキシーを現す患者において、さらに摂取することによってアナフィラキシーを繰り返すリスクが確実に持続するかは判明していないが、一生続くものである4。ピーナッツアレルギーの集団では、ピーナッツに対する反応を繰り返すリスクは少なくとも14年持続している17。
IV.食品アレルゲンの暴露
大抵の食品暴露は、最初消化(GI:gastrointestinal)管によるものである。GI管は、必要とされない完全なタンパク質が体内に迅速に取り入れられるのを妨げる免疫学上の、また非免疫学上の防御機構の障壁を提供する4。いくつかの完全なタンパク質が取り入れられる。だが、口腔耐性は、大抵の食品タンパク質に現れる。食品アレルギーに対し乳児の感染しやすさが増加していることは、幼年時代にGI障壁が比較的免疫学的に成熟していないためであるとある程度まで信じられている。その結果、遺伝的に感染しやすい乳児において、摂取され吸収された食品タンパク質は、他の異常な免疫反応同様、特定のIgE抗体構造を刺激する。これらの食品タンパク質への再暴露が臨床反応となることがある(病理生理学については、Yoseph
A.Mekori著「アレルギー性疾病概論」参照)。粘膜がその後口腔あるいは炎症を起こした皮膚において食品抗原に接触することも、充分反応を引き起こすものである9。後者の例の一つは、アナフィラキシーを引き起こす5%のカルシウムのカゼイン塩を含むひし形の発疹軟膏に見られる成分である牛乳のタンパク質に、炎症を起こした皮膚が暴露された牛乳にアレルギーをもつ乳児だった18。
食品に対するIgE媒介反応の原因である主要な確認されたアレルゲンは、この問題に関し、Susan
L.Hefle他著「アレルゲン性食品」およびSteve L.Taylor,Samuel
B.Lehrer著「食品アレルゲンの原則と特徴」に詳しく述べられている。これらの食品アレルゲンは、大抵耐熱性であり、タンパク質分解に耐性をもつ。臨床的に、多くの患者は1つの食品族から1つあるいは数個の品目にしか反応しない。ピーナッツにアレルギーをもつ者は、大抵他のマメ科植物(エンドウマメ、豆、大豆)に敏感なIgE抗体をもつが、臨床反応を示さずに定期的にこれらの食品を摂取することができる19。主要な魚のアレルゲンは、Gad
c1である4。このアレルゲンは、さまざまな淡水および海水に見出されるが、特定の魚の種類を摂取するとただ臨床的に反応する者もいる20。
成人において職業上かかる食品アレルギーでは、食品タンパク質への最初の接触は吸入あるいは皮膚への接触によるものである21。おそらく、最もよく知られた例は、パン職人のぜん息である。パン職人のなかには、吸引したり皮膚が小麦粉に接触したりした後にぜん息や鼻炎となる者がいる22。だが、多くのパン職人は反応を示さずにパンを摂取する。だが、他の労働者は、呼吸器や皮膚の接触ルートによって最初に敏感になってから、加工されるか調理された同じ食品が摂取された際に反応を示す。カニを扱うズワイガニ加工者23、卵を扱うパン職人24、ニンニクを扱うニンニク・スパイス加工者25の場合はそうである。IgE反応もエアゾール化された魚や魚介タンパク質に暴露することによって発生する23。従って、調理による食品タンパク質のエアゾール化は、強い食品アレルギーをもつ者にリスクを与える。
V.食品アレルギーの臨床的な発生
様々な食品アレルギーの臨床的な発生があり、これらはこの項で概説する(表2)。
表2
食品アレルギーの臨床的な発生
I.アナフィラキシー
II.口腔アレルギー症候群
III.食品による運動が引き起こすアナフィラキシー
(F-EIA:Food-dependent,exercise-induced anaphylaxis)
IV.アトピー性鼻炎(AD:Atopic dermatitis)
V.GI反応
A. IgE媒介の即反応
B. 食品タンパク質が引き起こす腸炎症候群
C. 好酸球胃腸炎
D. セリアック病(グルテン過敏腸症)
VI.呼吸器反応
A. 鼻炎
B. ぜん息
VII.職業上かかる食品アレルギー
A. じん麻疹/血管浮腫/アナフィラキシー
B. ぜん息
C. 過敏症繊維性肺炎
V-Aアナフィラキシー
アナフィラキシーは、じん麻疹、血管浮腫、喉頭浮腫、気管支痙攣、低血圧、下痢、不整脈、吐き気、嘔吐、腹痛、また死さえも特徴とする全身反応である。アナフィキラシーの最初の症状は大抵数分以内に、そしてほぼきまって暴露して30分以内に始まる26。アナフィラキシーの3つの臨床パターンがきっかけとなるアレルゲンに関わらず説明されてきた。これらは、単一相、複相の、また、長引くというパターンである27。単一相反応では、症状は食品を摂取した直後に現れ、数時間持続する。複相反応では、速い相と遅い相は1〜8時間の間隔で分離される。長引くアナフィキラシー反応では、症状は緩和されることなく5〜32時間持続する。
生命を脅かす食品誘発のアナフィキラシーを経験する人々の多くは、ぜん息を含むアレルギーの多数の臨床的徴候を示し、原因とされる特定のアレルゲンに対し明確なIgE抗体をもつ28,29。生命を脅かす反応の原因である食品が含まれるが、ピーナッツ、甲殻類(カニ、エビ、ロブスター、ザリガニ)、堅果類、牛乳、卵に限られない。生命を脅かす反応を引き出す食品のより複雑なリストは、「アレルゲン性食品」に載っている28,29。死亡の多くは、不注意にもこれらの食品を自宅外(レストランやパーティーなど)で、また変形された形で(ペストリー、キャンディー、サラダ、サンドウィッチ、オードブルなど)で摂ったアレルギーをもつと証明された人々で起こる。
アレルギー源の食品に暴露されたアレルギーであると判った児童および青年のグループにおける死亡と死亡にほど近い状態の主要な違いは、いかに速くエピネフリンが出されるかということであった。大抵の児童はエピネフリンが1時間以内に出されれば生存する29。
V-B 口腔アレルギー症候群(OAS:Oral Allergy Syndrome)(果実・野菜症候群)
木(とくに樺)、草や雑草(とくにヨモギ)、ブタクサの花粉にアレルギーをもつ人々において症状が起こるのは、新鮮な果実や野菜のなかのアレルゲンと口腔内で暴露してからである8−11。OASの初期症状は、大抵新鮮な果実や野菜を摂取している間に口腔がひりひりする感じを含み、引き続いて唇、舌、口腔粘膜のかゆみが生じる9。口腔部の腫れが症例の2分の1で発生する。多くの症状は口腔内に限られるが、いくつかの症例では限られた症状も全身の症状、特に鼻詰まりや鼻水、あるいは結膜炎に、また、少数の症例では全身のアナフィラキシーに関連している10。
症例の大多数において、症状は食品を摂取してから5分以内に始まる30。大抵、限られた症状が30分以内に和らぐ。ほぼ全ての症状は、特定の害となる食品の摂取を中止して90分後に、また、水で口をすすいだ後に、療法を取らなくても消える。
OASに関連した食品は、ブタクサによるアレルギーをもつ人々ではメロンやバナナ、樺の花粉アレルギーの人々ではリンゴ、ナシ、ジャガイモ、へーゼルナッツ、ニンジン、セロリ、キウイ、草アレルギーの人々ではモモ、トマト、セロリ、ヨモギによるアレルギーの人々ではセロリを含む9,10,30。
文書で証明されたラテックスによるアレルギーの人々のなかには、バナナ、クリ、アボカド、キウイに対しアレルギーを示す者もいる31−33。情報によれば、天然ゴムのラテックスのアレルゲンとブタクサおよびイチゴツナギの花粉に交差反応の存在が示されている34。
V-C 食品による運動が引き起こすアナフィキラシー(F-EIA)
運動が引き起こすアナフィラキシー(EIA)は、激しい運動後のじん麻疹、血管浮腫、ショック症を含む身体アレルギーの形態の一つである。ほとんどの運動が含まれるが、合衆国ではジョギングが最も頻繁に原因となっている35。この症候群は、運動が引き起こすぜん息やコリン作動性じん麻疹と区別されなくてはならない。EIAの正確な病原生理学は知られていないが、誘発されたヒスタミンの解放は1つの要因である。199名のEIAの人々に関する疫学上の調査により、症例の54%において特定の食品を摂取する過程がEIAにかかる付加的な要因であることが示された35。
F-EIAに関連する食品にはセロリ、エビ、カキ、鶏肉、モモ、小麦が含まれる。遅い発病のF-EIA反応の証拠がいくつか存在するが、おそらく小麦アレルゲンの製品を消化する反応によるものである36。最後に、F-EIAの人々においては、いかなる型の食事の摂取も激しい運動をして数時間以内に症状を早めることがある。
V-D アトピー性皮膚炎(AD)
ADは、病原菌が免疫および非免疫要因の両方を含む幼年時代の初期の皮膚状態である。
DBPCFCを含む大きなシリーズにおいて、ADの児童の約3分の1が食品にアレルギーをもっていた37。これらの症例では、ADに関連した湿疹が少なくとも部分的にIgE媒介の遅い相のアレルギー性食品反応によって説明される。ADの児童にDBPCFCを用いる研究は、児童が大抵卵、牛乳、ピーナッツ、小麦、大豆のような1種か数種の食品にしかアレルギーを示さないことを示した。試験管内の研究データは、活性ADをもつ患者の好塩基球は患者がアレルギーを示す特定の食品を日常摂取する際に自然にヒスタミンを解放することを示した38。これらの状況下で仲介解放は局部的なIgEによるヒスタミン解放要因によって調整される。AD患者の食事から原因となる食品を除去した後に、自然発生の試験管内好塩基球ヒスタミン解放傾向は、皮膚状態に付随する改善とともに消滅する38。
ADの児童と食品アレルギーは、皮膚テスト(ST:skin
testing)および食品に特有のIgE抗体に対する試験管内テストに比較され、DBPCFCの数値を評価する目的で研究されてきた。たとえば、テストの結果は、食品の急速な悪化と関連する母親の病歴とほとんど関係していなかった37,39。アレルギーSTおよび僅かではあるが特定の食品アレルゲンに対する試験管内テストは、続くDBPCFCテストが最終診断に使用された時にどの食品が関連するかを示した39。
V-E 胃腸の反応
GIの徴候および症状は、食品アレルギーの最も一般的な臨床徴候である。これらには、口腔部のかゆみや腫れ、吐き気、嘔吐、下痢、吸収不良、(児童における)大便の血液およびタンパク質損失が含まれる40。これらの反応は、直接のIgE媒介反応、あるいは、食品が引き起こす大腸炎に見られるような遅れた反応である。アレルギーをもつ児童では、症状は幼少時に始まり、通常の乳児調合乳に見られる牛乳タンパク質に対する不耐性やアレルギーに関連する6。
V-E-1 食品が引き起こす大腸炎
食品が引き起こす大腸炎、タンパク質不耐性、牛乳過敏腸炎のような児童におけるGI食品反応を区別するためにいくつかの語が使用されてきた。小腸、大腸の両方が含まれる。小腸は粘膜の縮小、絨毛萎縮、クリプト過形成、リンパ球・形質細胞・好酸球の炎症性浸透を含む様々な損傷を受ける40。下痢が長引く場合、脱水症状、吸収不良が起こり、成長できないことがある。
牛乳が引き起こす大腸炎は、大腸炎症候群に関連しており、潰瘍性大腸炎に非常に類似している。生体組織検査が診断し、腸壁における好酸球の炎症性浸透を説明するために用いられる4。粘膜が脆いために、潜血あるいは全血液の損失が起こることがある。
これらの症候群では、GI症状は後で(数時間から数日後に)起こる。これらは、しばしば食事で摂取される牛乳と関連があると証明される。だが、これらの反応は、IgE媒介の反応(アレルギー)によるものであると断定的に証明される41。そのような反応も魚、大豆、米、鶏肉に発生することがある。
V-E-2 好酸球胃腸炎
好酸球胃腸炎は児童と成人の両方に影響を及ぼす。この病気は、腸壁の好酸球浸透、末梢血液好酸球増多症、GI症状によって特徴づけられる4,40,42。臨床症状の程度は、病気の関わる程度による。患者は痙攣性の腹痛、吐き気、嘔吐、下痢、排泄物の血液損傷を起こす。成長妨害(児童)や体重減少(成人)を起こすこともある。
好酸球胃腸炎の報告された150症例のうち2分の1は、重度のアレルギーをもつ人々に見られた。児童では、牛乳がこの条件に含まれる主要なアレルゲンである30。この条件の成人では、多数の食品アレルギーが一貫して証明されている。好酸球胃腸炎のアレルギー形態をもつ患者は、高いIgE総レベルをもち、ぜん息や鼻炎を含むアレルギーの付加的な臨床上の徴候を示す。病気は食事やステロイドにより管理される。
V-F 呼吸器反応
食品アレルギーは、上部呼吸器(鼻炎)と下部呼吸器(ぜん息)症状の主要な原因ではない43。だが、食品に対する全身のアナフィラキシー反応の間に、一般に花粉症やぜん息のような症状をおこすことがある26。食品に対し深刻な生命を脅かすアナフィラキシーを患った多くの人々は、多くの物質に強くアレルギーを示し鼻炎やぜん息の両方を発症する28,29。食品が鼻炎やぜん息を引き起こすというより確信的な証拠のいくつかには、主としてADのアレルギーを現す児童の約3分の1がDBPCFCの間にアレルギーをもつ食品に上部および下部の呼吸器症状を示すという報告が含まれる37。
牛乳のタンパク質が引き起こす牛乳タンパク質への沈降素と関連した再発性肺浸透が特徴づける乳児における一つの症候群が説明された44。これらの乳児のなかには、肺に鉄の澱をもつ肺ヘモシデリン沈着のある者もいた。この幼年時代の症候群は、今日ほとんど報告されておらず、成人において同様の病気は報告されていない。病原には、生後数日は牛乳を基にした調整乳を求めることが含まれると考えられており、これらのタンパク質が肺に入ると、多量の牛乳に特有のIgE抗体を生産する高免疫反応が起こる。続けて牛乳を与えると、細胞媒介の組織反応同様、免疫錯体を引き起こす45。浸透は牛乳を排除すれば解決する。
VI.グルテン過敏腸症
セリアック病あるいはグルテン過敏腸症は、児童ならびに成人における永続的な小麦あるいはグルテン不耐性の病気である46。この病気は、アメリカ合衆国よりもイギリスやヨーロッパ諸国で多く見られる。診断は、異常な短い(平らな)または欠けた繊毛、クリプト過形成、固有層におけるリンパ球および血漿細胞の細胞の炎症性浸透を証明する空腸の生体組織検査の結果による。これらの腸壁変化は、患者がグルテンを含まない食事を与えられるようになると消滅し、グルテンを再び摂取するようになった時のみ再発する。臨床的に、慢性の下痢、貧血、くる病、筋肉の消耗を患った敏感性の「太鼓腹の」成長の遅い児童についての古いテキストの記述は、今日ほとんど見られない。一般に、疾患はそれほど厳しいものではなく、児童に見られる成長の遅れや貧血、成人に見られる慢性の体重減少やおさまらない下痢のような単一の諸徴候は、調査や介在を必要とする。
この病気の病原はなお討議中であり、グルテンに対する有毒反応はなお可能であるが、グルテンに対する細胞媒介の免疫過敏性を原則的な病原菌の出来事として証拠が示されている46。セリアック病の患者の中には、関連した皮膚病である疱疹上皮膚炎(DH:dermatitis
herpetiformis)を患うものもいる。DHの患者の多くは、セリアック病の生体組織検査と区別がつかない簡単な腸部腹部の生体組織検査を受ける。多くのDH患者はグルテンなしの食事に好ましい反応を示す。セリアック病の患者には、一般の人々に比して悪性のリンパ腫が発生する50〜100倍増のリスクがある。
VII.職業上かかる食品アレルギー
成人における食品アレルゲンに対する反応も、職業環境で発生する(表3)。職業上の暴露によって、感染しやすい人々はしばしば呼吸器や皮膚を通じ食品タンパク質に対するIgE過敏にかかる21,23,47。これらのアレルゲンに繰り返し暴露されると、鼻炎、気管支ぜん息、結膜炎、接触性および全身性じん麻疹、またいくつかの例では全身性アナフィラキシーが発症する21。
表3
食品あるいは関連産業において使用され職業性ぜん息や鼻炎を引き起こす素材
動因 | 職業上の暴露 | 動因 | 職業上の暴露 |
動物性製品 | 植物/きのこ類 | ||
海洋性動物 | 穀類/粉 | ||
エビ | 魚介類加工 | 粉(小麦/ライ麦) | パン職人、製粉業 |
カニ(タラバガニ、ズワイガニを含む) | 魚介類加工 | ソバ | 食品業者 |
カキ | カキ養殖業者 | 米 | 精米業 |
エビの粉 | 養殖 | 大豆 | 農業従事者 |
魚粕 | 工業労働者 | 穀類粉末 | 穀類業者 |
真珠層 | ボタン工場労働者 | 香辛料/ハーブ | |
ホヤ | カキの殻空け職人 | ニンニク | 工場労働者、農業従事者 |
貝 | 貝粉砕業 | コリアンダー、メース、ショウガ、パプリカ | 工場労働者 |
農作物 | シナモン | 香辛料業者 | |
牛 | 酪農業者 | パプリカ植物 | 温室労働者 |
豚 | 養豚業 | 酵素 | |
家禽 | 家禽業 | ブロメリン | 工場労働者 |
キジ、ウズラ、ハト | 飼育者 | パパイン | 工場労働者 |
卵 | 卵加工業、パン職人 | その他 | |
虫 | コーヒー | コーヒー工場労働者 | |
家禽 (トリサシダニ) |
ダニ家禽業 | 茶 | 茶工場労働者、茶畑労働者 |
穀類貯蔵ダニ (イエニクダニ駆除?) |
穀類業者 | ハーブティー | ハーブティー業者 |
ミツバチ | ミツバチ飼育者、蜂蜜加工業 | 花粉 | サトウダイコン、ヒマワリ、ブドウ業者 |
Bee-moth | 魚餌飼育者 | グルテンのアルカリ加水分解誘導体 | パン職人 |
酵素 | アルテリナリア/アスペルギウス属 | ||
ペプシン | 製薬業 | コロフォニー | 家禽販売業 |
トリプシン | 製薬業 | ホップ | 醸造所化学者 |
すい臓酵素 | 製薬業 | コンニャック | 食品業者 |
その他 | マッシュルーム | スープ製造業者、栽培者 | |
スピラマイシン | ヒヨコ飼育者 | かびアミラーゼ | パン職人 |
ポリビニル塩化物またはラベル接着剤の熱分解製品 | 肉包装業者 | バーティシリウムarbo-atrum | 温室労働者 |
O’NeilおよびLehrerより変更
職業上かかる食品アレルギーの最も重要な徴候は、職業性ぜん息である。成人がかかるぜん息全体約2〜15%は、薬品、毒、天然タンパク質への職業上の暴露によるものである。
たとえば、職業性ぜん息にパン職人の10〜30%48、ズワイガニ工の15%23、熟していないコーヒー豆に暴露された職人の3%49がかかっている。
職業性ぜん息は、炎症、薬理学上あるいはIgE機構の結果である。IgE媒介の職業上の食品アレルギーの最も明確な例は、小麦粉への暴露によるパン職人のぜん息48、ズワイガニをゆでる際の水蒸気に暴露されるズワイガニ加工業者23、ニンニクの粉に暴露される香辛料業者25、エアゾール卵タンパク質に暴露されるパン職人24である。
パン職人のぜん息では、小麦粉とライ麦が通常病因学上の動因である。アレルギーが起こるのは、呼吸器を通じてであり、その人物と家族のアトピー歴、暴露の持続、職場での小麦粉とライ麦の粉レベルと相互に関係がある。パン職人実習生において、小麦粉に対する陽性の直接的な皮膚テスト反応は5年以上の暴露期間にわたって8%から30%に増加した48。ぜん息をもつパン職人は、たいてい自分の焼くパンを食べる。だが、呼吸器を通じてアレルギーとなるズワイガニ加工業者や香辛料業者は、食事で調理されたカニやニンニクを摂取するとやがて反応を示す23,25。過敏症繊維性肺炎は、食品に対する職業上の反応のもう一つの徴候である。この病気では、カビ、昆虫、あるいは食品(動物、魚、鳥が源)からとられた多数の異なるタンパク質への激しく長引いた呼吸器暴露により、高免疫反応および多量のIgE抗体に至る。これらの原因となるタンパク質をひき続き基準として再暴露することは、間質および肺胞を含む肺における拡散した単核浸透によって特徴づけられる免疫錯体反応を引き起こす47。
VIII.食品不耐性
食品に対する多くの逆反応は、免疫形態を含まない機構によって媒介される。これらの反応のなかには、アレルギーと混同されるものもある。これらの反応は、自然発生する毒薬,微生物や化学上の食品汚染菌、代謝障害、特異体質反応によることがある50。
Scromboid魚中毒は、微生物が引き起こす食品汚染菌に発生する反応の例である。この症例では、Scromboid魚(マグロ、サバ、カツオなど)やそれ以外の魚(マヒマヒあるいはムツ)は、腐ってしまうが調理して食べられる。モルガネラmorganiiや肺炎桿菌のような魚の組織に存在する細菌は、ヒスタミンをつくり出す脱炭酸ヒスチジンをもつことがある。そのような魚を摂取する人々は、ぴりっとしたコショウのような味、口腔内にひりつく感じ、摂取したヒスタミンによる顔面紅潮、頭痛同様、続いてしばしば吐き気、嘔吐、腹部の痙攣、下痢を経験する。また、じん麻疹、ぜん息、ショック症も発症する。一般に、症状は腐った魚を摂取して30〜60分以内に始まり、2〜8時間持続する51。
ヒスタミンを含む他の食品には、チーズやある種の赤ワインがある51。東洋の食品は、特に調理に発酵が含まれる場合、ヒスタミンを含むことがある52。
食品アレルギーのいくつかの症状に擬態した食品における内因性の薬理学上の動因には、チラミン、フェニルエチルアミン、セロトニン、カフェイン、テオブロミンが含まれる52。これらの天然物質は、特に偏頭痛のある患者で頭痛を一層悪化させる要因であるが、しばしばこれらの報告はきちんと証明されていないことがある。
一般に食品には自然発生する毒薬が含まれるが、幸いにも多くの場合消費される量は非常に少ないため、逆反応はほとんど見られない51。安全と誤解される安全でない食品の一例は、テングダケ、マッシュルームである。だが、「中毒」あるいは有毒反応が起こる時には、吐き気、嘔吐、下痢のようなGI症状以外にアレルギーのような症状が含まれることはほとんどない。微生物毒あるいは細菌などの伝染性動因により汚染した食品に対し同様の状況が存在する。食事後の逆反応の可能性を考える際に、これらの逆反応の型を覚えておくべきである50,51,53。
特定の食品を摂取した後の代謝反応は、特定物質を消化する個人の能力の差によるものであるか、あるいは付随する薬物治療、疾患の状態、栄養失調と関連している。たとえば、血管作動性アミンは、モノアミンオキシダーゼ(MAO:monoamine
oxidases)と呼ばれる等酵素群によって物質代謝で変化させられる。抑制のためにMAO反応抑制剤を使用して治療される患者では、チラミンを豊富に含む食品(チーズなど)の摂取が急速な血圧上昇や激しい頭痛を引き起こすことがある。この反応は、チラミンの抑制されない作用あるいはエピネフリンまたはノルエピネフリンの分泌の間接的な作用によって引き起こされ、薬理学上の動因である副腎MAO代謝不足が引き続いて起こる51。抗結核医薬品イソニアシドを摂取している患者においてマグロを摂取している間に、同様の反応が発生した。イソニアシドは通常魚肉に存在するヒスタミンを退化させるヒスタミナーゼを抑制するため、反応が起こった53,54。
おそらく、アレルギー反応と混同される食事が引き起こす最も一般的な問題は、GI管におけるラクターゼ欠乏による乳糖不耐性である56。乳糖は、乳製品に見られる水溶性二糖類である。腸刷子縁におけるラクターゼ酵素は、吸収の前に乳糖を単糖成分に分析する。この酵素が欠乏するか全く存在していない場合には、消化されない乳糖は、腸で発酵し、ガスやむくみ、腹部の痙攣、鼓腸、ゆるい便の症状が結果として生じる。
先天的なラクターゼ欠乏は稀である。初期のラクターゼ欠乏は、大抵乳児の離乳期後、思春期前に現れる50。乳児期あるいは幼児期のGI感染は、この疾患の発症を早めることがある。ラクターゼ欠乏がひとたび確立されると、適度な量の乳糖の摂取(全乳100〜240mlで5〜12g)が感染しやすい人々に症状を引き起こす50。ラクターゼ欠乏による二次(後天的)乳糖付耐性は、アルコール依存症、スプルー、牛乳アレルギーを含む多数の臨床疾患を引き起こす。ロタウイルスなどのGI感染後、一時的に発生することもある56。自然発酵食品は、時としてラクターゼ欠乏の人々に耐容性があることがある57。
IX.食品添加物に対する逆反応
添加物は加工食品に加えられることが多い58。これらは、食品を保存し、成分を安定させ、風味や色素によって食品の魅力を増加させるのを助ける目的で加えられる。時にはアレルギーのような反応と関連した食品添加物は、抗酸化、ブチルヒドロキシアニソール(BHA:butylated
hydroxyanisole)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT:butylated
hydroxytoluene)、アスパルテーム、色素、グルタミン酸ナトリウム(MSG:monosodium
glutamate)、benzoateナトリウムを含む。そのような反応との関連のため、食品添加物(亜硫酸塩、黄色5号など)のなかには食品表示に明確に表示されなくてはならないものがある。アレルギーのような逆反応は、一般に(1)じん麻疹、血管浮腫、一般的なアナフィラキシー(2)ぜん息に分類される57,58。
IX-A 皮膚反応/アナフィキラシー反応
Sporadicの報告は、じん麻疹をタルトラジンと関連させた(黄色5号)。これらの研究の大多数は、きちんと制御されていない。DBPCFCの厳格な基準を用いると、タルトラジン摂取後、じん麻疹が発症すると判明したケースはほとんどなかった59。DBPCFC技術を用いた際にサンセットイエロー(黄色6号)に対し2名がじん麻疹を発症したという唯一の報告もある60。じん麻疹についての逸話の報告に関係した他の食物色素は、アマランス、エリスロシン、紅色(それぞれ赤色2号、3号、40号)、食用青色1号、インジゴチン(それぞれ青色1号、2号)である57。
少なくとも2つの亜硫酸塩が引き起こすアレルギー反応についての文書で証明された報告がある58。患者はそれぞれ亜硫酸塩に対し陽性の直接反応IgE皮膚テストを示し、IgE亜硫酸抗体の受動性転移が可能であった61,62。
BHAあるいはBHT保存料に対するじん麻疹の報告は稀である。だが、慢性のじん麻疹を発症し、食事からこれらの保存料を除去した後に回復した2名の患者は、DBPCFC技術を用いたこれらの化学動因に陽性を示した63。アメリカ合衆国で報告されたbenzoateナトリウムを含むじん麻疹の証明された症例はないと思われる58。
MSGに対する報告されたcutaneous逆反応には、発汗、顔面紅潮、顔および胸部の締め付けや火照り、「皮膚がむずむずする」感じが含まれる57。これらの症状とMSG消費との関係は、多大な研究と論議を必要とする問題であった。東洋の食事は、時としてMSGを数グラム含むことがある。この症候群における症状のなかには、中国料理店で出されるいくつかの食品の高ヒスタミン含有量によるものがある52。MSGによって再現できるじん麻疹の証明された(DBPCFC)の症例はなかった。
アスパラテームが引き起こすじん麻疹および血管浮腫の2つの症例は、DBPCFCによって確認されると報告された64。これらの2つの症例にも関わらず、アレルギーのようなアスパルテーム反応がアメリカ合衆国及びカナダで研究されると、研究者はじん麻疹と血管浮腫、DBPCFCを用いたアスパルテーム暴露の間の明確な関係を実証することができなかった65。さらに、結合した単盲法、二重盲法プラセボ管理研究の結果から、他の研究者はアスパラテームにアレルギーを示すと考える人々は再現できる反応を示さないと報告した66。
IX-B ぜん息
非IgE媒介ぜん息反応と関連した主な動因は、亜硫酸保存料(メタ重亜硫酸塩ナトリウム[Na2S205など])および関連した化合物、さらに硫化酸素(SO2)である。一般に害となる食品には、亜硫酸処理のサラダ、アボカド料理、酢、ソーセージ、乾燥野菜、果実飲料、サイダー、ビール、ワインが含まれる50。
ぜん息患者は、1.0ppm以下の硫化酸素に暴露されるとゼーゼー言う58。この観測に従い、特に1980年初頭に、レストラン、特にサラダバーの亜硫酸塩動因で処理された食品を摂るとゼーゼー言うぜん息患者についての一連の報告があった67。
亜硫酸塩による激しいぜん息悪化の原動力は、しばしば亜硫酸塩保存料を含む食品が咀嚼され、さらに/あるいは嚥下されると解放される硫化酸素ガスの吸入である68。さらに、選ばれた人々では、あまり重要ではない亜硫酸オキシダーゼ酵素欠乏が報告された。他の者では、亜硫酸塩に対する稀なIgE媒介反応が重要なことがある58。ぜん息患者の約3.9%は、亜硫酸塩あるいは硫化酸素による激しい発作のリスクにある69。これらの患者のうち、深刻なあるいはステロイドによるぜん息患者ではリスクが約8.4%であり、軽い症状から中程度のぜん息患者では0.8%である。食品包装上の亜硫酸塩表示をより必要とし、新鮮な果実、ジャガイモ以外の野菜への亜硫酸塩の使用を禁じるためにアメリカ合衆国の連邦指針が変更されたため、また食品産業が適用するいくつかのものに対し亜硫酸塩の代用品を採用したため、亜硫酸塩が引き起こすぜん息の報告はほとんどなかった。
レストランでMSGを含む食品摂取後、亜硫酸塩が引き起こすぜん息に類似した激しいぜん息の発作が出た患者は少数であった70。だが、DBPCFC研究において、他の研究者は口腔内7.5gまでのMSGが相当なぜん息を引き起こす、あるいはメタコリンに対する気管支反応を変更するという主張を実証することができなかった71,72。過去にぜん息を引き起こすものとされた他の食品添加物はタルトラジン(黄色5号)である58。多数の報告は、タルトラジンの摂取がぜん息の悪化に関連すると主張した。だが、特にアスピリン過敏症のぜん息患者において、より近年の、出来の良いDBPCFC研究はこの関連を確認することができなかった59,73。
X.食事要因によって影響されるその他の臨床反応
X-A 乳児疝痛
科学上の確証が実際にほとんど、あるいは全くない時に食品アレルギーが役割を果たすという主張がなされた多数の疾患がある。このそれぞれの状況において、食事はまだ定義されていない役割を果たす。乳児疝痛はそのような症例である。この症候群は、しばしば牛乳アレルギーや不耐性について論じる際に言及される40。乳児全体の約20%は疝痛を発症する。この疾患は自己に限られ、乳児や母乳を与える母親の食事の型に関わらず発症する74。照査された研究では、乳児に対する増加した動作や注意のような食事以外の介在が疝痛を起こす痛みを制御するうえでいかなる食事上の操作よりも役に立つことがある75。
疝痛を発症した乳児に関するある照査された研究において、研究期間のあいだに通常の牛乳を基とした調整乳では約25%が自然に回復した一方で、25%は大豆を基にした乳児用調整乳で回復し、50%はカゼイン加水分解酵素乳児用調整乳で回復した76。乳児の疝痛の経過に影響を及ぼすこれらの食事上の違いに対する説明は全くなかったが、原因としての食品アレルギーはいくつかの症例で関係があるとされてきた。
X-B 行動の変化
食事構成成分に対する食品アレルギーあるいは他の型の逆反応は、一般に機能亢進、攻撃性、無作法、不充分な学習性のような行動上の問題に関連があると言及されてきた77。
おそらく行動を食品の逆反応に結びつける最も広く知られた説は、食品添加物、とりわけ着色料やフレーバー、保存料が天然のサリチル酸塩同様に注意欠乏症(ADD:attention
deficit disorder)の児童に運動亢進を引き起こすことがあると提言した1960年代半ばのFeingold78の説である78。
着色料、天然のサリチル酸塩、保存料を欠いたFeingoldあるいはKaiserの永久(KP)食の使用について当初熱意があったが、着色料研究に基づいたその後の分析は、KP食は機能亢進の児童の約2%にのみ役に立つらしいと結論を下した79。ある研究は、機能亢進であるADDの児童、だが活発に行動する正常でない児童が、プラセボではなく着色料混合物に接した際に特別な研究室学習テストにおいて革新的に悪く振舞うことを見出した80。この研究は、着色料が医薬品のような薬理学上の動因として機能することができ、行動や学習に影響を及ぼすという結論に導いた。この問題は、運動亢進であるADDの少数の選ばれた人々において臨床上重要であると考えられた。これらの研究は、ADDの児童を助ける食事の使用を取り巻く熱意を抑えると思われたが、1989年のカナダの報告は再論争の火をくべた77。24名の就学前の機能亢進な少年のうち12名の行動が人工着色料、MSG、保存料、カフェイン、チョコレートおよび家族が子供がアレルギーを示すと信じる「いかなる食品」を用いない食事で改善した81。さらに、今日一致しているのは、運動亢進が食事によって影響を受けるならば、その効果は事実免疫学的またはアレルギー性であるという証拠は全くない77。
運動亢進および攻撃的な行動も砂糖の含有量の多い食事によるものである77。砂糖アレルギーという語は誤称である。この疾患は、アレルギーに全く関係がないし、いかなる免疫機能も含まれない。照査された研究は、砂糖が運動亢進の児童において行動上の逆効果を引き起こす証拠はほとんどあるいは全くないことを示した82。研究のなかには、実際にこれらの人々における食事に含まれる砂糖の鎮静効果を証明するものもある。さらに、青少年非行者および正常な人々を含む将来の二重盲アスパラテーム制御食事研究は、食事における砂糖(スクロース)に対する逆反応の証拠を証明しなかった83。
X-C 偏頭痛
頭痛は、一般市民における共通の疾患である。より深刻な偏頭痛も相当行き渡っている。成人女性の25%、成人男性の15%、15歳までの児童の5%までがこの疾患で悩んでいる77。偏頭痛は家族に遺伝している。偏頭痛患者の63〜88%には、偏頭痛を患う近親者、遠縁者がいる。人口の約20%が含まれるアトピー性疾患も家族に遺伝している。これらの事実を心に留めると、アトピー性の人々も偶然偏頭痛になることがあると仮定することは不合理である。実際は、偏頭痛と食品アレルギーの関連が19世紀以来定期的に、大抵逸話の報告で示された77,84。
食事と偏頭痛のあいだの関連を支持した近年におけるDBPCFC技術を利用したいくつかの研究が存在した85−87。104名の成人偏頭痛患者のうち、15%は再現できる二重盲プラセボ管理の明白な食品に関連した偏頭痛であった87。だが、偏頭痛のある児童のうち、食事が偏頭痛の型を改善した児童においてさえ、食品に対する皮膚テストとの直接の関連がなかった85。偏頭痛をもつ36名の児童を伴ったある研究において、食品アレルギー皮膚テストも食品に対する逆反応の歴史も、頭痛を伴うDBPCFCに反応する患者を区別することができない88。43名の成人偏頭痛患者を伴った別の研究においては、直接の皮膚テストの結果は、患者がDBPCFCに頭痛で反応する特定の食品を選ぶうえで役立つと思われる86。偏頭痛になりやすい人々についての多くの研究は、頭痛もちの成人と正常な人々のあいだにある免疫学上の違いを全く示さない84。
食事が引き起こす偏頭痛における特定の食品を摂取することで化学が仲介する解放を含むいくつかの証拠がある。偏頭痛の徴候に関連した特定の食品を摂取した後に高レベルのプラズマ・ヒスタミンを有する3名の患者が報告された86。血中ヒスタミンおよびPGF2α(プロスタグランジンF2α)の3倍増が証明された牛肉の摂取後、再現性の頭痛を患う1名の患者も報告された89。最後に、食品が引き起こす偏頭痛を患った5名の他の患者に3倍から38倍プラズマ・ヒスタミンの増加および頭痛症状の徴候をもつPGD2(プロスタグランジンD2)の増加が見られ、食事摂取の4〜6時間後にPGD2が二度目に上昇した90。
要約すると、IgE媒介の食品アレルギーは、たとえあるとしても、偏頭痛の病原においておそらくほとんど役割を果たさない。食事は、明らかに少数の人々において役割を果たす。選ばれた患者では、偏頭痛病原生理学は化学が仲介する解放を含むことがある。
XI.論争を招く概念
アレルギー性緊張性疲労症候群は、運動亢進、不眠症、不安、無関心と疲労の交互の発生の過程を示す児童のことをさす77。この症候群は、かつて食品アレルギーと関連すると考えられた。だが、そのような関係を証明するきちんと計画された臨床上の研究は全くなかった。
慢性疲労症候群の診断は、特に成人で普及した。激痛、arthralgias、筋肉薄弱、過熱あるいは寒気、うつ病、無関心、頭痛、不眠症、喉の痛み、リンパ節の痛みを含む他の体質上の症状に関連した長続きするあるいはなかなか治まらない疲労の複合症状について多数説明された77。これらの患者のうち何人かに多数の免疫異常が報告された。食品アレルギーもしくは食事との関係は証明されていないが、この疾患と診断された患者は高い割合で皮膚テストによって定義されたアトピーでもあることをある研究は示した91。
今世紀前半以来、食品および食事はリウマチ様関節炎の病原に役割を果たすと考えられてきた77。関節炎が食品アレルギーに一貫して関連したことはないが、単盲および複盲の手当たり次第に管理された研究は、食事操作がこの疾患をもつ患者の少数(5%)においてリウマチ様関節炎に影響を及ぼすか悪化させることを示した77。
XI-A 偽食品アレルギー
食品アレルギーによると考えられる一連の疾患をにアレルギー医に示した23名の成人集団が1983年の研究で詳細に調べられた92。少数のこれらの患者には、アレルギーのような症状があった。残りの患者は、うつ病、疲労、頭痛、精神神経質、不調、myalgia、関節炎、無関心の症状を示した。これらの患者の多くは、ある程度まで食事を制限したので、栄養不足の徴候もあった。全ての患者は、アレルギー医にみてもらった後に心理学者によって個々に査定された。患者はそれぞれ食品アレルギーを査定され、重要であると考えられる食品に対しDBPCFCがあった。4名の患者がアレルギーであることが判り、これらの患者には典型的なアレルギー型を示す症状があった。心理学者によって検査された際に、全ての患者は正常な心理にあった。残りの19名の患者においては、DBPCFCの食品に対する逆反応は見られなかった。これらの19名の患者は、大抵アレルギー性疾患によらない体質上の症状を示した。心理学者によって検査された際に、全ての患者に心理的な問題、特にうつ病があることが判った。食品摂取の結果に直面した際に、これらの患者の多くは、その後かつてアレルギーを示すと信じた食品を摂取することができた。残りの患者は、時が過ぎ、また心理カウンセリングを受けることによって、正常の食事を摂ることができた。Pearson93は、人が食品アレルギーを患うのは、食事を不必要に栄養上不健康な程度まで制限するためである、という誤った信念を示す偽食品アレルギーという語を創りだした。
XII.食品アレルギーの診断
XII-A 歴史
食品アレルギーをもつ疑いのある患者の歴史には、(1)問題ならびに典型的な症状の記述(2)摂取される食事および特定の食品もしくは食品暴露の他のルートに関連した症状の始まりと持続のタイミング(3)症状の頻度(4)食品の暴露に関連した他の状況が含まれる。大多数の状況において、患者が訴える症状が食品アレルギーによって引き起こされる場合には、その人にはアレルギー歴がある(AD、ぜん息、アレルギー性鼻炎など)。食品アレルギー性の人々におけるぜん息の存在は、深刻な生命を脅かす食品反応を示す少数の人々のリスク要因と考えられている。
食品が急性じん麻疹や全身のアナフィラキシーのような即座の反応を引き起こし、特定の食品が一般にこの事象に関連しており時折摂取されるならば、その食品は患者の症状の原因らしいと容易に確認することができる。他方で、患者にADやぜん息のような長続きするもしくは慢性の問題があるならば、来歴によって特に関連する食事の成分を正確に指摘することは困難であることが多い。事実、DBPCFCによって確証された食品アレルギーを患ったADの児童についての研究において、母親が原因であろうと確認した食品にはテストとの関連性がみられなかった37。
アレルギー症状を引き起こす食品は明らかではなく、広範囲にわたる詳細の研究を必要とする。稀な食品アレルギーの例には、マリネにされた鶏肉を摂取している際に2つの全身反応を示し、DBPCFCによってコリアンダーの香辛料に対しアレルギーであることが示された患者94、「乳」製品以外に含まれる牛乳タンパク質に反応を示した牛乳にアレルギーを示すとされる人々95,96、ダニ・タンパク質に汚染された商業的インスタント食品を用いて焼かれた揚げ物を摂取している際にアナフィラキシー反応を示すハウスダストのダニにアレルギーをもつ患者97、コレステロールを下げるのを助ける成分と見なされたオオバコを含む朝食のシリアルを摂った後じん麻疹を発症した暴露から便増量剤までオオバコに敏感な看護婦98が含まれる。
XII-B STと試験管内分析評価
Intrademal技術は食品抽出物を用いた不特定の陽性反応の頻度を増加させるので、食品アレルギーに対するIgE抗体を検出するためのアレルギーSTは、ほとんどepictaneousルート(刺したり傷つけたりする技術)によってのみ成される4。食品の抽出物は、大抵1:10の容量濃度の重量で背中あるいは前腕の皮膚に塗られる。刺したり傷つけたりするテストは、15〜20分で読み取られる。その結果生じるみみずばれは、陰性の希釈剤対照試料より3mm以上大きければ陽性である。DBPCFCによるIgE媒介の食品に対するアレルギー反応を示すほとんど全ての被験者がその食品に対するIgE皮膚テストおよび試験管内テストに陽性を示すことが実証された5,9,15。
商業的に入手できる食品アレルゲン抽出物が必ずしもテスト動因として確かであるわけではないと認識することは重要である99。IgE媒介の反応の原因であるアレルゲンは時には実に易動性であるので、口腔アレルギー症候群を引き起こすと疑われている果実および野菜を研究している際に、これらの品目のうちフレッシュジュースを用いたepicutaneous皮膚テストが必要なことがある30。
食品の抽出物を用いたSTは、食品に対する全身のアナフィラキシー歴のある人々の評価において注意して成されなくてはならない。これはSTが導入する微量の食品アレルギーが逆症状を引き起こすためである4。1つの選択は、たとえこれらのテストが幾分感度が低いとしても、試験管内分析評価においてIgE特有の食品アレルゲンを用いることである41。食品アレルギーSTは、広範囲にわたる皮膚病(AD、じん麻疹など)の人々もしくは皮膚テスト反応(鼻炎、じん麻疹など)を遮断する抗ヒスタミンを投与した人々において可能ではないことがある。これらの状態において、試験管内の抗原特有のIgE分析評価は役立つ。好塩基球脱顆粒テストは、食品アレルゲンに対するIgE媒介反応を評価するために用いられることがある。この型のテスト結果は、アレルゲン特有のIgE抗体の試験管内における測定によって得られる結果と比較できるが、一般に定期的に入手できるものではない4。
DBPCFCによって測定された食品に対する証明された臨床反応および陽性のアレルギー皮膚テストまたは試験管内テストのあいだの関係は、ADにおいてよく証明されてきた39。主要食品(牛乳、卵、ピーナッツ、小麦、大豆)に対するアレルギー皮膚テストが陽性であるならば、その食品に対するDBPCFCが陽性である見込みは約50%である。特定の食品に対するIgE皮膚あるいは試験管内テストが陰性であれば、DBPCFCがその食品に対し陰性である見込みはほぼ98%である4。DBPCFCにおいて陽性であることが示された食品では、IgE皮膚テストあるいはRASTTM検査が陽性であった4,19,39。
XIII.日誌、食事、食品摂取
食事日誌は、急性じん麻疹の孤立した発作のたびたびのエピソードを記録するうえで役立つ。消費される食品の記録は、これらの特定のエピソードを取り巻く他の出来事同様に、変化を狭め、害になる見込みのある食品を確認するのを手伝う。アレルギー反応にほとんど関連しないと思われる食品から構成される特定の食事は、食品アレルギーが(大抵陰性の食品アレルギー皮膚テストの)問題の原因であると思われないnabulous状況において、あるいは陽性のアレルギー皮膚テストが存在するが臨床的な活動歴のない状況において役立つことがある53。これらの状況において、全身のアナフィラキシーのような疑わしい深刻な生命を脅かす反応は全くない。特定の食事が家庭で2週間試される。その後、新しい食品は2〜3日の間隔で加えられる。牛乳、卵、小麦のような最も一般的な食品は、すばやく患者の栄養上健康な通常食に戻すために最初に加えられる。だが、与えられた症状群および食品に対する暴露のあいだの可能性のある関連について確実である唯一の方法は、人に試すことである4。管理された条件下の陽性のDBPCFCは、関連を確立する100。陰性のDBPCFCは、引き続いて試す手順において使用された食品を摂取することによって確認されることを必要とする。
DBPCFCは、食品の逆反応の病原調査を考察する研究を調査するために重要である。さらに研究が進む前に、実際に示された集団がその食品に反応を示すことを証明することが重要である101−104。陽性の食品は、逆の事象の機構を確立しない。陽性の食品は、食品アレルギーおよび食品不耐性において発生する。
食品反応は、食品に対するさらなる暴露の危険が厳しく生命を脅かすことがある場合、臨床研究所において大抵主張されない26。大抵、患者が一般にアナフィラキシーと関連があるとして知られる食品に対し明快な繰り返される反応(レストランでエビを食べて数分内に一般的なじん麻疹、血管浮腫を示す、ゼーゼーいうなど)を示す際には、害を示す可能性のある食品に対する試験管内分析評価のみが成される。このテストが陽性であるならば、食品アレルギーという仮定の診断がなされることがあり、患者は特定の食品を摂取しないように指示される。
患者がアナフィラキシー症状を示した食品に対する不注意による暴露の場合、患者はエピネフリン自己注射器あるいは伝統的なエピネフリン注射を使用するように指示される。これらの装置3つが必要なときに1つをすぐに使えるように患者に処方され配置される。患者は症状の最初の兆しである全身の食品アナフィラキシーがあると証明されるか仮定された場所に、その後発生した部分にエピネフリンを使用するように指示される26,29。患者は最初に抗ヒスタミン剤を使用しないように、あるいは「待って観察」しないように注意される。
SampsonおよびMetcalfe4はDBPCFC技術における以下の段階を主張している。
XIV.食品アレルギーの管理
A. 証明された食品アレルギー
害となる食品をアレルギー患者の食事から厳密に除去することは、食品アレルギーの診断が確立されてから唯一証明された療法である4。長期にわたってある種の食品を避けることは、特に加工食品を扱う際に、また自宅外のレストラン、カフェテリア、パーティーで食事を摂る際に困難なことがある。安全とされる食品を使って自宅で調理した「弁当」を持っていくことは、アレルギー性の人々に重要になる。栄養の維持は健康な食事を維持するために必要である4。健康の専門家は、食事、レシピ、一般的な食品アレルゲンもしくは食品添加物を含む加工食品のリストに関する情報を得ることができる105。患者支援グループは、食品アレルギーに苦しむ患者あるいは患者の両親に助けとなる。食品アレルギーを扱う際に、加工食品の適切な食品成分表示は患者にとって非常に重要である。
食品に対し仮定されたもしくは証明されたアナフィラキシー反応のある患者は、特に自宅外で、常にその食品への不注意による暴露に備えなくてはならない28,29。生死の差は、アナフィラキシー症状が始まった後にいかにすばやくエピネフリンが投与されるかによる28。
B. 低アレルゲン性乳児用調製粉乳
牛乳に対し食品アレルギーのある乳児の取り扱いは特に問題である。しばしば乳児は「神経質」または真性乳児疝痛の問題のために従来の牛乳を基にした乳児用調整乳から大豆を基にした乳児用調整乳に替えられる。そのような変更はいくつかの症例において長所をもつが、食品アレルギーのためではない76。大豆タンパク質に基づいた乳児用調製粉乳は、牛乳タンパク質によって引き起こされるスペクトルと同じ臨床反応のスペクトル、特にGI反応を引き起こした40,106−108。大豆アレルギーは、牛乳アレルギーに引き続いて直ちに起こることが多い。従来の乳児用調整粉乳に対するGIアレルギーもしくは不耐性のある全児童の約33〜50%は、大豆を基にした調整粉乳に耐容性をもつことができない109−111。従って、アメリカ小児科協会の栄養委員会は、従来の大豆を基にした乳児用調整粉乳が牛乳あるいは大豆の不耐性もしくは証明されたアレルギーの症例において使用されないことを推奨する109。
牛乳に対するアレルギー反応あるいは不耐性を証明した乳児に対し理想的な代用品は、(1)牛乳アレルギーあるいは不耐性をもつ乳児においてDBPCFCにより安全と証明されたもの4、(2)栄養になり正常な成長と発育を考慮したもの、(3)長期間味のよいものである。
不幸にも、現在、牛乳に対しアレルギー性あるいは不耐性の乳児用のための完璧な低アレルゲン性調整粉乳はない106。代わりとなる調整粉乳には、主としてカゼイン加水分解物、乳清加水分解物、結晶性アミノ酸から得られた調整粉乳が含まれる。全ての市場に出される調整粉乳には、明らかに少ないが、いくつかの報告された不耐性あるいは味覚の問題の例がある110−116。
C. 食品アレルギーの予防
与えられる前の母親の食事およびアレルギーの両親に生まれた子供に与えられる乳児食を操作することは、食品アレルギーおよびおそらく他の形式のアレルギーが予防されるという仮定のために何年にもわたり人気のある概念であった。4ヶ月だけ母乳を与えられたアレルギー性疾患のリスクにある(アレルギー性疾患の両親に生まれた)乳児において、18ヶ月までに発生するADの累積発生率および激しさが減少することに見出された15。特にこの研究において、数名の母親は、授乳期に牛乳、卵、魚、ピーナッツ大豆を避けていた。それ以外の母親は通常の食事を摂っていた。ADの発生率は、母親が制限されない食事を摂る母乳栄養児(44%)に比べて、母親が特別食を摂っている母乳栄養児のグループで低かった(22%)。他の研究では、母乳栄養もすぐれていることが判った117。
いくつかの照査された長期にわたる研究は、大豆を基にした調整粉乳が初期の食品アレルギー症状の発生あるいは長期にわたる吸入アレルギーの発生に影響を及ぼさないことを示した118−120。アレルギー性疾患を予防する食事の役割を評価するきちんと照査された研究は見直される必要がある120。予防策をとられている101名の乳児および母親のグループにおいて、母親は最終月および授乳期に牛乳、卵、ピーナッツを避けていた。母乳栄養でない乳児は、カゼイン加水分解物であるNutramigenを与えられていた。乳児は全員、牛乳、トウモロコシ、大豆、柑橘類、小麦を12ヶ月間、卵、ピーナッツ、魚を24ヶ月間、口にしなかった。185名の乳児と母親の照査されたグループにおいて、正規に受け入られるアメリカ小児科協会の摂食法に従っていた。アレルギーが1年で累積して行き渡ることは、予防策のとられたグループで(27%に対して16%)食品に関連した症状のように(16%照査に対し5%)少なかった121。だが、24ヶ月では、2つのグループで鼻炎、ぜん息、皮膚あるいはGIアレルギーの症状、吸入に対するIgE皮膚テスト陽性反応の発生率に全く違いはなかった。従って、短期間では、高リスクの乳児において食事が食品アレルギーの症状の発生率に影響を与えることがあるが、母親あるいは乳児の特別な食事が続いて起こるアトピー性疾患の発生に長期にわたって影響を及ぼすことはない。
XV.医薬品およびアレルゲン免疫療法の役割
長期にわたる抗ヒスタミン剤、コルチコステロイドの使用、口腔クロモリンナトリウムのような他の予防療法が食品アレルギーにおいて試された。そのうちの1つとして最小限の効き目以上のものがあると証明されなかった4。舌下食品点滴剤、皮下中和を含む口腔アレルギーの証明されない療法は効き目がなかった。使用されるならば、おそらく適切な情報に基づき同意を伴った研究に制限されなくてはならないだろう77,101。
従来のアレルゲン免疫療法は、食品アレルギーに対する承認された治療上の選択ではない4。この療法は、口腔アレルギー症候群の予防を助ける目的で実験的、間接的に(口腔および注射の樺の花粉療法)、ピーナッツアレルギーを防止するためにピーナッツの抽出物を使用することによって直接的に試された122,123。木のアレルゲン免疫療法は、口腔アレルギー症候群における食品症状の取り扱いにおいて役立たなかった122。ピーナッツの抽出物を用いて治療された患者のなかには、ピーナッツ・アナフィラキシーの保護に対する臨床上、免疫学上の両方の証拠がある者はほとんどいなかった。後者の研究から、食品に対しひどく生命を脅かす症状をもつ数名の患者は必ずしもこれらの食品を避けることができないため、食品アレルギーに対する免疫療法を含むさらなる研究が遂行されなくてはならないと結論が下された124。食品アレルゲン免疫療法の滞在リスクは、不注意によるアレルゲンへの暴露の真のリスクより少ない28,29。