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Escherichian coli K-12に由来するキモシンおよびBacillus subtilisに由来するBacillus stearothermophilus αアミラーゼ

エリック・フラン博士
米国食品医薬品局バイオテクノロジー室

ケース1 Escherichia coli K-12に由来するキモシン

1. 検討する概念の要点

a) 連続体の概念

 調製したさまざまな酵素の持つ属性のなかには、同じようなものもあればそうでないものもある。調製した酵素の相対的類似性や同等性は、酵素自体の特性、酵素を生産した生物、調製した酵素の生産方法と生産に用いた素材を比較することによって判定できる。相違があったとしてもそれが重要かどうかは、調製した酵素の安全性と有用性にいかに影響するかによって決まる。
 調製した酵素に対する安全性の評価方法については、かなりの科学的コンセンサスが得られている。だが調製した酵素がすでに一般に認められているものとは異なる場合、どのような違いを根拠に、安全性を確定する正式な審査が必要と判断するのかという基準に関しては、さほどのコンセンサスは得られていない。たとえば製造面での変更や菌株の改変が審査を必要とするほど重要になるのはどのような点でなのか、2つの調製した酵素の実質的同等性が自明の理とされなくなるのはどの点でなのか。これは科学的問題であるのと同様に、規制上の問題なのである。
 同一の条件下で育成された同じ菌株の産生生物から、同一の方法で精製された同一の酵素であっても、活性面でのわずかな変化がその意図する用途にとって重要な場合には、バッチが違えば潜在的に違うものとみなされうる。また、異なる条件下で育成された異なる生物種から、異なる方法で生産された2つの異なる酵素であっても、その相違が調製物の安全性と有用性にさほど影響しない場合には、実質的に同等とみなされうる。ある調製した酵素と、すでに一般に認められているものとのどのような違いが、相違点であるとみなされて審査の正当な根拠となるのかもまた、科学的問題であると同様に、規制上の問題なのである。
 第一のケーススタディでは微生物から調製したキモシンについて論じるが、このキモシンの機能的活性は伝統的な動物性レンネットと同じである。だがこのキモシンはまったく異なる方法で製造されるため、含まれる不純物もまったく異なっている。米国食品医薬品局(FDA)は、これらの相違が正式な審査を行う正当な根拠となるほど重要であり、この新しい調製物が伝統的なものと実質的に同等かどうかを決める審査を行う必要があると判断した。
 このキモシンとは対照的に、第二のケーススタディで取りあげる調製したαアミラーゼは新規の菌株を使用しているものの、伝統的にαアミラーゼの供給源として用いられてきたBacillus subtilisという生物に由来している。B. stearothermophilus αアミラーゼという酵素自体については個別審査が行われ、本来それを生産している微生物に由来する場合には食品に利用しても安全であるとの判定が下された。さらにそれは伝統的な酵素と機能的に同じだが、その機能が高温で発揮されることが主な相違点であった。このように、この新たな調製物は成分と活性の点で伝統的な酵素にきわめて近い。両者が実質的同等性を判定するための正式な審査を必要としないほど類似しているかどうかは、規制上の問題である。

b) 現時点での考察事項

 遺伝子組換え微生物に由来する食品用酵素は、現在新たに開発されているものである。こうした開発初期においては、このような酵素は非常に新規性があるとか綿密な審査が必要だとみなされるかもしれないが、将来的に同じような酵素がいくつも導入されたあかつきには、今ほどの新規性や審査の必要性があるとはみなされないだろう。たとえばBacillus subtilis由来のB. stearothermophilus αアミラーゼが、いくつもの同じような調製物の審査が行われた後で導入されたとすれば、審査を要する新たな調製物として扱われないことはありうる。

c) 安全性(予想される摂取条件において意図する用途から害を生じないという「合理的確実性」を指す)

 新しい食品(に限らず伝統的な食品)の安全性に関して、提起されうるすべての疑問に答えを用意することは現実的に不可能である。一般に受け入れ可能とされる安全性の基準は、予想される摂取条件において製品の意図する用途から害を生じないという、合理的確実性があることである。
 調製した食品用酵素に意図する用途は、一般に、所定の方法で食品や食品成分を加工することである。その酵素は最終的な食品にも含まれるのがふつうだが、その量は微量である。
 調製した商業食品用酵素は精製してもきわめて純度が低いのがふつうであり、酵素よりも多くの細胞残滓を含んでいる。したがって調製した酵素の安全性評価においては、少なくとも、酵素自体の特性を審査するのと同じくらい、産生菌株に関するデータ、およびその育成と酵素精製に用いた方法と素材に関するデータを審査することが重要である。
 一般に、酵素自体の安全性を評価する場合には、当該酵素と食品または食品加工に用いられる他の酵素との関係を判定する。食品または食品加工に一般的に使われているタイプの酵素で、懸念を要する異例の特性を持たないものであれば、一般に認められている他の食品用酵素と実質的に同等とみなすことができる。食品用酵素は本来(当然ながら)安全なので、実質的に同等と判定されればふつうは安全性が確認されたことになる。酵素が異例の特性を持っていたり、それまで食品に使われたことのないタイプのものだったりする場合には、意図する用途にとって安全であることを示すための情報が必要になる。
 産生生物の安全性を評価する場合には、病原性かどうか、あるいは毒素を生産するかどうかに焦点を絞るのがふつうである。産生生物の種については、食品用として安全に使われてきた歴史があることを示すか、食品用として安全だということを科学的データで示さなければならない。また、用いた菌株についても安全であることを示さなければならない。つまり、食品用として安全に使える酵素調製物の供給源である菌株に影響するような、新たな特性を持っていないことを示さなければならない。
 遺伝子組換え産生生物の安全性を評価する場合には、まず、意図する用途にとって親生物が安全かどうかを判定するのがふつうである。もしそれが安全ならば、次に、用いられたすべてのベクターが安全であること、および挿入されたDNAが毒性タンパク質もしくは望ましくないタンパク質をコードしないことを確定するために、組換え体作成の全段階を審査する。標的遺伝子の両側の配列を含め、クローンDNAのセグメント全体を分析しなければならない。供与生物が毒素その他の望ましくない化合物を生産した場合には、これらの物質をコードするDNAが標的DNAと一緒に不注意にクローン化されたのではないことを示すデータを提出しなければならない。
 食品加工に用いられる親生物の安全性が確立されていない場合には、改変された菌株が食品用として受け入れられることを示すために、毒性試験の結果をはじめとするかなりの情報が必要になろう。
 以下に述べるように、微生物から調製したキモシンとαアミラーゼは、産生生物、酵素、製造工程を評価した後に安全だと判定された。製造方法によって産生生物が破壊され、かつ細胞残滓の大半が取り除かれており、これが調製した酵素の安全性を保証するための追加要因であった。

d) 実質的同等性の概念

 微生物から調製した複数の酵素を互いに実質的同等とみなせるのは、次の3条件が満たされるときである。すなわち、酵素自体が実質的に同等であること、たとえば同じような意図する用途と機能特性を持つこと。調製した酵素の由来源である微生物が実質的に同等であること、たとえば食品用酵素の供給源として安全に利用された歴史を持つ種の安全な菌株であること。製造および精製工程が実質的に同等であること。しかしながら、これらのパラメータのそれぞれについて実質的同等性を判定するための合意された基準は、今のところない。
 産生生物および製造方法が実質的に同等でなかったとしても、その相違が最終的な調製物の安全な利用に影響しない限り、新たに調製した酵素は、調製した酵素ですでに受け入れられているものと実質的に同等でありうる。新しい産生生物や製造方法と伝統的なものとの違いが大きくなるほど、新たに調製した酵素と従来のものとが実質的に同等かどうかを判定するには、より多くの情報が必要になる。
 実質的同等性という概念は、広義にも狭義にも当てはめることができる。たとえば、食品加工用に使われたあらゆるタイプの酵素すべてを実質的に同等とみなすこともできるし、すべての炭水化物を実質的に同等とみなすこともできる。またすべてのアミラーゼを実質的に同等とみなすこともできるし、すべてのαアミラーゼを実質的に同等とみなすこともできる。あるいは、同一の条件下で同一の機能的活性を示し、かつ同一の食品に使われることを意図するすべてのαアミラーゼを実質的に同等とみなすこともできる。となれば、実質的に同等な酵素の複数の「調製物」が、食品用として安全に利用された歴史を持つ微生物種の安全な菌株から生産されたならば、その微生物種が何であれ、それらを実質的に同等な酵素とみなすこともできるし、あるいは、同一の微生物種から生産された場合に限り、あるいは本来それを生産している同一の微生物種から生産された場合に限り、当該調整物を実質的に同等な酵素とみなすこともできる。また、最終製品が合格基準を満たすようにするため、調製した酵素の実質的同等性を検討する前に、製造工程が所定の基準を満たしていなければならないこともある。
 これから述べる2種類の調製した酵素の安全性評価において、評価者は「実質的同等性」という用語を使っていなかった。用語そのものは使わなかったが、基本的にその安全性は、一般に認められているものと実質的に同等であることを確定することにより判定された。
 E. coli K-12に由来するキモシンは、伝統的な動物性レンネットの場合とはまったく異なる生物源からまったく異なる方法で得られる。そのため、潜在的な不純物の種類は異なっている。また調製した酵素の重要な特徴も異なっている可能性がある。両者が実質的に同等かどうかを判定するため、FDAは両者の酵素活性を比較し、微生物から調製した酵素の不純物がその安全な利用に影響するかどうかを評価した。第3項で述べるように、FDAは酵素自体も調製した酵素の機能的活性も実質的に同等であり、微生物から調製した酵素中の不純物はその安全な利用に影響しないと判定した。このように、この2つの調製した酵素は明らかに異なるものであってそれぞれ別の名称を持っているが、安全性と機能においては実質的に同等である。
 B. subtilisから得たB. stearothermophilus αアミラーゼの場合、FAO/WHO合同食品添加物専門家委員会(JECFA)は産生生物の評価を実施し、遺伝子改変についてよく解析されており、改変によって毒素その他の望ましくない物質が生産されてはいないと判定した。そのため、それをB. subtilisの他の食品用菌株と実質的に同等とみなしたのである。JECFAはその酵素も評価し、それがB. stearothermophilusによって生産されたものと同じであることを確認した。また同委員会は製造方法を評価し、それが微生物から調製した酵素の生産に関する合格基準を満たしていると判定した。
 このように、酵素、産生生物、製造方法がすでに一般に認められているものと実質的に同等であると判定することにより、JECFAは新たに調製した酵素がその意図する用途にとって安全だと判断した。このステアロサーモフィラス酵素は【従来のものよりも】高温ででんぷんを消化する能力を持つため、【従来のものとは】違う基質と一緒に使われることが見込まれるが、この事実にもかかわらず、この実質的同等性の解釈により、この新たに調製した酵素がB. subtilisから得た従来の調製物と実質的に同等であるという結論にもなりうる。

e) 変異性の概念

該当せず

f) 逐次評価の概念

 新たに調製した酵素を評価する第一のステップは、すでに一般に認められている調製した酵素でもっとも近いものと、酵素自体の特性、産生生物、製造方法を比べることである。その後に、新たに調製した酵素と従来のものとの特性の違いに焦点を絞り、その違いが前者の安全な利用に影響するかどうかを判定すればよい。
 調製した酵素ですでに一般に認められているものと比べて、酵素、産生生物、製造方法が実質的に同等であると判定され、新しい配合がその製品の安全な利用に影響しない場合、新たに調製した酵素を安全であると認めることができる。一般に認められている製品がない場合、あるいは一般に認められているものと新しいものとがあまりにも違いすぎて適切な比較ができない場合、新たに調製した酵素の安全性を確定するには追加の情報が必要になる。

g) 実質的同等性の判定におけるマーカー遺伝子の評価

 遺伝子組換え生物にはマーカー遺伝子が含まれていることが多く、その一部が治療上有用な抗生物質に対する抵抗性をコードするおそれがある。産生生物におけるマーカー遺伝子の存在が、一般に認められている安全な調製物に対する実質的同等性に影響するかどうかは、いくつもの事項を勘案して決まる。たとえばマーカー遺伝子は、タンパク質産物をコードするのか。もしするならば、食品中にどの程度含まれると予測されるのか、どのような機能を持つのか、予測されるレベルで食品の安全面での懸念はあるのか。
 抗生物質に抵抗性のあるマーカー遺伝子については、マーカー遺伝子が臨床的に有用な形態の抗生物質に対する抵抗性をコードするのか。もしするならば、抗生物質を治療に使っているときにその製品を摂取した場合、抗生物質の臨床的有効性は阻害されるのか。調製した酵素の場合、一般にこのことは問題にならないとみられている。調製した酵素の食品中含有量はきわめて微量である。したがって、調製した酵素の成分で抗生物質に抵抗性を持つ物質の食品中濃度は、ほとんどの場合、生物学的に問題にならない程度である。
 また、食品中または消費者の腸管中において抵抗性遺伝子が病原体まで水平移行する可能性はどの程度なのか。抗生物質に抵抗性のある微生物に由来する酵素が、抗生物質感受性の微生物に由来する酵素と実質的に同等であるためには、この移行の可能性が生物学的に問題にならない程度でなければならない。
 E. coli K-12由来のキモシンの場合、精製方法によって産生生物は破壊され、そのDNAは抵抗性をコードする遺伝子の断片よりも小さく分解されるため、抗生物質抵抗性マーカー遺伝子の水平移行は問題にならない程度であることが判明している。また本論に述べる調製したαアミラーゼの場合、産生菌株中に無傷の抗生物質抵抗性遺伝子は存在しない。

2. 生物/ 製品:E. coli K-12に由来するキモシン

 キモシンは別名レンニンとしても知られており、レンネットに含まれる主な凝乳酵素である。レンネットはさまざまな動物の胃から採れる。離乳していない子牛の胃から採ることがもっとも多いが、子ヤギや子羊などの胃からも採れる。レンネットは数千年もの間、チーズを作るのに使われてきた。キモシンはタンパク質分解酵素の一種であり、乳タンパク質カッパ・カゼインの結合の1つを加水分解して切断し、2つのペプチドに分割する。ふつう、カッパ・カゼインは乳中のミセルを安定させているが、カッパ・カゼインが切断されるとミセルが凝集してカード(凝乳)ができる。カードは乳清を取り除いてからチーズに加工したり、フローズンデザートなどの乳製品に加工したりできる。

3. 伝統的な製品評価

 すでに1.c)項で述べたように、新たに調製した酵素については、意図する用途にとって安全かどうかを判定するために評価を行う。このような評価では、酵素の特徴や特性、産生生物、製造工程で使われた素材と方法に重点が置かれる。E. coli由来のキモシンはレンネットとまったく違う方法で製造される。そのため、製造方法の変更が調製した酵素の安全性に影響していないかどうかを判定することが重要であった。
 E. coli K-12由来のキモシンの安全性は、次の情報により確定された。まず第一に、この酵素がレンネットに含まれるキモシンと構造的、機能的に同一であることが示され、それによってレンネットに含まれるキモシンの代替品として安全であるとみなされた。データが提出され、プロキモシン遺伝子がクローン化されたこと、それが機能性キモシンを生産するよう、宿主微生物に適切に発現したことが示された。
 正しい遺伝子がクローン化されたことについては、次のように3つの線をたどって証明された。まずクローンDNAを制限酵素で消化した結果得られた断片は、プロキモシン遺伝子のDNA配列によって予測されるサイズであることが確認された。次に、クローンDNAと、クローンDNAから合成されたRNAは、子牛のプロキモシン遺伝子としかるべくハイブリダイゼーションすることが確認された。3つめの線としては、クローンDNAの配列がプロキモシンのアミノ酸配列に対応していることが確認された。
 クローン・プロキモシン遺伝子は、予測どおりのサイズで予測どおりの生物学的活性を持つキモシンを生産した。クローン・キモシンは、SDS-ポリアクリルアミド電気泳動法で示されたように、子牛のレンネットに由来するキモシンと同じ分子量であることが確認された。クローン・キモシンはまた、温度、塩分濃度、pHを変えてさまざまな条件下で行った凝乳アッセイで示されたように、子牛のレンネットに由来するキモシンと同じ機能的活性を持つことが確認された。
 第二に、産生生物であるE. coli K-12がキモシンの供給源として安全であることが、主として、病原性も毒素産生性もないことを示した公表証拠に基づいて確認された。この公表証拠とは、E. coli K-12が高濃度で供給されても(摂取1回当たり生菌数109〜1010)、その後ヒトその他の動物の腸内にコロニーを形成しないことを示した論文、K-12株は30年間にわたって実験生物として広く用いられているが、病気の発生は報告されていないことを示した論文、摂取した場合に病気を引き起こす毒素を生産しないことを示した論文、病原に必要なほぼすべての特性を持っていないことを示した論文などである。さらに、非病原性のE. coli株はヒトの消化管内における正常細菌叢の一部となっており、腸管内容物1g当たり106〜108存在する。
 第三に、発酵方法と精製方法によって安全でない物質が調製物に取りこまれていないこと、および細胞由来物質の大部分が調製物から取り除かれていることが示された。発酵と精製に使われたすべての化学品は食品用として認められている。最終製品から微生物由来物質の大部分が取り除かれることにより、精製工程からは、容認できる程度に低濃度のエンドトキシンを含む酵素が得られたのである。エンドトキシンはE. coliの細胞壁の成分であり、ある種の腸管障害を持つ人にとっては問題になるおそれがある。だが調製したキモシンのエンドトキシン濃度は、米国の飲料水に含まれるエンドトキシン濃度と同程度である。
 同じく精製方法により、E. coliが破壊されてそのDNAが分解されることも示された。このことからまた別のレベルの安全が保証され、ベクター中の抗生物質抵抗性遺伝子が消費者の体内にある病原体あるいは調製した酵素と接触する食品上の病原体へと生物学的に有意なレベルで移行する可能性はなくなる。提出されたデータは、形質転換受容性細胞を検出可能なレベルで形質転換できる品質のDNAが、調製した酵素の中に十分含まれていないことを示していた。さらに、ゲル電気泳動後に放射標識したハイブリダイゼーションで調べたところ、200塩基よりも大きなDNA断片は検出されなかった。ちなみに、産生菌株の抗生物質抵抗性遺伝子のコード配列は858塩基の長さである。
 安全性の補強証拠として、この調製した酵素を使った2つの短期投与試験、すなわちイヌを用いた5日間混餌投与試験とラットを用いた1か月間強制経口投与試験を実施した。両試験では、試験に用いたいずれの投与量においても有害な影響は観察されなかった。
 以上の情報と消費者の曝露レベルが比較的低いという事実を基に、米国FDAは調製したキモシンがレンネットの代替品という意図する用途にとって安全だと結論した。

4. 伝統的評価に利用できるデータベース

 なし

5. 新規の成分/ 製品

 微生物から調製したキモシンは、レンネットという伝統品とは供給源となる生物も製造方法も違うために、不純物の点で違いがある。だがそれ以外の活性、機能、用途、活性成分といったあらゆる面で、両者は実質的に同等であり、事実上、同じである。

6. 追加される評価手順

 調製した酵素キモシンについて安全性評価が行われたのは、その製造方法が動物性レンネットという伝統品とまったく異なるためである。ただし、遺伝子組換え生物から製造されるという理由だけで審査に回されたわけではない。審査の中でも、抗生物質抵抗性マーカーの審査とベクターや作成途中の組換え体に関する情報を含めた組換え体作成に対する審査は、遺伝子組換え生物ごとに実施すべきだと考えられたからである。また、遺伝子組換えでない微生物で酵素の生産に用いられるものは抗生物質マーカーを持っておらず、これに対しては組換え体作成が広範に行われたことがなかったからである。

7. 追加される評価手順の理論的根拠

 調製したキモシンは、レンネットとは異なる生物から異なる製造工程によって生産される。製品の供給源となる生物と製造方法に重要な変動があれば、不純物の種類も異なるものになる可能性がある。したがって、1つの製造方法に関する規格があっても、それが別の製造方法には当てはまらない可能性がある。また、製品の用途に影響する重要な特性に変動があったかどうか、つまり、新しい製品が実際に伝統的な製品と実質的に同等かどうかを判定することが重要なのである。

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