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第9章
生物学的処理の実施における安全性の検討

モリス・レヴィン
メリーランド大学メリーランドバイオテクノロジー研究所、バイオテクノロジー社会問題センター(米国メリーランド州カレッジパーク)


はじめに

環境や健康に関する統計指標をみると、環境や私たち自身に対する汚染の影響がどんどん大きくなっていることがわかる。こうした影響は、世界各地の森林の樹木や清浄な水や空気、その他の生態系バランスを示す指標へのマイナスの影響、さらには、それによる人の健康への影響として表れている。こうした問題の一部は、私たちが日常生活で使う製品の製造と関係がある。自動車、石油製品、工業用化学品、農薬、プラスチック、紙などのメーカーが生みだす廃棄物は、これまでも現在も、世界各地の廃棄場に捨てられている。汚染の影響の多くは、工場施設や都市の住民(自動車、暖房)、農業地域(農薬、肥料)からの排出の結果である。こうした汚染による影響は、よく知られたもの(地球温暖化、オゾン層の減少)からあまり知られていないもの(地下水の減少や劣化)までさまざまなものがある(Council on Environmental Quality, 1979)。廃棄物の多くは、直接的に人や環境に対して有害である。
大部分の廃棄物は、埋立地に廃棄されたり、コンテナに保管されたり、単に地面に捨てられたりする。このような行為が何十年にもわたって続けられた結果、中身のわからない廃棄物を含む埋立地が多数存在する。米国には、約14,000カ所の工業用地があり、年間でおよそ2億6,500万トンの有害廃棄物が発生している。表9.1は、米国の主な廃棄場でみられる一般的な廃棄物の種類を挙げたものである。廃棄物の量や種類が大きく異なるのと同様、その毒性も大きく異なる。1982年以来、6,000カ所を超える廃棄場で浄化が行われてきた。オランダの場合、土壌再生事業にかかる費用は、EUの推定で2000年までに100億ドルに達し、さらに10年後には300億ドルを超えるとされている(Porta, 1991)。
こうした問題に対しては、決まった対処法があるわけではない。廃棄場の浄化方法を選択し、まずどの廃棄場をどのような方法で浄化すべきかを決定しなければならない。物理的手法(焼却、固定化など)、化学的手法(中和など)あるいは生物学的手法(自然または組換えの微生物を用いる)が考えられるが、とりわけ、費用、安全性、処理の完了までに必要な期間などに関して、それぞれに長所と短所がある。
微生物を使った廃棄物の分解は、特に目新しいことではない。微生物を利用した下水汚物の処理は数世紀にわたって行われており、このプロセスは現在も改良が続いている(Mckinney, 1962; Nicholas, 1987; Sterritt & Lester, 1988)。バイオテクノロジーの出現によって、生物学的な手法が見直されて改良され、また、遺伝子工学の手法によって、微生物に改変を加えて有害物質をより迅速に分解できるようにすることができる。


表9.1 スーパーファンド法によるNPL【脚注a】区域における廃棄物の種類の実例

物質

量(ガロン)

銅を含むカキ殻

6000

油・水

58150

塗料

2457904

パークロロエチレン

800

塗料/ホルムアルデヒド

4250

塗料用シンナー/塗料除去剤

90025

塗料・プラスチック汚泥

251885

ポリ塩化ビフェニル

14000

塗料汚泥・塗料用エポキシ樹脂

9740(立方ヤード)

農薬で汚染された繊維

500(ポンド)

パークロロエチレン・油・アルコール

18400

農薬

7582

フェノール樹脂

89360

フェノール類(ギ酸・メチレン)

900

リン酸溶液

2940

リン

350(ポンド)

シアン化カリウム・カリウム錠剤

168(ポンド)

殺鼠剤(ヒ素)

2(箱)

【脚注a】米国環境保護庁(USEPA)のスーパーファンド基金によって浄化が行われるUSEPA全国浄化優先順位表(National Priority List)区域。
出所:Superfund Innovative Technology Program, USEPA; EPA/540/5-91/004 (1991)。


忘れてはならないのは、開発した技術が実験室で証明できるだけでは不充分だということである。技術的に可能な対処法を利用するには、規制の問題、安全性の問題、産業や市場の問題、そして社会や政治の問題のどれもが大きなかかわりを持っている。
本章では、有害廃棄物を分解する微生物の開発と利用について述べ、一般的な廃棄物を分解するための方法を概観する。商業規模での利用に伴って生じうる健康上、環境上の問題を明らかにし、軽減や防止のための方法を検討する。

生物分解

生物分解とは、有機物が微生物によって無機化されるプロセスをいう。この環境プロセスは、何世紀も前から知られていた。有機質は、微生物の働きによって有機物から無機物へと分解される(Marx, 1989)。好気的または嫌気的代謝を通じて、有機化合物が二酸化炭素(CO2)と水(H2O)に還元されるのである。嫌気的代謝では、メタン(CH4)が生成される。炭素循環では、光合成生物によって大気中の二酸化炭素が有機化合物に取り込まれる。硫黄循環では、微生物によって不活性硫黄や有機硫黄を含む化合物が作られる。どちらの場合も、微生物の活動によって、毎年何トンもの物質が変化している。たとえば、このサイクルを経ている硫黄は、年間6,000トンと推計されている。
微生物と植物と哺乳動物とが共存してきた数千年の間に、動植物がさまざまな種類の有機物を作りだす能力と、微生物が有機物を分解する(腐敗させる)能力は、並行して進化してきた。とはいっても、最初の合成有機塩素化合物である塩化エチルが調製されたのは1940年であり、有機塩素化合物が商業レベルで大規模に合成できるようになったのは、ほんのここ数十年のことである。生体異物である化学物質は続々と生み出され、これに容易かつ迅速に対応できる微生物系を開発することは、このような短期間には不可能だった(Hutzinger & Verkamp, 1981; Rochkind et al., 1986)。化学物質(生体異物)の多くは、微生物の攻撃に対する抵抗性や微生物への毒性を持ち、微生物を活用しようとする人類の試みを妨げている。とはいうものの、生体異物をさまざまな程度や速さで分解する力のある微生物(表9.2)が、各種の化学物質(生体異物)で汚染された場所から分離されている。これらの環境分離株が各種の塩素化芳香族化合物を分解する能力には、大きなばらつきがある。なかには複数の化合物を、さまざまな速度で分解できるものもある。Abramowicz(1989)は、ポリ塩化ビフェニル(PCB)化合物で汚染された土壌において、同様の結果を示している。さまざまなPCB化合物に対する分解能を持つ分離株は、26種見つかっている。Abramowiczは、それらの遺伝的能力を組み合わせて、単独でより有用な微生物を作ることを提案している。


表9.2 主な炭化水素類が唯一の炭素源・エネルギー源として存在する場合の各株の栄養的多機能性

 

Pseudomanas putida

Pseudomonas oleovorans

6Dpa

Dla

PBa

トルエン

+

+

+++

-

+

2-クロロトルエン

++

++

+++

++

+

3-クロロトルエン

+++

+++

++++

+++

+++

3,4-ジクロロトルエン

+++

+++

++++

+++

+++

2,6-ジクロロトルエン

++

++

+++

++

+

キシレン

+

+

++

+

+

安息香酸塩

++++

++++

++++

++++

++++

3-クロロ安息香酸

-

-

++

-

-

4-クロロ安息香酸

+

+

+++

+

+

2,4-ジクロロ安息香酸

++

+

+++

++

+

3,4-ジクロロ安息香酸

++++

++++

++++

+++

++++

2,4-ジクロロフェノキシ酢酸

++

+++

++++

++

++

2,4-ジクロロフェノール

+

+

++

+

-

2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸

++

++

++++

+++

+++

【脚注a】属・種不明の環境分離株
出所:Pierce(1982)を改変して引用。


化合物のなかには、微生物の複合体によって無機化されるものもある。この事実をもとに、自然環境から分離された株で、複数の標的化合物に対する分解能を持つものの複合体(共同体)が利用されている。共同体中の微生物が同定されている場合もあるが、多くの場合は、使われている微生物共同体には、同定されていない微生物が未知数含まれている。微生物共同体の関与には、廃棄物の混合物に含まれる特定の構成要素に対する作用に、特定の微生物が必要になるという意味での関与と、特定の化合物に対してある微生物の複合体が必要だという意味での関与がありうる(表9.3)。微生物のなかには、特定の組み合わせの一員としてでないと働かないものがある。このプロセス(共代謝)では、分解される化合物がエネルギー源や炭素源の役割を果たしている(Atlas & Bartha, 1987)。Pfaender & Alexander(1972)とSakazawaら(1981)の研究には、共代謝が関与する場合、関与する生物の属は特定されることがほとんどだが、該当する生物の種名はわからないことが多いという事実が示されている。微生物共同体が関与する場合、代謝の最終産物は同定されるが、微生物は特定されないことが多い(Nielson et al., 1987; Fliermans et al., 1988)。人類が作れるものは何でも、自然が分解できることが示されてきた(Sterritt & Lester, 1988)。


表9.3 微生物共同体による分解

分解作用

微生物

参考文献

DDT【脚注a】の分解:アルスロバクター(Arthrobacter)属によるp-クロロフェニル酢酸の産生と利用(共代謝)

Hydrogenomas属およびArthrobacter

Pfaender & Akexander, 1972

ポリビニルアルコールの分解:Pseudomonas putidaによる分解が共代謝の促進因子となった(共代謝)

Pseudomonas putida等のPseudomonas

Sakazawa et al., 1981

キーポン【脚注b】の分解(共代謝)

Pseudomonas aeruginosa

Orndorff & Colwell, 1980

シルベックス【脚注c】の分解:シルベックス使用下で2種類の微生物の組み合わせが生育した;分離した場合には成長がみられなかった(共代謝)

Pseudomonas属およびAchromobacter属

Ou & Sikka, 1977

微生物共同体(ただし純粋培養ではない)によって、トリクロロエチレンが分解された

HClとCO2を産生する好気的分解

Fliermans et al., 1988

休止細胞による生体異物である化学物質(環境中で存在する濃度)の「共代謝」が示された

安定した共同体による木材パルプ廃棄物の嫌気的分解

Nielson et al., 1987

【脚注a】pp'-ジクロルジフェニルトリクロルエタンを主成分とする複雑な混合化学物質:きわめて毒性の高い合成殺虫剤の1つ
【脚注b】キーポン:デカクロロ-オクタヒドロ-1,3,4-メテノ-2H-シクロブタペンタレン-2-オン(殺虫剤)
【脚注c】シルベックス:2-(2,4,5-トリクロロフェノキシ)プロピオン酸(除草剤)
出所:Johnston & Robinson(1983)を改変して引用。


微生物は環境条件に敏感である。一般に、中程度の酸性またはアルカリ性で、正常体温付近の温度が最適である。しかし、微生物のなかには極端な温度で活動的なものがあり(低温細菌や高温細菌)、こうした性質が特殊な廃棄物の処理に利用されている。低温細菌の処理能力は、中温細菌の60〜70%と推定されている(Bioremediation Report, 1991)。注意しなければならないのは、微生物の代謝は環境条件の変化に敏感であること、中間代謝産物の蓄積が起きる場合があること、そして、そうした産物のなかにはもとの物質より毒性が強いものがあるかもしれないということである。テトラクロロエチレン(動物に対する発がん物質として知られる)の嫌気的分解では、分解の過程で塩化ビニル(人に対する発がん物質として知られる)の蓄積を引き起こすことがある(Barrio-Lage et al., 1986)。McCallら(1981)は、2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸の分解過程で、CO2のほかに、土壌中に2,4,5-トリクロロフェノールおよび2,4,5-トリクロロアニソールの蓄積がみられたと報告している。
天然微生物が持つ分解能を高めることを目的とした研究が多くの実験室で行われている一方、分解の対象と速度を向上させた改変微生物を作りだそうとしている研究者もいる(Rojo et al., 1988)。Rojoは、別々の3種の土壌細菌における5種類の異化経路にかかわる酵素を単一の菌株に組み込んだことを示している。廃棄場に放出されたのちに、生残して増殖することのできる株も注目されている(Neidle et al., 1987; Dwyer et al., 1988)。環境要因に手を加えて自然の微生物叢が持つ主な分解能を向上させるために、微生物叢のin situでの代謝速度や遺伝的構成を制御する環境要因をより深く理解しようとしている研究者もいる(Olson & Goldstein, 1988)。米国の全米科学財団は、環境バイオテクノロジーの実地利用の実現可能性を検討するため、研究会を実施した(Sayler et al., 1988)。これまで、組換え微生物の大規模野外利用は行われていないものの、突然変異株の試験は行われており、ほかにも組換え株の試験が計画されている(Bioremediation Report, 1991)。
微生物が持つ分解能を商業規模でもっと充分に活用しようとする試みには、いくつかの形態がある。最も古く、直接的なのは、処理プロセスを改良して汚水処理を向上させるものである(Hall & Melcer, 1983)。Mizrahi(1989)は、嫌気性消化の技術である堆肥生成装置(biogas digestor)での各種処理法とその改良、そして汚水処理場での作業効率の向上につながる管理の側面について概観している。あらゆる汚水処理法には、3つの要素が含まれる。環境の物理的操作、微生物への栄養源の化学的添加、微生物集団の増強(天然の微生物を加える、微生物を改変して優れた性能特性を持たせる、適当な栄養素を添加して土着の微生物の繁殖を促す)である。生物処理の発展は、汚水の分解速度を上げ、生成される廃水が人の健康や環境に与える害を抑える手法の開発とともに始まった。初期の汚水処理では、汚水を地面の広い区域に撒いていた(100人あたり約0.4ヘクタールの広さが必要だった)。1889年に米国マサチューセッツ州のローレンス試験場(Lawrence Experimental Station)で行われた研究の結果、濾過フィルターとして砂利が使われるようになった。この研究の後、英国マンチェスター州デイビーヒューム(Davyhulme)で、汚水の嫌気性消化法、次いで、好気性消化法が開発された。好気性消化法は、消化する混合物に空気を加えるだけで、嫌気性消化法の接種剤を一緒に用いた場合、消化の期間は5週間から24時間に短縮された(Sterritt & Lester, 1988)。これは、自然な形で適応させた微生物を使って廃棄物の分解を高めた最も初期の例だと思われる。
微生物と標的となる汚染物質が接触できるようにしたり、接触を高めるためにさまざまな方法が開発されてきた。表9.4は、最も一般的な方法のいくつかと、それぞれに関する安全性の問題を示したものである。表からわかるとおり、環境への微生物の放出が最小限に抑えられるのは固定化微生物や固定生物膜反応槽を利用する場合で、環境や健康への悪影響の可能性も最小限に抑えられる。さらに、どのタイプの反応槽も、プロセスに使われる微生物を確実に封じ込めるために、廃水を消毒するための適当なシステムと組み合わせることができる。地下土壌の再生やランドファーミングに関係する土壌処理システムや利用法は、微生物の大規模な拡散につながる。このような場合、微生物を確実に無害化することに重点を置くべきである。


表9.4 生物処理プロセスの種類

種類

原理

主な利用法

連続回分式反応槽

懸濁液中での微生物による消化

反応条件の制御;環境中に微生物が放出される

水処理システム

貫流システムで固定化微生物または固定化酵素を用いる

可溶性の有機物が必要。微生物の放出はない

土壌処理システム

吸収された汚染物質を可溶化するための洗浄

効果を最大限にするために事前の処理が必要

固定生物膜反応槽

微生物または酵素をカラム中のプラスチックの媒体に固定して、表面積および栄養交換を最大化する

有機物濃度が低い場合でも処理することが可能

土壌スラリー
(タンクまたは酸化池)

反応槽内で土壌と水を激しく撹拌する

温度管理が不要

ランドファーミング(畑耕耘)

in situで土壌に栄養源を添加し、耕起する

微生物と処理物質を封じ込めるためのライニングが必要

地下土壌の再生

土壌に水、栄養源、酸素(電子受容体)をポンプで注入する

土着の微生物集団全体の生育が促進される。油およびガソリンの流出;地下水の有機物汚染

一般に、あらゆる場所にとって理想的な単独の方法はなく、分解を最適化するためにはいくつかの方法を組み合わせることが不可欠であることが、経験上明らかである。また、汚染区域によっては、何らかの物理的あるいは化学的な前処理や後処理が必要になる場合もある。
米国では、100を超える企業が、廃棄場の浄化のための生物分解技術を大規模化する手法の採用に積極的に取り組んでいる。またほとんどの企業は、組換え微生物を使わずに生物処理プロセスを改良しようという研究にも携わっている。ダウ・ケミカル社やゼネラル・エレクトリック社といった大企業では、廃棄物の生物処理法の開発、実施に力を入れている。多くの企業が参加して協会を設立し、商業規模での生物処理の成功事例集を作成した(Applied Biotreatment Association, 1989)。微生物を用いた浄化は、エクソンバルディーズ号による流出事故後のアラスカの海岸線(Crawford, 1990)のほか、米国の別の場所や欧州でも成功している(Stone, 1984; Bluestone, 1986; Savage, 1987; Keeler, 1991)。微生物は、処理場から出る悪臭の予防にも使われている(Grubbs & Molnaa, 1987)。現在までのところ、接種材料として使われているのは非組換え株だけである。エクソンバルディーズ号の流出事故など、多くの場合の処理では、土着微生物の生育を促すために栄養塩の撒布が行われる。組換え微生物を使えば、より広い範囲の化合物をより短時間で分解できる可能性がある。しかし、組換え微生物は環境中での定着があまりよくない場合があり(Lenski, 1991)、目的が達成されるまで長く生残しない可能性がある。さらに、国民の抵抗があって、政府も組換え微生物の環境への利用には消極的である。このような問題と、標的化合物の大部分を無機化する力を持つ天然の微生物(単独あるいは微生物叢)が利用できることとを考え合わせると、産業界が天然微生物の利用に重点を置いている根拠は明らかである。

現地での生物分解の手法

生物分解の利用には、水文学的、物理学的な現地の徹底した分析や、実験室や野外での研究によって、どのような戦略が適切で、事前または事後に物理的、化学的な処理を行う必要があるかどうかを判断することが不可欠であることが、現在では一般に認められている。現地の物理学的側面は、撒布や培養される微生物の代謝への影響を考慮して判断されなければならない。土着の微生物叢の分解能や栄養要求を調べる必要がある。最終的に、その分解プロセスが実験室でうまく実証されなければならず、また大規模で有効であることも示されなければならない(Wick & Pierce, 1990)。この場合、その処理が原位置(in situ)で行われる、つまり、処理される物質はその場から移動されず、自然条件下で現地の水分や栄養源、微生物叢を変えることによって処理されるのか、あるいは、処理する物質を反応槽に移して、管理された条件のもとで微生物に曝露させるかのどちらかになる。処理がin situで行われる場合には、プロジェクトの開始前に、モニタリングの対象とする化合物やサンプリングの時間と場所、モニタリングの継続期間など、モニタリングの手法を確立する必要がある。コストや規制の問題も、この段階で考慮に入れなければならない。

現地調査

プロジェクトの成功には、その廃棄場の充分な理解につながる徹底的な調査が不可欠である。これには、廃棄物と現地の両方の性質を調べることが含まれる。どの微生物を選ぶかや、物理的あるいは化学的処理が必要かどうかは、廃棄物の種類によって決まる。栄養源や水分を与えるタイミングや必要性は、現場の土壌の種類と水文学的性質によって左右される。現地の評価に1年から2年が必要になる可能性もある。キーストーン環境資源(Keystone Environmental Resources)社では、汚染区域の地下および隣接する土壌を2年間かけて調査した(Campbell et al., 1989)。この間に、現地の水文学的性質、土壌型、地下の状態、気候の特性といった物理学的側面が明らかにされ、それと同時に微生物叢の性質や汚染物質が微生物叢に与える影響を明らかにするための実験研究が行われた。
実現可能性試験の結果、適当な栄養源と水分が与えられれば、現地に存在する微生物が汚染物質を分解できることが明らかになった。キーストーン社のプロジェクトでは、栄養源(窒素、リン、無機物)のほか、代わりの電子受容体として窒素の添加が行われた。一般に、およそ1,000ガロン(約3,800リットル)の炭化水素物質を分解するのに、10,000ポンド(約4,500キログラム)の酸素と875ポンド(約390キログラム)のアンモニア窒素が必要になる。このプロセスでは、およそ7,000ポンド(約3,150キログラム)の細菌が生みだされる。
処理が成功しているかどうかを監視するのと、利用できる栄養のレベルを監視するためのサンプリング方法が開発された。この方法では、無機化の指標として塩化物がモニタリングされ、汚染の直接的な測定は、井戸の上層部の3カ所、下層部の3カ所で行われた。12週間の処理後、汚染物質の約90%が除去された。別の実地利用では、四塩化炭素、クロロベンゼン、エチルベンゼン、トルエン、1,1,1-トリクロロエチレン、キシレンの98から99%の削減に成功した。
処理に関与する微生物の同定は、種のレベルまでは行われないのが普通である。分解プロセスには、ノカルジア(Nocardia)属、シュードモナス(Psudomonas)属、アシネトバクター(Acinetobacter)属、フラボバクテリウム(Flavobacterium)属の株など、微生物の共同体が関わっていることが多い。生物分解は、多くの場合、グループまたは共同体としての微生物の代謝作用の結果である。ある企業の報告では、あるガソリン流出の分解には32種類もの微生物が関与したという(Bluestone, 1986)。一般に、化合物が複雑なほど、微生物共同体も複雑になる(Bluestone, 1986; Olson & Goldstein, 1988)。ある場所の微生物集団全体の遺伝的能力と生物分解での形質発現の関係をより深く理解しようとする研究(Olson & Goldstein, 1988)が進行中である。その目的は、微生物を全般的に生育させるのに充分な栄養源を与えるのではなく、特定の化合物の分解に寄与する特定の遺伝子をin situで同定し、増強することである。そのためには、環境条件下で遺伝子の発現や複製を制御する要因についてもっと理解する必要があるが、それによって、より低コストで迅速な廃棄物の分解が可能になり、環境への悪影響の可能性も低くなる。より厄介な廃棄物には、組換え微生物を開発するか、ある種の反応槽が必要になる。
現在までのところ、規制の問題があるため、環境中への放出に関して組換え微生物がin situで使われたことはない。バイオリアクターでは、組換え微生物が使われている。バイオリアクターでは微生物を封じ込めることができるため、これを利用することで環境上の問題の一部は回避することができる。さらに、生物分解プロセスの物理的な条件を制御することもできる。温度、微生物との接触時間、栄養レベル、分解する物質の濃度を最適化することができる。Irvine et al.(1982)とWick & Pierce(1990)は、浸出水処理のための連続回分式反応槽(SBR)の使用について解説している。Irvineらのグループの研究では、汚染された工業用地からの浸出水を取り上げている。最初に、浸出水は、廃水処理場からの「無殺菌未処理廃棄物送出装置(non-sterile raw waste feed)」につながった貯蔵タンクに最大で19日間貯蔵されてから、粒状活性炭(GAC)カラムで濾過された。組換え微生物は、このSBRに加えられた。
最後に、中和反応とともに、土着の微生物集団から単離した純培養株を加えて微生物集団を強化した(Wick & Pierce, 1990)。SBR環境で使われたのは、Pseudomonas putidaという特殊な株で、もとの株にはみられない分解能を持ち、これが単離、培養されてSBR内の既存の微生物群に加えられた。SBRは閉鎖系として運転された。すべての揮発性有機物はGACで濾過され、SBRを通じて再利用された。
表9.5は、プロセスの有効性を評価し、規制に適合していることを証明するのに必要な要素である。集中的なモニタリングでは、場所と時期を慎重に選択し、サンプル物質についても同様に注意深く扱う必要がある。規制に準拠した化合物の濃度を評価するのに使われる分析法は、規制当局に受け入れられるものである必要があるとともに、質を保証するための適切な手順が必要である。生物処理のプロジェクトでは、これが不可欠であるとともにコストのかかる部分の1つである。


表9.5 モニタリングを行う要素と化合物

規制に適合するためのもの【脚注a】

プロセス監視のためのもの

pH

pH

ベンゼン

安息香酸塩

ヘキサクロロシクロブタジエン

生物学的酸素要求量(BOD)

ヘキサクロロシクロペンタジエン

クロレンド酸

モノクロロベンゼン

o-, m-, p-クロロ安息香酸

モノクロロベンゾトリフルオリド

酸素消費速度

モノクロロトルエン

フェノール

フェノール

浮遊物質

テトラクロロベンゼン

全有機ハロゲン化合物

テトラクロロエチレン

 

全有機炭素(TOC)

 

トリクロロベンゼン

 

トリクロロエチレン

 

2,3,5-トリクロロフェノール

 

【脚注a】USEPAによって定められた規制適合レベル
出所:Levin & Gealt(1993)を改変して引用。


SBRは24時間サイクルで運転された。年間の処理量は、1万立方メートルを超えた。監視対象の化合物の削減幅には、大幅な差が出た。クロロ安息香酸(オルトおよびメタ)は、当初レベルの763mg/lと219mg/lから検出されなくなった(測定の感度は3.5mg/l)。全有機ハロゲン化合物は、1,062mg/lから319mg/l(70%)に削減された。SBRプロセスが最も効果を示したのは全有機炭素とフェノールで、それぞれ当初の10,575mg/lと1,553mg/lから99%以上の削減が達成された。SBRで処理した浸出水は、排出基準を満たすためにはさらにGACでの処理を必要とした。しかし、必要となる活性炭の量は、生物処理のおかげで劇的に削減された。毎日行われていた炭素フィルターの交換は、年に3回程度になった。コストの削減幅は、処理水1立方メートルあたり、約30米ドルと見積もられた。
別のタイプの回分式反応槽では、担体に付着させた微生物や酵素を用いる。この方法では、反応槽が、処理される液体が通過する充填カラムとして機能する。図9.1はこうしたシステムを示したもので、これはバイオトロール(Biotrol)社が開発し、米国環境保護庁のスーパーファンド・革新技術評価制度(Superfund Innovative Technology Program)で使われた事例である(USEPA SITE, 1988; Ellis & Stinson, 1991)。この装置は好気的にも嫌気的にも運転することができ、温度、滞留時間、廃液の条件(pH、栄養調節)の制御と流入出のモニタリングが可能である。微生物集団は、幅広い種類の汚染物質を分解処理できるように改変されることもある。バイオトロール社は、付着した物質を分離して液相に移し、バイオリアクタ内で処理できるようにする土壌浄化法も開発している。


図9.1 水処理システム(ATS)の工程図(Ellis & Stinson, 1991)

汚染された土壌や水の生物処理については、2、3の基本的な手法のさまざまなバリエーションが開発、報告されている。それらに利用される装置や菌株、栄養素の配合には、特許を取得しているものもある。表9.4は、封じ込め、管理された条件およびin situでの廃水や土壌の処理に商業利用されている基本的な方法を示している。これらは、2つの基本的なタイプに分けることができる。液体と微生物のある種の相互作用が関与するバイオリアクターと、汚染物質がまだ粒子に吸着している間に土壌処理を行うものである。一般に、バイオリアクターでは、土壌の洗浄が行われ、ここで、溶液、なかでも特許の特殊な洗浄液で処理することによって標的化合物を脱着させる。この液体は、消化槽(SBR)、つまり微生物をなんらかの担体に付着させ、液体がそこを通過する水処理システムまたは固定生物膜反応槽で微生物に曝露することによって処理される。土壌スラリー方式とランドファーミングでは、in situで土壌、栄養源、水分をさまざまな割合で混合し、微生物と標的化合物の接触を最大化させる。
微生物と処理する物質の接触を最大化する方法としては、物質を可溶化したり、付着面となる各種の物理的媒体を使って曝露面積を増加させることなどがある。「固定化」系での酵素の利用も提案されている。汚染された液体は、生物分解のプロセスの1段階を触媒する固定化酵素が含まれたカラムに送出される。この方法によるコストと効果はまだ定まっていない。
キーストーン社のプロジェクトで使われたような土壌システムでは、栄養源や水分を添加するほか、微生物と分解しようとする物質を接触させるために常に土を耕す必要がある。反応速度や得られる最終産物を最大化するために、環境要素(pH、温度)が操作される。既存の微生物集団は、実験室で培養した微生物(現場から採取したものか、特殊な分解能を持つ株として選択されたもの)を加えることによって強化される。
処理の速度は、物質の種類、現地の物理学的性質、最終的な汚染物質濃度がどの程度になればよいかという目標、そしてどのくらいの規模で処理をするかによって非常に大きく左右される。処理速度については、1週間あたり浸出水6万ガロン(228,000リットル)から1カ月あたり土壌1.7トンまで、さまざまな報告がある。あるバイオリアクターは、製鉄所でのコークス生産で残渣として出るシアン化合物の処理に使われ、毎日700〜1,000ポンド(315〜450キログラム)処理している(McCormick, 1985)。
生物処理に関する有害物質規制研究所(Hazardous Materials Control Research Institute)のシンポジウムの議事録(1989)や、USEPAのSITE報告書(1988)には、具体的な技術の詳細な説明が含まれている。これらの技術のほとんどで、汚染物質の大幅な除去が示されている。一般に、監視対象の化合物の80〜98%が除去されている。一部には、完全に除去できないケースもあるが、処理が必要な物質の量は大幅に削減され、コストと時間が大幅に節約される。

コスト

コストに関する数字は、さまざまな文献に見られる(Rishel et al., 1984; McCormick, 1985; Bluestone, 1986; Savage, 1987; Wick & Pierce, 1990)。しかし、汚染除去のコストは、実際にかかる費用を直接評価する以外にも考慮しなければならないものがあるため、各種の方法を比較するのは難しい。それぞれの方法に長所と短所があり、コストも大きく異なる。大きな要因となるのは、物質の種類と場所の性質である。表9.6は、大規模プロジェクトでの立方ヤード当たりのコストと所要期間、および主な問題のいくつかを比較したものである。当座のコストだけを考えた場合、最も低コストなのは生物分解である。生物分解は、最も少ないエネルギーで、廃棄物を無機化して無害な物質にすることができる。しかし、生物処理には時間がかかり、必ずしも国や地方の規制で義務づけられているレベルまで浄化できるとは限らない。このため、追加の処理とコストが必要になる場合がある。しかし、生物処理によって廃棄物量が大幅に削減されるのはたしかで、事後の処理にかかるコストは削減される。


表9.6 処理法の比較

処理方法

立法ヤード当たり
のコスト(米ドル)

期間(月)

主な問題

焼却

250-800

6-9

排出、エネルギー消費が大きい

固定化

90-125

6-9

腐敗、浸出

埋立て

150-250

6-9

浸出、長期的な汚染

生物処理

40-100

18-60

代謝による副産物、時間的要因、微生物の放出

出所:Levin & Gealt(1993)を改変して引用。


健康や環境への有害性

理想的な条件のもとでは、生物分解をしようとすればかならず、標的化合物は無機化されるはずである。好気的プロセスでは二酸化炭素と水が得られ、嫌気的プロセスではメタンと無機イオンが得られる。先に示したように、生物分解は目新しいプロセスではない。しかし、プロセスを向上させるために組換え微生物を用いたり、廃棄物処理に生物学的手法が広く用いられることによって、これまでは考慮されなかったリスク評価の問題がいくつか生じ、既存の問題も強調されるようになった。
組換えや天然の微生物の環境への適用に伴うリスクの評価は、過去10年間に活発な研究の対象とされてきた。リスク評価では、当該の有害性を同定、定量化することと、そのデータを曝露要因と考え合わせることが必要であることについては一般に合意が得られている。さまざまな研究者や機関が、組換えや天然の微生物の環境への適用に伴うリスクの評価に関する手法や手順を提案している(OTA, 1985; Tiedje et al., 1989; NRC, 1989; Levin & Strauss, 1991; Ginzburg, 1991)。リスク評価に関する問題点についての議論も行われてきた(Sharples, 1987; Davis, 1987)。微生物をモニタリングし、制御するための手法が開発され、全般的な評価や(OECD, 1986; Levin et al., 1987, 1992; Biotechnology Action Programme, 1990)、個別の評価(Katz & Marquis, 1991; Sharples, 1991; Vidaver & Stotzky, 1992; Vandenbergh, 1992; Lindow et al., 1992)が行われている。
バイオテクノロジーが関与する廃棄物の分解手法によって、エネルギー利用の面でより低コストで、標的物質のより完璧な無機化ができるというのが一般的な見方である。しかし、廃棄物処理のために微生物の環境への適用を検討する際には、3種類の問題があると考えられている。

1. 微生物(組換え株または天然株)を使用することに伴う一般的な問題
2. 微生物が廃棄物を分解するプロセスに伴う問題
3. 微生物による分解の速度を高めるために封じ込めを解除する技術に伴う特殊な問題

組換えまたは外来の(土着でない)微生物の環境への適用に伴うリスクを評価する必要性があることについても、一般に合意されている。

廃棄物の分解に微生物を用いることに伴う一般的な問題

化学製品の環境への適用は広く受け入れられており、安全性を確保するための手法が数十年にわたって開発され、検証されてきた。微生物の環境への適用に関する多くの懸念も同様で、健康や安全性の問題に対処するための試みは、まず、環境中での化学物質の使用に伴うリスクを評価するために開発された方法に基づいて行われてきた。Milewski(1985)は、組換え微生物の野外試験に伴う問題を明らかにし、野外適用の計画を評価する際の検討ポイントを挙げている。

1. 一般的な問題―親微生物、宿主微生物、伝達される遺伝物質の同定のほか、組換え微生物の構造、伝達の手段、導入される遺伝物質の安定性と発現を示すデータ。
2. 環境上の問題―改変の対象となる微生物の生息場所、一般的な分布、生残性、生殖性、拡散性などに関するデータ、宿主域、他の生物との相互作用、生物循環のプロセスに及ぶと考えられる影響、自然環境に存在する他の生物との遺伝情報交換の可能性を示す生物学的相互作用に関する検討。
3. 野外試験に関するデータ―試験案の説明(目的、重要性、正当性)および組換え微生物の生残、複製、伝播に関する実験データの説明。微生物の数、場所、影響が考えられる具体的な標的生物、封じ込めと試験のモニタリング方法など、野外試験の条件についての説明。

これらのポイントは、数年にわたって繰り返し強調されてきており(USGAO, 1988; Sharples, 1991)、5つの主要な疑問に答えるものである。

1. その微生物は生残するか
2. その微生物は増殖するか
3. その微生物は他の区域に拡散するか
4. その微生物は有害か
5. その微生物は他の標的外生物に遺伝子を伝達するか

全米科学アカデミー(NAS, 1987)は、「組換え生物の環境への導入に関するリスクは、その生物とそれが導入される環境の性質に基づいて評価されるべきである」としてこの問題をまとめている。その後、汚染の除去や軽減の問題が生じてきている(Vandenbergh, 1992)。
初期には農業への適用に重点が置かれることがほとんどだったが、これらの安全性に関する一般的な問題は、廃棄物処理を目的とする微生物(組換えまたは天然)の導入にも同じようにあてはまる。リスクとは有害性と曝露との関数であるため、上の疑問に答えることによって、ある特定の環境である微生物を用いることにかかわるリスクを評価するための根拠が与えられる。

微生物による廃棄物分解に伴う諸問題

健康上の問題

生物処理に伴うリスクを評価する場合、健康に関して2種類の問題がかかわってくる。それは、(i)作業者に影響が及ぶ可能性、および(ii)公衆衛生に対する影響が及ぶ可能性、である。これらは、原因(不完全な無機化や微生物の増殖)の点ではつながりがあるが、予防や回避の手段は異なる。影響が心配されるのは、処理プロセスの結果生じた化合物、あるいは処理区域の環境特性を意図的に変えるために使用、増強された微生物への曝露があったときである。
物理的な処理法では、物質が1つの媒体から別の媒体(たとえば水から土壌、または水から大気など)に移行する結果になる。微生物による生物分解では、理論上は、完全な無機化が行われることになる。しかし、分解が完全に行われず、微生物代謝による中間産物が蓄積する(すなわち生物分解ではなく生体内変換が起きる)可能性もある。こうした生体内変換による産物の毒性は、当初の物質と比べて低い場合もあれば、高い場合もあれば、同じ場合もある。これらの移行性は、もとの物質よりも低い場合、高い場合、同じ場合がある。さらに、これらの産物の残留性が、もとの物質よりも低い場合、高い場合、同じ場合もある。移行性や残留性の差は、曝露レベルの変化につながり、それによって悪影響が生じる可能性がある。毒性の低い物質でも高濃度で長時間曝露すると、毒性の予期しない発現を招くこともありうる。先に示したように、ポリ塩化ビニルの部分分解は、人に対する発がん物質として知られる塩化ビニルの蓄積を招く。ほかにも、亜硝酸塩や窒素酸化物の存在下でのアミンのN-ニトロソアミンへの変換(Ayanba & Alexander, 1974; Greene et al., 1981)や、PCB類の部分的な生物分解によって生じるクロロ安息香酸の蓄積(Sayler et al., 1988)などの例がある。
部分分解(生体内変換)が起きる場合、さらなるリスク評価の問題が生じる。蓄積した代謝産物の毒性、移行性、残留性を見極める必要がある。これらの要素が、環境、非標的生物やヒトへの悪影響の可能性を左右することになる。生成する化合物の種類と量は、部分分解の程度と経路によって決まる。特定の化合物が生物組織に与える有害な影響を判断するためには、いろいろな試験法が利用できる(Loomis, 1978; Paustenbach, 1989)。
しかし、具体的な代謝産物やその濃度については、予測できない場合もある。環境要素(pH、温度、水分)や土着の微生物の存在によって、分解の程度は大きく影響を受ける可能性がある。個々の化合物についての試験では、化学物質が混ざり合うことによる相乗効果に関するデータは得られないが、複雑に組み合わさった化学物質の毒性を測定するための試験法はある(Irvin & Akgerman, 1987; Irvin, 1989)。
廃棄物の分解に利用するために培養(あるいは組換え)された特殊な微生物は、ヒトをはじめとする標的外の動物や昆虫に対して害を及ぼすことはないと想定することができる。しかし、先に示したように、生物処理では、目的の微生物の代謝活動を助けるために栄養分が添加される。閉鎖系の場合には、これによって問題が生じることはないが、非閉鎖系の場合、普段存在している他の微生物の増殖が起きる可能性があり、その中にはヒトをはじめ他の非標的動物あるいは昆虫に病害性を持つものも含まれる。作業者や住民がこうした微生物に曝露すれば、有害な影響を招くことになる。
不完全な無機化による健康上の問題は、汚染された水や大気を通じた住民の曝露によって生じる。もし地下水の汚染がありうることが示されれば、処理区域からの流出を監視するための試験井を使うことによって、水の安全性を確保することができる。廃水も、同様の方法で監視できる。強調すべきは、代謝による中間産物の有害性が知られており、分解が不完全である可能性が高い場合のみ監視が必要であるという点である。一般に塵粒によって微生物が拡散する空気による汚染は、後述する方法(非閉鎖系での諸問題)によって対処することができる。

環境上の問題

環境に適用された組換え生物の拡散によって環境への悪影響が生じる可能性については、これまでにさまざまな国民の懸念や憶測がある。標的外生物、生物学的循環、ヒトの健康に影響が及ぶ可能性が議論されてきた。現在までに、700件近く行われている組換え微生物または組換え植物の野外試験では、そのような問題があったという事例はない。ある事例(Short et al., 1991)では、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸ナトリウムを分解させるために改変したシュードモナス(Pseudomonas)属の菌株の有効性を評価している研究者らが、2,4-ジクロロフェノール(有毒な中間代謝産物)の土壌中の蓄積を見出している。2,4-ジクロロフェノールの蓄積によって、土壌中の菌類の90%が失われた。
悪影響の可能性があるということは、環境への適用を安全性の面から再検討しなければならないということである。Cavalieri(1991)は、組換え微生物の利用による環境への影響を予測するために、マイクロコズムを利用することを提案している。マイクロコズムを用いることによって、非組換え体と比較した組換え微生物の定着性や生残性、特有の影響についてのデータを得ることができる。マイクロコズムから得られるデータは野外条件下での結果を完全には表さないかもしれないが、野外試験を進めるかどうか、あるいはどのように進めるかを判断するための根拠にはなる。同様に、マイクロコズムでのデータに基づいて、プロセスの修正、安全のための予防措置の整備、封じ込めや軽減のための規定の立案、効果的なモニタリング手順の考案を行うことができる。

非閉鎖系での諸問題

処理しようとする物質の性質がさまざまであることや処理区域の物理学的特性に加え、気候条件や規制の問題があるために、生物処理の方法にはきわめて多くの種類がある。当然ながら、バイオレメディエーションのシステム制御レベルが高いほど、よい結果が出る可能性が高まり、悪影響の可能性は減少する。最も制御が効くのが回分式反応槽で、次が各種の貯蔵タンクあるいは半閉鎖型のバイオリアクターである。最後が自然または改変された生態系で、最も制御が効きにくい。回分式反応槽は閉鎖系であるため、微生物は封じ込め状態にあり、勝手に環境に入り込むことはないと考えることができる。同時に、完全な無機化が実現されるように物理的、化学的条件をコントロールすることができる。貯蔵タンクと半閉鎖型の反応槽では、制御に限界がある。これらには、小規模なものから大規模なもの、開放(柵で囲んで侵入を防ぐ)あるいは湖沼型に周囲を囲んだものや、汚染された土壌の小山を覆う温室型の構造物など、さまざまなタイプがある。
こうした半閉鎖系は、追加の微生物を導入して増強する場合や、土着微生物の生育を促すために栄養源を添加する処理に使われる。栄養源と微生物は同時に加えられることが非常に多い。大部分の微生物は、自然環境下では同定が不可能である。また、土壌サンプル中の微生物のうち5%は実験室条件では培養できないが、これは一般に、適切な培地がないためであり、生きているが培養できない状態にあると考えられる。性質が明らかになっていない野外環境に栄養源を添加すると、細菌や菌類、原生動物が増殖する。これらの多くはウイルスを持っている。こうした微生物の一部は、栄養源の添加や生育条件の変化を受けて、ヒトや動植物に対する病原体になる可能性がある。
これらの微生物は、感染症やアレルギー反応を引き起こし(特に現場の作業者に対して)、毒素を産生する場合がある。感染症を引き起こす一般的な土壌細菌の典型的な例は破傷風菌(Clostridium tetani)だと思われるが、この細菌は刺し傷を通じて感染する。このほかに、枯草菌(Bacillus subtilis)などの細菌が作業者にアレルギー反応を引き起こすことが知られている。Emmons(1962)によると、「全身性真菌症を引き起こす菌類は、土壌中には一般的に見られ、数の多少はあるが、常在している」。さらに、菌類への曝露によってアレルギー反応が引き起こされる、また、菌類のなかには毒素を産生するものもある。
微生物の拡散を最小限に抑える手段の1つとして、閉鎖系(湖沼や反応槽を帆布やプラスチックで覆う)を利用することが奨励される。区域の囲い込みは、一般住民に対しては曝露を最小限に抑えることになるが、閉鎖系の内部では、塵粒や噴霧を通じて作業者が高濃度の微生物に曝露される可能性がある。現場の処理土壌の表面を湿らせることによって、空気中の粉塵の量は減少する。場合によっては、防護用のマスクを使用することが望ましい。

封じ込めと軽減

望ましくない微生物が根絶されることはまずないが、許容レベル(すなわち、経済や健康への影響として許容できないレベル以下)にまで減少させることは可能である。微生物を完全に封じ込めることは不可能で、経験からすると、有益な微生物の場合も有害な微生物の場合も、必ずしも必要というわけではない(Vidaver & Stotzky, 1992)。VidaverとStotzkyは、封じ込め(containment)に代わって、より現実的な「限局(confinement)」という用語を使うことを提案している。限局の意味は、微生物が利用地点から拡散しないことではなく、微生物が効果的に管理され、有害な影響が最小限に抑えられていることをいう。大部分の微生物は、個々の栄養・水分の要求や、環境条件(生態学的地位)への感受性によって、生物学的に限局されている。
追加的な戦略として、はたらきを弱めた微生物の利用や本来の宿主以外への伝達性や生残性を抑えた安全なクローニングベクターの構築と利用、また、温度などの環境要因に感受性の高いレプリコンを用いることなどがある(Cuskey, 1992)。はたらきを弱めた微生物の利用は、環境への適用においては現実的ではない。しかし、放出された細菌を制御するための条件致死システムがいくつか考案され、試験されている。これには、温度感受性系(低温ではDNAの修復が起こらない)、その微生物が生息する環境には通常存在しない無害な化学物質が存在する場合にのみ活性化される誘導性の代謝経路を持つ条件致死性の遺伝子配列、そして、細胞の生存に不可欠な主要な代謝機構を阻害する「自殺」遺伝子を含むものなどがある。遺伝子の制御は、該当の廃棄物が存在することによって(誘導)、あるいは存在しないことによって(抑制解除)行われる。廃棄物の濃度が基準値以下に下がると、この遺伝子が活性化される。あるいは、遺伝子は常に活性化していて、二番手の遺伝子が保護装置の役割を果たすという方法もある。この二番手の遺伝子の活性は、処理される廃棄物の濃度によって制御される。
微生物による環境汚染の除去(あるいは軽減)が研究されてきており、Vidaver & Stotzky(1992)でも検討されている。状況がそれぞれ異なっており、汚染除去の手法も異なるために、事例ごとの対処が不可欠になる。微生物の種類、物理的な環境、改変の性質、そして季節のいずれもが考慮されなければならない。汚染除去の手順を考える際には、野生型であっても改変されたものであっても、その微生物に関するデータがきわめて重要である。表9.7は、土壌や動植物が有害な微生物で汚染された場合の汚染除去法と、効果が出るまでに必要な時間を示したものである。動植物について示したのは、野外適用の間に汚染される可能性があるためである。したがって、動物(処理区域に迷い込んだ動物)の汚染が発生した場合には、微生物の拡散を最小限に抑えるために、焼却、検疫あるいは屠殺が行われることもある。その他にも微生物の拡散源として、鳥類や齧歯類、流出水も考慮しなければならない。処理区域で生育している植物は、微生物に汚染される可能性がある。微生物が有害であると考えられる場合には、その植物は速やかに廃棄(焼却、耕起)するか検疫(将来の使用が検討されている場合)を行わなければならない。長期的な除去法を示したのは、そのプロジェクトが長期間にわたり、問題が再発する場合に使用するためである。物理的な防護の問題は、特に動物の場合、あまり強調する必要はない。堅固で高さのある柵によって、ほとんどの望ましくない動物の侵入を防ぎ、不法侵入が起きないようにすることができる。


表9.7 自由生活性微生物および関係する動植物による望ましくない影響を予防または除去するための期間と方法

微生物と関係する動植物

即時

短期【脚注a】

長期【脚注c】

自由生活

燻蒸
灌水
化学物質【脚注d】

燻蒸
灌水
化学物質
土壌侵食の防止
土壌改良

燻蒸
灌水
土壌侵食の防止
土壌改良

植物

焼却(根絶)
検疫
耕起
化学物質
灌漑・灌水
媒介昆虫の防除
機械・設備類の衛生管理
排水の管理
ソラリゼーション

検疫
化学物質
輪作
転作
灌漑・灌水
加熱処理
土壌のソラリゼーション
土壌侵食の防止

輪作
耕作
土壌改良
雑草防除
土壌侵食の防止

動物

焼却
検疫
屠殺
鳥類、齧歯類、昆虫の防除
排水の管理(昆虫)
物理的防護

検疫
抗生物質、薬剤
鳥類、齧歯類、昆虫の防除
物理的防護

抗生物質、薬剤
鳥類、齧歯類、昆虫の防除
物理的防護

【脚注a】効果が表れるまで数時間から数日
【脚注b】効果が表れるまで最長3年
【脚注c】3年以上
【脚注d】標的微生物に対する化学物質の選択や利用可能性が、実行可能性と方法を左右する
出所:Vidaver & Stotzky(1992)を改変して引用。


処理区域の細菌のレベルを低下させるための土壌殺菌の詳細を表9.8に示した。米国で一般的に使用されている土壌燻蒸剤を具体的に列挙してある。表からわかるように、ほとんどの薬剤は生物全般に対する有効性を持っている。すべてが動植物に対して有害で、使用には注意が必要である。燻蒸剤の使用によって、土壌中に存在する微生物の生息密度は大幅に低下する。しかし、殺菌が完全でない場合や、時間が経つにつれて、微生物叢の生き残りが増殖し、密度が上昇する。燻蒸後に微生物集団のどの部分がどの程度生き残ったかによって、新たにできる集団は、種類や個々の種の相対的な個体数の面で以前と同様の場合もあれば、以前とはまったく異なる集団になることもある。可能性の1つとして、導入した微生物が優勢になることもありうる。そのため、処理区域には、周辺の汚染されていない土壌を接種することが推奨される。これによって、本来の土着微生物叢に置き換わり、導入した微生物が優勢になる可能性は大幅に低くなる。

表9.8 土壌燻蒸剤

一般名

化学名(商品名の一部)

組成

特異性

用量(ヘクタール当たり量)

毒性(対植物)

哺乳類LD50【脚注a】
(mg/kg)

適用上の注意

臭化メチル

ブロモメタン(Dowfune MC-2)

98%+2%クロロピクリン

一般殺生物剤

450〜900キログラム

有毒

1

耐ガス性密閉シートが必要

クロロピクリン

トリクロロニトロメタン(Picfume、Larvacide)

100%

一般殺生物剤

300〜500リットル

有毒

1

耐ガス性密閉シートを用いると最も効果的

塩素化炭化水素類(1,3,D)(DD)

1,2-ジクロロプロパン、1,3-ジクロロプロパンなどの塩素化炭化水素類(Telone、Vidden D)

1,3D単独または他の塩素化炭化水素類と混合

殺線虫剤

100〜500リットル

有毒

140

シートによる土壌の密閉が必要

二臭化エチレン(EDB)

1,2-ジブロモエタン(Dowfume W-84、Nematox 100)

60〜80%液

殺線虫剤

19〜94リットル

有毒

150

シートによる土壌の密閉が必要

メチルイソチオシアニド

メチルイソチオチオシアニドは、単独添加または一部の不安定な化合物の分解促進剤として使われる

30〜40%液または水和剤

一般殺生物剤

600〜1,200リットルまたは300〜400キログラム

有毒

280-650

注入または回転耕耘機使用

ジブロモクロロプロパン【脚注b】(DBCP)

1,2-ジブロモ-3-クロロプロパン(Fumazone、Nemagonなど)

液体

殺線虫剤

19〜38リットル

一部の植物に有毒

172

注入またはドレンチ

次亜塩素酸塩

塩素

100ppm水溶液

殺微生物剤

不定:pHおよび温度に依存

有毒

0.03-02c

液体で適用

【脚注a】LD50とは、被験群(通常はラット)の50%が死亡する用量をいう。
【脚注b】有毒性のため、現在では使用されていない。本表に掲載したのは比較のためだけである。
【脚注a】感受性の魚種への連続曝露の感度範囲:Le50(毒物に曝露した魚の50%が死亡する濃度)
出所:Vidaver & Stotzky(1992)を改変して引用。


Lamptey et al.,(1992)では、バチルス(Bacillus)属(一般に屈折性が高い)の小規模または大規模野外試験に特化した汚染除去法を検討している。Lampteyらは、対象区域が充分に小さい場合には、土壌の最上層(植物やそれに付随する動物相を含む)を採取して消毒すればよいことを示している。蒸気(121℃で15分間)または60Co線源を用いる照射法(3,000krad/hで3時間または3krad/hで96時間)の使用が提案されている。区域が広く、土壌採取が現実的でない場合には、蒸気を直接当てることが推奨されている。この方法を行うには、蒸気管(各80cm)を埋設し、ボイラー(106kcal/時)から蒸気を供給する。もっと広く使われているシステムは、「水蒸気蒸留法」である。処理する区域にポリ塩化ビニルのシートをかぶせて重しをし、シートの側に蒸気を送り込むのである。温度は54〜100℃の範囲で行われている。この方法は、発芽した胞子を破壊するために間隔をおいて行うことができる。こうした手法は、どんな微生物にも利用が可能である。

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