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第6章
微生物農薬-安全上の問題点

モリス・レヴィン
メリーランド大学・メリーランドバイオテクノロジー研究所・バイオテクノロジー社会問題センター(米国・メリーランド州カレッジ・パーク)


はじめに

 昆虫は、ヒトと同様、あらゆる種類の病原微生物に対する感受性を持っている。病原体による昆虫の防除は、農業研究における長年の目標の1つとされてきた。その結果、昆虫防除用の微生物剤が広く利用され、対象範囲や全体的な効果の面での有用性を広げるために遺伝子工学の手法が応用されている。
 微生物農薬の商業的価値については、さまざまな推計が行われている。Measows(1990)の推計によると、年間1億米ドルの市場価値がある。Jutsum(1988)では、年間1億6,000万米ドルと推計している。両者とも、微生物農薬は、年間約200億米ドルに及ぶ農薬への総支出の1〜2%というごく一部を占めるに過ぎないことを指摘している。
 ほとんどの国では化学農薬の毒性に関する安全管理を義務づけており、農薬の流通と使用に関する国際行動規範がある(FAO, 1986)。この規範では、適用対象を化学農薬に限ってはいないものの、増殖、生残、感染性といった生物学的な検討事項については言及されていない。
 微生物農薬が使われるのは、選択性や生分解性が高く、環境にやさしいためであり、使用の増加が予想されているのは、まさにこうした要因のためである。たとえば、Bacillus thuringiensis(BT菌)は、特定の害虫に活性を示す有毒物質を産生することから、有効な殺虫剤の1つになっている。現在、何らかの形でB. thuringiensisを含む製品は、購入・使用されている微生物農薬(「自然」と組換えの両方)の80〜90%を占めている。これらの製品の成分は各種の培地に異なる濃度で懸濁した生菌または死菌で、接合によってBT菌のさまざまな毒素遺伝子を含むようになった在来株や、BT菌の毒素遺伝子を含むいろいろな種および属の細菌(死菌または生菌)が含まれている。
 化学農薬の使用を減らそうという動きの高まりと、製造技術における研究の向上や進歩とが相まって、微生物農薬の市場シェアや種類が拡大することは必至である。市場シェアが上昇するにつれて、環境への放出の規模は拡大し、利用される微生物の種類も増加することになる。DNA技術の利用によって、効力が高く宿主域の広い新たな株が作られることが期待される。BT菌への別の毒素遺伝子の追加、ウイルスの殺虫剤としての利用、主な細菌への毒素遺伝子(サソリ、ダニ)の追加、微生物由来の毒素遺伝子の作物への直接的な導入に関する研究が報告されている。
 微生物防除剤(「天然」のものや組換えのもの)の大規模な使用によって想定される環境への影響については、さまざまな考察が行われている(Brill, 1985; Chandler, 1985; Halvorson et al., 1985; Lenteren, 1986; Frommer et al., 1989; Tiedje et al., 1989; USEPA, 1989)。本章では、こうした微生物防除剤の野外試験や大規模使用にかかわる安全上の問題点を重点的に取り上げる。そのためには、天然農薬と組換え農薬の違いを検討し、リスク評価の要素を概観する必要がある。

天然微生物防除剤と組換え微生物防除剤

天然剤

 天然の微生物防除剤(MPCA)は、長年にわたって使用されてきた。最初に大規模に使用されたBacillus popilliae(乳化病菌)は、1948年に米国政府に使用登録され、マメコガネを防除するのに使用された。Bacillus thuringensis(berliner株)が登録されたのは1961年である。この菌は、カイコの病気の発生を受けて日本で単離された。1948年以来、米国では、細菌7種、ウイルス4種、菌類3種、原虫1種が登録されている。微生物の混合物(数種のB. thuringiensisの混合など)や、同じ微生物で懸濁培地・濃度の異なるものを含む殺虫剤は、数え切れないほど使用登録されている。研究者らは、長年にわたってこれらの製品の改良を続けてきた。たとえば、より効力の高い株や環境ストレスへの抵抗性が高い株が、実験室での単純な手順によって開発されている。
 改良に際しては、実験室の人工的な環境(発酵槽などの封じ込め装置での工業用微生物の開発と同じプロセス)に曝露して突然変異させた新たな株を分離するために、徹底した努力が行われた(Meadows, 1990)。こうして自然に生みだされた株はMPCAの有用性を高め、また、これによって規制による監視が大幅に変更されることはなかった。この種の遺伝子改変は、自然の遺伝子組換えの形態を巧みに利用したものである。その形態とは、接合、形質導入、形質転換である(Tortora et al., 1989)。これらの現象のそれぞれが、詳細な研究の対象とされてきた。
 形質転換は、微生物学者がまず明らかにしようとした自然界での遺伝的変異の形態で、1934年にはじめて報告された。形質転換では、細菌細胞の死に続いて溶解が起こり、DNAが放出されるが、このDNAは一定の条件の下で周囲の細菌に取り込まれて利用される(つまり、宿主のゲノムに組み込まれる)。これによって、実験室の管理された条件の下で微生物を操作することが可能になり、その結果、特定の役割により適した新しい株ができあがる(Watson et al., 1983; Stewart, 1992)。
 形質導入は、細菌にウイルスが感染する結果生じる。感染後、ウイルスの遺伝子が発現し、ウイルスのDNAや外被タンパク質が作られる。次いで成熟したウイルス粒子が集合し、それらの粒子が細胞外に放出される。形質導入粒子は、ウイルスDNAではなく、間違って宿主のDNAがパッケージングされることによって形成される(Miller, 1992)。
 接合は、供与菌と受容菌との間のDNAの伝達で、細胞同士の接触を必要とし、デオキシリボヌクレアーゼ(出会ったDNAを分解する酵素)の作用への抵抗性を示す。通常、このプロセスはプラスミドによって制御されるが、トランスポゾンによって制御される場合もある。接合がはじめて明らかにされたのは、1950年代初めである(McIntire, 1992)。プラスミドは、除去(curing)と呼ばれる手法によって細胞から取り除くことが可能で、それによってプラスミドに乗っている遺伝子は失われることになる。代わりのプラスミドで置き換えることによって、殺虫作用など別の種類の遺伝的能力が生まれる。一部のプラスミドは簡単に交換が起きる(自己伝達能を持つ)が、遺伝子の伝達が起きるには自己伝達性のプラスミド(Tra+)の存在を必要とするものもある。
 これら3つのプロセスとも自然界で生じており、そこでは近縁種間の遺伝子交換はよくある現象であることがわかっている。接合は水環境と土壌環境の両方で起き、交換された遺伝情報は発現することが、複数の研究者によって示されている(Stotzky & Babich, 1984; Miller, 1992; Saye & O'Morchoe, 1992; Walter & Seidler, 1992)。

遺伝子組換え剤

 MPCA改良の可能性は、分子生物学によって高まってきた。「遺伝的組換え」という用語は、別の意味を持つようになってきている。プラスミド、DNA代謝に関与する酵素、遺伝子、遺伝子構造に関する詳細な知識によって、遺伝子を単離し、その遺伝子を、機能を持った状態で他の生物に移すことが可能になった(Tortora et al., 1989)。こうした移行は、外来のDNAが挿入されたプラスミドやウイルスなどのベクター(組換えDNA)を用いることによって実現する。ある特定の宿主に用いるプラスミドには、どのような由来のDNAでも挿入することができる。このプラスミドを宿主に移行させると、通常、DNAの発現が起きる。
 これによって、多種多様な種、属、界の間で意のままに遺伝情報を移行させることが可能になる。アグロバクテリウム(Agrobacterium)属のTiプラスミドは、組換えDNAを細菌から植物に移行させるのに用いられるプラスミドの一例である。この方法は、害虫抵抗性植物の作出を可能にする方法で、デールとキンダーレーラーによる執筆の第4章に詳しく述べられている。同様に、哺乳類タンパク質やホルモンを産生する細菌が、対応する哺乳類遺伝子を含むように改変されたプラスミドを用いて作製されている。
 一般に、遺伝子組換え微生物のリスク評価に必要とされるデータには、遺伝物質が土着の微生物群集に広まる可能性を評価担当者が判断できるようなデータが含まれる。問題は、他の微生物への遺伝物質の伝達が起きる場合、それが発現して影響を拡大させたり、異なった発現の仕方をして(発現レベルが変化する可能性など)新たな問題を引き起こすかもしれないということである。これは、非伝達性プラスミドの可動化や自己伝達によって起こりうる。
 微生物間でのDNAの伝達を可能にする多種多様な仕組みから得られる実験データは、解釈するのが難しい。関連性のない無数の接合性プラスミド、クローニングベクター、形質導入ファージ、トランスポゾンのどれかが使われることになる。得られたデータには、実験方法や環境あるいは生物に固有の性質が反映されている可能性もある。研究者たちは、各実験施設のさまざまな環境条件のもとでも、あるプラスミド系、つまり「標準プラスミド」が採用されれば、こうした混乱の一部は解消できると考えた(Zylstra et al., 1992)。こうした目的のために、自己伝達性と非自己伝達性という2つの標準プラスミド系が作りだされた。これらはともにR388プラスミドをもとにしているが、R388はトリメトプリムとスルホンアミドへの抵抗性を持つため検出が容易である。標準プラスミドは、遺伝物質の環境中での生残や伝達を評価する上で有用である。
 もし、大量の遺伝子が、自然選択の過程を経ずに新たな環境に導入されれば、進化の過程と速度に影響を及ぼすことになる。これは、その遺伝物質、環境、自然選択の過程との間に関係があるためである。もし、遺伝物質が充分大量に導入されれば、突然変異の可能性は高まり、ひいては、突然変異体がうまく生存していく可能性が高まることになる。さらに、土着の微生物との間で遺伝物質の交換が起きれば、その遺伝物質が複製され、突然変異を起こす可能性もある。Meadows(1990)では、組換え生物に固有のリスク要因は、遺伝物質の交換だけだとしている。他の要因はすべて、これまでに移植されてきた既存の性質にかかわるものである(交配の場合には遺伝子の位置は1つの種の内部で移動するだけだが、遺伝子工学では大きく離れた種や環境中に遺伝物質のコピーがもっと大規模に存在することになり、伝達や突然変異の可能性は高まる)。
 ただし、遺伝子交換に限っていえば、ヌクレオチド配列を変えることによって、交換の過程では機能できないプラスミド(非病原化プラスミド)が作られている。こうしたプラスミドは、いったん宿主に挿入されると、宿主から他の微生物への遺伝物質の移行を阻止する。ただし、一定の条件のもとでは、ヘルパープラスミドが細胞に入り込み、非病原化プラスミドの可動化が起きることもある(Zylstra et al., 1992)。
 こうした展開が、規制による監視の強化につながっている。

規制による管理が行われる根拠

 生物農薬の使用に伴うリスクを判断する際には、その有害性と曝露レベルを明らかにする必要があることは広く認められている(NAS, 1983, 1987; NRC, 1989; OECD, 1986; United Kingdom, 1993)。リスク評価を実現するためには、これら2つの要素を評価し、その結果を考え合わせる必要がある(NAS, 1983)。このリスク評価に基づいて、規制当局は具体的な製剤の使用が可能かどうかの判断を下すことができる。「リスク管理」という用語は、関係する政府機関によって行われる規制措置を指す。管理は、個々のケースによってさまざまである。具体的な法律や関連する規制によって、規制当局にはさまざまな選択肢が与えられている。このため、米国の場合、有害物質規制法(TSCA)に基づいて活動を行う規制当局は、申請者に対して、試験目的での一時的な使用や、特定の場所や目的に限った使用を認めており、使用の目的や場所が変わるごとに新たな申請が必要になる(Giamporcaro, 1993)。
 有害性とは、その製剤自体が持つ性質(ビルレンス、有効性、宿主域)などを指す。曝露とは、安定性、環境要因への抵抗性、移動性といった製剤の性質のほか、もちろん野外でどのくらいの量が用いられるかをいう。ある製剤や活動のリスクを評価するために必要なデータには、これら2つの要因を構成する要素が反映される。
 必要とされるデータには、裏付けとなる法律の目的や、その法律を立案した政府機関の特定の関心事項も反映される。米国の場合、連邦殺虫剤・殺菌剤・殺鼠剤法によって対象とする製剤の種類(農薬)と保護が必要になる対象(ヒトの健康および環境)が規定されている。たとえば熱帯の国など、場合によっては、生物多様性の保護に重点が置かれることもあるかもしれない。

生物的防除剤の放出に関する潜在的リスク―一般的な問題

 微生物は、発酵食品の製造、製パン、特殊化学品の製造など、さまざまな目的で人間に利用されている。こうした目的のための微生物の開発や使用は、一般に無害で、産業用として最適化されている(Brill, 1985)。この点で、MPCAは大きく異なる。こうした微生物には1つの役割、つまり、害虫の成長や繁殖を防いだり瞬間的に死に至らしめることによって、これを防除するという役割を持っている。また、これらの微生物には、自然界で生き延びられるように、選択や改変が施されている。このため、悪影響が生じる可能性が備わっているのである。さらに、化学剤は自然界で繁殖することはないという点で、MPCAとは異なる。そのため、化学剤のリスク評価では成長や定着の問題を考慮に入れる必要がない。微生物農薬を環境中で用いる場合のリスク評価のために、ガイドラインや手順が定められている(USEPA, 1989など)のはこのためである。一般に、ガイドライン(表6.1)には必要となるデータの種類が示されている。これらは「検討項目」と呼ばれている。生物製剤は、大規模かつ高濃度で拡散することが想定される。また、強風によって飛ばされたり、再増殖に伴う二次的伝播が起こりうるという意味で、環境への影響も考えられる。「検討項目」表で定められた全部の項目が、すべてのMPCAに該当するわけではない。ガイドラインは、起こりうる問題をすべて明らかにし、個々の事例にあてはまる項目のリストを示すことを意図して作成されている。表6.1に示された項目は、オーストラリア(1990)、カナダ(Agriculture Canada, 1993)、EU(CEC, 1990)、ニュージーランド(1992)、OECD(1990)、米国(USEPA, 1989; USDA, 1990)のガイドラインや要件(ガイドラインがない場合)に挙げられているものである。このように共通点が見られるのは、MPCAの環境中への放出にかかわる有害性や曝露の要因を評価する際の科学的な根拠を反映している。どの国においても、評価項目のリストは、学界、政府、産業界の科学者からなる委員会によって作成された。これらの要因についてもっとも明快に解説しているのが、Tiedje et al.(1989)による特集論文である。この論文は、環境に影響が及ぶ可能性に関する諸要因について検討している。オーストラリアのガイドラインはこの論文の発表後すぐに公表され、論文とは無関係に定められたものだが、内容と構成が非常に似通っている。

表6.1 検討項目【脚注a】の主な内容

I

 試験の概要

 

目的

 

実現可能性

 

便益とリスク

 

正当性

II

 微生物の遺伝的性質(親生物および受容体)

 

同定

 

分類学上の名称

 

分類に用いた手法

 

遺伝子型

 

遺伝物質の特性:染色体、トランスポゾン、プラスミド

 

遺伝子伝達の可能性

 

形質導入能、形質転換能、接合能

 

自然界での遺伝物質交換の証拠

 

表現型

 

選択の根拠

 

宿主内で予想される変化

 

培養条件、生活環、生息場所

 

病原性データ(型、ビルレンス)

 

抗生物質抵抗性およびその産生

 

生残および定着に関するデータ

 

管理の方法(天然剤、効果的な消毒剤)

III

 遺伝物質の導入

 

改変方法

 

挿入するDNAの由来と機能

 

DNAの同定、単離、挿入に用いた方法

 

ベクター

 

同定

 

遺伝子の挿入部位

 

宿主への導入方法

 

導入遺伝子の特性:
位置、量、安定性、残留するベクターDNA
MPCAと親生物との比較

 

相対的な生残、定着、複製、伝播を示す実験データ

IV

 環境上の検討項目(親生物および受容体)

 

微生物

 

生息場所

 

生残要因:
マイクロコズムに関するデータ、生残および生育に適する環境条件または悪影響を及ぼす環境条件

 

生残、複製、伝播、生物学的相互作用が起きる可能性を示すデータ

 

見込まれる具体的な悪影響の特定

 

試験

 

試験の条件

 

場所

 

試験区域の特性:
伝播の可能性、存在する標的集団と非標的集団の内容

 

封じ込め

 

採用する方法:
現地での封じ込め手段(物理的、生物学的)、運搬方法、職員の教育、安全のための手順

 

モニタリング

 

採用する方法:
手法の内容(感受性および信頼性の検討)
MPCAおよび親生物の再分離、手法の感受性、信頼性に関するデータの検討

 

軽減措置

 

終了手順

 

廃棄手段

 

消毒方法

【脚注a】オーストラリア、カナダ、EU、ニュージーランド、OECD、米国(EPA、USDA)の文書で検討すべきとされているポイントの概要。

 ほかにも、環境的な要素の重要性の観点から、放出される微生物と環境が相互作用する可能性を検討している専門家がいる(Kalmakoff & Miles, 1980; Day & Fry, 1990; Fry & Day, 1990; Meadows, 1990)。Meadowsは、既知の環境上の検討項目(温度、湿度、栄養条件など)を挙げ、微生物の定着や生残における要因としての重要性を検討している。FryとDayは、一般的な問題と、B. thuringiensisを例にした実際のデータに基づく具体的な影響を幅広く検討している。両者は、この微生物が農薬として広範かつ大量に使用されているにもかかわらず、生態系や健康への悪影響を示す徴候はみられないことを指摘している。もっと最近では、B. thuringiensisが産生する毒素への抵抗性を獲得した害虫が報告されている(USDA, 1992)。これは生態系への悪影響ではないものの、このMPCAが効果的な殺虫剤としての機能を失う可能性をリスク評価の一環として考慮すべきであることが示唆される。
 Tiedjeの論文およびオーストラリアのガイドラインは、信頼性のあるリスク評価のために必要な情報の量を表す指針を示そうとした点で、優れた例である。どちらの場合も、4つの属性が示されている。

1. 遺伝的改変
2. 野生型生物の表現型
3. 組換え生物の表現型
4. 関連する具体的な環境

 それぞれの属性は、特定の性質を表す7つから9つの項目によって規定される。各属性の下の各項目について、必要な検討のレベルが特定される。このレベルは、生じた特定の変化、その属性に関してわかっている知識の度合い、その属性に固有の性質によって判断される。たとえば遺伝的改変の場合、挿入されるDNAの性質と安定性、変化の性質(欠失、変異など)、DNAの機能と由来、ベクターとその由来に関するデータのほか、変異ゲノムに残存するベクターRNAまたはベクターDNAに関するデータが必要とされている。いかなる場合でも、入手可能な情報(一般の学術文献または問題の微生物に関するデータを得るために特に行われた実験によるもの)が多いほど、リスク評価での検討は少なくて済む。たとえば、ベクターやT-DNAが病原体の場合、ベクターやDNAと宿主の病原性との関係に関するデータが別途必要になる。
 表現型の項目で明らかにする性質は、培養化のレベル、制御のしやすさ、病害の状態、生残、野生型生物との遺伝子交換の範囲と発生の程度や感染力、基質利用の変化、病害や天敵への抵抗性の変化、抗生物質への感受性の変化、環境的な限界の変化、過去に放出した改変生物の表現型との類似性などである。したがって、環境的な限界が広がっている場合には、追加的な調査が求められる。遺伝子変異の結果、環境的限界に変化がないか、狭くなっている場合は、追加の調査の必要はなく、また、そうした結論が文献や実験データによって支持される場合には、この項目は無視することができる。
 表6.2はMPCAに必要とされるデータを示したもので、すべての場合に必要となるデータがどれで、特定の状況に必要とされるデータがどれかがわかる。すなわち、製品の詳細な分析や、MPCAの毒性に関する数項目のデータ、非標的生物に対して予想される、または既知の影響は、すべての場合に要求されるデータである一方、前段階のデータによって裏付けられる場合には、徹底的な毒性試験や有害性に関するデータが求められることもある。表6.2に挙げた要件は、USEPAの文書のM項から引用したものである(USEPA, 1989)。ただし、USDA(1990)、オーストラリア(1990)、OECD(1990)、EU(CEC, 1990)、ニュージーランド(1992)およびカナダ(Agriculture Canada, 1993)が定めている要件も同様のものである。1973年、世界保健機構は、害虫防除用のMPCAの有効性と安全性を評価するための暫定的な枠組みを提案した(WHO, 1973; Kalmakoff & Miles, 1980も参照)。USEPAの段階的システムと同様、5段階の方式が提案された。第1段階に必要なデータとして提案されたのは、微生物に関するデータ(同定、性質、非標的・標的生物への影響)および脊椎動物での感染性試験である。この第1次データを検討した結果、必要とされる場合には、野外試験のデータや、感染性や宿主域に関する詳細なデータが要求されることになる。USEPAの方式では、「場合によって必要な」項目が求められるのは、必須項目によって重大な悪影響の可能性が示唆される場合である。指摘しておかなければならないのは、必須項目がすべての場合に義務づけられた項目ではないということである。USEPAの農薬局では、リスク評価に関連がないことを明らかにできる場合には、特定のデータ要件を免除する手続きがある。申請者は、充分な正当性を示すことができる場合、免除を求めることができる。たとえば、有効成分としてB. thuringiensisを含む製品は、長年にわたって安全に使用されてきた実績を根拠として、毒性の要件を免除されることもありうる。
 表6.2に示された範囲の必要データによって、規制当局は「発生の可能性」とそれによって生じうる影響を知ることができる。これらのデータは、当該微生物、試験区域の環境との相互作用の可能性、長期的な影響、遺伝子交換、封じ込めやモニタリングの問題に関するあらゆる面での情報を提供してくれる。こうした要素に関するデータは、リスク評価の手続きが普及している国のほとんどで要求されている。国によっては、社会的、文化的、経済的影響に関するデータを要求・取得しているところもある。これらの要素をリスク評価に必要なデータとして含めることの妥当性に関しては、意見が一致していない。しかし、社会的、文化的、経済的問題が、個々の製品に関する規制当局の最終的な決定に関与することは疑いないものの、これは、製品とその使用の申請が行われる国によって左右される問題である。あるところで認められるものが、ほかでは認められないこともありうる。却下の根拠は、「自然科学」に基づくデータ(気候の違い、新たな環境に内在する種の多様性)による場合もあれば、経済的、社会的問題、つまりその製品が地域の農業の一定の領域を脅かしたり、きわめて重要な天然資源で、たとえ影響の及ぶ可能性が低くても許容できないようなものに脅威を与える可能性があることによる場合もある。

表6.2 MPCAの登録に必要な要件の概要【脚注a】

製品の分析

毒性

非標的生物への有害性

必須データ:

   

製品の同定

急性毒性

影響の対象:

製造方法

過敏症の事例

陸生および水生の野生非標的植物および昆虫

性質(物理的および化学的)

組織培養試験の結果
(ウイルス製剤の場合)

 

非活性成分

   

サンプルの提出

   

場合によって必要なデータ:

   
 

急性毒性

長期の病原性試験

 

生殖毒性

魚類の生活環調査

 

発癌性

模擬的または実際の野外試験

【脚注a】このほか、必須データが潜在的な問題を示す場合は、「環境での発現に関するデータ」が求められることもある。これらのデータには、使用が予定される環境でのMCPAの生残能および複製能が記載される。USEPAの要件に基づく(USEPA, 1989)。

 検討手順はデータの取得方法を示し、それによってデータの質と信頼性が保証されることになる。そこでは、製品、その毒性、非標的生物への有害性、環境上の問題(in situでの発現)、製品の性能に関する必須データを得るための特定の試験法や手法が示されている。試験手順(サンプル数、複製、試験条件、期間など)に関する詳細な情報が定められている。検討手順は当初、さまざまな手法や基準を用いて得られたデータが、信頼性のあるリスク評価を可能にするほど信用できるものではなく、比較もできなかったという理由で定められた。手順は規制当局によって定められ、試験を経て公表や勧告が行われる。表6.3と表6.4は、有害性(表6.3)および曝露(表6.4)を判断する際に利用できる手順を示したものである。これらの手順は、USEPAの文書のM項に挙げられ、詳細に解説されている(USEPA, 1989)。

表6.3 有害性評価のためのデータ項目

1.

 試験の原則

 

予期される用量での複数回の試験

 

陽性の結果が得られた場合、最大危険用量を用いる

2.

 単一種での試験

 

鳥類への単回経口投与毒性

 

鳥類への混餌投与毒性

 

淡水魚への急性毒性試験

 

淡水魚への無脊椎動物試験

 

非標的植物

 

非標的昆虫

 

ミツバチ

 

河口の非標的種


表6.4 曝露評価のためのデータ項目

必要なデータの項目:

   

遺伝子の生物学的動態

 ・

MPCAの生息場所

 ・

生残・複製にかかわる要因

 ・

遺伝子流動

 ・

遺伝子構築、伝達、発現の可能性

 ・

発現レベル

   

遺伝子の化学的動態

 ・

土壌中での遺伝子または遺伝子産物の動態

 ・

水中での遺伝子または遺伝子産物の動態

 1991年、王立環境汚染委員会は、組換え生物による影響と規制の枠組み、および管理と軽減の手法に関する報告書を公表した。この報告書では、リスク評価のためにGENHAZというコンピューターシステム計画を提案しているが、このシステムは、評価を実施する当局に対して、申請された試験、使用、生物の潜在的な影響に関する必要なデータ関する体系的なリストを与えるものである。また、個々の事例での曝露や有害性を評価するために、具体的なデータを検討し確認する際の形式も定めていた。このシステムは全体として、現在他の国で使われている手順に比べて、より多くのデータの入力が必要だった。このプロジェクトは、1993年に同委員会によって中止が決定された。

封じ込めと軽減

 微生物の封じ込めには、物理的封じ込めと生物学的封じ込めという2種類が提案されてきた。物理的封じ込めとは、組換え生物の拡散の可能性をなくすために、構造体(温室)や網掛け(組換え昆虫の場合)を用いること意味する。生物学的封じ込めの実現には、2種類の方法が考えられる。使用や試験を微生物の生存や拡散に不利な場所で行うこと(生残するためには絶えず変異していかなくてはならないような気候の試験区画で試験を行うなど—充分な水分が供給されれば砂漠の気候が適しているかもしれない)、または、限られた区域の外では生残できないように微生物を改変することが考えられる。後者については、自殺遺伝子を組み込んだり、微生物の栄養利用の能力を改変することによって実現できる。たとえば、大腸菌K12株は、通常の環境条件には存在しない特殊な栄養を必要とする。
 化学薬品の使用、熱処理などによる消毒は封じ込めとはいえないが、区域から微生物を取り除いて影響を最小限に抑えるという意味で、かなりの軽減になる。
 封じ込めとは、伝播を予防して最小限に抑えることをいう。伝播は最小限に抑えることが可能で、影響を管理することが可能である。検疫基準がうまく適用されており、さまざまな地域での生物の試験を可能にしている。当該微生物とその複製様式、環境ストレスへの応答、そして特に宿主域について理解することが必要である。場所を慎重に選択することによって、微生物を特定の区域に効果的に封じ込めることができる。病原体が生残し定着するためには、特定の宿主が必要である。超低温への耐性がない微生物は、冬の寒さが厳しい地域で試験するのが適している。ごく一部の集団が生残するかもしれないが、その程度は低く、重大な悪影響は排除できる。
 人類史上唯一、天然痘だけは根絶されたが(Fenner et al., 1988)、これは莫大な費用と長年にわたる協力によって成し遂げられたものである。しかし、特殊な手法を用いることによって、微生物群集のレベルをコントロールすることができる。こうしたコントロールによって生じる影響には、短期、中期、長期のものがありうる(表6.5)。どの手法を選択するかは、個々の状況、実現可能性、かかる費用によって左右される。動植物に感染した微生物の場合、感染した素材を焼却したり深く埋めることが必要な場合もある。


表6.5 望ましくない微生物の防除

中期【脚注a】

短期【脚注b】

長期【脚注c】

燻蒸消毒

燻蒸消毒

燻蒸消毒

灌水

灌水

灌水

化学薬品

化学薬品

土壌浸食の防止

 

土壌浸食の防止

土壌改良

 

土壌改良

 

【脚注a】効果が表れるのに数時間から数日
【脚注b】効果が表れるのに3年以下
【脚注c】効果が表れるのに3年以上
出所:Vidaver and Stotzky(1992)を改変して引用。


  野外区画の除染に化学薬品が使われることもあるが(表6.6)、標的となる集団を完全に除去することにはならない。総個体数は、おそらくは検出不能なレベルにまで減少するだろうが、確実に全滅するわけではない。区画の辺縁部、また土壌の耕耘によって近隣の区画から移動してきた土着の微生物集団が再び優勢になれば、標的となる微生物の再増殖は抑えられる。化学物質はすべて毒性を有するため、適用の際には注意が必要である。


表6.6 管理のための一般的な化学物質

一般名

化学名

用量
(リットル/ヘクタール)

植物毒性【脚注a】

LD50【脚注b】

臭化メチル

ブロモメタン

450-900c

毒性

1

二臭化エチレン(EDB)

1,2-ジブロモメタン

19-94

毒性

150

塩素化炭化水素

1,2-ジクロロプロパン、
1,3-ジクロロプロパン等

100-500

毒性

140

イソチオシアン酸メチル

同左

600-1200

毒性

280-650

ジブロモクロロプロパン(DBCP)

1,2-ジブロモ-3-クロロプロパン

19-38

毒性

172

クロロピクリン

トリクロロニトロメタン

300-500

毒性

1

【脚注a】作物に関するもの
【脚注b】哺乳動物
【注】キログラム/ヘクタール
出所:Vidaver and Stotzky(1992)を改変して引用。


  生物学的管理が提案されており、現在進められている研究では、封じ込めと管理の可能性が示されている(Cuskey, 1992)。環境によって制御される致死遺伝子を含むプラスミドを用いることによって、主な環境刺激が変化した場合に改変微生物を絶滅させる仕組みが得られる。用いられている致死遺伝子には、細胞のDNAを攻撃するものと、細胞壁を攻撃する(すなわち細胞を溶解させる)ものの2つのタイプがある。制御が行えるのは、環境中の特定の化合物によって活性化されるリプレッサー遺伝子の存在があるためである。別の方法として、そのときどきでランダムな一方向にはたらくfimAなど両方向性のプロモーター遺伝子で致死遺伝子を制御する方法もある。このような致死遺伝子とプロモーター遺伝子の組み合わせを含むMPCAは、最終的には全滅する。この手法を用いれば、リスク評価を行う当局に対して安全性を保証できる。ただし、この手法は野外での試験が行われていない。致死遺伝子や制御遺伝子に突然変異が起きる可能性がある。溶菌酵素やDNA分解酵素が他の微生物に影響を及ぼすという問題もある。

まとめ

 微生物農薬の使用に伴うリスクの評価にかかわる問題は、多くの規制当局や、規制当局や学術機関によって召集された委員会によって検討されてきた。一般に、その提言の内容は、組織の由来や構成に関わりなく似通っている。こうした類似性は、リスク評価のもとになる科学的基盤を物語っている。必要なデータを判断するために批判的思考法を採用することや、個体群理論や生態学的原理を基盤として用いることで、政策決定に必要な基本的情報に関しては合意が形成されている。
 重要な要素や測定の必要性は、明確に定められている。しかし、必要なデータを得るためのより適切な手法を定めるために、さらなる研究が必要であることを指摘する意見もある(McCormick, 1986; Levin et al., 1987)。McCormickは、野外試験法の感度をもっと向上させる必要性を指摘している。Levinらは、感度と信頼性の高い手法を定めるためにUSEPAで行われている研究について解説している。
 リスク評価の目的のために集められた知見(データ)は、それを認識する規制の枠組みに基づいて解釈した上で利用される。1つの製品が、あらゆる状況や場所で受け入れられるとは限らない。前述のとおり、決定には、個々の製品、地域、あるいは経済状況にかかわる要因が影響する可能性がある。
 プロセスと製品のどちらに重点が置かれるべきかについては、多くの議論が行われてきた。一般に、プロセスについて何らかの知識なしに、製品の評価をすることはできない。このため、プロセスに関する情報は、あらゆる規制の枠組みにおいて要求されている。しかしこれは、ある製品がバイオテクノロジー研究の成果であるというだけで有害性を持ち、リスク評価が必要だという意味で求められているわけではない。そうではなく、これまでに示してきたように、規制当局の関心はあらゆる環境への放出に向けられ、あらゆる製品に対してリスクに基づいた同様の判断が行われている。


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