バイオテクノロジーおよび食品の安全性に関わる他の側面についてのOECDの非政府機関との協議
概要
OECDは、1999年11月20、50以上の非政府機関(NGO)との会合をパリのOECD本部において開催した。この国際フォーラムは、バイオテクノロジーとそれ以外の面での食品の安全性に対するNGOの考え方を聞いて理解する上で、成功であったと思われる。フォーラムには、企業、労働組合の代表、さらに科学者も出席した。OECDからは、これらの問題を扱う5つのOECDの委員会の委員長を務める政府代表が出席したが、彼らはまた議論を傍聴するために来た多くのOECD加盟国の外交上の代表でもあった。
出席したNGOの大多数は、バイオテクノロジーそれ自体の発展に批判的ではないものの、その過程および最新のバイオテクノロジー技術から得られる製品に対し、より慎重に監察、監視することを望んだ。遺伝子改変生物(GMO)が人の健康や環境におよぼす影響についての彼らの懸念に対し、現時点での科学は満足のゆく対処を為し得ていないと思うとNGOの多くが発言した。企業および科学者のグループは多くの異なった考え方を持っていた。
この会議から導かれたいくつかの概括的な結論:
次の個別セッションの概要は、会議での豊富な議論と意見交換の詳細を示すものである。
セッション1−消費者の懸念
食品の質と安全にかかわる消費者の疑問や懸念は、普遍的且つ個人的なものであるという、全般的な合意がなされた。この複雑な話題の特定の側面には、国ごと、北と南、あるいは先進国と発展途上国との間で違いがある可能性があるが、注目を集める主要な問題は同じである可能性が高い。数名の参加者らは、食品の安全性の問題に対して、アメリカよりもヨーロッパやアジア諸国の方が、より大きな一般大衆の懸念があることを示唆するような、国内および国際的な調査を引用したが、参加者の中には、最近、アメリカにおいて、こうした問題に対する懸念が広まってきたことを述べた者もいた。Consumers Internationalを代表したConsumer Union (アメリカ)と、Euro Coopによる、二つの冒頭発表とも、人々が遺伝子操作された食品の、潜在的な、付加的な健康上のメリットや健康上のリスクについて知りたいこと、環境への影響や倫理的な問題に敏感であること、そして、メーカーがこの意味で、決して誤解を招くことのない真実を伝える義務を負うべきだと感じていることが語られた。発展途上国は、こうした懸念を先進国と共有する一方で、現在入手可能な食物や飼料の収量や栄養価を上げられる技術に対し、大きな関心を示していることが認識された。しかし、良かれ悪かれ、これらの技術はいまなお、発展途上国の市場に到達していない。
消費者は遺伝子改変食品の更なる商用化を懸念している
消費者の代表は、消費者は、伝統的な食品と比べて遺伝子改変食品のメリットを徹底的に疑っており、新規の食品や飼料を通して、既知および未知のアレルゲンや毒素が転移する可能性を懸念していると述べた。遺伝子改変食品および飼料は、内因的に異なるものであり、なんら付加的なメリットをもたらすものではないことがわかっていると彼らは主張した。現在ある製品は、従来型の同種製品と同価格であり、より環境にやさしいとは思えない。一般の消費者は、可能な限り充実したリスク・ベネフィット情報を欲しており、自らが選んだものを食べる、食べるものを選べるという基本的な権利を持つことが指摘された。したがって、市場に出回っている食品の質と安全についての専門知識を持つ者は、表示、食品問題にかかわる広範な公衆啓蒙プログラムやその他の手法を通して、一般大衆にその知識を伝えなければならない。
多くの消費者は表示要件を見たがっている
出席したいくつかの消費者団体は、表示に対する、責任のある国際的な監視や国際的な指針を要求した。彼らは、とりわけ、非遺伝子改変食品を遺伝子改変食品から分離するため、そして成分の潜在的な悪影響をモニタリングするため、また、長期的な一般大衆の安全のために、食品の出所を確認するための表示が必須だと感じていた。これらの団体の見解は、多くの国の政府が、より厳格な規制および監視制度を作るべきで、それに応じて、リスクアセスメントの根幹として“予防原則”を適用すべきであるとのことだった。政府は、認可を義務付ける制度と明確な基準を作るべきで、消費者は、政策立案プロセスに対して、中心的な役割を果たす資格を持たされるべきである。これらの団体によれば、製品表示や広告の規則は、健全なモニタリングと報告により支持されなければならず、認可やライセンス契約に関する決定の見直しと申し立ての規定が設けられなければならない。遺伝子改変食品の安全は、自主的な指針の対象となる分野ではなく、安全対策を企業任せにしてはならないことが語られた。何名かの参加者は、政府は、それゆえ、表示の義務付け、新規な食品のため、透明な承認プロセス、リスクアセスメントの一環としての、定期的且つ体系的な環境影響分析といったリスク管理手法の開発において、明確な役割を担っていると感じていた。遺伝子改変食品も、医薬品と同じ要件を適用されるべきであることが提案された。
多くの消費者は、科学には限界があると認識していた
多くの消費者の代表は、政府が食料政策を立案する際に使う科学的原則を定義づけることが、最大の課題のひとつだと考えた。いくつかのNGOは、承認制度が、一般大衆にとって合法的なものになるためには、健全な科学と、透明且つ予測可能な規制プロセスが必須だと感じた。リスクアセスメントからもたらされた情報は、入手可能となり、一般に理解される言語に翻訳されなければならない。しかし、出席していたいくつかのグループによれば、二つの理由から、科学のみを決定の根拠として考えてはならないようだ。
第一に、科学には限界がある。科学は、確率という意味でしか答えを出すことができない−絶対的な確実性をもたらすものではない。われわれが知らない事柄と、知っている一部の事柄の不確実性とを認めることが必須である。このことは、遺伝子改変食品や飼料の安全性の問題に取り組むために、より堅固な科学的根拠を作るうえでの動機にすらなるかも知れない。
科学界の代表らは、科学に限界があるという事実を、科学あるいは、遺伝子改変食品や飼料の承認に対する行き詰まりの理由としてとらえてはならないと回答した。もしも科学的な確実性が必要とされるのなら、ほんの数例を引用するだけでも、外科手術や麻酔薬が医療に導入されることはなかっただろうし、航空輸送も存在しなかっただろう。しかし、科学は、危害(危険)という概念とリスク(危険が現実のものになる確率)という概念とを区別することから、科学に基いた進歩が可能となった。科学的なアプローチは、危害や、それらの危害にかかわるリスクを回避するのに役立つ、重要な管理ポイントやモニタリング手法を、体系的に特定する。
純粋な科学的アプローチだけでは不十分であることに対して挙げられた二つ目の理由は、食料政策の決定は、単なる科学的事実でなく、社会的な価値観からもたらされる主観的選択を必要とするということだった。多くの消費者は、今日、食用作物の遺伝子改変のプロセスは根本的に新規で且つ異なっているために、遺伝子改変食品は従来の物と違っており、それゆえ、テストされていないと考えている。彼らは、GMO由来のあらゆる商材における表示に、プロセスが明記されるべきだと要求している。しかし、科学者や規制当局は、プロセス自体は、最終製品の安全性についてあまり多くを伝えるものではないと主張した。これが、大半の現行の規制において、それらが作られた方法荷ではなく、製品そのものについての規制に重きが置かれている理由である。
労働組合の持つ関心と一致が見られる
最後に、消費者団体の懸念と労働組合のそれとは、食品生産および流通にかかわる作業者の健康と安全の問題について一致していたように見えた。両団体とも、これらの問題が他の公衆衛生モニタリングあるいは研究プログラムの一環として扱われるべきだということに合意していたようだ。新規食品とGMOの開発、生産および加工にかかわる職業上の危険を評価するための別の研究が必要である。作業者の、彼らの健康に影響を及ぼしうる製品や工程についての情報」を知る権利は保証されなくてはならない。そして一般市民の健康に脅威を及ぼすような仕事につくことを拒否する権利は、法律に明記されなくてはならない。
セッション2-環境上の懸念
環境保護に関心を持つNGOの冒頭発表は、GMOを基盤とした農業にかかわるリスクを強調した。討議は、以下のように分類できるいくつかの主要テーマを中心になされた;技術のメリットと欠点、規制当局のアセスメントの問題、また、バイオテクノロジーの将来的な管理。
この討議の各側面の中心には、とりわけ、農業におけるバイオテクノロジーと遺伝子改変の応用が、何か新たなものを意味するのか、あるいは、これらの応用が、伝統的な農業と作物育種の単なる延長線上にあるものなのかについての論議があった。これらの非常に異なる見解の双方が示された。
出席していたいくつかのNGOは、環境に対して真のリスクがあると感じた
環境NGOは、現在の知識の水準を考えると、GMOにかかわるリスクは、確率論では評価できないことを強調した。遺伝子を改変した作物の評価において、従来型の作物についての知識を当てはめることはできない。また、これらグループの見解によれば、OECDによって開発された“ファミリアリティー”や“実質的同等性”といった概念を当てはめることはできない。
環境NGOはまた、自然に対するGMOの長期的影響は、相対的にいって未知のものだということも強調した。彼らは、後代に続くかも知れぬ遺伝子変異やコントロール不能の発展の深刻な可能性について懸念している。彼らは、より掘り下げた研究と“予防原則”の厳格な適用を要求した。
最後に、彼らは、遺伝子改変作物には、生物多様性を減少させる本質的なリスクがあることを指摘した。彼らは、伝統的な農業が耕作強化された際に、OECD諸国で顕著に記録された植物相と動物相の双方に対する悪影響を引用した。
しかし、環境についての潜在的なメリットを強調した者もいた
バイオテクノロジー製品の使用における、現在および潜在的なメリットが、とりわけいくつかの地域の産業グループなどの数名の参加者により強調された。特に、遺伝子改変作物がいまや一般的になっているアメリカからの農家の代表者らは、遺伝子改変作物を栽培することが彼らにもたらす価値を強調した。一部の生産者によって引用された具体例は、除草剤耐性作物の栽培によって、より効率的な雑草管理が可能となり、実際に除草剤の使用を減らすことにつながったというものであった。同様に、害虫抵抗性作物の使用は、殺虫剤の使用を減らすことにつながった。こうした発展は、環境に対するメリットの事例として挙げられた。
将来的なメリットという意味では、数名の参加者らは、遺伝子改変作物は、より効率的な農業につながり、それは、発展途上国でも、先進国においてと同様に生産者や消費者に等しくメリットをもたらすと主張した。これは、世界の食糧生産に寄与するはずである。
しかし、この楽観主義論は疑問視された
この楽観主義論は、いくつかの環境NGOによって疑問視された。人によっては、遺伝子改変作物それ自体には反対していないと主張し、また、人によっては、強く反対するというように、異なる度合いの懐疑主義が見られた。多くの人たちは、主張された、現在あるいは将来的なメリットについて納得できない様子だった。除草剤耐性作物の具体例については、いくつかのNGOは、このことは、除草剤に対する依存を強めることにつながるという懸念を取り上げた。他の人たちは、特許化された遺伝子を持った遺伝子改変作物の使用は、伝統的な農業形態を崩壊してしまい、農家が、彼らの作物から得た種で農耕を続けることができなくなるかも知れないことを心配していた。彼らの主張では、遺伝子改変作物の使用は、多国籍企業の製品に対する依存度を上げることにつながり、それは、とりわけ、発展途上国で営まれている農業に対して、心身ともに有害な影響を与えるかもしれない。一般的な点として、いくつかの環境NGOは、バイオテクノロジーは、“世界の食料供給に役立つ”という主張に強い懐疑心を抱いていた。貧困といった他の要因の方が、はるかに大きな関係があると彼らは述べた(セッション3−農産品部門の懸念を参照)。
規制慣行も疑問視された
環境NGOは、バイオテクノロジー製品に対する現行の規制について、いくつかの批判の概要を述べた。一部の人たちは、遺伝子改変は、ー般的にいって良いことだという前提が、規制当局にあると考えた。数名の人たちは、(他の分野の中でも、)生態学、社会経済学の専門家ならびに公益団体を含む広範な分野の専門家を規制当局によるアセスメントに関与させることを要求した。
多くの参加者らは、バイオテクノロジーと遺伝子改変の規制に関して言及した。この討議は、いかなる特定の国の規制制度に対しても、詳細には焦点を当てるものではなかった―ただし、アメリカにおける規制機関として、FDA、USDAおよびEPAの役割については一部言及された。産業界の数名の参加者らが、その制度に対する信頼感を表明した。更なる提案として、特に産業界の代表から出されたのは、異なる国々の規制官らがより緊密に情報交換ができるようにするために、規制のハーモナイゼーションに対する更なる努力が必要とされるということだった。
バイオテクノロジーの発展はうまく管理されているのだろうか…?
最後に、バイオテクノロジーと遺伝子改変生物の将来的な管理に関連した問題について多くの討議がなされた。数名の参加者らは、この技術は、非常に最近の科学の発展に基いたもの―黎明期の技術とさえ呼ぶことのできる―であることを強調した。これらの発展は非常に速く起きてきたもので、環境と社会に対する影響を全体的に予測することは、まだ時期尚早だと彼らは感じた。一部の人たちは、科学の現況にかかわらず、多くの市民は単に、GMOの使用を不快に思っており、科学者らが必ずしも一番良く知っているわけではないと主張していると述べた。こうした理論的根拠により、数名の参加者らは、より多くの研究が行われるようになるまでは、農業におけるGMOの使用を一時停止させることを要求するに至った。他の人たちは、圃場試験が行われることには満足するものの、商業栽培の一時停止を好ましいとした。多くの人たちが、遺伝子改変製品の表示に関するメカニズムや、製品におけるGMOのトレーサビリティーを担保する方法といった管理手法の必要性を強調した。大半の環境NGOは、GMOの長期的な影響がより厳密に評価される間に、“息をつく間”を与える手段としての“予防原則”を引き合いに出した。
他方、とりわけ産業界からの数名の参加者らは、バイオテクノロジーは、より効率的な農業に対して貢献しうる単なる手段の一つに過ぎないと主張した。それは、たとえば、統合的な害虫管理の役割を担っているのだ。農業的な収奪を制限することにより、生物多様性をよりよく保全することにつながりさえするかも知れない。バイオテクノロジーなしでは、農業の将来の発展は困難かも知れない。不適切なアセスメントと管理は、バイオテクノロジー技術の発展を阻害するかもしれない。こうした流れの中で、特定された危害という、明確に定義付けられたニーズ必要性があるときにのみ、表示が価値を持つとの議論がなされた。”予防原則”の意味するところが、食品における遺伝子改変生物の全般的な使用を進める上で、リスクがまったくないことを証明しなければならないとするのであれば、それもまた批判に値する。
セッション3―農産品部門の懸念
農産品部門のセッションでは、農業生産者と、関連する上流(種子、農薬)および下流(食品加工業者、卸売業者、小売業者)産業の、バイオテクノロジーと食品の安全性にかかわる懸念が焦点だった。ビジネスおよび異なる地域の多様な関心を反映した、広範な問題が討議された。それでも、討議の中には、ある程度の一致があるように見えた。産業界の代表らが強調したのは、食物連鎖のあらゆるレベルにおいて、消費者および環境グループが表明した懸念の多くを、彼らも抱いているということであった。
リスクアセスメントとリスク管理の改善…
特に、遺伝子改変食品に関して、現在の食品安全性アセスメントの規制がどの程度に妥当であるかについて、意見が分かれた。リスクアセスメントは、科学をベースにした透明なものであるべきで、産業よりむしろ政府が規制を設けるべきであって、人、動物あるいは環境の安全が疑われる場合には、そうした規制は強制力を持つべきで、規制当局は独立したものであるべきだということに関して、全般的な合意がなされた。しかし、施行や遵守が保証されない限り、規則だけでは不十分である。規制のハーモナイゼーションや相互認証は、貿易を増やす一方で、産業や消費者に対してコストを削減する手段として考えられた。多くの参加者らは、遺伝子改変食品は、定義上は、非遺伝子改変食品と実質的に異なり、その結果として、それぞれが個々に十分な安全性アセスメントの対象とされるべきだと提案した。リスク管理という意味では、“あやまるより安全なほうが良い”が共通のアプローチであったが、予防の定義や、それをどのように適用するべきかについては、合意が見られなかった。遺伝子改変食品の表示規制や、その結果として起こる同一性保全制度(identity preservation system?)は、消費者に、十分な説明を受け、よく考えたうえでの選択(インフォームド・チョイス)ができるようにする方法として考えられた。そうした規制や制度についての情報は、農家に対しても、その栽培作物の選択において、より効率的な意思決定を可能にするものである。
問題は健康や安全以上のものだ…
バイオテクノロジーや食品の安全性に対する懸念は、人の健康と安全の問題を越えた問題である。経済的、社会的、また、倫理的な問題もある。食品の質、動物の福祉や生物多様性は、多くの人たちが、情報が不適切だと考えた、ほんの一部の分野である。多くの参加者らは、国内および国際的な規制の枠組みという流れの中で、“非科学的な”懸念が取り上げられるのか、また、どのように取り上げられるのかを疑問視していた。食品の安全性および質の分野において国の主権を維持することは、必須と考えられたが、基準のハーモナイゼーションに向けて作業を進めてゆくことも、同等に重要である。問題や、潜在的な解決策がかなり異なっているために、安全性と非安全性の問題を分けるのが有益だということには、全般的な合意がなされた。農家にとっては、バイオテクノロジー産業が大きく集中することは、ほんの一握りの多国籍企業によって牛耳られた製品や技術に対する過度な依存を意味するかもしれない。
持続可能な開発の枠組み…
多くの人たちは、新しいバイオテクノロジーは、経済的および資源上での持続可能性を包含する、持続可能な農業の枠組みの中で評価されなければならないという考えに合意した。バイオテクノロジーの実際上のメリットや、とりわけ、遺伝子改変(GM)作物について、かなり多くの討議が行われた。収量、コストや環境上の影響といった意味でのメリットを支持したり疑ったりする、個々の証拠や科学的な研究が言及された。生産者グループは、全般的に良い結果を報告したが、その体験は広範なものでなく、地域的な気候条件が違いを生むかもしれない。農業の、小さいが、急速に伸びている部分を代表する有機農家らは、遺伝子改変作物からの、隣接する農家に対する遺伝子改変作物からの潜在的な損害について、懸念を表明し、保護と義務責任の手法についての問題を提起した。農家のグループは、行動規準が遵守されたなら、遺伝子改変製品によって生じたいかなる損害に対する義務責任に関しても、法により保護されるべきだと感じた。
食品の安全性は、貿易問題でもある…
許容できるリスクについての、国ごとに異なる評価を反映した、異なる食品の安全性規制は、そうした規制が、科学上のリスクアセスメントのみに基く限り、国際貿易協定に盛り込むことができることが指摘された。しかし、いくつかの団体は、科学は、定量化できないリスクを評価することはできないと主張し、その結果として、予防を力説した。経済的、社会的また倫理的な配慮が、科学ベースのアプローチの上位に置かれた時に、貿易紛争の可能性が増大するが、同時に、消費者の懸念も尊重されなくてはならない。国々は、国際機関を通して作業をすることによって、規制アプローチについてのコンセンサスを求めなければならない。これらの問題に対処するうえで、“予防原則”の明確化を含む、植物衛生および検疫(SPS)のシステムを更新することにより、WTOが先導役を果たすべきだと一部の人たちが提案した。他の人たちは、これらの問題の多くは、バイオセーフティ議定書(Biosafety Protocol Initiative)の下で一番うまく対処できると痛感した。貿易に対する非関税障壁の増大を恐れて、植物検疫あるいは技術的障害に関する協定(TBT)に干渉されては困ると感じる人たちもいた。
途上国に対するより大きな焦点…
大半の人たちが、モダンバイオテクノロジーを、世界の増大する人口のための、増大する食料供給を保証する重要な道具として見ていた一方で、誰ひとりとして、よりうまく食料安保を達成するための、唯一あるいは最も重要な手段としてさえ考えていなかった。そうした技術は、発展途上国における零細農家のために設計されたり、アクセス可能であったりすることはほとんどない。貧困、政治紛争、非効率的な生産および世界貿易制度の不均衡の方が、食料安保に対する、より大きな制約要因として見られていた。しかし、たとえばメキシコからの体験は、モダンバイオテクノロジーには、国際的な競争力を上げる一方で、持続可能な農業制度に貢献できる潜在力があることを示唆していた。種子産業は、南への技術移転はある程度起きていることを示したが、多くの参加者らは、それらが、長期的な経済および環境の持続可能性に貢献できることから、発展途上国における伝統的な作物を推進し、在来の作物品種を保護し、現地農家の知識を育成するための、より大きな努力が必要だということに合意した。
研究は継続されなければならない…
事実上、すべての参加者が、モダンバイオテクノロジー研究が継続されるべきであることに合意した。しかし、基礎および応用研究の双方の、公共部門から民間部門への移管ならびに公共研究の民営化について、懸念が表明された。多くの人たちは、バイオテクノロジーの農業分野での応用についての研究において、より大きな、政府あるいは非営利団体の関与を求めた。主要な問題は、そうした作物や製品の、食物連鎖や環境への導入である。研究は増やされるべきだが、それは、定期的なモニタリングを伴い、注意深くコントロールされた条件下でのみ行われるべきだと提案された。また、すべての研究が有益だとは見られなかった。たとえば、特許保護の理由だけのための種子を作れなくする(terminator gene)の開発は、参加者の大半によって強く拒否された。特許化と作物育種家の権利の関係では、企業は、研究に対する多額の投資に対して、妥当なリターンを得る何らかの保証が必要であることが認識された。しかし、農家の、彼ら自身の作物から得た種子を再使用する権利もまた、尊重されなければならない。生き物を特許化する可能性も論点となったが、なんら明確なコンセンサスは得られなかった。先進国においては、生分解性プラスチックやバイオ燃料といった、作物の、食品としてではない使用は、農業地域社会に、新しい経済的な息吹を吹き込むことにつながるかもしれない。一部の人たちは、農業分野でのバイオテクノロジーの工業的利用は、そう遠くない将来において、かなり重要になることを示唆した。
より多くの情報、より多くの対話…
健全な科学に、より大きな力点を置くことは、リスクアセスメント、リスク管理およびコミュニケーションのために不可欠であると考えられた。あまりにもしばしば、実質的でない要求、体系的でない個々の研究報告や偏向した報告が、問題を曇らせてきた。科学研究報告は、公開される前に必ず同等レベルの研究者によって吟味されるべきである。政府、産業界やNGOは事実関係を確かめ、その情報を一般市民に提供する義務がある。科学者も、いまだ未知のことが多く、多くの研究がなされなければならないことを強調した。すべての利害関係者らは、計画立案から実施にいたるまでの規制のプロセスについて、相談を受けることを欲している。このプロセスは、公共の信頼を得るためには、分析的に言って、健全で、客観的で、信頼性があり、透明且つ説明できるものでなくてはならない。
これらの概要は、
http://www.oecd.org/subject/biotech/ngoconsultation.htm.
のOECD Web siteから得られる。
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