シンポジウムで発表された題材は、それに続く考察と同様、食品あるいは食品材料として利用される水生由来の生物に関連した幅広い問題に及んでいた。シンポジウム自体に続いてGNEの第IV作業部会の会合が持たれ、そこでシンポジウムでの課題が話し合われ、水生バイオテクノロジーと食品安全性に関係する次の結論に達した。
(家畜)動物が健康であると思われる場合、これは当該動物を食して安全であるという指標となる、という概念について話し合われた。しかしながら、水産食品生物が明らかに健康であるということは、それ自体としては食品安全性に関して役立つ指標ではない。なぜならば、ヒトに対し毒性のある外因性もしくは内因性由来の化合物を含有している種が数多く知られているからである。これらの個体は、たいていの場合、その毒物に対しある程度の耐性を持つため、健康であるように見える。
OECDの報告、「最新バイオテクノロジーにより作られた食品の安全性評価:概念と原理」では、次のようにこの概念を記述している。「一般的には、新系統の哺乳類もしくは鳥類で、健康であると思われるものから得られた食品は、それらの動物が派生した元の動物品種と安全性において同等である、と証明されている。」健康的な外見という概念がこの意味において適用され、安全性評価のための他の性質と併用で適用されるならば、水生動物から得られた食品および食品成分に適用した場合にも、利用価値を持つであろう。
毒物を含有する水生生物に最新バイオテクノロジーの技術を適用することによって、ヒトの健康に対するリスクが増加することはまずないだろう、と一般的に考えられている。最新の育種技術が、その作用を改変させるようなこれらの毒物の代謝や特性に影響を及ぼすということはありえるであろう。しかしながら、そのような状況においては、それらの生物の安全性評価は、これまで同様、毒物に関する知識と検出法の技術に依存することになるだろう。その結果、ある種の水産食品生物がヒトに対し毒性のある化合物を含有している可能性があると言う事実は、実質的同等性の概念適用の価値を減ずるものではない。
同様に、ある種の水生生物は、環境からその他の毒性汚染物を蓄積する。これに加え、水産養殖で生物に薬剤が投与される可能性もある。それぞれの場合において、食品としての生物の安全利用は、これまでと同様、残留物の適切な安全レベルの確認に依存している。バイオテクノロジーの最新技術によりこの必要性が変わることはないであろう。
最新水生バイオテクノロジーにより作られた食品もしくは食品材料に関し、実質的同等性の原理の適用を減ずる、あるいは無効化する問題点は認められなかった、と結論付けられた。しかしながら、いくつかの事例において、既存の種における適切な情報が不足している可能性があるということも認識された。このデータ不足は、新しい食品や食品材料との比較をする際に問題となる可能性がある。この問題の原因は、部分的には、食品生産に関与する多くの水生生物について、陸生の食品動物や植物と比較してファミリアリティが少ないことにある。