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考察

 シンポジウムでの発表は、食品もしくは食品材料として使用される幅広い領域の水生生物に関する題材に及んでいる。これらの発表により、幅広い議論が交わされた。

 発表およびそれに続く討議において、水生生物を食品として利用するための多様な管理システムについて言及された。話題とされたシステムは、閉鎖系もしくは開放系の水産養殖システムでの養殖から、「天然資源」生物に対する漁業や収穫にまでわたった。また、水産養殖での生物の孵化が行われる放流システムについても言及がなされた。このシステムでは、水産物を囲いのない水域に放流資源として導入し、その後これを収穫するものである。これらの管理システムそれぞれに対し言及はされたものの、主な焦点は水産養殖に当てられた。しかしながら、水産養殖を定義する必要性はないと思われた。

 主要な考察の一つは、水産養殖された水生生物とより広い水中環境との密接な関係を認識することであった。この関係は、たいていの場合、多くの水産養殖システムで海洋にケージを設置しているという事実からもたらされる結果である。水生生物を水産養殖のケージ内に閉じ込めておくことの困難さに対する言及がいくつかなされ、事実、これらのケージからの逸出は日常的な出来事として知られている。

 近年の研究では、研究および開発段階において、例えば池およびタンクのような巧妙に設計された封じ込め設備の使用により適切な閉じ込めが可能であることが示されている。

 食品として利用されている水生生物内で検出される様々な毒物の性質について、徹底した考察がなされた。これらの毒物の多くは、食品生物にとって外因性により生産されると思われ、大概の場合は微生物由来である。多くの個体集団において、個体ごとに毒物レベルの大きなばらつきが見られる。このばらつきは、多くの場合、外因性毒物源への曝露の度合いに依存したものである。参加者たちは、現在のところ内因性に生産された毒物はあまり知られていないように思われる、との見解を発表した。

 食品としての陸生生物と同様、水生生物の新しい特性についても、食料品の性質にもとづいた考察、およびこれまで安全に利用されてきた類似の既存食料品との比較がなされなければならない。最新バイオテクノロジーを用いた育種技術による改質がもたらす潜在的な二次効果として、水産食品生物と外因性毒物との相互作用が改変される可能性があることが認識された。しかしながらそのような状況では、製品の安全性評価は、これまでと同様、毒物に関する知識およびその検出方法に依存することになる。

 薬剤の使用、耐病性のある生物の育種についても、水産養殖の生物という観点から話し合われた。抗生物質などの薬剤は食品安全性に影響を与えうる。多くの場合、その使用に関しては勧告が定められている。これらの勧告はたいていの場合、投与後の明示期間(すなわち、投与中止期間)をふくんでおり、その期間中に家畜を食料品目的で屠殺することは禁じられている。種々の水生生物で三倍体を誘発するために使用されている処理の安全性、およびその処理が食品組成に及ぼす影響について、詳細に話し合われた。

 ある水産食品生物がヒトに対し毒性のある化合物を含んでいたり、あるいは様々な薬剤の投与を受けていたりする可能性はあるものの、これは特に、モダンバイオテクノロジーに限られた問題ではないということが強調された。これらの全事例において、それらの製品の食料としての安全利用は、これまでと同様、残留化学物の適切な安全レベルの認識に依っている。バイオテクノロジーの最新技術によって、この必要性が変わることはないと思われる。

 水生生物の逸出についても話し合われた。これらの逸出が食品安全性に対し影響を及ぼしうることが認識された。というのも、養殖場から逸出した生物(特に魚類)やその子孫がその後捕獲され、食品として利用される可能性があるからである。そのため、食品安全性に影響を及ぼす可能性のある処理や技術を水産養殖で使用する場合には、これらの逸出の可能性について認識しなければならないと思われた。

 同時に、水産養殖が環境に及ぼす潜在的な影響についても簡潔に話し合われた。これには、養殖場から逸出した生物以上の問題も含まれている。例を挙げれば、抗生物質が水産養殖の囲い近辺の野生集団に影響を及ぼしていることを示す研究に関して簡潔な言及がなされたが、このような影響が近接区域を越えてどの程度まで広がるものであるかについては明らかでない。しかしながら同時に、環境への影響に関する詳細な考察は重要な問題ではあるものの、本シンポジウムの主要な焦点が食品安全性であることから、後の機会へと先送りされるべきであると確認された。

 その他のいくつかの一般的な問題についても簡潔に話し合われた。それには、水生生物から生産された食品に関する消費者の嗜好、そして受け入れの問題がある。特に、食品の安全性とバイオテクノロジーの情報に関する一般とのコミュニケーションについて、さらなる努力が必要であると示唆された。

 最後に、将来の研究の必要性が話し合われた。下記の特定の問題が認識された。

i) 代謝や解毒など、毒物に関する情報がさらに必要であること、とくにこれら毒物の検出方法の向上が必要であり、食品中の毒物が健康におよぼす重大性の評価のためのデータが必要である。
ii) 水生生物から生産した食品の栄養価について更なる研究が必要である。
iii) ファミリアリティが不足している生物種について、基本的な生物学的な知識がさらに必要である。

 これらの問題を認識するにあたって、これらの必要性のほとんどは最新バイオテクノロジーに関連した食品安全性に由来するものではなく、一般的な食品の品質向上と関連した問題である、ということが強調された。

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