米国では1986年6月に「バイオテクノロジー規制の調和的枠組(Coordinated Framework for Regulation of Biotechnology)」を発表し、既存の法体系の中でバイオテクノロジー研究および製品の規制を行うことを明確にした 。このとき、遺伝子組換え生物を規制するための法律を作るのではなく、既存の法律の中で対応する事を決定したことは、組換えDNA技術を特化しない、という一貫した米国の姿勢を表している。米国では組換えDNA技術が利用されるようになった1970年代の後半に、すでに組換え体を規制するための法律案が議会に提出されているが(このときは閉鎖系での利用を考えている)、退けられている。また、野外試験が行われるようになった1990年、議会にOmnibus Biotechnology Actという法律の法案が提出されたが、これも成立しなかった。1992年には改めて官報に、「法定権限範囲内における政府監督権の行使:環境へのバイオ製品の計画的導入」という政策発表を行い、規制はリスクに基づくべきであり既存の法的プログラムの下で行われるべきであるとした。この考えは米国のバイオテクノロジー分野での競争力を維持しようという当時のブッシュ政権の方針にも一致したものであった。(大統領競争力諮問会議 バイオテクノロジー連邦政策に関する報告書へ) 「調和的枠組み」では、遺伝子組換え技術を含めバイオテクノロジーの研究段階における利用については、基本的に、資金提供を行っている省庁の規定に従うこと、バイオテクノロジーを利用した製品については、それぞれの製品分野における法規制に従うこととされ、野外試験については、既存の法の下で新たな規則の作成が必要になるであろうとされた。 米国における組換え生物の閉鎖施設外での規制は、この「調和的枠組み」にしたがい、米国農務省(USDA)、米国環境保護庁(EPA)、食品医薬品局(FDA)の3省庁のもとで行われている。 |
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主要な規制 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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米国における規制を、その対象ごとに示すと、以下の表のようになる。 なお、このように遺伝子組換え技術を特化しないという方針を採用しているために、規制そのものはかなり込み入ったものとなっているのが米国における規制の特徴である。 |
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表 米国における遺伝子組換え生物の野外利用の規制の枠組み | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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<その他の参考情報>
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