質量分析計解析のためのサンプル調整法

<試薬調整法>

  使用する試薬
  メタノール(MeOH)プロティンシーケンサー用
  アセトニトリル(MeCN)HPLCグレード
  トリフルオロ酢酸(TFA)HPLCグレード
  
   ストックしておくもの  
   冷蔵(4℃)
    100 mM  NH4HCO3
     500 mM  EDTA・2Na
    洗浄液 (25% MeOH /7% 酢酸)
     10 mM Tris-HCl  (pH8.0)
     3% TFA
    0.1% TFA/100% MeCN
    0.1% TFA/100% H2O
   冷凍(−20℃)
    1M Dithiothreitol(DTT)
    10 pM トリプシン/10 mM Tris-HCl  
  
   使用時作成するもの  
   脱色液(50mM  NH4HCO3/50% MeOH)
    100 mM  NH4HCO3      2.5ml
    100%  MeOH            2.5ml
   還元溶液(10mM  EDTA・2Na/10mM  DTT/100mM  NH4HCO3)
    500 mM  EDTA・2Na   20µl
     1M DTT       10µl
    100 mM  NH4HCO3   970µl
   アルキル化溶液(10mM  EDTA・2Na/40mM  ヨードアセトアミド/100mM  NH4HCO3)
    500 mM  EDTA・2Na  20µl
    ヨードアセトアミド   7.4 mg      
    100 mM  NH4HCO3    980µl
   トリプシン溶液
    10 pM トリプシン/10 mM Tris-HCl   50µl
    10 mM Tris-HCl (pH8.0)       450µl
  

<サンプルの調整法>

 1) ゲルの切り出し
   二次元電気泳動後、染色・脱色したゲルから目的のタンパク質のスポットを切り出す。
     ライトボックス上でスパチュラを用いて切り出しを行い、純水で洗浄後、
     水分を除いてエッペンチューブに入れる。このまま冷凍保存可能(-20℃)。
     あるいはスポットピッカーを使用。 (Fig.3)

 2) 洗浄・脱色
     ゲルの入ったエッペンチューブに洗浄液(25% MeOH/7% 酢酸)を1ml加え、
     ローテーター上で室温にして一晩、振盪する。
     脱色は染色法により、いずれかの方法で行う。

    (CBB染色を行った場合)
     純水で洗浄後、脱色液(50 mM NH4HCO3/50% MeOH)を0.5 ml加え、
       40℃のクールブロックでCBBが脱色されるまでインキュベートする(30分〜1時間)。
       その後溶液を除去し、純水で洗浄する。

    (銀染色を行った場合)
      20 mM EDTA・2Na/50 mM Tris-HCl(pH8.0)/30% MeCNを0.3 ml加え、
       室温で5分放置後、上澄み溶液を捨てる。これを2回行い、さらに純水で2回洗浄する。

 3) 還元及びアルキル化
 (1) 減圧乾燥機によりゲルを乾燥する。(省略可能)
 (2) 還元溶液(10mM EDTA・2Na/10mM DTT/100mM NH4HCO3)を50μl加えてゲルを膨潤させ、
      60℃のクールブロックで1時間インキュベートする。
 (3) 溶液を捨て、減圧乾燥機によりゲルを乾燥する。
 (4) アルキル化溶液(10mM EDTA・2Na/40mM ヨードアセトアミド/100mM NH4HCO3)を
      50µl加えてゲルを膨潤させ、暗所・室温で30分反応させる。
 (5) 純水を1ml加え、ゲルを洗浄した後、水を除く。これを2回行う。
  (6) ゲルをチップの先やペレッターなどで押しつぶし、細かくする。
  (7) 減圧乾燥機によりゲルを乾燥する。

 4) 酵素消化
  (1) 酵素の量が全体で1pMとなるようにプロテアーゼ溶液を調整し、ゲルに加える。
      ここでは10pMトリプシン/10mM Tris-HCl  500µlを50µl加える。
  (2) チューブのふたをパラフィルムで密封し、37℃のクールブロックで10〜12時間酵素消化する。

 5) 抽出
  (1) 酵素消化後の液に0.1% TFA/100% MeCN 100μlを加え、超音波洗浄機に10分間かける。
  (2) 上澄み液を回収する。
  (3) 0.1% TFA/100% H2O 100μlを加え、超音波に10分間かける。
  (4) 上澄み液を回収する。
  (5) 0.1% TFA/50% MeCN 80μlを加え、超音波に10分間かける。
  (6) 上澄み液を回収する。
  (7) 0.1% TFA/100% MeCN 100μlを加え、超音波に10分間かける。
  (8) 上澄み液を回収する。
  (9) 回収した上澄み液をまとめて減圧乾燥機によりアセトニトリル(MeCN)を減圧除去する。
      完全には乾燥させず、20〜30μl残すようにする(ペプチド溶液)。
      ここまでの一連の操作はロボットを使用すると便利である。 (Fig.4)

 6) 脱塩
  (1) 抽出したペプチド溶液を、逆相担体を用いて脱塩・濃縮する。
      ZipTip C18(Millipore)をピペットマンに装着し、0.1% TFA/50% MeCNを
      10µl吸引、排出して洗浄する。これを3回繰り返す。
  (2) 0.1% TFA/100% H2O を10µl吸引、排出を3回繰り返して洗浄、平衡化。
  (3) 抽出したペプチド溶液を10µlずつ吸引、排出を繰り返してペプチドを吸着。
  (4) 0.1% TFA/100% H2O を10µl吸引、排出を3回繰り返して洗浄、脱塩。
  (5) 0.1% TFA/50% MeCN の吸引、排出によりペプチドを溶出させる。
      その後の操作により下記のように液量が異なる。
          <そのままVOYGER-RPにかける場合>
          2µl吸引し、サンプルプレート上に載せる。そこにマトリックス液(後述)を
           2µl加え、プレート上で混ぜる。その後風乾し測定にかける。
        <その他の質量分析計にかける場合>
        必要液量を吸引し、チューブに排出する。
        <一時保存の場合>
        5µl吸引し、エッペンドルフチューブに排出して冷凍保存する(-20℃)。
        (Fig.5-1, Fig.5-2), 
      
<マトリックスの調整法>

 1)マトリックスの選択
  サンプルの分子量に応じてマトリックス(Matrix)を選択する。
    10 kDa以上     CHCA(α-Cyano-4-Hydoroxycinnamic Acid)
    10 kDa以下     SA(Sinapinic Acid)

 2)調整
   使用直前に調整する。下記の試薬を混合し、Vortexに1分間かける。
    10分静置後、上澄みを使用する(完全には溶解しない)。

    CHCA(あるいは SA)  10 mg
      3% TFA                100µl
    MeCN         500µl
    H2O         400µl