図1 AUリッチ配列結合タンパク質によるmRNAの安定性の制御
サイトカインなどをコードするmRNAの3’側非翻訳領域に存在するAUリッチ配列にはTristetraprolin,AUF1,HuRなどのRNA結合タンパク質が結合し,mRNAを不安定化あるいは安定化する.TristetraprolinおよびAUF1は,CCR4-NOT複合体によるポリA鎖の除去をきっかけとして,エクソソームによる3’側から5’側へのRNAの分解,および,キャップ構造の除去ののちの5’側から3’側へのRNAの分解をひき起こす.一方,HuRはAUリッチ配列をもつmRNAを安定化する.
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このように,AUリッチ配列結合タンパク質は炎症性サイトカインの産生を正に負に制御し,炎症のバランスをとっていることが明らかになってきた.
図2 Regnase-1の構造と機能
(a)Regnase-1の構造.DSGxxS:Asp-Ser-Gly-X-X-Ser,P:リン酸化.
(b)Regnase-1はインターロイキン6をコードするmRNA(
IL6 mRNA)の3’側非翻訳領域に存在するステムループ構造を認識し,これを直接に分解することにより不安定化している.
[Download] [hs_figure id=2&image=/wordpress/wp-content/uploads/2013/11/Takeuchi-2.e013-Fig.2.png&caption=fig2-caption-text]
Regnase-1の欠損により炎症が惹起される分子機構を検討するため,Cre-図3 RoquinによるmRNAの安定性の制御
RoquinはICOSやTNFをコードするmRNAの3’側非翻訳領域に存在するステムループ構造を認識してCCR4-NOT複合体をリクルートし,ポリA鎖の除去およびmRNAの分解をひき起こす.
[Download] [hs_figure id=3&image=/wordpress/wp-content/uploads/2013/11/Takeuchi-2.e013-Fig.3.png&caption=fig3-caption-text]
図4 免疫細胞におけるシグナル伝達によるmRNAの安定性の制御
(a)自然免疫を活性化する刺激によるmRNAの安定性の制御.Toll様受容体への刺激により活性化したp38 MAPキナーゼはMK2をリン酸化し,さらにMK2がTristetraprolinをリン酸化する.リン酸化されたTristetraprolinは14-3-3と結合し,標的mRNAから離脱する.また,Toll様受容体への刺激はIκBキナーゼを活性化し,IκBキナーゼはRegnase-1をリン酸化してユビキチン-プロテアソーム系による分解を促進する.この分子機構により,TNFやインターロイキン6をコードするmRNAは安定化する.
(b)T細胞受容体への刺激はMALT1を活性化し,MALT1はRegnase-1を直接に切断し分解する.これにより標的mRNAの安定性が高まることが,T細胞の活性化に寄与する.
[Download] [hs_figure id=4&image=/wordpress/wp-content/uploads/2013/11/Takeuchi-2.e013-Fig.4.png&caption=fig4-caption-text]
Regnase-1もタンパク質の修飾を介して免疫の活性化によるダイナミックな制御をうけている.Regnase-1は定常状態においても免疫細胞に発現しており,これは,マクロファージにおいてインターロイキン6をコードするmRNAの発現を完全に抑制するために重要である.このことは,Regnase-1を欠損した細胞においては定常状態でも野生型の細胞と比較してインターロイキン6のmRNAが高く発現していることからも明らかである.Toll様受容体への刺激あるいはインターロイキン1βによるMyD88を介した刺激に対して,Regnase-1がIκBキナーゼ複合体により直接にリン酸化され,ユビキチン-プロテオソーム系により早期に分解されることが明らかになった