図1 RANKL刺激により誘導される破骨細胞の分化シグナルとNFATc1による制御機構
RANKL刺激により主としてTRAF6が活性化され,NF-κBやJNKなどが活性化される.ITAMアダプタータンパク質(Fc受容体共通γサブユニット,DAP12)と会合する免疫グロブリン様受容体(OSCAR,PIR-A,TREM-2,SIRPβ1)は,Ca
2+シグナルの誘導に必須の共刺激受容体として機能するが,そのリガンドに関してはいまだ不明な点が多い.また,セマフォリン6DはプレキシンA1-TREM-2-DAP12複合体を介して破骨細胞の分化を正に制御する一方,セマフォリン3AはプレキシンA1-TREM-2-DAP12複合体の形成阻害をつうじ破骨細胞の分化を負に制御する.BtkおよびTecはRANKシグナルにより活性化され,BLNKおよびSLP76と会合してホスホリパーゼCγのリン酸化をひき起こす.その結果,細胞内Ca
2+濃度が上昇し,カルシニューリンを介してNFATc1の活性化および自己増幅が誘導される.また,カルモジュリンキナーゼIVも活性化され,CREBを介してc-Fosを誘導しNFATc1の転写活性化能を促進する.NFATc1はカテプシンK,TRAP,カルシトニン受容体,OSCAR,DC-STAMPといった破骨細胞の分化および機能にかかわる遺伝子の発現を誘導する.
FcRγ:Fc受容体共通γサブユニット,PLCγ:ホスホリパーゼCγ,CaMKIV:カルモジュリンキナーゼIV.
[Download] [hs_figure id=1&image=/wordpress/wp-content/uploads/2012/08/Takayanagi-1.e003-Fig.1.png&caption=fig1-caption-text]
図2 Th17細胞による炎症性骨破壊の機構
関節の滑膜に浸潤したTh17細胞は,インターロイキン17を産生することで滑膜マクロファージを活性化させ,炎症性サイトカイン(インターロイキン1,インターロイキン6,TNFα)の産生を促す.インターロイキン17はそれ自体が滑膜線維芽細胞に作用しRANKLの発現を誘導することができる.また,炎症性サイトカインも強いRANKL誘導能をもつ.その結果,RANKLの発現増強にともない破骨細胞の分化が亢進し,過剰な骨破壊が生じる.
IL:インターロイキン,IFNγ:インターフェロンγ.
[Download] [hs_figure id=2&image=/wordpress/wp-content/uploads/2012/08/Takayanagi-1.e003-Fig.2.png&caption=fig2-caption-text]
図3 関節リウマチにおける炎症性骨破壊の治療戦略
関節リウマチにおいては,樹状細胞などの抗原提示細胞が自己抗原を提示し未感作CD4陽性T細胞を活性化させ,自己免疫応答を惹起する.さらに,インターロイキン6やインターロイキン23の作用によりTh17細胞の分化が誘導され,破骨細胞が異常に活性化され骨破壊が進行する.局所の炎症の中心的なメディエーターとしてはたらく炎症性サイトカインであるTNFαやインターロイキン6に対する生物学的な製剤,および,CD28とCD80あるいはCD86との結合に作用してT細胞の活性化の抑制にはたらくCTLA4-Igは,すでに関節リウマチの臨床において広く使用され効果を発揮している.また,遅効性抗リウマチ薬は多彩な作用機序を示すが,破骨細胞の分化の過程にも作用して骨破壊の抑制作用をもつ.また,抗インターロイキン23抗体やRORγt阻害剤はTh17細胞の誘導を抑え,抗インターロイキン17抗体はTh17細胞のエフェクター機能を阻害することが期待される.カテプシンK阻害剤は炎症と骨破壊とを同時に治療する相乗効果が期待できる.
IL:インターロイキン.
[Download] [hs_figure id=3&image=/wordpress/wp-content/uploads/2012/08/Takayanagi-1.e003-Fig.3.png&caption=fig3-caption-text]
Th17細胞の分化にはオーファン核内受容体であるRORγt(retinoid-related orphan receptor γt)が必須であることが知られている