図1 Foxp3陽性制御性T細胞による免疫自己寛容の維持とその異常
(a)正常なマウスに由来するリンパ球から制御性T細胞(CD25陽性T細胞)を除去したのちヌードマウスに移入すると,自己免疫疾患や炎症性腸疾患などの免疫疾患を自然発症する.
(b)ヒトのIPEX症候群では
FOXP3遺伝子の突然変異の結果,機能性の制御性T細胞が欠損している.その結果,自己免疫疾患や炎症性腸疾患,アレルギーが発症する.
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図2 Foxp3陽性制御性T細胞による免疫抑制の分子機序
転写因子Foxp3は,Runx1やNFATなどほかの転写因子,共役活性化タンパク質,共役抑制タンパク質とともに転写因子複合体を形成し,さまざまな遺伝子の活性化を制御している.なかでも,
Ctla4遺伝子の活性化やインターロイキン2遺伝子の抑制が重要である.制御性T細胞の発現するCTLA-4は,抗原提示細胞においてCD80/CD86の発現を低く抑えることにより,ほかのT細胞の活性化に必要な副刺激を提供できないようにしている.また,制御性T細胞は高親和性のインターロイキン2受容体を高発現し,周囲からインターロイキン2を受け取ることにより,ほかのT細胞からインターロイキン2を奪いその活性化をさまたげる.制御性T細胞は複数の免疫抑制機構をもつが,もっとも重要な機序は抗原提示細胞,とくに樹状細胞によるT細胞活性化の抑制である.
[Download] [hs_figure id=2&image=/wordpress/wp-content/uploads/2013/05/Sakaguchi-2.e005-Fig.2.png&caption=fig2-caption-text]
制御性T細胞は複数の機序により免疫抑制能を発揮するが,制御性T細胞の免疫抑制機能の根幹は抗原提示細胞によるT細胞活性化の抑制である.ナイーブT細胞は抗原提示細胞,とくに樹状細胞の提示する抗原によるT細胞受容体への刺激(シグナル1)と,抗原提示細胞に発現するCD80/CD86によるCD28への副刺激(シグナル2)により活性化され,インターロイキン2を産生し増殖する.制御性T細胞の重要な特徴として,CD28の分子ホモログであるCTLA-4をつねに高発現していることがある