図1 プロテアソームの構成と構造
(a)26Sプロテアソームの電子顕微鏡像とそのカットモデル.ドイツMax-PlanckInstitute of BiochemistryのWolfgang Baumeister博士より供与.
(b)サブユニットの構成.
[Download] [hs_figure id=1&image=/wordpress/wp-content/uploads/2014/10/Murata-3.e011-Fig.1.png&caption=fig1-caption-text]
20Sコア粒子はX線結晶構造解析がなされており,構造の詳細が判明している図2 ユビキチン化されたタンパク質の分解におけるプロテアソームの作動機構
1)プロテアソームのユビキチン受容体Rpn10および/あるいはRpn13により基質タンパク質のユビキチン鎖が捕捉される.2)基質タンパク質のもつ非構造領域がATPaseチャネルのAr-Φループにより捕捉され分解へと運命づけられる.3)基質タンパク質の解きほぐしがはじまると,19S制御粒子は構造変化を起こし,ATPaseチャネルと20Sコア粒子への通路が直線上に配列するとともに,脱ユビキチン化酵素Rpn11の活性中心がATPaseチャネルの直上に配置される.4)基質タンパク質の解きほぐしが進行しユビキチン鎖の根元がRpn11活性中心の付近まで移動すると,ユビキチン鎖が切り離される.5)さらに解きほぐしが進行し,基質タンパク質は20Sコア粒子へと送り込まれて分解される.
[Download] [hs_figure id=2&image=/wordpress/wp-content/uploads/2014/10/Murata-3.e011-Fig.2.png&caption=fig2-caption-text]
ATPaseリングは20Sコア粒子のαリングと直接に会合する.Rpt2,Rpt3,Rpt5のC末端に存在するHbYX配列(疎水性アミノ酸-チロシン-任意のアミノ酸からなる配列)がαサブユニットのあいだにあるポケットに突き刺さることにより,αリングに構造変化が起こり開口し,解きほぐされた基質タンパク質が20Sコア粒子へと送り込まれる.
ユビキチン化されたタンパク質の捕捉はRpn10およびRpn13により行われる.これら“ユビキチン受容体”はアンテナのように19S制御粒子の頂上の周辺部に互いに90Å離れて位置している(図3 26Sプロテアソームの高解像度の電子顕微鏡像
(a)蓋部(黄色)は基底部(水色)の側面に張りつき,さらに一部は20Sコア粒子(灰色)とも結合する(EMDB ID:
1992).
(b)19S制御粒子におけるATPaseリングとサブユニットの配置(PDB ID:
4CR3).とくに,基質タンパク質を処理しているときにはRpn11はATPaseリングの直上に位置する.ユビキチン受容体であるRpn10およびRpn13は19S制御粒子の周辺部に位置する.
[Download] [hs_figure id=3&image=/wordpress/wp-content/uploads/2014/10/Murata-3.e011-Fig.3.png&caption=fig3-caption-text]
しかし,ユビキチン鎖のみではプロテアソームによる分解には十分ではなく,基質タンパク質が30アミノ酸残基以上の長さの非構造領域をもつことが必要であり,この領域がATPaseチャネルに入り込みAr-Φループにより捕捉されることにより,はじめて分解への運命が決定づけられる図4 プロテアソームの発現制御と栄養応答およびストレス応答
プロテアソームの発現は,mTOR複合体1シグナル伝達経路による増殖シグナル応答としても,FOXOシグナル伝達経路によるストレス耐性応答としても,いずれでも誘導される.また,プロテアソームの機能が低下した際にはNrf1の蓄積および活性化によっても誘導される.しかし,プロテアソームの基礎発現量を制御するしくみはいまだ不明である.
[Download] [hs_figure id=4&image=/wordpress/wp-content/uploads/2014/10/Murata-3.e011-Fig.4.png&caption=fig4-caption-text]
PI3K-AKTシグナル伝達経路により正に制御されるmTOR複合体1とは反対に,FOXOはPI3K-AKTシグナル伝達経路により負に制御される転写因子であり,栄養飢餓やさまざまなストレスに対応して恒常性の維持にはたらき,オートファジーをはじめとした異化作用やタンパク質恒常性の維持機構を発動させる.さきに述べたように,線虫およびES細胞ではDAF16あるいはFOXO4を介してRpn6の転写を上昇させることによりプロテアソームの機能を亢進させ,異常タンパク質の出現による毒性を軽減させている