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6. タバコ

René Delon著


A. タバコの特性

a) 原産地

栽培されているタバコのすべてが属するタバコ属(Nicotiana genus)は、ナス科に属する。タバコ属としては、66種が知られており(表6.1)、それらのうちのほとんどは、南アメリカおよびオーストラリア原産である。アフリカ(ナミビア)では、ただ1つの種であるN.アフリカーナ(N.africana)が、1975年にMerckmüllerおよびButlerによって発見された。
今日商業的に栽培されているほとんどのタバコは、24対の染色体をもち多くの形態を備えた(polymorphous)種であるN.タバカム(N.tabacum)に属する。今日一般的には、この種は、その複二倍性から、N.シルベストリス(N.sylvestris)(n = 12)のN.トメントシフォルミス(N.tomentosiformis)(n = 12)との交雑に由来すると考えられている。

b) 使用の地理的分布;主な生産地域

タバコは、本来は暖かい地方の植物であるが、様々な土壌や気候で繁殖可能であり、その栽培地域は、非常に広い。様々な品種-バージニア(Virginia)、バーレイ(Burley)、アロマティック(Aromatic)、ダーク(Dark)など-の世界的生産は、ゆっくりとではあるが確実に拡大しており(図6.1)、現在は約700万メートルトンである。アジアとアメリカを合わせて、世界の生産高の4分の3以上を占める。主な生産国としては、中国、アメリカ合衆国、インド、ブラジル、トルコ、旧ソビエト社会主義共和国連邦(USSR)、ジンバブエ、およびマラウイが挙げられる。EECにおける主な生産国は、イタリアおよびギリシアである(図6.2)。

c) 分類学的地位

T.H. Goodspeed(1954年)は、タバコ属の最新の分類を実施し、タバコ属を、3つの亜族(RusticaTabacumPetunioides)、14節、60種に細分化した。それ以後、Burbidge(1960年)、MerckmüllerおよびButler(1975年)、ならびにOhashi(1976年)による見直しと発見により、種の数は、66に増えた(表6.1)。


表6.1. タバコ属の分類

亜属 命名者 染色体数
(2n)
Rustica Paniculatae






Thyrsiflorae
Rusticae
Glauca
Paniculata
knightiana
solanifolia
benavidesii
cordifolia
raimondii
thyrsiflora
rustica
グラハム(Graham)
リンネ(Linnaeus)
グッドスピード(Goodspeed)
ワルパーズ(Walpers)
グッドスピード(Goodspeed)
フィリップ(Philippe)
マクブライド(Macbride)
グッドスピードからビッター(Bitter ex Goodspeed)
リンネ(Linneaus)
24
24
24
24
24
24
24
24
48
Tabacum Tomentosae





Genuinae
tomentosa
tomentosiformis
otophora
kawakamii
setchellii
glutinosa
tabacum
ルイスおよびパボン(Ruiz and Pavon)
グッドスピード(Goodspeed)
グリーゼバッハ(Grisebach)
大橋(Ohashi)
グッドスピード(Goodspeed)
リンネ(Linnaeus)
リンネ(Linnaeus)
24
24
24
24
24
24
48
Petunioides Undulatae


Trigonophyllae
Alatae






Repandae


Noctiflorae



Acuminatae
undulata
arentsii
wigandioides
trigonophylla
sylvestris
langsdorffii
alata
forgetiana
bonariensis
longiflora
plumbaginifolia
repanda
stocktonii
nesophila
noctiflora
petunioides
acaulis
ameghinoi
acuminata
pauciflora
attenuata
longibracteata
miersii
corymbosa
linearis
spegazzinii
ルイスおよびパボン(Ruiz and Pavon)
グッドスピード(Goodspeed)
コッホおよびフィンテルマン(Koch and Fintelman)
ドナル(Donal)
スペガッツィーニおよびコームズ(Spegazzini and Comes)
ウェインマン(Weinmann)
リンクおよびオットー(Link and Otto)
ヘムスレイからホルト(Hort ex Hemsley)
レーマン(Lehmann)
カバニレス(Cavanilles)
ビビアーニ(Viviani)
レーマンからウィルデノウ(Willdenow ex Lehmann)
ブランデジー(Brandegee)
ジョンストン(Johnston)
フッカー(Hooker)
(グリーゼバック)ミラン((Griseback)Millan)
スペガッツィーニ(Spegazzini)
スペガッツィーニ(Spegazzini)
(グラハム)フッカー((Graham)Hooker)
レミー(Remy)
ワトソンからトーリー(Torrey ex Watson)
フィリッピ(Philippi)
レミー(Remy)
レミー(Remy)
フィリッピ(Philippi)
ミラン(Milan)
24
48
24
24
24
18
18
18
18
20
20
48
48
48
24
24
24
?
24
24
24
?
24
24
24
24
Petunioides Bigelovianae

Nudicaules
Suaveolentes
bigelovii
clevelandii
nudicaulis
benthamiana
umbratica
cavicola
debneyi
gossei
amplexicaulis
maritima
velutina
hesperis
occidentalis
simulans
megalosiphon
rotundifolia
excelsior
suavelolens
ingulba
exigua
goodspeedii
rosulata
fragans
africana
(トーリー)ワトソン((Torrey)Watson)
グレイ(Gray)
ワトソン(Watson)
ドミン(Domin)
バービッジ(Burbidge)
バービッジ(Burbidge)
ドミン(Domin)
ドミン(Domin)
バービッジ(Burbidge)
ホイーラー(Wheeler)
ホイーラー(Wheeler)
バービッジ(Burbidge)
ホイーラー(Wheeler)
バービッジ(Burbidge)
ヒュールクおよびミュラー(Heurck and Mueller)
リンドレイ(Lindley)
ブラック(Black)
レーマン(Lehmann)
ブラック(Black)
ホイーラー(Wheeler)
ホイーラー(Wheeler)
(S.ムーア)ドミン((S. Moore)Domin)
フッカー(Hooker)
メルクおよびバトラー(Merx and Butler)
48
48
48
38
46
40
48
36
36
32
32
42
42
40
40
44
38
32
40
32
40
40
48
24


図6.1. 世界のタバコ生産量

(メートルトン)


d) 遺伝学および細胞遺伝学的特性

タバコ亜属(Nicotianae)の体細胞の最も一般的な染色体数は、24および48であるが、18、20、32、36、38、40、および46も見られる。
Goodspeed(1954年)ならびにGisquetおよびHitier(1961年)を含めた多くの命名者は、可能な組み合わせ体をすべて観察し、対になる染色体によって、種全体の不和合性から雑種植物の作成まで、種間の類縁性を研究した。
広範な細胞遺伝学的研究が、タバコ属の2つの特徴に大きく貢献してきた。第1に、N.タバカムは、異質倍数体起源の植物である。経済学的重要性のため、その推定される親種との系統学的関係を解読するための研究が行われている。この属の他の種との系統学的関係は、雑種組み合わせ体における染色体の数、染色体対合、および減数分裂の核学的研究から推定されている。第2に、病気への耐性、害虫に対する免疫、または新しい生物化学的特性を与える試みの中で、遺伝子導入を実施することができ、こうした導入の成功の見込みを推測することができる。
雄性不稔性(CMS)は、N.タバカムの商業用系統に伝達することが可能な生殖質特性であり、これによって、例えば、除雄を導入せずにF1雑種の作成が容易になる(Delon、1986年)。異なる形の雄性不稔性は、生殖質供与体として使用される種によって区別できる。N.suaveolensまたはN.megalosiphonの場合、CMSは、葯の雌性化(柱頭状)として現れる。一方、N.undulataでは、花弁状の葯、および柱頭が突出した花冠の形成が起こる。Gerstelは1980年、細胞質雄性不稔性の包括的な書誌学的(bibliographic)調査を行った。


図6.2 EECのタバコ生産量、1990年

(メートルトン)


e) 生殖質の移動に関する現在の植物衛生学的検討

タバコは、種子として、あるいは植物体として移動し得る。種子の場合は、病気または寄生生物の伝播のリスクは実質的にない-アオカビ(P.tabacina)、うどんこ病(E.cichoracearum)、黒根病(C.elegans)、タバコ疫病(P. parasitica var. nicotiana)は、種子伝達性ではない-のに対し、植物体に関しては、リスクは高い。
タバコ種子の輸入に関して一般的に適用される検疫規則はない。しかし、以下のものから防護するためには、検疫が望ましい:
- 野火病(Pseudomonas tabaci);
- 炭疽病(Colletotrichum tabacum);
- アオカビ(Peronospora tabacina)1
通常の形の消毒は、0.1パーセント硝酸銀に種子を(ガーゼの袋に入れて)10〜15分間浸し、その後24時間熱風(30〜50°C)中で乾燥させるというものである。

f) 現在の最終用途

タバコ属(Nicotianeae)のうち、全世界中でもっとも良く知られ、最も一般的に栽培されている種は、N.タバカムおよびその多数の品種である。タバコは、紙巻きタバコまたは葉巻としてその煙を吸う、あるいは噛む、あるいは嗅ぎタバコとして吸うものである。栽培されたタバコは、栽培、乾燥(curing)、および加工の方法に従って、5つの主なグループに分類される:

- 熱気送管乾燥種(flue-cured):ブライトバージニア(bright Virginia)種のタバコを乾燥させるためには、熱風技術を使用する;
- 明色空気乾燥種(light air-cured):ブライトバーレイ(bright Burley)種のタバコは、自然通気(natural ventilation)で乾燥させる;
- 日干し乾燥種(sun-cured):ブライトアロマティック(bright aromatic)タバコは、日光で乾燥させる;
- 暗色空気乾燥種(dark air-cured):ダーク(フランス式(French-style)・葉巻)タバコは、自然通気(natural ventilation)で乾燥させる;
- 火力乾燥種(fire-cured):ダーク(ケンタッキー(Kentucky)種の)タバコは、焙って乾燥させる。

N.ルスチカの多数の系統は、アルカロイドが豊富であるが、それらの栽培は、北アフリカ、東ヨーロッパ、パキスタンなどに限られ、減少しつつある。
いくつかの他の種、特にPetunioides亜属に属するものは、観賞植物として栽培される。
タバコを使用して、ニコチンを生成し、これを殺虫剤として使用することができる。タバコタンパク質、特に蛋白分画I(Rubisco)の独特の性質は、ヒトおよび動物の栄養のための葉タンパク質として興味をかきたてるものであるかもしれない。
タバコは、抽出後に、リンゴ酸およびクエン酸、ソラネソールおよび精油などの様々な化学物質の天然原料として利用することもできる(Tso、1990年)。
最後に、タバコは、細胞および分子生物学研究において非常に価値ある植物モデルである。

生殖のメカニズム

a) 生殖の様式

タバコの花は、両性花であり、通常は完全花であり、左右相称である。雄蕊群は、通常長さが異なる5本の独立した雄蕊からなる。葯の裂開は、花冠が開く前(N.ルスチカ)または後に起こる。雌蕊は、一般に2室を構成する2枚の癒合した心皮からなる。花柱は、子房の上から様々な形態をとり得る柱頭まで伸びる。

b) 多年生対一年生

ほとんどのタバコ属(Nicotianeae)の種は、一年生である。N.glaucaN.tomentosa、およびN.タバカムのある種の系統などいくつかは、最初の年に稀にしか開花しない、あるいは、とても遅れて開花するので植物が霜によって枯死しない場所以外では種子が生じない。こうしたタバコ属(Nicotianeae)は、温室内でのみ生存、繁殖できる。

c) 受粉の様式

タバコは、自殖性植物であると考えられる。これは、受粉後に初めて花が開くN.ルスチカにも当てはまる。N.タバカムで自家受精を行う場合、花部を保護袋で覆うことが望ましい。他家受粉を行う因子のうち、風は、明らかにせいぜい20 mしか花粉を運ばず、タバコの花が、豊富な花蜜を含んでいることから、ミツバチ、マルハナバチ、およびある種のチョウがより重要な役割を果たす。雄性不稔の花では、人の手による受粉が必要である。

d) 栄養繁殖体の拡散および生存メカニズム

冬季に零下の天候が通常である栽培地域では、タバコは、種子の形でのみ生存可能であり、草本部は霜によって枯死する。

e) 近縁種との交雑能

産業用タバコ(N.タバカム)は、タバコ(Nicotiana)以外の属の種と、自然には交雑しないであろう。その属内であっても、自然発生的な種間交雑は、非常に稀である。

毒物学

広く研究されており、タバコ中の主要なアルカロイドであるニコチンを除いて、遺伝学者にとって、タバコの3500成分のうちのどれが増減しているか判断することは難しいという簡単な理由から、タバコの葉に存在する化学物質の量の変化に関する研究は、ほとんど行われていない。ニコチンに関しては、従来の品種では2〜3%であるのに対し、乾物中に0.1パーセント未満のニコチンを含むタバコが得られている(Schiltzら、1983年)。タバコの燃焼によって生じるタールを減少させる試みも為されているが、それが実現できた品種はあまりない。

生活環に関する環境要件

a) タバコの分布拡大に対する気候的制限

タバコ栽培の地理的範囲は、北緯60度から南緯40度の間である。しかし、ほとんどの生産国は、北緯45度から南緯30度までの緯度に位置している。タバコは本来、より温和な気候で栽培可能な熱帯植物である。これらの国々における生長期間(vegetation period)は、100日から120日まで変動する。最適温度に近い平均温度27°Cであれば、生育期間を、80〜90日に短縮することができる。品種改良は主として、タバコの、温帯地域で春季に通常見られる冷たく湿気の多い土壌に移植された後に再び生育を始める能力の向上が目的とされている。

B. 現行の育種の実践および品種開発研究

a) 育種の主要技術

i) 生殖質の維持管理

N.タバカムおよびN.ルスチカのすべての品種は、自然の自家受精のおかげで、袋を使用することによって維持することができる。短日性の種は、温室内で繁殖が行われる。ある種では、人の手による自己受精(auto-fertilisation)が必要である可能性がある。

ii) 基本育種

N.タバカムの作成のための選抜は、品種間交雑、および系統選抜(血統(pedigree))を介する自家受精による純粋な系統の分離に頼るものである。
タバコに適用可能な他の技術は、戻し交雑および循環選抜である。
雄性発生と、(N.アフリカーナとの交雑によって得られた)母系半数体はどちらも、安定で均質な系統を作り出すのに必要な時間を短縮させる。
体細胞雑種は、様々な種のタバコ属から得られ、外来遺伝子の初の導入が成功している。これによって、特定の除草剤(ホスフィノトリシン、ブロモキシニルなど)に耐性がある産業用タバコ品種の急速な開発が可能になるであろう。

iii) 品種開発

ステップ1. ベルジュラックタバコ研究所(Tobacco Institute in Bergerac)で、F4〜F6系統について最初の評価を実施する。各品種について、250〜300植物の基本区画で、完備ブロック(complete block)で統計的配列に従って4回繰り返す。収量を算出し、未加工品の、食味試験を含めた農学的性質および物理化学的性質の最初の評価を行う。
ステップ2. その後の世代について、各地域で(南西、南東、西、および北東フランスで)同様の試験を実施する。
ステップ3. 5〜10ヘクタールの面積での半産業(semi-industrial)栽培により、新しい品種の生存能力および市場性の明確な見解を得る。

b) 育種の主要目的

品種改良の主目的は、収量、耐病性、収穫のし易さ、および乾燥適性を求める生産者から、また、アルカロイド含有量(ニコチン、ノルニコチンなど)、タール量、フレーバー、および登熟力(filling power)を求めるメーカーおよび消費者から出される必要性によって決定される。
耐病性(真菌性、細菌性、ウイルス性)に関しては、タバコ属は、成功裡に導入された様々な耐病性因子を含む(表6.2参照)。
主な2つの遺伝子に関与するニコチン含有量のような化学的な性質に関しては、乾物中のニコチン含有量が0.1〜5パーセントである品種が得られている。ノルニコチン、すなわち脱メチル化によって生成され、また主な2つの遺伝子によって支配されるニコチン誘導体は、適切な選抜によって、ある種のタバコから完全に排除されている。タール量、フレーバー前駆体、ポリフェノール含有量、および組成などの他の化学的性質は、選抜を通して改質することができる。


表6.2. 品種の耐性を向上させるために使用される主な種

病気と病原因子 起源となる種
N.
tabacum
N.
debneyi
N.
excelsior
N.
glutinosa
N.
goodspeedii
N.
megalo-
siphon
N.
suaveolens
N.
alata
N.
longiflor

N.
plumba-
ginifolia
野火病
Pseudomonas tabaci
×
アオカビ
Peronospora tabacina
× × × ×
うどんこ病菌
Erysiphe cichoracearum
× × ×
黒根病
Thielaviopsis basicola =
Chalara elegans
×
タバコ疫病
Phytophthora parasitica
× × ×
ウイルス感染症
TMV
PVY
TSWV
× × ×


c) 育種の最重要目的のための試験

育種者は、選抜プロセス中に系統を評価するための様々な方法を使用することができる:

  1. 子葉試験(SchiltzおよびCoussirat、1969年):この方法は、光、温度、および栄養が制御された条件下で、子葉段階(10〜25日)での芽生えの特徴を見つける。
  2. 葉試験(SchiltzおよびGenève、1968年):これは、温室植物から切り取った一枚の葉の柄について、新しく生じた根系を調べることからなる。これは、根系の発達を評価し、寄生生物によって攻撃されたかどうかをチェックし、もし攻撃されていれば、侵襲の程度を測定し、それによって寄生生物に対するタバコの反応を診断する方法である。
  3. 温室または制御された環境での試験:ある種の病気-黒根病、タバコ疫病、ウイルス感染症(PVY、VMT)−に関しては、真菌またはウイルス寄生体を調べるために、調節された温室内または環境が制御された部屋内での小苗床(minibed)栽培によって分析を実施することができる。
  4. 屋外試験:最終の試験は、屋外での確認である。病気(アオカビ、うどんこ病菌)の場合、自然な播種に適した区画を選ぶことが特に重要である。耐性の程度は、アオカビおよびうどんこ病菌についてCORESTAによって考案されたものなど、損害評価チャート(damage assessment chart)と照らし合わせることによって算出される。

d) 一般性能の評価

品種の最終評価は、野外で、250〜300の植物の区画で栽培することによって実施され、完備ブロックシステム(whole block system)に従って4回繰り返される。
実地で、植物の形態(大きさ、ならびに葉の付き方(implantation)、形、および数;図6.3参照)、発芽能力、ならびに開花日が分析される。
収穫および乾燥後、いくつかの特性に加えて、収量および品質指標(quality index)が求められる。特性のうちのあるものは、登熟力、燃焼性など、物理的であり、あるものは、喫煙装置によって算出されるような、総アルカロイド(ニコチン、ノルニコチン)、総窒素、還元糖(バージニア)、硝酸塩(バーレイ)、およびタール量など、化学的である。
専門家パネルによる食味試験が、新しい品種が見込まれるかどうかの最終判断基準である。

C. 商業利用のための種子増産

a) 種子生産の段階

タバコは、その150,000という増殖率を考慮すると、種子生産のために大きな面積を必要とせず、種子ストックから商業的な量まで達するのに一世代(すなわち生殖(reproduction))で十分である。
フランスにおける繁殖は、ベルジュラックタバコ研究所(ITB)によって、あるいは必要な技術と、商業的タバコ栽培種から離れた場所に位置する土地とをもつタバコの栽培者によって組織されている。

b) 隔離の実施

稔性の品種に関しては、隣接する栽培種を開花から防ぐために、種子の付く頭部が袋で囲われる場合、また摘花(topping)が行われる場合以外は、種子園は、商業用のタバコ畑から少なくとも40m離れた場所でなければならない。
雄性不稔のF1雑種の場合は、雄性不稔の苗床は、稔性の系統からせいぜい50m以下でなければならない。

図6.3 植物の形態


c) 種子の認可と登録の役割

フランスはまだ、タバコの公式の目録は存在しないが、生産は非常に組織化され、ベルジュラックタバコ研究所は、品種試験(同定、純度、病気に罹っていないこと)、および種子の品質試験を行っている。種子は、以下の最低基準に適合しなければならない:
- 純度、99パーセント
- 発芽率、80パーセント
発芽率は、湿度が最大状態で、27°Cで、湿らせた吸い取り紙に乗せて光に当てた2×100個の種子を使用して求められる。

d) 寿命および市場拡大

品種の切り替わりは、若干ゆっくりである。ドラゴンベール(Dragon Vert)、パラグアイ、およびナイケルク(Nijkerk)などのいくつかの品種は、1870年から栽培されている。しかし、タバコ業界は、特に、収量や品質に影響を与えることから、品種の開発に強い関心を持っている。フランスでは現在、15種ほどの異なる品種が栽培されており(表6.3参照)、そのうちの主たるものは、1968年に初めて栽培された、アオカビ耐性のダークタバコ品種であるPB D6である。


表6.3 フランスにおける品種別のタバコ栽培
(推定百分率)

品種 1987 1988 1989
ダークタバコに含まれるもの:
・ PB D6
・ パラグアイ
・ ITB 19
・ ナイケルク
・ ドラゴンベール
・ GDH
・ その他
9,612 ha
86
6
2
2
1
3
-
8,517 ha
84
5
2
1.5
0.7
6.8
-
7,573 ha
92
3
1.6
1.6
1.0
0.4
0.4
バーレイに含まれるもの:
・ BB 16
・ BB 16A
・ B 217
1,353 ha
59
23
15
1,139 ha
37.6
31.7
30.7
1,190 ha
40
36
24
バージニアに含まれるもの:
・ バージン(Virgin)D
・ MN 944
・ ITB 30
・ K 326
・ その他
3,405 ha
97
2
-
-
1
3,013 ha
89
10
-
-
1
2,650 ha
85
11
3
1
-

ダークタバコからバーレイおよびバージニアへの現在の流れによって、通常F1雄性不稔(MS)雑種である新しい品種を開発する機会が提供され、それらのうちのいくつかは、特許によって保護されている(ITB 1000、ITB 2001、ITB 2201)。


注 釈

1. Peronospora tabacinaの種子伝達性伝播は、非常に議論の余地がある問題である。アオカビが存在する国から、未侵入の他の国への種子の輸送は、CORESTA(Centre de Coopération pour les Recherches Scientifiques Relatives au Tabac, 53, Quai d'Orsay, 75347 Paris Cedex 07, France)の指導のもとで規制される。種子の処理は、通常、講じられるべき最低限の予防措置である。

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