cDNA:真核生物のmRNAに相補的なDNAコピーで、逆転写酵素(レトロウイルス中に存在するDNAポリメラーゼの一種で、RNAを鋳型としてDNAを合成する機能を持つ)を用いて作られる。mRNAのコピーであるため、cDNAには、対応する真核生物のゲノムDNAに通常あるイントロン配列がない。
胚性幹細胞(ES細胞):哺乳類の初期胚に由来する未分化の細胞で、in vitroでの培養後、受容体となる発育中の胚組織の一部になることができる。遺伝子導入に利用される。
遺伝子流動(拡散):集団間や同一集団内の異なる部分間での遺伝子の移動。
遺伝子ライブラリー(ジーンバンク):クローニングによって得られたきわめて多数の組換え体で、DNAがクローニングされた特定の生物の全ゲノムのDNA配列が完全に(またはほぼ完全に)網羅されている(ゲノムライブラリーともいう)。これに対してcDNAライブラリーはcDNAを用いて構築される。
遺伝子工学(遺伝子操作):広義には、組換えDNA(rDNA)技術を用いてDNA分子の配列を改変すること。関連のない2つのDNA分子を組み合わせて、新たな性質を持つ分子を作りだすことが可能である。英国の場合、遺伝子操作は法律によって「何らかの手段で細胞外で作られた核酸分子を、ウイルス、細菌プラスミドなどのベクター系を使って宿主生物に人為的に導入し、繰り返し複製させることによって、遺伝物質の新規の組み合わせを形成すること」と定義されている1。
ゲノム:ある生物が持つDNAの完全な1セットで、その生物の全DNA配列からなる。
遺伝子型:ある生物の遺伝子構成で、その生物のDNA配列によって規定される。遺伝子型は、生物の表現型の多くの側面を決定する。遺伝子型は、古典的育種法によっても遺伝子操作によっても改変することが可能である。
GMO:遺伝子組換え生物(genetically modified organism)。最新の分子生物学の多種多様な技術によって改変された生物で、バクテリオファージを用いて形質転換した腸内細菌の大腸菌(Escherichia coli)の細胞から、微粒子銃を用いて改変された植物、ES細胞の導入によって改変された動物など多岐にわたる。
ホモ(同型)接合の:ある遺伝子の2つのコピー(1対の染色体上にあるもの)が同一である状態。また、染色体対が相同である状態ということもできる。2つのコピーが異なる場合、これをヘテロ(異形)接合であるという。
遺伝子移入:雑種個体が一方の親との戻し交雑を繰り返すことによって起きる種間の遺伝子の移入。
マイクロインジェクション(微量注入)法:細胞の核へのDNA(まれにRNA)の導入。動物の形質転換では、受精直後の卵において前核の1つに約3pl(3×10-9ml)のDNAを含む溶液を微量注入する。
分子クローニング(遺伝子クローニング):すべてがその組換えDNA分子を含む遺伝的に同一な生物の系統を増殖させることによって、組換えDNA分子およびその合成を指令する遺伝子産物を増幅すること。
モザイク:2つ以上の遺伝子型を異にした細胞を含む個体。胚へのES細胞の導入や、ごく初期の胚細胞の一部だけに導入遺伝子を組み込んだ場合に、こうした個体が得られる。
PCR:ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction)。両端の鎖でハイブリッド形成することができ、標的とするDNAの目的の領域に隣接する2つのオリゴヌクレオチドプライマーを使い、酵素によって特定のDNA配列をin vitroで合成する方法。鋳型の変性、プライマーの加熱徐冷(アニーリング)、加熱徐冷したプライマーのDNAポリメラーゼによる伸長というサイクルを繰り返すことによって、終端がプライマーの5'末端における特定の断片が指数関数的に増幅される2。
表現型:ある生物が発現する性質で、その生物の遺伝子型と環境との相互関係によって決定される。そのため、成長ホルモンを発現し、より速く成長するはずの生物でも、充分な食物が供給されなければ、そうはならない。
組換えDNA(rDNA):遺伝子操作技術を用いてベクター分子に外来DNAを挿入することによって得られる合成DNA分子。
制限酵素:ある種の細菌が持つ酵素で、DNAを特定の部位、または、DNA中の特定の塩基配列(通常、4〜6塩基対の長さ)が特徴の制限酵素認識部位で切断することができる。
RFLP:制限酵素断片長多型(restriction fragment length polymorphism)。制限酵素認識部位の多型性のことで、DNAを特定の制限酵素で切断すると、長さの異なるDNA断片を生じ、それによって個体を識別することができる。DNA断片は、放射性同位元素で標識したプローブで検出することができ、育種や遺伝子マッピングのマーカーとして使うことができる。
体細胞変異:培養組織から再生した植物に一般的にみられる変異性。
サザンブロット法:もともとサザン(Southern)3が考案した方法で、ゲル電気泳動法で分離したDNA制限酵素断片は、ゲルからニトロセルロースやナイロンの膜上に移される。その後、DNA断片を放射性同位元素で標識した相補的なDNA配列(プローブ)を使ってスクリーニングすれば、DNA断片上の配列が検出できる。
T-DNA:アグロバクテリウム属の自律複製するプラスミド上に特殊な配列として生じる形質転換DNAで、病原性遺伝子に挟まれている。
トランスフェクション(トランスフォーメーション):外来DNAを導入することによってある細胞の遺伝的構造を改変するプロセス。通常、トランスフォーメーション(形質転換)は、細菌細胞への導入をいう場合に用いられ、トランスフェクションは動物細胞への導入の場合に用いられる。in vitroの実験では、単純な手法によってtDNAをこれらの培養細胞に導入する。
導入遺伝子:受容体のゲノムに導入されるDNA。通常、DNAが宿主ゲノムに安定的に組み込まれる場合に用いる。トランスジェニック生物は組換えDNA技術によって操作されたDNA断片が挿入された生物で、外来のDNA断片がその生物のゲノムに組み込まれている。
ワクチン:古典的には、毒性を弱めた病原体で、もとの病原体による感染に対する免疫を与えるもの。組換えワクチンは、免疫を誘導する重要なタンパク質成分を非病原性ベクター(通常は、天然痘ワクチンとして用いられるワクシニアウイルス)中に産生させるのが一般的である。
ベクター:自己複製する運び屋DNA(RNAの場合もある)分子で、外来DNAを挿入して増殖・複製させる。
注