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シンポジウムへの責任

Frank E.Young博士
バイオテクノロジーにおける安全性に関する国内専門家グループ(GNE)
の研究グループIV長

序文
 Viggo Mohr教授と他のノルウェー側の主催者に、大変なシンポジウム準備をなされたこと、ならびに暖かい歓迎を受けたことに感謝して、短いプレゼンテーションをいたします。
 ここベルゲンでこの会議を開催することには多くの利点があります。絵のように美しい背景は、われわれの研究意欲を起こさせます。ベルゲンが長い歴史上、海と水生食物に関係があるという事実は、研究に対する刺激を大きくします。しかし皆さんがこの会議でここにこられた重要な利点は、おそらくは、われわれが日常的に水生バイオテクノロジーの研究をしている地域の専門家をここのOECD会議に招くことによりその人たちがわざわざパリのOECD会議に行く必要がなくなるからです。この関連で、われわれは特にあすAkvakultustasjonen Austevollの水生研究センターに行くのを楽しみにしています。
 そこで、グループ全体を代表して、ベルゲンで研究する素晴らしい機会を提供してくれたノルウェー側の主催者に再度感謝したいと思います。

グループへの責任
 シンポジウムの実際の作業に入る前に、会議の目的と目標を見直すことは重要です。私は、このことを、このプレゼンテーションの題名のところでは「シンポジウムへの責任」と表示しています。
 以前にグループの研究に関与していなかった新しい人が今日参加しておられるので、バイオテクノロジーにおける安全性に関するOECDの国内専門家グループの研究グループIVが実施した研究の背景を一部簡単に要約することで仕事をはじめたいと思います。

 GNEとして知られているバイオテクノロジーでの安全性に関する国内専門家のOECDグループは1988年に研究の新しいプログラムを設定した。1990年10月のGNEの第3回会議で、バイオテクノロジーにより産生した新しい食物あるいは食物成分の安全性を評価する科学原理の詳述に特に注目し、食物安全性の研究は優先度が高く早急に開始すべきことに同意した。その結果、食物安全性とバイオテクノロジーの研究グループ、およびGNEの研究グループIVが設立され、私がグループ長に選出された。

 研究グループIVの最初の任務は、提唱された研究の範囲と目的を含む、調査事項を作成することである。
 事実、GNEで承認された通り、部屋では研究グループIVの調査事項の写しが利用できる。私は、その資料の「範囲と目的」の項目を参照する価値があると考える。それには、次のように書いてある。
 「バイオテクノロジーにおける安全性に関する国内専門家グループ(GNE)の食物安全性に関する研究グループは、新しい食物あるいは食物成分の安全な使用を評価するのに関与する科学的問題と原理を扱う予定である。バイオテクノロジーにより生産された新しい食物と食物成分が特に注目されている。研究グループは食物添加物、汚染物質、加工補助、包装材料の安全性を評価する科学原理を扱う予定はない。このような原理は国内でも国際的にも十分に確立されている。また、この研究グループは、OECD資料[a]の中、およびGNEの他の研究グループによりすでにとりあげられたこれら産物の環境安全性の原理を扱う予定はない。」

 当初、このグループは、水生由来生物の研究を将来にまわすことにして、陸生微生物、植物、動物由来の新食物もしくは食物成分の安全使用に研究の焦点を絞る決定をした。
この研究グループは、この最初の焦点の一部として、モダンバイオテクノロジーに由来する食物の安全性評価という題名の最初の報告書、すなわち概念と原理を作成した。この報告書は実質的同等性の原理を詳述している。実質的同等性の原理は、食物あるいは食物源として使われ存在する生物が、新しいもしくは改変した食物あるいは食物成分の安全性を評価するときに比較のベースとして使用できる という考えを具体化している。このような新しいもしくは改変した食物あるいは食物成分が、既存の産物と実質的に同等であると決定された場合、かかる産物は、安全性評価の点で、類似する従来品と同じ方法で扱うことができる。すなわち、実質的同等性が一旦確立された場合、安全上の注意をそれ以上強化するとしても最小で済みそうである。

 この報告書の重要な要素は、実質的同等性の概念が単独で詳述されたのでなく、報告書のIII章で見られる多数の事例研究に準拠して論じられていることである。事実、実質同等性の概念は、われわれが特定の例との関連で考えることができるときに最も価値があるように思われる。実際の事例研究から科学的に入力する価値は、このシンポジウムの間に、われわれのためになるものでなければならない。

 前に述べたとおり、研究グループは最初に研究対象を陸生微生物、植物、動物由来の新しい食物あるいは食物成分の安全使用に絞ることに決定した。われわれは多数の理由から水生由来の生物に関する研究を延期することを望んでいた。私は理由のすべてを詳述しないが、たしかに水産養殖は、当時、研究グループの研究を複雑にするような問題を提起することが感じられた。例として、ヒトに消費されるある魚と軟体動物貝種は、毒素を含むことが知られている。それらはバクテリアもしくは他に由来する毒素に汚染されることはあるが、この現象は陸生食物動物種ではまれにしか認められない。さらに、水生生物は、より広い水生環境と密接に接触しているので、われわれは、その環境から毒素あるいは感染を自由に吸収することが考えられる。毒素などの吸収は、水生生物が養殖されている場合でも、しばしば発生する。これらの問題は陸生生物と関連するが、研究グループは、水生状況が非常に異なっているので、別個に考察してみる価値があると感じている。
 どのような場合でも、今まで野生状態で水産養殖と水生種の主題を延期していたという事実は、実質同等性の概念が食物安全性と水産養殖には適さないことを意味するものでないと私は考える。われわれは、便宜上、陸生源からの食物の安全性とは別個に、食物安全性と水産養殖を考えたいことを意味する。事実、私の見解では、実質的同等性の概念が最も有用な出発点であると、ほぼ確信を持って云える。

 シンポジウムの間に研究が進展しているのがわかるのは、プレゼンテーションにより、水産養殖のテクノロジーが発展していく様子が理解でき、同時に重要な食物安全性問題が示唆されることである。金曜日の公開討論までに、これらのテーマを発展させることは可能である。われわれは、実質的同等性は同様に、水産養殖と他の水生源での食物安全性評価に関連するかどうかの検討を始めたい。
 実質的同等性は、安全性の絶対基準を提供できないであろうが、水産養殖のバイオテクノロジーが従来の産物には存在しない、さらなる食物安全性問題を提起するかどうかの疑問に答えるわれわれの助けになるはずである。最初にテクノロジーの範囲内とそれに関連する食物安全性問題内の展開を確認して、このテーマを金曜日に再び論じたい。われわれの分析と勧告のすべては、健全な科学に基づくべきであることを強調したい。

 最後に、私は、水産養殖と水生種の捕獲を通じて開発した食物と食物産物に対する実質的同等性の概念の進展に関する有益なプレゼンテーションと考察を楽しみに期待している。

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