図1 迷走神経による炎症反応の制御
迷走神経が興奮すると,脾臓に投射する迷走神経の節後線維(脾神経)からノルアドレナリンが放出され,その刺激をうけて一部のT細胞からアセチルコリンが分泌される.T細胞に由来するアセチルコリンは,ニコチン性アセチルコリン受容体α7サブユニット(α7nAChR)を介してマクロファージからの炎症性サイトカインの産生を抑制する.
[Download] [hs_figure id=1&image=/wordpress/wp-content/uploads/2015/08/Suzuki-4.e011-Fig.1.png&caption=fig1-caption-text]
最近,神経系による炎症制御における新たな分子基盤が解明された.多発性硬化症のマウスモデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎において,痛覚刺激あるいは抗重力筋(ヒラメ筋)からの感覚刺激が特定の脊髄分節における炎症細胞の侵入を促進することが明らかにされた図2 交感神経系による好中球の動態の制御
概日リズムの中枢である視交叉上核からの入力により,交感神経系の活動性は1日のうちで身体の活動性の高い時間帯に上昇し,身体の活動性の低い時間帯に低下するという概日リズムを示す.夜行性のマウスにおいては夜間に交感神経系の活動性が高まり,昼間に比べより多くのノルアドレナリンが放出される.すると,末梢組織の血管内皮細胞においてβ
2アドレナリン受容体およびβ
3アドレナリン受容体を介して細胞接着因子ICAM-1およびケモカインCCL2の発現が上昇し,血液から組織への好中球の移行が促進される.
[Download] [hs_figure id=2&image=/wordpress/wp-content/uploads/2015/08/Suzuki-4.e011-Fig.2.png&caption=fig2-caption-text]
しかし,教科書的にも,急激にストレスがくわわった場合やノルアドレナリンを単回投与した場合には末梢の血液における好中球の数は増加することが知られており図3 交感神経系によるリンパ球の動態の制御
交感神経系からのノルアドレナリンの入力が,β
2アドレナリン受容体とケモカイン受容体CCR7およびCXCR4とのクロストークを介してリンパ節へのリンパ球の保持を促進する結果,リンパ節からのリンパ球の脱出が抑制される.
[Download] [hs_figure id=3&image=/wordpress/wp-content/uploads/2015/08/Suzuki-4.e011-Fig.3.png&caption=fig3-caption-text]