図1 トランスポゾンの種類とおもな植物においてトランスポゾンのしめる割合
(a)トランスポゾンの種類.RNAの逆転写を介して転移するクラスIのレトロトランスポゾンと,DNA配列それ自体が転移するクラスIIのDNA型トランスポゾンに大別される.SINEやMITEは自律的な転移能はもたず,ほかのトランスポゾンから供給される転移酵素の存在下において転移する.LTR配列のあいだで相同組換えが起こることによりsolo-LTRとよばれる配列が残ることがある.ヘリトロンはローリングサークルとよばれる転移様式により転移する.
(b)おもな植物のゲノムのサイズおよびトランスポゾンのしめる割合.
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遺伝子領域にトランスポゾンが挿入された場合,プロモーター領域,エキソン,イントロンなど,挿入された部位がどの領域によるかで遺伝子の機能への影響は大きく変わると考えられる(図2 トランスポゾンの遺伝子領域への挿入と転写に対する影響
(a)プロモーター領域への挿入.エピジェネティック修飾による転写の抑制,および,転写因子などのリクルートによる下流の遺伝子の転写を制御する機能の獲得を起こす.
(b)エキソンへの挿入.遺伝子の破壊やトランスポゾンのもつポリA鎖による転写の中断を起こす.
(c)イントロンへの挿入.エピジェネティック修飾によるヘテロクロマチン化によりスプライシングの促進,あるいは,ポリA鎖の付加による転写の中断が起こる.
(d)3’側非翻訳領域への挿入.内在性のプロモーターからアンチセンスRNAが産生されることによりmRNAが阻害される可能性がある.これは,プロモーター領域,エキソン,イントロンへの挿入においても起こりうる.
[Download] [hs_figure id=2&image=/wordpress/wp-content/uploads/2018/01/Saze-7.e001-Fig.2.png&caption=fig2-caption-text]
活発に転写されている遺伝子領域に存在するトランスポゾンも,遺伝子間領域のトランスポゾンと同様に,ヘテロクロマチン化の標的になり転写が抑制された状態が維持されていることが,シロイヌナズナやトウモロコシなどで確認されている(図3 シロイヌナズナのRPP7遺伝子におけるトランスポゾンの挿入およびエピジェネティック修飾
耐病性遺伝子のひとつである
RPP7遺伝子のイントロンには多数のトランスポゾンの挿入があり,転写を抑制するエピジェネティック修飾であるDNAメチル化および小分子RNAがその配列を標的とするにもかかわらず,
RPP7遺伝子それ自体も転写されている.DNAメチル化は,CG配列,CHG配列,CHH配列(H:A,T,C)に分けて表示した.
[Download] [hs_figure id=3&image=/wordpress/wp-content/uploads/2018/01/Saze-7.e001-Fig.3.png&caption=fig3-caption-text]