図2 血管内皮細胞への局所的な神経への刺激による免疫反応の促進経路“Gataway Reflex”
重力によるヒラメ筋の活性化は感覚神経を刺激し,第5腰椎への交感神経の活性化を誘導する.交感神経の末端からはノルアドレナリンが放出され,第5腰椎の背側の血管の血管内皮細胞においてIL-6アンプを過剰に活性化させる.この一連の刺激が,第5腰椎の背側の血管内皮細胞に過剰のケモカインCCL20を誘導し免疫細胞をひきよせる.血液に疾患の原因となるような病因性のT細胞が存在すると,脳および脊髄において自己免疫疾患がひき起こされる.
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さらに,交感神経の活性化が組織への細胞の浸潤を促進していることについては筆者らのほかにも報告があり,サーカディアンリズムによる交感神経の活性化は非免疫系組織においてβアドレナリン受容体を介しケモカインや接着分子の発現を上昇させ,組織への免疫細胞の移行を促進することにより敗血症性ショックにも寄与していた図3 IL-6シグナル伝達経路
gp130はIL-6の結合したIL-6受容体により二量体化し,チロシンキナーゼであるJAKに結合しこれを活性化することで細胞にシグナルが伝達される.JAKの活性化によりリン酸化されたgp130のC末端側の4つのチロシン残基,Y767,Y814,Y905,Y915にはSTAT3が結合し,STAT3はJAKによりさらにリン酸化されて二量体化し核へと移動する.STAT3の標的タンパク質であるSOCS3は,JAKによりリン酸化されたgp130のチロシン残基Y759およびJAKに結合し,JAKの活性化を抑制することによりSTAT3の活性化を収束させる.
P:リン酸化.
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図4 炎症性ケモカインの発現誘導機構“IL-6アンプ”
線維芽細胞,血管内皮細胞などのI型コラーゲン陽性の非免疫系細胞にIL-17AとIL-6がはたらきNF-κBとSTAT3が活性化すると,ケモカインなど炎症誘導タンパク質の発現を相乗的に誘導する機構“IL-6アンプ”が活性化される.このIL-6アンプの活性化に依存的に,F759マウスの関節炎はもとより,多発性硬化症のモデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎が発症する.
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図5 実験的自己免疫性脳脊髄炎の発症初期において病因性のCD4陽性T細胞は第5腰椎の背側の血管の周囲に集積する
実験的自己免疫性脳脊髄炎を発症したマウスに病因性のCD4陽性T細胞を移入したのち5日目に,脊椎において切片を作製し細胞の集積を解析した.
(a)ヘマトキシリン-エオシン染色した第5腰椎.
(b)青色の四角の部分を拡大した画像.
(c)ヘマトキシリン-エオシン染色した第5腰椎の切片10枚を用いて構築した三次元画像.紫色の球がCD4陽性T細胞,赤色のチューブが第5腰椎における血管を示す.病因性のCD4陽性T細胞は第5腰椎の背側の血管に多く集積しており,第5腰椎は血液脳関門における侵入口になっていた.
[Download] [hs_figure id=5&image=/wordpress/wp-content/uploads/2012/10/Murakami-1.e006-Fig.5.png&caption=fig5-caption-text]
なぜ,第5腰椎背側の血管においてIL-6アンプが過剰に活性化しCCL20が発現しているのだろうか? 第5腰椎には最大の抗重力筋であるヒラメ筋からの感覚神経の後根神経節が存在するので,重力の刺激にともなうヒラメ筋の感覚神経の活性化が関与していると仮定した.そこで,米国航空宇宙局研究局(NASA)にて開発された地上で無重力を再現できる実験系“後肢懸垂”を用いた(