図1 がん幹細胞を標的とした治療法の開発ががんの完治のために必要である
(a)既存の抗がん剤はほとんどのがんにおいて根治をもたらすことはできない.いっけん治療が奏功しているようにみえても,がん幹細胞が残存し再発をきたすためである.
(b)がんの完治のためにはがん幹細胞を標的とした新しい治療法が必要である.
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既存の治療薬により排除できないがん幹細胞を根絶するための戦略として,抗体療法はきわめて有望である(図2 がん幹細胞の抗原の同定およびそれを標的としたモノクローナル抗体療法の開発
がん抗体療法は既存の抗がん剤と異なり,あまり分裂していないがん幹細胞に対しても効果が予想される.
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ひきつづいて,筆者らは,多発性骨髄腫におけるがん幹細胞の研究を開始し,免疫不全マウスにおいて骨髄腫を再構築する能力をもつ骨髄腫細胞の前駆細胞は骨髄腫形質細胞のなかに存在することを明らかにした.一方,以前から報告されているように,CD19陽性のB細胞の画分には骨髄腫細胞の前駆細胞となる細胞が存在することも確かである.そこで,CD19陽性のB細胞および骨髄腫形質細胞のすべてと結合しこれらを排除するような抗体を作製できれば骨髄腫クローンの排除が達成されると考え,骨髄腫の患者に由来する骨髄の検体を用いてそのような標的を探索した.その結果,CD19陽性のB細胞および骨髄腫形質細胞のほぼすべてに高発現するが,CD34陽性CD38陰性の造血幹細胞にはまったく発現しない細胞表面抗原としてCD48が見い出された.CD48の発現レベルは細胞1個あたり10図3 キメラ抗原受容体発現T細胞療法とは
(a)キメラ抗原受容体発現T細胞療法の原理.
(b)実際の臨床応用の流れ.
[Download] [hs_figure id=3&image=/wordpress/wp-content/uploads/2017/07/Hosen-6.e005-Fig.3.png&caption=fig3-caption-text]
B細胞に由来する血液がんに対するCD19を標的としたキメラ抗原受容体発現T細胞療の臨床試験において非常に高い完全寛解率が報告され