6.5 従来農業や有機農業との共存

 以上のように安全性の研究が進み知見が増えても、遺伝子組換え作物に不安を感じる消費者や有機農業農家が存在することは事実です。一方、遺伝子組換え作物の利点を重んじ、これらを栽培し利用したい農家も世界的に多数存在します。遺伝子組換え作物を栽培したい農家と有機農業農家の両者の関心は相反していますが、畑が隣接するなどのことが、様々な国で起こっています。このような背景から、遺伝子組換え作物と隣接した畑で栽培された作物に、遺伝子組換え作物が混入される可能性やこれらから生じる不安のための風評被害などが考えられます。
 デンマークでは、遺伝子組換え作物を栽培する農家とその他を両立させる共存法令が2004年6月に定められました1。遺伝子組換え作物の栽培に関して下記のことが規定されています。

a)遺伝子組換え作物を栽培する農家及びその従業員は、共存についての政府認可による教育を受けた後、ライセンスの取得が必要であること
b)遺伝子組換え作物を栽培する農家は、栽培距離など規定の栽培法の堅持をすること
c)特定の遺伝子組換え作物栽培に限ること
d)遺伝子組換え作物の種苗の増殖や取引については許可を受けた生産者のみが行えること及び取引の報告を政府に行うこと
e)遺伝子組換え作物についての輸送を含め取扱者は政府に登録すること
f)遺伝子組換え作物を栽培、輸送、貯蔵、取引したり、これらを終了する場合、その者は、近隣の土地所有者や農家に対してその旨を通知すること
g)遺伝子組換え作物の混入等が被害として認知されたときの政府による補償

 このような、具体的な規定を設けることによって、すべての関係者の関心や権利を考慮することができ、予測されない混入などの実害がおこった場合の具体策により、共存栽培が実行できるようになってきていることが報告されています2,3

1:http://www.fvm.dk/fvm_uk/high_final_uk.asp?page_id=566
2:Boelt, B. 2004 . Biosafety data improving the regulation of co-existence. Proceedings of the 8 th International Symposium on the Biosafety of Genetically Modified Organisms September 26-30, 2004, Montpellier, France, p195-199.
3:Quemada, H. 2004. Evaluating the impact of insect-resistant transgenic plants. The Program for Biosafety Systems' Biotechnology Biodiversity Interface Program. Proceedings of the 8 th International Symposium on the Biosafety of Genetically Modified Organisms September 26-30, 2004, Montpellie, France, p68.
6.6 遺伝子組換え生物の新たな利用分野−バイオレメディエーション