5.3 遺伝子組換え食品のリスク評価のための制度

 我が国では1991年に、「食品分野への組換えDNA技術応用に関する指針」が当時の厚生省により作成されました。そして、遺伝子組換え食品のリスク評価はこのガイドラインに従って行われてきました。このガイドラインの対象となる食品は、当初は「生産物が既存のものと同等とみなし得るもので組換え体そのものを食さない」もの、つまり、組換え体によって作られ、組換え体から抽出して使用されるもので、既存の物質と同等とみなせるものに限られていました。すなわち、組換え体であるナタネやトウモロコシそのものでなく、これらから抽出して得られる油や酵素などで、既存の物質と同等の構造または機能を持つものだけが対象だったのです。このようなものについては、リスク評価上、複雑な問題はあまり生じません。その後、1996年にリスク評価指針が改訂され、「組換え体そのものを食する種子植物」にまで適用範囲が拡大されました。組換え体そのものを食する種子植物とは、例えば遺伝子組換えトウモロコシや遺伝子組換えダイズ等です。
 その後、スターリンク・トウモロコシのように、リスク評価が終了していない遺伝子組換え農作物が食品に混入する事件が起こるようになり、このような問題に対応するために、食品衛生法の下に「組換えDNA技術応用食品及び添加物の安全性審査基準」が定められ、2001年4月1日から遺伝子組換え食品の安全性審査が法の下で義務づけられるようになりました。従って、現在我が国では法律に基づいて安全性審査が行われたものだけが食品としての使用を許可されています。また、遺伝子組換え食品に対する表示の規則も作られました。
 遺伝子組換え食品の安全性審査は厚生労働省の諮問機関である食品衛生調査会によって行われていました。しかし、2003年7月に内閣府に食品安全委員会が設置されたことに伴って、安全性の審査は1.リスク評価と2.許可・検査とに分けられました。現在では、1.リスク評価は食品安全委員会により、また2.リスク評価に基づいて流通を許可したり検査したりすること(リスク管理といいます)は厚生労働省により行われるようになっています。
 遺伝子組換え食品のリスク評価については、食品安全委員会のホームページ及び厚生労働省の遺伝子組換え食品ホームページを見て下さい。

1:食品衛生調査会常任委員会資料、2000.4.25

5.4 遺伝子組換え食品のリスク評価とリスク管理