表4.1: 遺伝子改変生物の環境放出に対する分子生物学者と生態学者の考え方の違い
項目 分子生物学者の考え方 生態学者の考え方
既存の微生物との競争力

 
・環境中では既存の微生物が遺伝子改変微生物に勝つ。

 
・環境中で利用するための遺伝子改変微生物については、必ずしもそうとは言えない。
遺伝子改変微生物の環境中での適応力
 
・改変した遺伝子は宿主微生物の負担となり、遺伝子改変微生物の環境中での適応力を弱める。
 
・先験的にこうとは言えない。

 
生物の環境中での挙動の予測可能性 ・性質のわかった遺伝子を生物に加える場合は安全だ。
 
・遺伝子だけでは生物の環境中での挙動を予測できない。
潜在的影響は何に関係するか
 
・潜在的影響は実際には病原性だけに関係している。
 
・潜在的影響は生態系の構造や機能にも関係している。
安全性の問題は実験室での議論で解決済みか
 
・安全性の問題は実験室での議論でもう解決している。事故による漏出に関しても、これまで安全であった。
 
・実験室での議論は環境中の遺伝子改変微生物には当てはまらない。量が多いと危険である。
土着生物に似ているか ・遺伝子改変微生物は土着の生物に似ている。 ・遺伝子改変微生物は外来の生物に似ている。
自然界の微生物との比較
 
・自然界ではプラスミドの伝達は常に行われている。
 
・遺伝子改変微生物は自然界の微生物とは比較できない。
規制の要否


 
・遺伝子改変微生物に安全性にかかわる特別な性質がない限り、あるいは有害性が示されない限り、従来の規制で十分である。 ・すべての遺伝子改変微生物は最低限の審査を受けるべきである。
 
野外放出前の試験の要否
 
・まず野外実験を行うべきだ。これが遺伝子改変微生物の安全性を証明する唯一の方法である。 ・放出前の試験が必要である。
 
野外試験の安全性を明らかにするための屋内試験・実験の可否 ・屋内試験の計画、実施は不要であるし、非常に時間がかかり、恐らく不可能である。
 
・ケース・バイ・ケースの実験が必要であるし、野外をまねた実験は可能である。
 
 
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