マイクロアレイプロジェクトの概要

■ イネゲノムプロジェクトの始まり
西暦2000年はゲノム構造解析にとって極めて意義深い年であり、6月26日にヒトゲノム構造解析の大方の終了が宣言され、また秋には高等植物のシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のゲノム構造解析の終了もアナウンスされた。 今後、ゲノム研究の中心は、構造解析から 機能解析へと移されて行くことが考えられる。 我が国におけるイネゲノムプロジェクトは、1991年(平成2年)からスタートし、 第1期イネゲノムプロジェクトは、1997年(平成9年)までの7年間行われた。その内容は、イネゲノム研究の基盤を整備することを目的とし、1.RFLPを利用した高密度遺伝子連鎖地図の作成、2.大量cDNAクローン解析、3.YACを用いた物理地図構築の3点において成果を挙げた。

■ マイクロアレイプロジェクトの発足
この第1期イネゲノムプロジェクトにより集められたデータを元に イネゲノム塩基配列の決定を最終ゴールとする第2期イネゲノムプロジェクトが1998年(平成10年)から開始されました。
第2期イネゲノムプロジェクトでは、全ゲノム構造決定だけでなく、 遺伝子の機能解明のプロジェクトも開始され、これらにはレトロトランスポゾンによる遺伝子破壊系統を用いたミュータントパネルプロジェクト、染色体座位等の遺伝学的情報から遺伝子単離を目指すマップベーストクローニングプロジェクト、DNAマーカー選抜プロジェクトが含まれてた。さらに1999年(平成11年)からはマイクロアレイ技術を利用した遺伝子単離を目的とした「遺伝子発現モニタリング手法を用いたイネ・ゲノム有用遺伝子の機能解明」プロジェクト(通称:マイクロアレイプロジェクト)が開始された。
このプロジェクトは、近年ゲノム的視点に立った遺伝子発現の網羅的解析技術として着目されているマイクロアレイ技術(詳細は技術的背景のページへ)を用いて、植物が低温、乾燥、有害な土壌、害虫や病気等の環境から種々の影響を受けた際に示す応答に関与する遺伝子やその耐性機構に関与すると思われる遺伝子をいち早く単離すること、また特定の組織や器官でのみ発現している遺伝子を単離することを目標として開始されました。
このプロジェクトに参画している研究グループは1999年度(平成11年度)は42グループ、2000年度(平成12年度)は64グループとなっております。
このプロジェクトは、マイクロアレイシステムをセットアップする役割を担う部分(マイクロアレイセンター)と、アレイ技術を利用して遺伝子を単離する部分に分かれます。
前者には(社)農林水産先端技術産業振興センター農林水産先端技術研究所(以後STAFF研と略します)と農業生物資源研究所分子遺伝部遺伝子発現研究室から構成され、後者は農林水産省試験研究機関、大学、民間企業から構成されております。

 

■ マイクロアレイセンターの役割
マイクロアレイセンターの役割は、プロジェクトメンバーに対して、実験可能なマイクロアレイシステムをセットアップし、プロジェクトの推進に貢献することです。下図にその構成を示します。センターの中核となるシステムはアマシャム・ファルマシア社との契約によるMTAP(Microarray Technology Access Program)システムです。一方、現時点でアレイに固定されているcDNAクローンは第1期イネゲノムプロジェクトで大量に単離・解析された独立ESTクローンです。また、イネ以外のアレイを使用するプロジェクトメンバーに対しても、それぞれで作製したクローンを固定したアレイを作製している(ヒャクニチソウ、マメ、サツマイモ、カンキツ、リンゴなど)。

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