2001年に、ILSI国際食品バイオテクノロジー委員会は、栄養改善されたGM製品の安全性および栄養評価に関する科学的基礎の枠組みを作成するため、タスクフォースおよび専門家作業部会を招集した。この作業部会は、人間および動物の栄養、食品組成、農業バイオテクノロジー、食品および飼料の安全性アセスメント、新規食品および飼料に関する世界的規制の分野を専門とする、主要な科学研究所からの人員によって構成された。さらに、文書を世界各地の専門家23名が検討し、さらに栄養改善された製品の安全性および栄養アセスメントの枠組みを作成し練り上げる上で、世界各地の利害関係者のより幅広い参画を促進するため、国際ワークショップが召集された。レビュー担当者およびワークショップ参加者は、食品科学者、植物バイオテクノロジー研究者、食品、飼料、環境の安全性に責任を持つ規制当局の科学者、人間用食品および動物飼料の栄養学者、食品毒性学者、食品、飼料、家畜、バイオテクノロジー産業からの代表、公益部門の科学者などである。
 その結果できた文書は、栄養品質が改善された作物の安全性および栄養上の作用を評価するための、科学的基礎および勧告を提供している。これには、そのような製品を記述する用語および定義が含まれており、また安全性および栄養上の課題でのキー
 ポイントの同定、これらの課題に対処するうえで取り得るアプローチと方法が紹介されている。この文書を扱いやすいサイズにとどめるため、適用範囲は意図的に制限した。同文書は、機能性食品(すなわち、基本的な栄養上の必要を満たすことを越え、健康上で有益となる可能性があるものを提供してくれる食品)、健康あるいは薬理学的な有用性を主な目標とした食品あるいは飼料の形質、いくつかの改善された栄養形質を単一の作物に組み合わせた(すなわち、積み重ねた)作物に関する、安全性および栄養アセスメント手続きについては考察していない。
 また同文書は、これまでのGM作物の商業化に伴って得られるようになった広範な経験について考察し、栄養改善された製品関連特有の疑問や課題に焦点を当てている。この文書は、現在の科学原則を組み込むことを試み、これまでに持ち出された懸念を認識する、将来に目を向けたものである。特定の議論に直接舞い戻るための機会として使用されてはおらず、また環境に対する栄養改善された作物の安全性を評価するための科学原則および根拠を扱うものでもない。
 この文書の第1章では、現代の農業バイオテクノロジーの概要を提示している。第2章では、現在開発中あるいは考慮されている栄養改善作物の例について考察している。栄養改善された食品および飼料の安全性アセスメント手続きは、第3章で提示した。このアセスメントは、改善された農業的形質を有するGM作物で現在市販されているものに対して採用され成功してきている諸原則と手続きを基にして作成された。第4章は、栄養改善された食品作物の栄養アセスメント手続きに、また第5章では栄養改善された動物飼料に焦点を当てている。栄養改善された作物での予期されていなかったあるいは意図されていなかった変化を同定するための分析方法は、既に使用されているもの、開発中のものいずれについてもその概観を第6章で提示した。最後に、栄養改善されたGM作物に対する市販後のモニタリング戦略で考えられるものについて、その分析を第7章で提示している。