1.食品安全性
 世界中で、既に遺伝子組換え食品が摂食されているが、ピアレビューを経た科学論文において人の健康を害するという報告は見られない。しかし、その歴史はまだ10年足らずであり、人の健康に対する長期にわたる影響はまだ検出されていない。

2.意思決定、評価と選択
 遺伝子組換え食品の政策決定及び安全性評価はこれまで以上に包括的かつ透明性であるべきであり、こうすることから一般の疑念の払拭に役立とう。安全性評価は、本質的に技術的かつ科学的なプロセスであることから、食品安全性の評価と情報伝達の中で、一般市民の態度や信条をどのようにして組み入れるかについては明確な結論は出されなかった。 

3.遺伝子組換え食品の安全性評価
 遺伝子組換え食品を含む新規食品の安全性評価には様々な科学的証拠を必要とする。その手段としてよく用いられるものは「実質的同等性」の概念である。この概念の本質は、新規食品と従来から摂食されている食品との比較を基本とするものである。ここで重要なことは、「実質的同等性」は、量的基準でもなく、ハードルでもないということで、骨格とする考えであることである。この概念が導入されてから6年以上を経過したことから、詳細な見直しをする時期でもある。議論の中で2つの課題が提案された。
1)遺伝子組換え食品を含む新規食品の安全性評価において、毒性試験以外の動物への給餌試験の重要性について明確な合意が欠けている。
2)遺伝子組換え食品の毒性およびアレルギー誘発性を試験する方法を再検討する時期にある。

4.開発途上国および先進国における遺伝子組換え技術
 開発途上国からは、遺伝子改変技術が自国の将来の食糧資源確保の一環として極めて重要であると強調した。特に、世界人口の20%、土地面積の7%を占める中国では食糧生産において大きな貢献をしている。そこで,遺伝子組換え技術の応用は、むしろ現地の人々のニーズに照準を合わせることが重要である。
安全性評価の基準は、全世界で一貫性があり高い水準であることが不可欠である。先進国では、一般市民には直接的な利益が見られなかったとされるが、品質や健康への寄与、価格面で直接に利益が見えるような製品が出現してくれば、市民の認識も変化しよう。

5.食品安全以外の懸念
 遺伝子組換え食品がなぜ必要かという疑問が根底にある。世界の食糧の再配分や貯蔵中のロスの低減化への努力で食糧問題の解決を訴える声も聞かれた。開発途上国における政策決定や議論への一般市民の関与の改善が必要である。
 また、環境への潜在的な影響を懸念する声もあった。環境への影響アセスメント、特に生物多様性を背景とするアセスメントが不充分である。
 一般市民は、概して遺伝子組換え食品に疑念を持っており、とくに消費者団体等は表示を要求している。また、市場におけるモニタリングを行ない、併せて予防原則を適用することも主張している。

6.前進のために
 エジンバラ会議においては、あらゆる立場の意見が出され、意見の不一致、あるいは情報不足による不確実性のある問題点が特定できた。
 このエジンバラの議論を踏まえ、この意見交換と合意に向けてのプロセスを継続するために国際フォーラムの設置が勧告された。
 フォーラムは、国際機関の取り組みを基盤とし、グローバルなもので、先進国だけに限定しない。世界最高の科学専門家が率いるべきであるが、科学者のみならず広範な分野の専門知識や意見を吸収することも必要である。
 フォーラムの当面の主題は、農業及び食糧生産における遺伝子組換え食品の安全性評価と環境への影響評価の2つとする。
フォーラムは2つの重要な機能を果たす。
1)新しい遺伝子組換え技術の発展に伴い、そのリスクとベネフィット(利益)に関し、最高レベルの科学的分析をし、各国政府に対して適切な専門的助言をする。この助言に際しては広範な科学を反映した意見や不確実性をも考慮に入れる。
2)技術発展、政策展開、一般市民の懸念及び願望については十分な理解を深める。