ドイツにおける規制の解説

ドイツはデンマークと並んで、早い段階から遺伝子組換え生物に対して法規制を導入した国である。最初の遺伝子工学法(Genetic Engineering Act)は1990年7月1日に発効し、その後、1993年12月に改正された。
遺伝子工学法は遺伝子組換え生物の閉鎖施設内での利用、及び環境への放出に関する規定を定めており、環境への放出に先立って公聴会を開催すること、法違反行為に対しては罰金等が賦されること等が規定されている。この法の下に、いくつかの条例(安全措置、諮問委員会、記録保持、公聴手続き)が策定されており、この中で一番重要なものは安全措置に関するものである。これは主として封じ込め使用を対象としたものであるが、一部環境放出にも対応している。環境放出のみを対象とした条例はないが、この理由は、遺伝子組換え生物の意図的放出については認可の手続き等が法の中に具体的に示されているためである。
遺伝子工学法は、2004年11月に再び改正され、2005年2月、改正法が施行された。同法は、遺伝子組換え生物の環境放出に関するEU指令(2001/18)の内容を反映させたものであるが、遺伝子組換え農作物を野外栽培する場合の隔離距離などに厳しい要求が盛り込まれており、実質的に遺伝子組換え農作物の栽培や研究までを不可能にしうる厳しい法律であるという意見もある。
なお、この改正法には、共存条項として、1)GMOの重大な悪影響を予防するために予防的措置を講じることや栽培における「優良農業規範」を遵守すること、2)所在地登録、3)GMOによる汚染が生じ重大な悪影響をもたらした場合の損害賠償制度なども定められている。