遺伝子組換え体の規制に関する各国のアプローチの概説

遺伝子組換え技術の産業利用が開始された1980年代の半ば頃から、各国が安全確保のための規制体制の整備を行ってきた。そのアプローチは大きく2つに分かれる。
一つは「遺伝子組換え生物に特有の有害性(ハザード)はない」という考えから、遺伝子組換え生物や遺伝子組換え技術に特化した規制は行わず、既存の法体系の中で規制を行うものである。
一方は、「遺伝子組換え技術」を対象として規制を行うものである。
前者の代表は米国であり、米国では既存の製品分野を対象とした法の下で規制を行っており、「遺伝子を組換えた」ということ自体が規制のトリガーにはなっていない。
一方、後者の代表はEUやオーストラリアである。オーストラリアでは「遺伝子技術法」を策定している。また、欧州連合(当時は欧州共同体)は域内での統一的なアプローチが必要である、という観点から、遺伝子改変微生物の閉鎖施設内での利用(contained use)および、遺伝子改変生物の環境への放出に関して、それぞれ指令を作成している。この指令を国内規則に反映することが求められている欧州連合加盟国はいずれも、遺伝子組換え技術をトリガーとした規制を行っており、ドイツは遺伝子技術に対する法を、英国は、環境保護、及び労働者保護を目的とした法の中に組換え体を対象とした規則を作成して規制している。
各国における規制のやり方を図に示す。

なお、国際的な取り決めとして、2000年1月、遺伝子組換え生物の越境移動に対応するために、生物多様性条約の下に「バイオセイフティーのためのカルタヘナ議定書」が採択され、2003年9月、これが発効した。

本サイトでは、遺伝子組換え生物に対する国際的な取り決めおよび各国の規制に関する解説を行う。