6.3 遺伝子組換え生物の安全性に関する研究

 遺伝子組換え技術の安全性については、各種のガイドラインにしたがって個別の事例毎にリスク評価が行われてきました。その結果、OECDの報告書において「遺伝子組換え技術は何ら特別視すべき技術ではない」と明記されたように、組換えDNA技術の利用により人の健康や環境に顕著な悪影響が生じた例は知られていません。しかし、遺伝子組換え生物の安全性について、メディアをにぎわすような下記の報告も行われました。これらの論文は、後に誤りが明らかになったり、実験設計が不適切であったり、人工的な極端な条件下で実施されたりしたものです。
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 一方、遺伝子組換え農作物の開放系利用の環境安全性に関して、より詳細な検討や研究が行われるようになっています。ここではそのような事例をいくつか紹介します。
 
 ボックス:この研究の主要な結果は下記の通り。
  1. 異なる作物を栽培した畑間における生物多様性の違いは、組換え体(除草剤耐性作物)の畑と非組換え体の畑の間の違いよりも大きかった。
  2. 3種類の作物すべてで、栽培期間の初期における畑中の雑草の個体数とバイオマス量は非組換え体の畑よりも組換え体の畑の方が大きかった。
  3. 除草剤耐性テンサイと除草剤耐性ナタネの畑では雑草の枯死率が非組換え体の畑よりも高くなり、その結果、栽培期間の後期では雑草のバイオマス量と種子生産量は非組換え体の畑よりも少なくなった。一方、除草剤耐性トウモロコシの畑では雑草の枯死率は非組換えトウモロコシの畑よりも小さかった。
  4. 有機残査を利用する生物(トビムシ類)の個体数は3種類の作物すべてで組換え作物の畑の方が多くなった。
  5. 除草剤耐性テンサイおよび除草剤耐性ナタネの畑では雑草の個体数が減るため、ハチ、チョウ、半翅目(カメムシ等)の個体数は少なくなる。一方、トウモロコシでは昆虫をはじめとする無脊椎動物の数は組換えトウモロコシの畑の方が多い。
 
6.4 安全性のための研究開発